地域で生きていく中で

知的に重度ではなく、電車を一人で利用でき、お金の計算ができても、他害や自傷が激しかったり、突然大声をだしたりする問題行動が多い方もいます。そうすると企業就労はおろか、就労移行支援事業所や就労継続支援B型の事業所も利用できない場合もあります。

就労移行支援事業所やB型作業所は特別支援学校と異なり、スぺースは広くはありません。その限られた空間の中で、音に敏感な人、精神障害があり気持ちが不安定な人も利用しています。

わが子の心身の状態を不安定にする利用者が同じ通所施設にいるとクレームにもつながるでしょう。そうなると、事業所も他害や自傷、奇声などがある人を受け入れることが難しくなります。

また、国は大きな施設をつくって障害者を囲うのではなく、地域で暮らせるように方針を転換しました。でも、知的に最重度で強度行動障害のある人を受け入れてくれる施設がなかなかない現実があります。

ガイドヘルパーとして、さまざまな利用者の方と地域での余暇を過ごす中で、改めてこうした現実をつきつけられる日々です。何とか解決法はないのでしょうか。

執筆/立石美津子

(監修者・鈴木先生より)

私も常同症(常同行動)は止めないほうがいいという考えです。成人になった自閉スペクトラム症の患者さんが言うには、話すタイミングで常同症があるので止めないでくださいとのことでした。学校や社会では常同症を自閉スペクトラム症の一つのルーティーンとして理解してもらうように周知していくしかありません。

立石さんに注意した年配の方も、実は自閉スペクトラム症があり、聴覚過敏もあったのかもしれません。聴覚過敏のある人は電車内がうるさいと車両を移動したり、初めから電車ではなく自動車での移動を選んだりする人も多くいらっしゃいます。このような方は、一般の人以上に過敏性があるがゆえに我慢できず、衝動性も相まって言いたいことをズバリと言ってしまう傾向があります。クレームを言う側も実は苦しんでいたのではないかと思います。「困った年配の方」ではなく、実は「困っている年配の方」なのかもしれませんね。

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