シッカリ父とウッカリ母、なのにASD小6息子が「お母さんみたいにちゃんとしたい」と言う理由

ライター:丸山さとこ
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コウは、私が予定を組んだりタイマーやリマインダーを使ったりするのを見ながら「僕もお母さんみたいにちゃんとしたいなー」と言うことがあります。『工夫をしているな』と思うのだそうです。

特に工夫をしている自覚がないと言うと、「え!そうなの?」と意外そうに驚くコウ。そんな彼と、工夫について話をしました。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

コウが「お母さんみたいにちゃんとしたいな」と言う理由は?

「お母さんは僕みたいにウッカリなのに工夫してるよね!」と力説するコウ
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お母さんは”工夫をしている”ウッカリ者!?

コウは、私が予定を組んだりリマインダーをかけたりタイマーを使ったりするのを見ながら「僕もお母さんみたいにちゃんとしたいなー」と言うことがあります。

私は忘れっぽくミスもよくするので、「ちゃんとしてるといったらお父さんじゃない?」と聞くと、「確かにお父さんはちゃんとしてるけど、お母さんは僕みたいにウッカリなのに工夫してるよね!」と力説するコウ。

「だからすごいなって思うし、参考になるのはお母さんだと思うんだよ」と語る彼に、「なるほど~、ウッカリ込みの評価か!」と笑いつつ、彼なりに考えて観察しているのだなと感心しました。

分かっていても面倒!工夫をすることのハードルの高さ

その観察眼には拍手を送りたいところですが、観察しているだけで試したり取り入れたりはしないコウなので、「そう思うなら自分でも工夫してみよう?」と言うと「工夫か~…」と面倒そうにしています。
「そう思うなら自分も工夫してみよう?」と促してみるものの「工夫か~」と面倒そうなコウ
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親としては「そこは何とか頑張ってみなよ~」と思いますが、面倒くさがりな1人の人間としては、その気持ち…よく分かります!

そして、コウを見ていると、『工夫をすることは今のコウにとって負荷が大きく、本当にとても面倒で気力のいることなのだろうなぁ』と感じます。

”工夫”と感じてはいなかったけれど…

暗い所でライトをつけるのは”工夫”?

私はコウ以外にも、いろいろな人から「よく工夫をしている」「頑張って工夫をしている」と言われることがあります。けれど、自分としては、ことさらに工夫している感覚はありません。そのことを話すとコウが意外そうに驚きました。そんな彼に、

「コウはこうもりから『人間は超音波が使えないのに、暗いところでも動けるようにライトを使ったりして頑張って工夫してるね!』って言われたらどうする?」

と聞くと、「それは…ん~?『ありがとうございます…?まぁ普通にそうしてます』って感じだねぇ」と笑いながらうなずきました。
「工夫よりも方法の方がしっくりくるかも」と言う私に「なんか分かる」とうなずくコウ。
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私も人から工夫を褒められたときに、前述のコウの言葉に近い感想を抱いている部分があります。好意的に評価されたり労われたりすること自体は全く不快ではないしありがたいなと思いますが、『普通にそうしている』自分の感覚とズレを感じることはあります。

小さなニュアンスの違いですが、私としては『工夫』よりも『方法』の方が、言葉としてはしっくりする感覚があります。
スマホで眼鏡を探しながら「これは”工夫”って感じするな」と思う私
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『工夫』という言葉自体に『いろいろと考えて出したよい方法』という意味も含まれているので、工夫は方法の一つと言えそうです。

先の例えで言えば、「ライトを使うという『工夫』をしているのではなく、ライトという『方法』を使っているのだ」という認識が、私の中の自然な感覚なのかもしれません。

私が「工夫をしている」と感じるとき

とはいえ、「工夫という単語が用いられるのも分かるなぁ」と思います。『多くの人が備えていることを前提とされた能力』がない状態で暮らしていると、工夫と表現されるような方法が必要になるシーンは多いだろうなと考えられるからです。
スマートフォンのカメラでメガネを探しながら「これは工夫だと感じるな」と思う私
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私はメガネで矯正可能な強度近視なので、メガネをかけて生活しています。夜道に対して『ライトという方法』を使うような感覚で、『メガネという方法』を使っています。そこに工夫の意識はありません。

そんな便利なメガネですが、うたた寝や洗顔の際に外したまま置き場所を忘れてしまうことがあります。スマホのカメラで部屋を写しながら探すと見つけやすいのですが、私はこの方法のことを「工夫である」と感じます。『いろいろと考えて出したよい方法』だからなのかもしれません。

自分に合った工夫をして、より快適に!

こうして改めて考えてみると、『工夫をする必要のないやり方』だけが、ただのシンプルな『方法』であると言えるのかもしれません。それならば、確かに私の生活には無意識の工夫がたくさんありそうです。

今はライフハックとして紹介されている工夫がたくさん見られる時代です。たくさんの書籍やSNSから…そして自分自身の経験から、コウが自分に合った工夫をして、より快適に暮らしていけたらいいなと思いました。
「お母さんは確かに工夫をしているかもしれないね。コウも工夫で楽になるといいね」「だね!」
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執筆/丸山さとこ
(監修:初川先生より)
工夫と方法について、一緒に考えながら読みました。
なるほど、さとこさんにとっては、工夫とわざわざくくる必要もないような、ご自身やコウくんにあった方法を見つけ出しながら実践されているのですね。コウモリの話も、面白い視点だなと感じました。そのやり方が見つけ出せない人からすると、自然と出てきた方法もきっと工夫として映るのでしょう。文中にもあるように、今はSNSなどでさまざまな工夫(ライフハックと言われますね)が共有されている時代です。やりやすい方法の「呼び水」である工夫をそうして取り込みながら、自分に合った方法を考えられるといいですね。

ところで、さとこさんがされている「スマホのカメラで探す」工夫、私は考えたことがなかったので、早速やってみたい気持ちでうずうずしています(たしかに、カメラで家の中を撮影すると、思っていたよりもずっとごちゃついているように見えたりして、自分の見ているものがいかに自分用に加工された映像であるかということを思い知りますもんね…。なくし物を探すときに使えるとは…面白いです!)。
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