「漢字の書き取りじゃ、覚えられない!」わが家で実践、ひたすら書く以外の「漢字学習」10のアイデア

ライター:楽々かあさん

うちの子達は「漢字書き取り」の宿題が大キライ。特に、書字に困難さのあった長男は、小学生時代の宿題体験から、今でも苦手意識があります。ひたすら、小さなマス目に同じ字を繰り返し書く……この伝統的な方法が「合っている子」もいます。でも、問題は、その子に合った学び方は、それぞれ違うのに、どんな子にも一律に「漢字書き取り」しか、選択肢がないように思われがちな環境にあるのではないでしょうか。では、漢字を覚えるために、「ひたすら書く」以外の選択肢には、一体どんな方法が考えられるのでしょう。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

なんで漢字の宿題には、「漢字書き取り」しか選択肢がないの…?

こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回のコラムは「漢字書き取り」の宿題のこと。
率直に言えば、うちの長男と次男は「漢字書き取り」の宿題が大キライ。書字にやや困難さのあった長男に至っては、小学生時代の宿題体験から、トラウマになっていると言っていいほど、今でも苦手意識が頭の奥底に染み込んでしまっています。

かつては漢字を書くことも、覚えることも、思い出すことも苦手だった長男ですが、さまざまな親子での試行錯誤の甲斐あって、高校生になった今ではノートに黒板の板書を写したり、テストの回答をするときに差し支えない程度には、書字ができるようになりました。漢字の小テストも、ほぼ追試を回避できています。
つまり、もう彼は漢字を書くことができるし、最近は読書も好きなので、国語も嫌いな教科ではありません。

ところが、「漢字書き取り」の宿題となると、話は別です。
ただひたすらに、小さなマス目に同じ字を繰り返し、繰り返し書く……この作業に大変なストレスを感じてしまい、今でも「漢字書き取り」の宿題が出た翌日の長男の部屋はいつもひどい惨状に。
なぐり書きでなんとか終わらせた彼は「こんな方法では俺は漢字、覚えらんない。無意味で時間の無駄なばかりか、書けば書くほど文字が分解されて、頭がバラバラになっていく感じがするから、かえって逆効果!」と訴えます。
次男も、小学生時代は、字を丁寧に書き過ぎるあまりに、宿題に時間がかかり過ぎて寝不足に。見かねた私は「もっとテキトーに書いていいんじゃない?」と提案しましたが、「訂正されたり、やり直しになるのが嫌だ」と、泣きながら漢字を書き続けていました。

ただ、私は「漢字書き取り」の方法自体を批判したいわけではありません。この由緒正しい、伝統的な学習方法が「合っている子」「苦にならない子」もいるからです。
長女は、比較的この単調な繰り返し作業が苦にならないタイプで、体の動きで覚えることが得意なので、繰り返しの手の動きで漢字を「書いて覚える」ことも、割とできます。

ですから問題は、「漢字を覚える」ための方法が、どんな子にも一律に「漢字書き取り」一択しか、選択肢がないように思われがちな、現在の宿題の環境にあるのではないでしょうか。
なぜなら、「ものを記憶する」「覚えたことを思い出す」ために、その子に合った学び方や得意な学習方法は、それぞれの子で違うのにも関わらず、自分に合わない方法を宿題として強制されると非効率的で負担感が大きく、「漢字」や「宿題」、ひいては「勉強」に対しても、ネガティブなイメージができてしまうように私には思えるからです。

では、漢字を覚えるために、「ひたすら書く」以外の選択肢には、一体どんな方法が考えられるのでしょう。

実例!うちで試した、"ひたすら書く"以外の漢字の覚え方

うちでは、以下の実例のような方法をトライ&エラーの試行錯誤で、「ひたすら書く」では漢字を覚えられなかった子も、次第に覚えていきました。中には、うちの子たちはさほど続かなかったものや、「楽しくできたけど、学習効果は微妙……」といったものもありますが、どんな方法がその子に合っているかは、試してみないとわからないので、ご参考までに、うちで実践した10のアイデアをご紹介しますね。
(ただし、これらの試みのほとんどは、通常の「漢字書き取りの宿題」とは別枠で取り組んできたので、宿題自体の負担が減ったわけではありません)

1.立体アート法

モールで作った「字」の写真
モールで作った「字」
Upload By 楽々かあさん
「手で触って確かめる」「立体的に物事を捉える」ことが得意な子や、図画工作が好きな子には、実際に手を動かして漢字で立体造形物等を作る、アートな方法が向いているかもしれません。例えば……

