キャスティングについて
母親・珠子役の加賀まりこさん、自閉スペクトラム症のある息子・忠さん役の塚地武雅さんの配役は見事でした。障害のある息子への母のあたたかなまなざし、自閉スペクトラム症のある人になり切った演技が見事だった塚地さん。このキャスティングはどのように決められたのでしょう。
和島監督:昔、バラエティ番組で歯に衣着せず、共演者に本音で指摘する加賀さんの姿を見たことがあり、とても印象的でした。厳しいことを言うけれど愛情がある。珠子は占い師という役で、彼女を慕う女性たちの悩みを聞き叱咤激励するのですが、そこが加賀さんの姿と重なってぜひ演じていただきたいと思った。
塚地さんについては、彼の芸を見ていて、物まねにしても、すごく対象に愛と敬意をもってこだわりをもって取り組むという印象がありました。忠さんは、そういう方に演じていただきたいと思ったのがオファーの背景です。
また以前、ダウン症のお子さんの保護者の方に”あなたは地域の有名人になりなさい”といって育てているという話しを聞いたことがありました。塚地さんにはそういう愛されるキャラクター性があると感じていたことも、オファーの理由のひとつです。
中野さん、三木先生も俳優陣の演技力のすばらしさに驚いたと言います。また、三木先生は、地域の反対派を演じる俳優たちの揺れ動く演技もまた見事だったと話してくれました。
和島監督:昔、バラエティ番組で歯に衣着せず、共演者に本音で指摘する加賀さんの姿を見たことがあり、とても印象的でした。厳しいことを言うけれど愛情がある。珠子は占い師という役で、彼女を慕う女性たちの悩みを聞き叱咤激励するのですが、そこが加賀さんの姿と重なってぜひ演じていただきたいと思った。
塚地さんについては、彼の芸を見ていて、物まねにしても、すごく対象に愛と敬意をもってこだわりをもって取り組むという印象がありました。忠さんは、そういう方に演じていただきたいと思ったのがオファーの背景です。
また以前、ダウン症のお子さんの保護者の方に”あなたは地域の有名人になりなさい”といって育てているという話しを聞いたことがありました。塚地さんにはそういう愛されるキャラクター性があると感じていたことも、オファーの理由のひとつです。
中野さん、三木先生も俳優陣の演技力のすばらしさに驚いたと言います。また、三木先生は、地域の反対派を演じる俳優たちの揺れ動く演技もまた見事だったと話してくれました。
脚本について
脚本では、横浜市自閉症協会の中野さんのご意見も伺いながら練りあげたと言います。
例えば忠さんに母親が「(これから)どうしたい?」と聞き「お嫁さんをもらいます」というシーン。そこにもこだわりはあったのでしょうか?
中野さん:私自身、きょうだいに全介助の障害があって。彼女が20歳になったころ、結婚したいと言ったのですが、そんなの無理でしょうと聞き流してしまった。でも今は、どんなに重い障害があってもどうしたいか本人の意思を尊重する”意思決定支援”というのが重要視されるようになっています。そのあたりがちゃんと描かれているなと感じました。
例えば忠さんに母親が「(これから)どうしたい?」と聞き「お嫁さんをもらいます」というシーン。そこにもこだわりはあったのでしょうか?
中野さん:私自身、きょうだいに全介助の障害があって。彼女が20歳になったころ、結婚したいと言ったのですが、そんなの無理でしょうと聞き流してしまった。でも今は、どんなに重い障害があってもどうしたいか本人の意思を尊重する”意思決定支援”というのが重要視されるようになっています。そのあたりがちゃんと描かれているなと感じました。
三木先生もこのシーンについて、とても印象的だったと言います。
三木先生:映画では、母親は「どうしたい?」と聞きながら、「とはいえ母と一緒にいたいと思っているでしょう」という気持をもちながら聞いていたと思う。でも、母の想いと違う形で忠さんの想いが表出されるところがいいと思いました。忠さんが家を出てグループホームに入居したシーン。息子をグループホームに送ったあと、一人スーツケースを転がしながら家に帰っていく母の後ろ姿は、そうした思いを保護者側が飲み込んだんだな、子どもの想いを大切にしたのだな、ということを感じさせてくれました。
三木先生:映画では、母親は「どうしたい?」と聞きながら、「とはいえ母と一緒にいたいと思っているでしょう」という気持をもちながら聞いていたと思う。でも、母の想いと違う形で忠さんの想いが表出されるところがいいと思いました。忠さんが家を出てグループホームに入居したシーン。息子をグループホームに送ったあと、一人スーツケースを転がしながら家に帰っていく母の後ろ姿は、そうした思いを保護者側が飲み込んだんだな、子どもの想いを大切にしたのだな、ということを感じさせてくれました。
親なきあとについて
映画では、中年にさしかかった自閉スペクトラム症のある息子と高齢の母の暮らしを描いており、親なきあとについても考えさせられます。
障害のある息子さんのいる中野さんは、親なきあとへの備えはどのようにしているのかを話してくださいました。
中野さん:私はきょうだい児でもありますが、きょうだいは中年になっても実家にいて、母が倒れたときに横浜と実家のある四国を行き来する生活を余儀なくされました。そのような経験からも、息子が20代前半からグループホームに入れました。
グループホームはなかなかあいておらず選択の幅もあまりないかもしれないけれど、早いうちから「ここだけは譲れない」という点を整理しておくことも大切ではないかと思います。
と、グループホームの入居についての実体験を話してくれました。また、グループホームでの生活においては、周囲や支援者の支援や環境調整などが大事だともお話いただきました。
障害のある息子さんのいる中野さんは、親なきあとへの備えはどのようにしているのかを話してくださいました。
中野さん:私はきょうだい児でもありますが、きょうだいは中年になっても実家にいて、母が倒れたときに横浜と実家のある四国を行き来する生活を余儀なくされました。そのような経験からも、息子が20代前半からグループホームに入れました。
グループホームはなかなかあいておらず選択の幅もあまりないかもしれないけれど、早いうちから「ここだけは譲れない」という点を整理しておくことも大切ではないかと思います。
と、グループホームの入居についての実体験を話してくれました。また、グループホームでの生活においては、周囲や支援者の支援や環境調整などが大事だともお話いただきました。
また、環境調整に加えて、家族や支援者を信頼し、障害がある人の意志や想いを伝え叶えられてきた経験の積み重ねも大切ではないかという話もでました。
親なきあと、わが子が支援の網の目からこぼれ落ちずに幸せに暮らしていくためには、必要な環境を事前に用意しておくこと、そして支援者を信頼し自分の意志を伝える関係性を育める土台があることが大切なのではないかと改めて気づくことができました。
親なきあと、わが子が支援の網の目からこぼれ落ちずに幸せに暮らしていくためには、必要な環境を事前に用意しておくこと、そして支援者を信頼し自分の意志を伝える関係性を育める土台があることが大切なのではないかと改めて気づくことができました。