重度の自閉症の兄。40代の今、作業所でどんな仕事をしているの?子どものころは迷惑だった「困った特性」が生きる力につながって

ライター:スガカズ

私の7歳離れた兄には、重度の自閉スペクトラム症と知的障害があります。
現在兄は地元の障害者支援施設に入居しており、入居してから18年ほど経ちました。
平日は作業所で働いているようなのですが、現在はどういった仕事をしているのか気になったので、面会を通して施設の方に詳しく話を伺うことにしました。

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監修: 三木崇弘
社会医療法人恵風会 高岡病院 児童精神科医
兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒・東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程修了。 愛媛県内の病院で小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として6年間勤務。愛媛時代は母親との座談会や研修会などを行う。東京に転勤後は学校教員向けの研修などを通じて教育現場を覗く。子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。 2019年4月よりフリーランスとしてクリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、保健所などでの現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動を行う。2022年7月より社会医療法人恵風会 高岡病院で児童精神科医として勤務。

昔から物を分解するのが大好きだった兄

昔から物を分解するのが大好きだった兄
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重度の自閉スペクトラム症と知的障害のある7歳上の兄は、私と一緒に住んでいたころから、目の前にあるものを手にとって匂いや感触や構造を確かめるという特性がありました。そういった行動を経て、自分の中で好みのものを選別しています。

「カセットレコーダー」や「ビデオテープ」は特にお気に入りで、見つけた瞬間にねらいを定めて、周りの目をぬすんで分解したりいたずらしてしまいます。
こっそりカセットレコーダーやビデオテープを分解する兄と困るきょうだい
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カセットレコーダーは小さなネジを取り外し、綺麗に分解して中のカセットテープを取り出して遊びます。

ビデオテープも分解して中の部品を取り出そうとします。しかし、難しいようで途中で中の部品が割れてしまったりしてあきらめることがほとんどでした。ビデオテープのツメ(折るとテープが上書きできなく箇所)を折ったり、シールをはがすなどしてその場に放置。

それを見た姉と私が兄に怒るのがお決まりのパターンでした。
細かい部品も器用に取り出す兄
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当時は何度注意しても改善しませんでした。姉や私がお気に入りの音楽を集めてカセットテープに入れても、気がつけば兄が使えなくしてしまうことが多かったので困っていました。

ですが、30年経った現在は「あのときの経験は、現在の兄の生活にいい影響があったのかも知れない」と感じます。

障害の重さに関係なく、得意分野が仕事につながることも

得意分野を生かして仕事をする現在の兄
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現在の兄の仕事は、給湯器の解体仕分け業務です。
解体とひとことで言っても、作業はかなり細かいようで、何人かでチームを組み、一人ひとりの担当業務をしっかり分けているようです。

兄の仕事(給湯器の解体)について、姉と話をしたことがあります。姉は、施設の方から「作業をする人たちの中で、一番障害が重いのに、一番綺麗に解体している」と聞いていたようでした。もしかすると家族の手前、施設の方は大げさに言ってくださった部分もあるのかもしれませんが、生まれたときから一緒に生活していた兄の行動を思い返してみると、手先を動かすことが得意な方だった気がします。
姉と二人で「昔から分解は得意だったもんね」と妙に納得しました。

また、施設の兄のケース担当の方からは仕事に取り組む兄の様子について「率先して仕事に取り組んでいるので助かっています」「ニコニコ楽しそうに取り組んでいます」「この前作業着から普段着に着替えるときに、ポケットに部品をこっそり入れて施設に持ち帰っていたこともありました」と、話してくれました。

私は真面目に仕事をがんばる兄のことを誇らしく、また時折見せる子どものときのような無邪気さを微笑ましく感じました。

障害のある方が社会の一部となって働いている。私も負けていられない!

兄の通っている共同作業所ではほかにも、「クリーニング、農作業、資源リサイクル、林業の下請け」などの地域に密着したさまざまな仕事があります。

私は学生のころから、兄がお世話になっている作業所の雰囲気を知っています。

学生のころ、施設を通る際に、クリーニング後のシーツやタオルを支援員さんの見守りのもと笑顔でたたむ利用者の姿をよく見かけていました。私は当時は子どもの目線で「みんな笑顔で楽しそうだなぁ」と思っていたのですが、現在、私が子育てする立場なので、違う視点を持つようになりました。作業所での仕事や関わってくださる周囲の方に対して目を向けられるようになったため、「本人の特性」や「利用者自身のやる気」「達成感」を大事にして、作業所は利用者に仕事を分けているのだろうなと思いました。

作業所とのパイプとなってくださっている障害者支援施設の兄のケース担当の方からも、実際に「利用者に寄り添う」心がまえを感じました。

兄が楽しく仕事をできていること、障害のある方が社会の一部となって働いていることを直接知ることができました。

私も社会の一部となって企業に雇用されたり、子育てをしています。日々めまぐるしく過ぎていく中で、モチベーションがあがらないときもあります。兄の様子を知ることで、「兄に負けないように私も頑張ろう!」と元気をもらえたような気がします。

執筆/スガカズ
(監修:三木先生より)
お兄さんの興味や特性と仕事内容がマッチしているとのこと、素敵ですね。また、そういった業務を通じてお兄さんがやりがいや役割を感じられているとしたら、これもまた社会で暮らすためにはとても大事なことを実現できていると思います。
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