・モールや粘土、毛糸などで漢字を作ってみる
・ミニブロック、積み木などの好きなおもちゃを並べて、漢字の形にする


……などで、楽しく手を動かしながら、触覚をフル稼働すると、覚えやすいのではないでしょうか。

2.パズル法

パズルが好きな子や、論理的に考えるのが得意な子は、パズル的なアプローチがいいかもしれません。うちでやってみたのは……

・市販の漢字パズル(カード式のもの)や、学習・脳トレアプリなどの活用
・市販のワークの活用(LDのある子向け、中学受験生向けのほか、高齢者向けの漢字パズルやクロスワード雑誌も安価でオススメ)


……などが、食いつきが良かったです。

3.歌って覚える法

「人の話をよく覚えている」など、聴覚で記憶することが得意な子は、歌って覚える方法が合っているかもしれません。
例えば、「♪歌という字は、可、可に欠ける〜」「♪窓という字は、ウカンムリにハムごころ〜」とか、その子が覚えやすいフレーズをテキトーに考えて、漢字と一緒に唱えながら書くと、記憶に残りやすいと思います(この方法は、宿題と同時にできますね)。

4.どこかで見た法

日用品等に「ものの名前ラベル」を貼ったアイデアのイラスト
「ものの名前ラベル」
Upload By 楽々かあさん
「どこかで見たものや場所をよく覚えている」なんて、視覚的な雑情報の記憶力がいい子は、日常生活の中のあちこちで、漢字を見慣れるようにしておくと、場所とつなげて思い出しやすいかもしれません。うちでは……

・日用品などに、ものの名前を書いたラベルシールを貼る
・市販の漢字ポスターの活用


……などのほか、長男の中学受験期には、短冊状にした大量の語句の「おふだ」を本人が作り、家中のあちこちに貼りまくって「覚えたら取ってよし」にしていました(なにやら呪術的な雰囲気になっていましたが……)。やや気の長い方法ではありますが、こうしていると、「そーいえば、この漢字は階段のところで見たような……」と、思い出せるかも。

5.ちょっとしたヒント法

「分かってるのに、いざ書こうとすると字が出てこない!」なんて子は、思い出す手がかりとなる、ちょっとしたヒントを出してあげるといいでしょう。
例えばうちでは、社会の宿題で「黒シオの"シオ"が出てこない〜!」なんてときには、「水に関係しているから、サンズイがつくんじゃない?」など、口頭でヒントをだしたり、メモ帳やノートの端などに、部首などのパーツを書いたり、一画ずつ足していく、などをしていました。

この方法は、周りの大人のサポートが必要になりますが、子どもの「あー!分かった!!あれだ!」って、ムズムズした記憶がつながった瞬間のスッキリ嬉しそうな顔を見ることができます(うちの経験上、1回記憶がつながると、そのあともその字を思い出せる確率がアップするように思います)。

6.大きく書く法

漢字テストを見ると「"博"の点が1つ足りない」とか「"美"の横線が1本多い」とか、細かなパーツの惜しい間違いが多い子は、「お手本の字をよーく見て、大きく丁寧にゆっくり書く」ことができる工夫をするといいかもしれません。

・習字で半紙に筆で書く(練習用の水半紙や、筆ペンを使うのも手軽)
・ホワイトボードや窓、冷蔵庫などにホワイトボード・マーカーで書く
・スケッチブックやタブレットのお絵かきアプリに、指やペンで書く


……など。繰り返し同じ字を大量に書かずとも、1回だけ超丁寧に大きく書けば、効率よく覚えられる場合も、結構あるんですよ。

7.かくし芸法

体を動かすことが好きな子は、体全体を使ったり、踊って書く方法も楽しいですよ。
うちでは親子で、お笑い芸人さんのように「”命”という字は〜」と人文字を作ってみたり、宴会芸のようにしり文字で「♪"遊ぶ"という字は、こーして、こーして、こーかくの〜」と一緒に踊ったり、「なーんて書いた?」と当てっこクイズを出したりしてみました。

ただし、子どもたちはとっても楽しくできたのですが、うちでは、この方法で漢字を覚えられたことは、今のところありません(笑)。まあ、漢字学習=ツマラナイ、というイメージは変えられたかも……?

8.ふせんチェック法

「メモリーチェックふせん」のイラスト
「メモリーチェックふせん」
Upload By 楽々かあさん
国語だけでなく、「得意なはずの教科でも漢字用語の書き間違いで、テストの点につながらない」なんて、少々ソンしてる子は、ふせんなどをメモリーチェックに活用すると効率アップできるかも。例えばうちでは……

・覚えたい語句や用語を書き出した一覧や、教科書やプリントの太字の大事な部分などにふせんを貼る
→テスト前などに「その字が書けるかどうか」を一回だけ書いてチェックし、正確に書けたものだけふせんを取る
→次の日に、残ったふせんの部分だけ、もう一度書いてチェック


