衝動性の高いASD息子。「ついやっちゃった」に親はどこまで介入すべき?薬の調整以外でできることは?ーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!

2021/11/04 更新
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ASD・ADHDの息子コウは、理屈では理解していることでも「ついやっちゃった」「何となく」と衝動性で動いてしまうことがしばしばあります。

本人も周囲も振り回されがちなその特性をどのように理解し、どのようにつき合っていけばよいのか、児童精神科医の三木崇弘先生にうかがいました。

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丸山さとこ
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監修: 三木崇弘
フリーランス児童精神科医
スクールカウンセラー
兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒・東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程在学中。 愛媛県内の病院で小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として6年間勤務。愛媛時代は母親との座談会や研修会などを行う。東京に転勤後は学校教員向けの研修などを通じて教育現場を覗く。子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。 2019年4月よりフリーランス。“問題のある子”に関わる各機関(クリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、保健所など)での現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動をしている。

理屈では分かっているけど「ついやっちゃった」…!?

理解力はあるはず⁉ けれど、衝動性の高さが壁になりやすい現状…
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衝動性の高さ?意識のゆるさ?分かっているはずのルールを守れないコウ

いろいろな経験から成長していく子どもの姿は、ときにもどかしくも嬉しいものです。児童精神科医の三木先生にお話をうかがっていく中で、経験から学習していくためには「問いを立てる力」や「振り返り」が大事なのだということを学んでいきました。

以前のコラムでは、三木先生から「丁寧に構造化してフィードバックしていけば理解ができるお子さんのようなので、それは凄くよかったですよね」とあたたかいコメントをいただいた息子のコウですが、構造化やフィードバックを行うにあたって衝動性の高さが壁になりやすい現状があります。

理屈では理解していることでも「ついやっちゃった」「何となく」と衝動性で動いてしまうことが多く、振り返りをするときは「分かんない…気がついたらこうなってた…」と言って考えが止まってしまうこともしばしばです。

今回は、そんなコウの衝動性の高さに対してどう捉え、どう対処していったらいいのかを三木先生にうかがいました。

コンディションに左右されがちな”衝動性”に対して、できることは?

丸山(以下、――)理解できたとしても衝動性に負けるというパターンがあって、今のところ「失敗させずに成功例を数多く積ませる」というのが効果的なようです。息子には「旨味を得たければ、手っ取り早く解決しようとせずに正攻法でいった方がいいよ」と伝えてはいるのですが、『面倒だから』『その方が手っ取り早いから』という気持ちの方が強く出るようです。
「手っ取り早いから」「面倒だから」などの理由でその場しのぎを続けがちなコウ
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――例えば…子どもが親の目を盗んで(ルールを守らずに)ゲームをすること自体は珍しくもないことだと思いますが、それはバレない算段があるからできることですね? アプリでゲーム機の使用状況が分かるわが家では「親に隠れてこっそりと」は成立しませんし、息子もそのことは分かっているので我に返ったときは後悔しますが、喉元過ぎれば…という状態が長く続きました。

息子が「今日は調子がいいから(衝動的な行動を)我慢できそう!」と言う日はリビングにゲーム機を置いて、息子が「今日リビングにあったけど触らなかったよ!」と自慢をしてくるのを「約束守れたね」と褒める…ということを、少しずつ引き延ばしていって。今はリビングにゲーム機があっても勝手に触らないことがほとんどですが、たまに無断使用はありますし、約束の時間を過ぎることもあります。


三木先生:ふむふむふむ。

――ルールを守らなかったときは、「ルールは守らなくてはいけないね。どうしたらよかったのかな?」「何でやっちゃったんだと思う?」という感じで話をしています。「見えたからよくなかったんだと思う」と言う息子に「何かお母さん協力できることある?」と聞くと、「預かってほしい。なかったら触らないから」と言ったりするので、そういうときは、「預かる」という体で実質取り上げている状態になることもあります。
コウを見ながら「身長体重も増えてきたから薬を増やすころなのかな?ほかにできることは?」と考える私
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――衝動性とのつき合い方の1つの方法としては、まず「今飲んでいるADHD治療薬を今後も飲み続け、年齢に合わせて増やす」「ほかの薬を試してみる」などの選択肢があると思いますが、服薬以外のアプローチとしてはどのようなものがあるでしょうか。息子が衝動性とつき合って行くためには、どのようにしていったらいいのかも知りたいです。

衝動性に対しては、「前頭葉の発達待ち」が基本!?

