納得できないと動けない!ASD息子との「説得千本ノック」な毎日

ライター:丸山さとこ
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「お母さんの話をしっかり聞いていてエライね」「聞き分けがいいね」と言われることの多いコウです。そういう一面も確かにありますが、日々一緒に暮らす家族は「納得しないと動かない」ところに手を焼くこともしばしばです。

今回は、そんな彼との”説得千本ノック”のような毎日について書きました。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

「なぜそうなるのか分からないとできない」と言うけれど…?

納得しなければ動かないコウとの「説得千本ノック」のような毎日!

「聞き分けのよい子だね」と言われることも多いコウですが、その一方で「ああ言えばこう言う」「納得を求めて『なんで?』が多い」「言われた通りにスッと動かない」と評されることの多い子でもあります。

確かに、理屈を理解して納得することができるという意味では”聞き分けがよい子”なのかもしれません。ひっくり返ってダダをこねるのも見たことがありません。

けれども、私は彼のことを「分かりやすく”ジタバタするタイプのダダこね”をしないだけで、受け入れがたいことに対する拒否の強さはかなりものだな」と思って見ています。
「仕組みは分かっていないのに何で炊飯器は使えるの?」とコウに詰め寄る私
「仕組みは分かっていないのに何で炊飯器は使えるの?」とコウに詰め寄る私
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強引に進められるとパニックになることも…

拒否していることを強引に進めようとされたコウはパニックになることもあります。

「〇〇なはずなのに!?」と一度パニックのツボ(?)に入ると本人にもどうしようもないようで、落ち着いてから「焦る必要なかったな…何で焦っちゃったんだろう…?」とグッタリすることもしばしばです。

この「納得いかなければ動かない・強引に進めればパニックになる」というコウの行動は、”パニックになること”を取引材料にしてゴネることで起きているわけではなさそうです。(一部そのパターンもあるかもしれませんが、全てがそうではないのだろうと思います)
納得できないまま強引に進められるとパニックになることもあるコウ
納得できないまま強引に進められるとパニックになることもあるコウ
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やりたくないことだけではなく、やりたいことに関しても「えっ、えっ?だって○○だから□□なのに…!」と青ざめ涙ぐみながら抵抗するコウは、ガラス張りの床を怖がって歩きたがらない人のようだなと感じます。

”ガラスは割れる”と知っているけれど”人が乗っても割れないガラスがある”とは知らない人が「ガラス張りの床を歩け」と言われたら、抵抗するのは当然だと思います。

そんなのムリだと抵抗しているのに「大丈夫だから」と腕を引っ張って強引に連れていかれそうになったとしたら、必死で抵抗したりパニックになったりするのも自然な反応なのかもしれません。

『人の話』に耳を傾けるということ

人の反応を参考にするシステムが弱いのかも?

ガラス床の上を歩けるということは知らなかったとしても、信用できる人が「大丈夫だよ」と言っていたり実際にガラス床の上でニコニコしているとしたら、多くの人はそれを信じるのではないかと思います。

反面、大丈夫だと知識や経験では分かっていたとしても、周囲の反応から不安になることもあるだろうと思います。

コウと接していると、そのような”人の言葉や反応を見て自身の考えや行動に反映するシステム”が弱いのかな?と感じるときがあります。

『お母さんを信じて上手くいった』自分の経験を信じるコウ

そんなコウですが、私の話は「納得はいっていないけれどお母さんの言うようにしてみたら上手くいった」という経験があるため、いくらか聞けるのだと言います。

これは「お母さんを信じている」というよりは「お母さんを信じて上手くいったという自分の経験を信じている」というニュアンスの言葉なのだと思いますが、それでも話に耳を傾けてくれることがあるのはとても助かります。
突然冷静になって「そうは言ってもムズカシイよね…」と言う私
突然冷静になって「そうは言ってもムズカシイよね…」と言う私
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あまりにも「なぜそうなるのか分からない」と言うコウにじゃあ炊飯器でなぜ米が炊けるのか、どういう仕組みなのか理解しているのか!?」と何だかよく分からない追及をしてしまうこともある私ですが、少し冷静になると

「まぁ…コウにとって、炊飯器は『機能と使い方を理解していれば米は炊けるもの』だもんね…」

と一歩譲る余裕が出てきますし、そうなるとコウの方も「いや、今ボクはそれと同じ構造の話をしてたよね…僕も1回やってみてから言えばよかったね…」と譲ってくれたりします。
突然冷静になり「僕も一回やってみてから言えばよかったね…」と言うコウ
突然冷静になり「僕も一回やってみてから言えばよかったね…」と言うコウ
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それはあくまで”スムーズにいったとき”の話であって、大体の場合はコウの「何で?だって〇〇なのに」にひとつひとつ返していく毎日ですが、説得(?)の最後の一押しに「試してみてくれないか?」と提案することで何度か壁を越えられたのは、ありがたいことだなと感じます。

「上手くいった!」と「上手くいかなかった…」を積み重ねて

先日も私が提案する漢字練習の方法を取り付く島もなく跳ねのけていたコウでしたが、

「コウの今のやり方だと多分テストまでに範囲が終わらないと思う。ここ最近何回もそのパターンを繰り返しているので、できたら3文字だけこの方法を試してみてほしい」

と伝えると、「それなら…」と試した上で「あっ、この方法いいね!どんどん進んでいく…これなら最後まで間に合いそう!!」と喜んで取り組んでくれました。
頑なに拒んでいた方法を試してみて「これいいね!」と喜ぶコウとホッとする私
頑なに拒んでいた方法を試してみて「これいいね!」と喜ぶコウとホッとする私
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そうして「納得はしていないけれど1回試してみて上手くいった経験」と「試してみたけど上手くいかなかった経験」の両方を少しずつ積み上げて、『試してみないと分からない』ということや『人の話しに耳を傾ける』ということをゆっくり知っていってくれたらいいなと思います。

井上先生より

お子さんに伝わるように、さまざまな工夫をされていますね。
保護者の方が「こうしたほうが良い」と思っても、お子さんが納得しないことは日々の子育てでよくあると思います。
このコラムのように、少しだけ試す提案をしてみたり、いくつかの選択肢を示して本人に選ばせてあげたりするやり方など、方法はいろいろありますが、お子さん自身が納得するやり方を見つけられると良いですね。
また、うまくいったときには「 ~だからうまくいったよね」と整理してあげると次につながっていきます。
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