特別支援学校高等部卒業後の進路の選択肢とは。発達障害がある子の進学、就職、働き方まで解説します

2021/09/15 更新
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発達障害や知的障害がある子どもの高校進学率は高くなっていますが、高校卒業後の進路は一般に比べ進学率は低く、就職率が高くなっています。ここでは、特別支援学校高等部を卒業した後の進路としてどのような選択肢があるのか、進学率や就職率、どのような就職先があるのか、探し方などを解説していきます。高校を卒業してからの方が、人生は長くなります。わが子が「安心できる環境のなかで、自分で道を選んでいける」選択肢はどのようなものがあるのか、どのような支援や配慮が受けられるのか、それぞれの特徴なども紹介します。

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発達障害のキホン
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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

発達障害がある子の高校卒業後の進路の選択肢

発達障害がある、軽度~中度知的障害のある子どもが特別支援学校高等部を卒業したあとは、大学進学あるいは就職を選ぶことになります。どのような選択肢の幅があるのでしょうか。

進学

制度上は特別支援学校高等部卒業で大学入学資格は得られます。

しかし、特に知的障害高等特別支援学校、知的障害特別支援学校高等部の場合は自立活動なども多いため、志望する大学側が定めた科目の単位を取得していないと受験自体ができない場合があります。したがって、入学時点から大学進学に合わせた教育課程を個別に編成してもらえるかどうかを学校側と話し合っておく必要があります。

卒業後進学を考えている場合は入学前に事前に卒業までに取得できる単位数などの確認をしておく必要があります。

就職

障害のある人の就職先は、基本的に

・一般就労…一般雇用か障害者雇用
・福祉的就労…いわゆる業所で働く。就労継続支援A型と就労継続支援B型がある。

となります。

一般就労と福祉的就労では、収入にも大きな違いがあります。

手帳を取得しての一般就労の場合にはどのように給与が変わるのかが企業の判断によるので注意が必要です。特別支援学校卒業が「高卒」にあたるのか「中卒」にあたるのかは企業によって判断が異なっているのが現状です。また、障害の種類によっても違ってくる場合があるので、就労前に確認することが重要です。

就労移行支援や福祉型カレッジを利用

障害のある人が就職を目指すにあたって受けられる福祉サービスを利用することもできます。働くためのさまざまなスキルを身につけたり就職活動の支援などを行う就労移行支援や、就職後も長く続けるための就労定着支援などの教育訓練機関があります。
また、自立訓練(生活訓練)事業と就労移行支援事業を組み合わせた4年制の福祉型カレッジなどもあります。

社会福祉施設に通所・入所

社会福祉施設は、大きくは「障害者支援施設」「障害福祉サービス事業所及び相談事業所」の2種類に分けられます。共に入浴や排せつ、食事や家事など生活全般にわたることから、自立や就労の支援や助言なども行います。障害者支援施設は生活の場が提供されている、という違いがあります。

進学について

特別支援学校高等部や高等特別支援学校を卒業後、多くの生徒は就労福祉施設への通所・入所を選択しますが、大学進学を目指す生徒もいます。

2018年(平成30年)の特別支援学校高等部の卒業者は21,657人で、進学するのは427人(2%)と非常に少ない割合になっています。進学先としては、大学(学部)、短期大学(本科)、大学・短期大学の通信教育部及び放送大学(全科履修生)、大学・短期大学(別科)が挙げられます。進学以外の進路として、教育訓練機関等への入学は342人(1.6%)、就職が6,760人(31.2%)、社会福祉施設に入所・通所13,241人(61.1%)、その他887人(4.1%)となっています。

※高校卒業に準ずる単位と定められている74単位を取得しないと大学受験資格を得られないので、卒業後進学を考えている場合は入学前にあらかじめ卒業までに取得できる単位数などの確認をしておきましょう。

受験時の特別措置はある?

