「頑張ってきましたね。きつかったでしょ?」息子4歳に自閉症があると告げられた日、蓋をしていた自分の本音と涙があふれて

ライター:まゆん
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太郎は小学6年生。自閉スペクトラム症があり、特別支援学級(情緒クラス)に在籍しています。
発達障害の診断を受けるまで、心の中で「発達障害なのではないか…」とずっとくすぶっていました。太郎の現実から何回も目を逸らそうともしていました。さらに、自分の気持ちさえも隠そうとしていたのです。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

太郎に発達障害があると告げられた日

泣き叫ぶ太郎と、考えこむ母
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ある日、医師から「発達障害」とハッキリと伝えられた。

「発達障害…アスペルガー症候群疑い(※診断当時の名称、現在は自閉スペクトラム症)ということになりますね」と、太郎を出生後からずっとみてきてくださってる主治医の先生から柔らかい口調でゆっくりと伝えられた。

そのあとに先生は続けて言った。「まゆんさん、良く頑張ってきましたね。きつかったでしょ?」
主治医の先生から「よく頑張ってきましたね きつかったでしょ?」と言われる
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自分自身の子育てに対して、労われるのは初めてだった。周りのお母さんを見ながら苦しくなる自分もいた。

「先生…私…太郎に対して…育て難いとか思っちゃいけないと思ってて…」
太郎に対して育て難いとか思っちゃいけないと思ってて…と言いながら涙が出てくる母
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自然と涙があふれてきて…

「でも、やっぱり、きついことが多くって。太郎のことがかわいいと思える余裕もなくなることが増えてきて…。外出もすごく疲れて追いかけ回したり、癇癪起こしたりするんで人の目も気にしたり…」

今まで蓋をしていた私の本音が涙と一緒にポロポロポロポロと…。そうやって話している間もずっと、太郎は私の周りで回転する椅子を回したり、ベッドに上がろうとしたり、つま先歩きを楽しんだりとしていた。
診察室で、椅子を回したりベッドに上がろうとしたり、つま先歩きを楽しんだりしている太郎
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そして、先生はうんうん、とうなずきながら私の話を聞いていた(太郎の多動にはもう慣れている)。

「今日、こうやってハッキリと診断されて、ああ、今までのきつさは間違いではなかったんだなって…きついって思ったり、誰かに口に出してもいいんだなって、どこかでホッとしている自分がいます」

自分の気持ちを言葉に表しているうちに、自分自身の気持ちに気づいた。こんな風に思っていたんだと。自分の言葉なのに自分に気づかされた。言葉にするって相手に伝えるだけではなく、自分の心の整理にもつながるんだと…。

「まゆんさん、これから周りの人たちと一緒に太郎くんとの関わり方を考えていきましょうね。太郎くんを変えていくのではなくて、周りの大人たち、関わる人たちがどんな風に関わって行くか、柔軟に動けるのかというところがポイントになっていくんじゃないかなと思います」

太郎を変えるのではなく、周りの人たちの関わり方を…。そうか、そうするためには太郎の現実をまずは見る必要があって、認めなくてはならない。そして私自身も何に困ってるとかきついとか、蓋をせずに表に出すことでやっと周りが問題に気づいてくれるわけで。問題が明確になると、対策も具体的なものになるわけで…。

自分の気持ちを表に出すこと、太郎の現実から目を逸らさないことが、太郎の今後にも大きく関わってくるんだということを知ったできごと。
「太郎を変える」ではなく周りに視点を置く…医師の言葉を反芻する母
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あとがき

健診時のアンケートの中に「子どもを育てにくいと感じることがある」という欄があったのを覚えています。そのときの私は、この質問欄を読んでドキドキしたのを覚えてます。答えがYESだったのです。でも、「子どもに対してそんなことを思うなんておかしい…私はおかしいんだ…」そう思う自分がいて正直に答えることができませんでした。

診断をされる前までは、きつい心を隠して「こんなの平気、あたりまえ」と大丈夫なふりをしてる自分もいました。実際はイライラしたり涙流したりしていたのに、それを「大丈夫」と隠そうとしていました。

診断をされ、ドーンとショックを受けるのかと思っていたのですが、すごくホッとしている自分がいました。太郎のことも、自分のことも、認められるようになった瞬間でした。自分の気持ちに嘘をつくのはすごくきついことで、自分で自分を労えなくなるわけで…。

診断を受けたタイミングが「発達障害」「私の気持ち」「太郎」を受け入れる体制に入った瞬間だったんだと今振り返ると思います。

執筆/まゆん
(監修:井上先生より)
診断を告げられたときの気持ちは、診断自体に「大きなショックを受けた」という方や、まゆんさんのように「今までどうして子育てが大変だったかが分かった」、「分かることで気持ちの整理がついた」など、感情や捉え方はさまざまです。共通するのは、まゆんさんが書かれているように、「診断後にどうしていくか?」ということだと思います。
コラムにあるように、一人で悩むのではなく、診断を支援のスタートとして、療育や相談も含めて周りの人たちが親御さんと一緒に支援できる体制をつくれるのが良いと思います。「子どもと親の応援団」をつくることで、子育ての孤立感が軽減されてくるかもしれません。
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