前頭葉の発達待ちをしつつ、”未来にあるメリット”を数えること

三木先生:いやーなんか、衝動性って本質的にはもう、前頭葉の発達待ちみたいなところがあると思うんですよね(笑)。なので、それを待つしかないよねっていうところと、あと、あんまり生活に不具合をきたすようだと、内服も検討しましょうかという話になってくるかな…。

――『トイレトレーニングは膀胱の発達を待ってから』みたいな話になってきますね…。
「衝動性って本質的にはもう、前頭葉の発達待ちみたいなところがあると思うんですよね」と三木先生
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三木先生:そうですねえ。あとはまぁそれに加えて、見通しが立てられるタイプのお子さんだと、利害をできるだけ計算するようにする。ただそこで、未来の価値を過小評価するっていう「時間選好性」の問題が出てきます。これが衝動性の本質だと思うんですよね。

そうなると、そこの割引率(過小評価をする程度)ってあんま変えられないんですけど、”未来にあるメリット”をできるだけ多く数え上げられるように、普段から思考するというか…まぁそういう思考になるように一緒に考えていくとかですかねえ。

環境調整を自分でするよう、心がけることも大切!

”問題を気合ではなく仕組みで解決するための環境調整”を自分で行うのはよいこと
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三木先生:あとはもう仕込みですよね。衝動的に行動しないように、目の前の刺激をできるだけ少なくするような環境調整を自分でするように、普段から心がけるという仕込み。

――あぁー、じゃぁその「お母さんゲーム機を預かって」というのも、環境調整を自分で行うことのひとつでしょうか?

三木先生:そうですね、それいいですね。衝動性の誘引になるものを、自分の環境から積極的に取り除く行動を自分でとるのはとても良い方法です。それは、問題を気合じゃなくて仕組みで解決するための環境調整を自分でやるということですよね。

親が介入すべきポイントは「長期的なダメージ」があるようなイベントが起きるとき

三木先生:そのほかの視点としては、価値観と文化の話みたいなのがあると思うんですけど、結局大人だってお菓子食べたりゲームしたりとかは、まぁある程度しょうがないなと思ってるから、子どももやる訳じゃないですか。もしそれが「死ぬほどまずいぞ」となったら多分みんなやらないと思うんですよ。それをやらない方がお子さん自身にとって価値が高いという判断になるので。

――そのはずですが…息子がゲームに初めて出合ってしばらく2、3年の間は本当に凄くて。親がトイレへ行くとか台所へお湯を沸かしに行くとか、そういうレベルの『絶対に短時間で戻ってくることが分かる状況』であっても、視線が外れた瞬間に手を伸ばす時期があったんです。それで一瞬ゲームができたとしても、使用制限で最終的には損をすることは理解しているので、「やるんじゃなかった」とよく泣いていました。

三木先生:それは、見通しがちょっと…いや、大分甘かったんですかね?

――いえ、なんかもう…「『ゲームだ!』『あっ、できる!』って思った瞬間、それで頭がいっぱいになっちゃった。何も考えてなかった」と息子は言っていて。
ゲーム機の使用時間は親がアプリでチェックできるのに、なぜか無断使用を繰り返してしまうコウ
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――先程お話した通り、ゲームに関しては以前よりも落ち着いている今現在の息子ですが、根本的にこの”衝動性の問題”は、ずーっとあるのだろうなと感じています。なので、親がどうサポートしていけばよいのかということだけでなく、”本人が自分の衝動性と今後どうつき合っていくとよいのか”というのも気になるところです。

前頭葉の発達を待つ間に「衝動性のまま動いたら旨味がある」と強烈に刻み込まれてしまうと、後々訂正するのが難しいのではないか?というあたりも気がかりで…。発達待ちの期間をどうしのいでいったらいいのかな?と思います。


三木先生:それは、少し前に出た、本人の今の理解がどのくらい分かるレベルなのか、できるレベルなのか、というのが判断の基準になると思います。親が介入すべきポイントって、結局実害が起きるときだと思うんですよ。特に、長期的なダメージがあるようなトラブルが起きるとき。