「周囲の目が気になる」「答えを独り言で言ってしまう」という生徒に別室受験を認める、拡大文字問題冊子の配付、試験時間の延長などの特別措置があります。配慮を受けるには、受験上の「配慮申請書」と、所定の診断書および状況報告・意見書の提出が必要です。

入学後はどのような配慮を受けられるのか

「障害学生支援室」を設置している大学や専門学校もあり、さまざまなサポートを受けることができます。履修や事務手続きの配慮、レポートに代わるものの提出、教材やテストのテキスト拡大など、相談次第で発達障害の特性に応じた「合理的配慮」を受けることが可能です。ただし、大学によって異なったり、障害に対する配慮は一切していないという大学もまだまだ多いため、事前の情報収集が大切です。

就職について

障害のある人が就職をする場合、一般雇用枠および障害者雇用枠のどちらで就職を目指すのか、自身の障害に合わせてどのような職場を選ぶのか、という判断が重要になってきます。卒業後の就職率はどのくらいなのか、どのような就職先や働き方があるのかを解説します。

特別支援学校高等部卒業後の就職率は?

平成30年度のデータでは、特別支援学校高等部卒業者21,657人に対し、就職者は6,760人(31.2%)となっています。就労後の1年定着率で見ていくと、障害者雇用(作業所など)が約7割(70.4%)、一般求人の障害者雇用枠が約5割(49.9%)、一般求人(障害非開示)が約3割(30.8%)。障害をオープンにして就職するほうが、定着率が高くなっています。

どのような働き方があるのか

【一般就労】
一般就労の中には一般雇用枠と障害者雇用枠があります。

一般雇用枠
収入の平均額は、一般雇用枠の正社員の場合はフルタイム勤務で約32.5万円、契約社員などの非正規社員の場合は約21.1万円となっています。障害者であることを公表せず働く人も多いため、対人関係や仕事管理などで上手く行かないことへの周囲の理解や配慮がないため、定着率が低くなってしまう傾向があります。
※特別支援学校卒業という認定が一般の「高卒」にあたるのか「中卒」にあたるのかは企業によって判断が異なっていますので、あらかじめ確認しておくことが重要です。

・障害者雇用枠
障害者雇用枠の場合、障害をオープンにすることで、障害や苦手・得意などへの理解が得られやすい、通院などに使う時間を確保できるなど働きやすい環境が整っています。就労時間は1日6時間以上が主流となっているため、週20時間未満(1日4~5時間)の場合、一般就労の障害者雇用枠ではなく福祉的就労(就労継続支援A・B型事業所などの作業所)を選択するケースがほとんどです。障害者雇用枠の平均月給は、身体障害者21.5万円、知的障害者11.7万円、精神障害者12.5万円、発達障害者12.7万円となっています。

障害者雇用枠に応募するには、障害者手帳(療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれか)の所持が必須となります。障害者手帳を所持していれば、「一般枠」・「障害者雇用枠」どちらにも応募することができます。
【就労継続支援A型・B型】

一般企業や通常の事業所などに就労することが困難な人に、就労の機会を提供するとともに、仕事やそのほかの活動を通じて知識および能力の向上を目指す福祉サービス、いわゆる福祉的就労です。雇用契約を結ぶ「A型」と、雇用契約を結ばない「B型」の2種類があります。

就労継続支援A型は、特別支援学校を卒業後あるいは就労移行支援事業所などを利用しながら就職活動を行ったが、雇用に結びつかなかった人などが対象となり、原則18歳以上65歳未満という年齢制限があります。勤務形態は基本的に一般就労と変わりませんが、勤務時間が比較的短い(勤務時間に決まったルールはありませんが、1日4~5時間の事業所が多い)点が特徴です。週5日前後の出勤が基本で、給料(工賃)は時給制で平均すると78,975円/月(887円/時間)程度となっています。

就労継続支援B型は年齢制限がなく、企業での就労経験があるが年齢や体力の面で一般企業での雇用が困難となった、就労移行支援を利用する中で就労面の課題が把握されている人などが対象になっています。1日4~8時間程度の開所時間の中で、好きな時間だけ働くことができます。特に決められた勤務日数はなく、通える日数だけ通うことができます。雇用契約を結ばないため、計算方法も出来高制や通った時間など事業所によって異なりますが、平均で16,369円/月(223円/時間)となります。

どのような職種が多い?

