特別支援学校高等部卒業後の進路の選択肢とは。発達障害がある子の進学、就職、働き方まで解説します

ライター:発達障害のキホン

発達障害や知的障害がある子どもの高校進学率は高くなっていますが、高校卒業後の進路は一般に比べ進学率は低く、就職率が高くなっています。ここでは、特別支援学校高等部を卒業した後の進路としてどのような選択肢があるのか、進学率や就職率、どのような就職先があるのか、探し方などを解説していきます。高校を卒業してからの方が、人生は長くなります。わが子が「安心できる環境のなかで、自分で道を選んでいける」選択肢はどのようなものがあるのか、どのような支援や配慮が受けられるのか、それぞれの特徴なども紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

発達障害がある子の高校卒業後の進路の選択肢

発達障害がある、軽度~中度知的障害のある子どもが特別支援学校高等部を卒業したあとは、大学進学あるいは就職を選ぶことになります。どのような選択肢の幅があるのでしょうか。

進学

制度上は特別支援学校高等部卒業で大学入学資格は得られます。

しかし、特に知的障害高等特別支援学校、知的障害特別支援学校高等部の場合は自立活動なども多いため、志望する大学側が定めた科目の単位を取得していないと受験自体ができない場合があります。したがって、入学時点から大学進学に合わせた教育課程を個別に編成してもらえるかどうかを学校側と話し合っておく必要があります。

卒業後進学を考えている場合は入学前に事前に卒業までに取得できる単位数などの確認をしておく必要があります。
平成30年度新特別支援学校高等部学習指導要領等説明会における文部科学省説明資料
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/02/21/1399950_23_1.pdf
学習指導要領「生きる力」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/tokushi/1284551.htm

就職

障害のある人の就職先は、基本的に

・一般就労…一般雇用か障害者雇用
・福祉的就労…いわゆる業所で働く。就労継続支援A型と就労継続支援B型がある。

となります。

一般就労と福祉的就労では、収入にも大きな違いがあります。

手帳を取得しての一般就労の場合にはどのように給与が変わるのかが企業の判断によるので注意が必要です。特別支援学校卒業が「高卒」にあたるのか「中卒」にあたるのかは企業によって判断が異なっているのが現状です。また、障害の種類によっても違ってくる場合があるので、就労前に確認することが重要です。

就労移行支援や福祉型カレッジを利用

障害のある人が就職を目指すにあたって受けられる福祉サービスを利用することもできます。働くためのさまざまなスキルを身につけたり就職活動の支援などを行う就労移行支援や、就職後も長く続けるための就労定着支援などの教育訓練機関があります。
また、自立訓練(生活訓練)事業と就労移行支援事業を組み合わせた4年制の福祉型カレッジなどもあります。
よくわかる!就労移行支援(LITALICOワークス)
https://works.litalico.jp/syuro_shien/
知的障害の若者に大学教育を。福祉型大学「カレッジ」の挑戦
https://h-navi.jp/column/article/35025669

社会福祉施設に通所・入所

社会福祉施設は、大きくは「障害者支援施設」「障害福祉サービス事業所及び相談事業所」の2種類に分けられます。共に入浴や排せつ、食事や家事など生活全般にわたることから、自立や就労の支援や助言なども行います。障害者支援施設は生活の場が提供されている、という違いがあります。
継続的な自立支援のシステムの構築
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000104549.pdf
障害福祉サービスの内容 |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html

進学について

特別支援学校高等部や高等特別支援学校を卒業後、多くの生徒は就労福祉施設への通所・入所を選択しますが、大学進学を目指す生徒もいます。

2018年(平成30年)の特別支援学校高等部の卒業者は21,657人で、進学するのは427人(2%)と非常に少ない割合になっています。進学先としては、大学(学部)、短期大学(本科)、大学・短期大学の通信教育部及び放送大学(全科履修生)、大学・短期大学(別科)が挙げられます。進学以外の進路として、教育訓練機関等への入学は342人(1.6%)、就職が6,760人(31.2%)、社会福祉施設に入所・通所13,241人(61.1%)、その他887人(4.1%)となっています。

※高校卒業に準ずる単位と定められている74単位を取得しないと大学受験資格を得られないので、卒業後進学を考えている場合は入学前にあらかじめ卒業までに取得できる単位数などの確認をしておきましょう。
卒業者の進路:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/013.htm

受験時の特別措置はある?

「周囲の目が気になる」「答えを独り言で言ってしまう」という生徒に別室受験を認める、拡大文字問題冊子の配付、試験時間の延長などの特別措置があります。配慮を受けるには、受験上の「配慮申請書」と、所定の診断書および状況報告・意見書の提出が必要です。
受験上の配慮案内
https://www.dnc.ac.jp/center/shiken_jouhou/hairyo.html

入学後はどのような配慮を受けられるのか

「障害学生支援室」を設置している大学や専門学校もあり、さまざまなサポートを受けることができます。履修や事務手続きの配慮、レポートに代わるものの提出、教材やテストのテキスト拡大など、相談次第で発達障害の特性に応じた「合理的配慮」を受けることが可能です。ただし、大学によって異なったり、障害に対する配慮は一切していないという大学もまだまだ多いため、事前の情報収集が大切です。
支援ガイド_発達_入試
https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/hattatsu_bamen/nyuugaku_shiken.html

就職について

障害のある人が就職をする場合、一般雇用枠および障害者雇用枠のどちらで就職を目指すのか、自身の障害に合わせてどのような職場を選ぶのか、という判断が重要になってきます。卒業後の就職率はどのくらいなのか、どのような就職先や働き方があるのかを解説します。

特別支援学校高等部卒業後の就職率は?