……これを繰り返すと、いつかは書けるようになったので、長男も中学以降の定期テストを乗り切ってきました。

9.おもしろ例文法

文章を書いたり、ストーリーを考えるのが好きな子は、自分で覚えたい漢字をいくつか使った例文を考えてノートに書き、ひとつのエピソードとして複数の漢字をつなげてイメージすると、効率よくまとめて覚えやすいかもしれません(この方法は、現在の長男のイチオシです)。
特に、一見無関係な漢字同士を無理やりつなげたヘンテコな文にしたり、ダジャレや語呂合わせを入れたり、自分の好きなものに関連づけたりすると、印象に残りやすいと思います。

10.好きこそものの上手なれ法

そして、その子の好きなことや、興味関心に合わせると、漢字学習だってずーっと覚えやすく、楽しくできることもあります。

例えば、歴史好きの長男は、戦国武将や旧国名から、だんだんと書ける漢字が増えていきました。マンガ好きの次男には、必殺技名や好きなキャラのセリフを使った「特製漢字ノート」を作ったら、意欲的に取り組むことができました。お絵かきが好きな長女は、自ら漢字ノートに自分の創作キャラをラクガキして、「ここは出る」「点をつける」など、間違いやすいポイントの解説を入れると印象に残りやすい上、ノートを開くのが楽しいようです。

こうして、効率よく楽しく柔軟に、その子に合った学び方で取り組めば、漢字だって、一つずつ「できた!」体験が増え、次の「できた!」や自信につながり、だんだんと、「もっと学びたい」「勉強が好き、楽しい」という意欲につながるように私は実感しています。

先生。そろそろ宿題も、個別最適化のアップデートを……

以上のように、うちの経験からの実例で、「漢字書き取り」以外の漢字を覚えるための方法を10コほど、ご参考までに紹介させて頂きましたが、本当は「その子にあった学び方」は、子どもの数だけ、選択肢があるのかもしれませんね。

新学習指導要領の導入やICT教育の推進等で、様々な教育方法の見直しが進む中で、文部科学省も「個別最適な学び」を次世代の教育目標として掲げています。
文部科学省|育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/senseiouen/mext_01491.html
私が紹介した方法は、そのままでは「宿題」としては向かないものも多いでしょう。
でも、ある学年での長女の担任の先生は、「宿題の漢字は、漢字ノート1ページを好きに使っていいですよ。自分の覚えやすい方法なら、繰り返し書いてもいいし、何マスか使って字を大きく書いてもいい。自分で例文を作ったり、絵を添えてもいいですよ」と、柔軟な方法で宿題を出してくれました。その年は長女も、語源を調べて象形文字の絵を書いたり、大好きな犬を使った例文を考えたり……と、漢字の宿題の時間を楽しみにしていたようです。

何より、宿題をするときに「嫌だな、つらいな」「メンドクサイ、つまらない」といったネガティブなイメージと共に漢字を覚えるよりも、その子に合った方法で、効率よく楽しく覚えられたほうがずっと頭の中に残りやすく、いいイメージと共に思い出しやすいのではないかと思います。

宿題の目的が「忍耐力を養うため」ではなく、「その漢字を書けるようになるため」であるのならば、そろそろ伝統的な「漢字の宿題」の方法も、個別最適化したアップデートをする時期に来ているのではないでしょうか。
文:大場美鈴(楽々かあさん)
(監修:鈴木先生より)

現代の時代に合わせられない教育の盲点の問題ですね。
今までの伝統を替えて新しいことを始めるのには困難なことが多いのです。病院でも同じです。
しかし、誰かがやらないと進歩しないのです。とにかく理解のある自治体・学校・先生から勇気をもって改革してほしいと願って止みません。

最近は漢字ドリルを問題文含めて3回写さないといけないとか言われて面倒でやる気を失うお子さんも多くみられます。神経発達症(発達障害)の特性を理解してもらって写すのは1回だけでもいいように親からお願いしてもらうこともあります。神経発達症(発達障害)のお子さんは練習(宿題)が嫌いでも本番には強いことが多くの場面でみられます。運動会・発表会・テストなどです。

以下に紹介するアプリは筑波大学の院生の方がつくったものです。
今回、1番の立体アート法でも示されたような色で分けた書き順がこのアプリの中でも展開しています。先生が黒板に色のついたチョークで示すかのごとく、わかりやすくつくられています。漢字が苦手なお子さんにはぜひ試していただきたいアプリです。
つくば市は国際都市で外国の方も多く、漢字を覚えるのにこのアプリを利用なさっている方もおられます。いいアイデアは惜しまずに全国に広まってくれれば、漢字で悩むお子さんが一人でも多く、早くいなくなっていくのではないかと考えます。
参考:漢字を書くことが苦手なお子さん向けの漢字練習アプリ「Oska Writing」
https://oskawriting.wixsite.com/kanji

このコラムを書いた人の著書

大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
https://www.amazon.co.jp/dp/4866672129
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