職種別に見てみると、一般企業の障害者枠で雇用されている人は、サービス・接客の職業、事務的職業、生産工程の職業、運輸・清掃・包装などの職業、専門的・技術的職業の職種に就いていることが多いようです。

たとえば、事務的職業は比較的業務内容に融通が利いて自分のペースで仕事を進めることが可能なため、身体障害や精神障害のある人に向いているといえます。また、清掃や梱包作業は単調な作業で対人関係などの精神的負担も少ないため、知的障害や精神障害のある人にむいています。もちろん個人差はありますので、就業先を選ぶ前にどのような仕事が自分に合っているかを知っておくことが大切です。

就労継続支援A・B型では、パソコンでのデータ入力作業やレストランのホールスタッフ、商品の梱包作業や清掃など働くために必要な能力を身につける訓練をしたり、利用者の個性や得意分野を引き出す仕事(作業)を提供します。

就職先の探し方

障害のある人が就職先を探す場合、どのような方法や流れで行えばいいのか、どのような機関に相談できるのかを紹介します。

国が行っている障害者への雇用施策とは?

障害者雇用促進法において、民間企業は2.3%、国・地方公共団体等は2.6%、都道府県等の教育委員会は2.5%の障害者雇用が義務付けられています(障害者雇用率制度)(※令和3年3月1日改定)。これを満たさない企業からは納付金を徴収し、この納付金をもとに雇用義務数より多く障害者を雇用する企業に対して調整金を支払ったり、障害者を雇用するために必要な施設設備費に助成したりしています(障害者雇用納付金制度)また、障害者本人に対して、職業訓練や職業紹介、職場適応援助等の職業リハビリテーションを実施し、それぞれの障害特性に応じたきめ細かな支援が行われるよう配慮しています。

障害のある人の就職活動の流れ

【一般企業の障害者雇用枠】

一般企業への就労の場合には、まず自分の障害や特性と向き合い「何がしたいのか」「働くにあたりなにを優先するのか」を自己分析することが重要です。
その後はハローワークやエージェントを通して求人を探し、履歴書を書き、面接を受けます。

流れとしては一般枠とほぼ同じです。障害者雇用促進法に基づき、一般企業の障害者枠では6月1日までに入社できる人を採用するため、4~5月が採用活動期間となります。2~3月から計画的に動き出す必要があります。

【就労継続支援A・B型】

・就労継続支援A型
施設(作業所)に直接問い合わせ、面接と見学を行います。A型は雇用契約があるため、最寄のハローワークで求人票の確認と、求職希望があることをハローワーク担当者に伝えます。応募にあたって必要な書類を提出し、面接を行います。通所決定の結果が出たら、受給者証が発行され(すでに持っていれば必要なし)、利用開始となります。

・就労継続支援B型
施設(作業所)に直接問い合わせ、施設見学、その後1~3日の体験実習を行います。通所決定の結果が出たら、受給者証が発行され(すでに持っていれば必要なし)、利用開始となります。

どこに相談すればいい?

障害のある人が就職先を選んだり決めたりする際、どこに相談すればいいのでしょうか。相談機関や相談窓口を紹介します。

・ハローワーク
就職を希望する障害者に対して専門の職員・職業相談員が障害の状態や適性、希望する職種に応じ職業の相談や紹介や適応指導などを行います。
公共職業訓練のあっせん、トライアル雇用、ジョブコーチ支援等の各種支援策も活用しています。
また、事業主に対しての支援や助言、各種助成金の案内なども行っています。

・地域障害者職業センター
ハローワークなど地域の就労支援機関と連携し、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。障害者一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、職業指導、職業準備や訓練などの各種の職業リハビリテーションを実施しています。

・障害者就業・生活支援センター
就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、相談を受けたり、職場・家庭訪問等を実施します。
就職活動の支援、事業所に対して障害特性を踏まえた雇用管理についての助言などを行っています。また、生活面で不安があり仕事に就くことが難しい人に対して、健康管理やお金の管理などの「生活支援」も実施しています。

就労移行支援やカレッジ、教育訓練機関などに入学

就労する前にワンクッション置きたい、就労に向けてさまざまなスキルを身につけたい、という人のために、支援や訓練を受けられる施設や機関もあります。どのような支援が受けられ、どのような特徴があるのか見ていきます。