平成30年度のデータでは、特別支援学校高等部卒業者21,657人に対し、就職者は6,760人(31.2%)となっています。就労後の1年定着率で見ていくと、障害者雇用(作業所など)が約7割(70.4%)、一般求人の障害者雇用枠が約5割(49.9%)、一般求人(障害非開示)が約3割(30.8%)。障害をオープンにして就職するほうが、定着率が高くなっています。
卒業者の進路:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/013.htm
障害者雇用の現状
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000178930.pdf

どのような働き方があるのか

【一般就労】
一般就労の中には一般雇用枠と障害者雇用枠があります。

一般雇用枠
収入の平均額は、一般雇用枠の正社員の場合はフルタイム勤務で約32.5万円、契約社員などの非正規社員の場合は約21.1万円となっています。障害者であることを公表せず働く人も多いため、対人関係や仕事管理などで上手く行かないことへの周囲の理解や配慮がないため、定着率が低くなってしまう傾向があります。
※特別支援学校卒業という認定が一般の「高卒」にあたるのか「中卒」にあたるのかは企業によって判断が異なっていますので、あらかじめ確認しておくことが重要です。

・障害者雇用枠
障害者雇用枠の場合、障害をオープンにすることで、障害や苦手・得意などへの理解が得られやすい、通院などに使う時間を確保できるなど働きやすい環境が整っています。就労時間は1日6時間以上が主流となっているため、週20時間未満(1日4~5時間)の場合、一般就労の障害者雇用枠ではなく福祉的就労(就労継続支援A・B型事業所などの作業所)を選択するケースがほとんどです。障害者雇用枠の平均月給は、身体障害者21.5万円、知的障害者11.7万円、精神障害者12.5万円、発達障害者12.7万円となっています。

障害者雇用枠に応募するには、障害者手帳(療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれか)の所持が必須となります。障害者手帳を所持していれば、「一般枠」・「障害者雇用枠」どちらにも応募することができます。
障害者雇用実態調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/111-1.html
厚生労働省「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf
【就労継続支援A型・B型】

一般企業や通常の事業所などに就労することが困難な人に、就労の機会を提供するとともに、仕事やそのほかの活動を通じて知識および能力の向上を目指す福祉サービス、いわゆる福祉的就労です。雇用契約を結ぶ「A型」と、雇用契約を結ばない「B型」の2種類があります。

就労継続支援A型は、特別支援学校を卒業後あるいは就労移行支援事業所などを利用しながら就職活動を行ったが、雇用に結びつかなかった人などが対象となり、原則18歳以上65歳未満という年齢制限があります。勤務形態は基本的に一般就労と変わりませんが、勤務時間が比較的短い(勤務時間に決まったルールはありませんが、1日4~5時間の事業所が多い)点が特徴です。週5日前後の出勤が基本で、給料(工賃)は時給制で平均すると78,975円/月(887円/時間)程度となっています。

就労継続支援B型は年齢制限がなく、企業での就労経験があるが年齢や体力の面で一般企業での雇用が困難となった、就労移行支援を利用する中で就労面の課題が把握されている人などが対象になっています。1日4~8時間程度の開所時間の中で、好きな時間だけ働くことができます。特に決められた勤務日数はなく、通える日数だけ通うことができます。雇用契約を結ばないため、計算方法も出来高制や通った時間など事業所によって異なりますが、平均で16,369円/月(223円/時間)となります。
障害者の就労支援対策の状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html

どのような職種が多い?

職種別に見てみると、一般企業の障害者枠で雇用されている人は、サービス・接客の職業、事務的職業、生産工程の職業、運輸・清掃・包装などの職業、専門的・技術的職業の職種に就いていることが多いようです。

たとえば、事務的職業は比較的業務内容に融通が利いて自分のペースで仕事を進めることが可能なため、身体障害や精神障害のある人に向いているといえます。また、清掃や梱包作業は単調な作業で対人関係などの精神的負担も少ないため、知的障害や精神障害のある人にむいています。もちろん個人差はありますので、就業先を選ぶ前にどのような仕事が自分に合っているかを知っておくことが大切です。

就労継続支援A・B型では、パソコンでのデータ入力作業やレストランのホールスタッフ、商品の梱包作業や清掃など働くために必要な能力を身につける訓練をしたり、利用者の個性や得意分野を引き出す仕事(作業)を提供します。
厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf
特別支援学校、就労支援施設、地方自治体、医療機関などの方へ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/local/index.html
次ページ「就職先の探し方」


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