公立小中学校の「特別支援学級」、保護者が知っておきたい学級編制の仕組みや課題点とは?【教育行政の専門家にきく】

ライター:専門家インタビュー
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公立小中学校の学級編制は、「国の定める標準 ≧ 都道府県の定める基準 ≧ 市区町村による実際の編制」、という三重構造で成り立っています。これに対して、特別支援学級の編制(同学年を問わない複式編制)には幾つかの解決すべき課題が考えられます。
このコラムでは、そんな「特別支援学級」の学級編制において保護者が知っておきたいことを教育行政を専門とする渡部昭男先生に分かりやすく教えていただきます。(取材/LITALICO発達ナビ編集部)

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監修: 渡部昭男
大阪成蹊大学特別招聘教授
神戸大学大学院人間発達環境学研究科名誉客員教授
鳥取大学名誉教授
「この子らを世の光に」「人格発達の権利の徹底的保障」「ひとと生まれて人間となる」などの糸賀一雄(1914-68)の思想と実践を、教育行政学・特別ニーズ教育・発達保障論の立場から21世紀の日本、さらには世界に広く発信している。

Q:「特別支援学級」の学級編制について保護者が知っておくべきことはありますか?

A:法制度上、該当する障害区分に子どもが一人でもいればその種別の特別支援学級は開設することができます。
回答者・渡部昭男先生(大阪成蹊大学特別招聘教授・神戸大学大学院人間発達環境学研究科名誉客員教授・鳥取大学名誉教授)
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三重構造で成り立つ学級編制

公立小中学校の学級編制は、「国の定める標準 ≧ 都道府県の定める基準 ≧ 市区町村による実際の編制」、という三重構造で成り立っています。なぜ、国の定めを「標準」と呼ぶかと言えば、都道府県にもっと少人数の「基準」を設ける余地を残し、さらに市区町村の独自努力で標準・基準よりも少人数の学級編制を促すためです。

したがって、公立小中学校の通常学級では、2022年度現在で小学校3年生までが「35人標準」、それ以上の学年が「40人標準」になっていますが、都道府県や市区町村では、その標準よりも少人数にしているところが少なくありません。

通常学級は同学年による単式編制が原則ですので、「35人標準」ですと、1人超過した36人の学年の場合に「18人」ずつの少人数学級が実現します。発達障害のある子どもを含めて、ゆとりをもって指導する上で、まず通常学級を少人数にすることが大切です。

特別支援学級の編制の課題点

これに対して、特別支援学級の編制(同学年を問わない複式編制)には幾つかの解決すべき課題が考えられます。例えば、特別支援学級には弱視、難聴、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、言語障害、自閉症・情緒障害の7種(自閉症タイプと情緒障害タイプを区分することが奨励されており、その意味では8種)が法律で認められています(『改訂新版 障がいのある子の就学・進学ガイドブック』pp.40-41の「図4 文部科学省による就学基準等」参照)。

しかし、自治体によっては開設する障害種を限定しているところもあります。その場合、障害児がその障害種に応じた学級で学ぶことが難しくなる場合もあります。該当する障害区分に子どもが1人でもいれば、市区町村はその種別の特別支援学級を開設するよう努めることが大切と言えるでしょう。

第二に、地域の教育委員会によっては特別支援学級の開設に「最低3人必要」などと設定していることもありますが、もちろん「標準法」には定めのないことです。

第三に、上記とも関わりますが、対象児数をある程度確保するために、エリア内の比較的大きな小中学校に限定して特別支援学級を開設し、小さな学校には開いていない自治体もあります。しかし、これまた、地域でともに学び育ち合うインクルーシブ教育を志向する特別支援教育の趣旨とはズレてしまうことだと考えます。

インクルーシブな教育の推進のために

障害のある子どもを通常学級入れた場合、教員を加配し、複数担任制にして欲しいという希望もあるでしょう。しかし、現状は基本的に通常学級は一人担任体制です。そこで、特別支援学級を設置し、特別支援学級の担任とともに「交流及び共同学習」と言う形で、可能な範囲において通常学級で授業を受けるという形態(結果として教員が複数存在することになる方式)を工夫している自治体もあります(『改訂新版 障がいのある子の就学・進学ガイドブック』p.165-166の「みんなの学校」参照)。

特別支援学級を含めた開設学級の総数に応じて、担任や養護教諭・管理職等の教諭が配置されます。教諭等の給与は、国と都道府県が全額負担しますので、市区町村の持ち出し分はありません。自治体によってはそうして学級数を増やして先生の数を一人でも多く確保し、インクルーシブな教育を推進しているのですね。

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