就労移行支援

障害のある人が就労に向けたさまざまなトレーニングを行い、働くために必要な知識やスキルを習得し、就職後も職場に定着できるようサポートを行う機関です。一般就労を希望する、65歳までの障害のある人および障害者総合支援法の対象疾病となっている難病のある人が対象になります。原則利用料はかからず、最長24か月利用することができますが、一般就労を目指した訓練という位置づけのため、基本的に工賃は発生しません。
支援内容は、身だしなみや時間管理などの生活面、パソコンスキルなどの技術面、グループワークなどのコミュニケーション能力面など、多角的なものになっています。また、就職後も就職先に慣れているか、仕事や人間関係の悩みはないか、生活リズムが崩れていないか、などの相談やサポートも行います。

福祉型カレッジ

障害のある人のための「大学形式(4年制)の学びの場」です。法制度上では、障害者総合支援法にもとづく自立訓練(生活訓練)事業と就労移行支援事業を組み合わせた多機能型事業所となっていますが、青年期障害者の「学ぶ権利」を保障することを目的として設立されています。カレッジによって学費やカリキュラムは異なりますが、1・2年生が自立訓練事業としての教養課程、3・4年生が就労移行支援事業としての専門課程となっているところが多いようです。基礎学力を養うほか、生活に必要な訓練や就職にむけての支援も組み込まれています。

教育訓練機関(ハロートレーニング)

障害のある人を対象に、ハローワークと連携しながら、その状況に配慮したきめ細かい職業訓練を実施する機関です。

・国が設置(運営は機構)のリハビリテーションセンター
・国が設置(都道府県が運営)の障害者職業能力開発校
・府県が設置・運営の障害者職業開発能力学校
・都道府県が設置・運営の一般の職業能力開発校
・地域で企業、社会福祉法人、民間機関等に委託して実施する障害者職業訓練

の5種類があり、受講する場合は地域のハローワークで相談・手続きを行います。
学校によって異なりますが、OA実務科、調理・清掃サービス科、オフィスワーク科、ビジネス総合事務科などさまざまな科に分かれ、訓練期間は3か月~1年となっています。

社会福祉施設に入所・通所

障害が重い人の中には、生活上の介護・介助が中心の社会福祉施設に通うケースもあります。どのような施設があるのか、それぞれどのような特徴があるのか解説します。

社会福祉施設とは

施設の種類は老人福祉や児童福祉など多岐に渡り、利用対象となる人、施設の特徴もさまざまです。障害のある人が利用する施設は、障害者支援施設となります。障害者支援施設とは、日常生活における支援や自立訓練、就労支援や相談援助などを提供している施設のこと。施設の費用は公営の場合その半分を国が負担し、残りを都道府県、社会福祉法人などが負担することになっています

通所と入所の違いは?

自宅から施設に通い、日帰りでサービスや支援を受けるのが通所となります。ほとんどの施設が送迎を行います。自宅で過ごすことが多い障害者にとって、引きこもり防止やストレス発散にも繋がります。

施設で生活をしながら支援を受けるのが入所です。24時間スタッフが常駐していて、夜間介助にも対応しています。本人の知的レベルや運動能力に合わせた活動を行ったり、余暇活動に力を入れているところも多く、サークル活動がある施設もあります。

生活介護とは

障害者支援施設などで、常に介助や介護が必要な人〔障害支援区分が区分3(障害者支援施設に入所の場合は区分4)〕を対象に、以下のような支援を受けられるのが生活介護です。

・入浴、排せつ、食事等の介助
・調理、洗濯、掃除等の家事
・生活等に関する相談、助言
・創作的活動、生産活動の機会の提供
・身体機能や生活能力の向上のために必要な援助
障害の種類にもよりますが、障害者の進路先として大学や専門学校に進学する人は全体の5%にも満たず、就職する人も約30%あまり、過半数が社会福祉的就労あるいは社会福祉サービスを利用しているのが実態です。一般就労と福祉的就労では収入にも配慮にも大きな違いがあります。自立した生活を送るのか、介助や介護を受けながら生活するのか、どこに誰と住むのか、どのような福祉サービスを受けるのか、金銭の遺し方や管理はどうするのか…じっくり時間をかけて我が子の進路を準備していきたいものです。
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