なので、そこは僕は遠慮なく介入していいと思うんですよね。ただ、その方法は表面の年齢に合わせてっていうのはさっきの話と同じで…そこは親の仕事ですね。

うちって厳しすぎ?子どもに対する”制限のかけ方”で迷っています

罰やご褒美がない代わりに「制限」があるわが家のシステム

――うちは”罰やご褒美がない代わりに制限がある”というシステムになっているのですが、息子にはその辺りをある程度率直に話しています。「包丁を安全に使えない子にいきなり包丁を使う料理はさせられないし、道路に飛び出しちゃう子は一人で公園に行かせることはできない。いろいろなことを経験するのは大事なことだけど、親としては死ぬような大ケガはしてほしくないから」と。
「わが家は子どもに対して制限が厳し過ぎるのでは?」と不安になったりモヤモヤしたり…
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――それで「成人までは、親が『今のあなたでは危ないな』と思ったことに関しては『これは渡せないよ、やらせられないよ』ってものが出てくるけど、そこは成人までの我慢だと思ってある程度ご了承いただきたい」とお願いしていまして。

三木先生:そうですね。まぁ実際には成人してからも若干続くことはあるんですけど(笑)。一応目安としてはそう伝えたいですね。

――はい、若干続くことはあるそうですね(笑)。だからこそ、年齢が進むほど、一般的な目線から見れば『子どもの年齢に対して妙に制限の厳しい親』と見えるのではないかという落ち着かなさや、実際に制限が厳しすぎるのでは?という不安はあります。なので、息子には「親という越権行為をある程度はご了承いただきたい」とお願いしています。

三木先生:あ~、うん。全然いいと思います。

――具体的には、息子は片付けが苦手なので「15分以内に片付けられる量まで出しているものを減らそう」というルールを決めているのですが、それも11才になった子に厳しすぎるかな?と迷いがあります…。

三木先生:うーん…僕は別にいいんじゃないかなーと思うんですけどね。

”本人がコントロールできない衝動”を、環境によって助けていくこと

コウと接する毎日の中で、”子どもに対する制限のかけ方”について『過剰に厳しくなってはいないか?息子を萎縮させてしまってはいないか?』と悩むことは多く、三木先生に「全然いいと思います」とお答えいただいても、すんなりと飲み込めない気持ちがありました。

そんな私に、三木先生は”親が介入すること”についての考えを話してくださいました。
”年齢標準から考えて”の対応は”標準的な子”である前提があってこそ
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――ある程度の枠がないと息子も混乱したり崩れたりしやすいので、必要性にせまられてというところはあります。でも、世間から「そこまでガチガチに管理するの?支配的過ぎない?」と引かれる程の状態になってはいないだろうかと揺れる気持ちもあります。

三木先生:うーん…それはでも、年齢標準から考えてということなので、「〇歳だからこれは自分でできないといけない!」という考え方って、それがちゃんとできる標準的な子であるという前提があってこそじゃないですか。実際問題として、本人の発達の程度としてそれができないのであれば、ある程度大人がサポートするのは僕はしょうがないと思うんですよね。極論なんですけど、アルコール依存症の人をアルコールから隔離するのと同じですよね…。

――あー、分かります…。本人がコントロールできない衝動を、環境によって助けていくというところが同じ形だなと感じます。

三木先生:だから、あんまり僕はそこ気になんないですねえ。まぁ僕はやや「親の介入があってもいいと思う派」だっていうのはありますが、ちゃんとする、カチっとすることはしていいと思います。大人として世の中に放って大丈夫にするために、先にちゃんと枠を提示しておく…みたいな。

場合によってはある程度一方的であってすらいいと思うんですけどね。「アカンもんはアカン。理屈やない」っていう部分というか。関係性にもよりますけど、「この人が言うんだったら」という関係で、ここぞというときだったらいいと思います。本当に大切なことなのに、大人が怯んで譲ってしまう方がまずいと思うので。

衝動性の強さに対してどう接していくのか、指針が見えてきました。

毎日の生活の中で息子のサポートやケアに追われていると、「どう接するとよいのだろうか?」という迷いはありつつも、立ち止まって一つひとつ考える時間が持てなくなるときがあります。

そんな中、発達障害のある子どもの症例に多く触れていらっしゃる三木先生からアドバイスをいただいたことで、「衝動性の強さに対してどう接していくのか」について指針が見えてきました。未来の価値を過小評価する性質について、”割引率”はあまり変えられないものと理解したことで、具体的なサポートの仕方も見えてきたと感じます。

「未来にあるメリットをできるだけ多く数え上げられるように」サポートしつつ、コウ自身も、少しずつそれらを自力で数えられるようになっていけたらいいなと願っています。

執筆/丸山さとこ
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