癇癪(かんしゃく)を起こす原因は?ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)など発達障害がある場合の対応は?薬を飲ませる?みんなの癇癪の疑問【小児科医回答】
ライター:発達障害のキホン
癇癪(かんしゃく)とは、大声で泣き叫ぶ、壁や床に頭を打ちつけるなど、興奮を伴う混乱状態を指します。赤ちゃんのころから幼児期、児童期にも見られ、人によっては思春期や大人になっても続くこともあります。
発達ナビのQ&Aコーナーでも質問数が多い「癇癪(かんしゃく)」。発達障害との関係や、対応方法、服薬すべきかなど、多く寄せられている悩みを中心に紹介します。小児科医の藤井明子先生からのアドバイスもぜひ参考にしてみてください。
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
どうして癇癪(かんしゃく)を起こすの?癇癪にまつわるギモン
子育てしていく中のお悩みとして多い「癇癪(かんしゃく)」。大声で泣き叫んだり、壁や床に頭を打ちつけるなど、激しい癇癪への対応に周りの保護者の方もヘトヘトになってしまうという声も多くあります。発達ナビQ&Aコーナーでも、これまで癇癪に関する質問の投稿が1,000件以上寄せられています。
発達障害との関係や、家での対応策、服薬するボーダーラインまで、みなさんの疑問とは。
発達障害との関係や、家での対応策、服薬するボーダーラインまで、みなさんの疑問とは。
子どもの発達に悩む保護者が抱える「癇癪(かんしゃく)」についてのギモン
「子どもはどうして癇癪を起こすの?」
「優しく声をかけてもダメ、怒ってもダメでノイローゼになりそうです。子どもの癇癪はどう対応したらいいのでしょうか」
「2歳3ヶ月の癇癪が激しく、切り替えが極端に苦手、落ち着きのないなどの特性もあり、発達障害があるのでは?と感じています」
「癇癪がひどく、小児科医で薬を処方されましたが、飲み始めてから子どもの元気がないような気がしていてこのまま飲ませ続けてよいのか心配です」
このコラムでは、癇癪のなぜ?から、癇癪への対応、服薬についてなど、体験談や、専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。
「優しく声をかけてもダメ、怒ってもダメでノイローゼになりそうです。子どもの癇癪はどう対応したらいいのでしょうか」
「2歳3ヶ月の癇癪が激しく、切り替えが極端に苦手、落ち着きのないなどの特性もあり、発達障害があるのでは?と感じています」
「癇癪がひどく、小児科医で薬を処方されましたが、飲み始めてから子どもの元気がないような気がしていてこのまま飲ませ続けてよいのか心配です」
このコラムでは、癇癪のなぜ?から、癇癪への対応、服薬についてなど、体験談や、専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。
【解説】癇癪(かんしゃく)とは?子どもが癇癪を起こす原因
癇癪(かんしゃく)とは具体的にどのような状態のことをいい、原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
◆癇癪(かんしゃく)とは
癇癪(かんしゃく)とは興奮を伴う混乱状態を指します。個人差はありますが、大声で泣き叫ぶ、壁や床に頭を打ちつける、物を投げるなどの激しい行動が見られることが多くあります。赤ちゃんのころから幼児期、児童期にも見られ、人によっては思春期や大人になっても続くこともあります。気持ちのコントロールがうまくできないときに起こりやすく、コミュニケーションの手段として習慣化することもあります。
◆癇癪(かんしゃく)の原因
赤ちゃんの癇癪は、空腹や眠気、痛み、おむつが濡れたなど生理的に不快な刺激によって引き起こされることが多いです。幼少期以降になると発達段階やその場の状況によって原因は異なるものの、癇癪が起きているときには、「何か不都合を取り除こうとしている」そして「困っているというサインを発している」と考えられます。
発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられた、具体的な悩みと解答について紹介します。
◆癇癪(かんしゃく)とは
癇癪(かんしゃく)とは興奮を伴う混乱状態を指します。個人差はありますが、大声で泣き叫ぶ、壁や床に頭を打ちつける、物を投げるなどの激しい行動が見られることが多くあります。赤ちゃんのころから幼児期、児童期にも見られ、人によっては思春期や大人になっても続くこともあります。気持ちのコントロールがうまくできないときに起こりやすく、コミュニケーションの手段として習慣化することもあります。
◆癇癪(かんしゃく)の原因
赤ちゃんの癇癪は、空腹や眠気、痛み、おむつが濡れたなど生理的に不快な刺激によって引き起こされることが多いです。幼少期以降になると発達段階やその場の状況によって原因は異なるものの、癇癪が起きているときには、「何か不都合を取り除こうとしている」そして「困っているというサインを発している」と考えられます。
発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられた、具体的な悩みと解答について紹介します。
【Q&A】Q. 子どもの癇癪(かんしゃく)の対応の仕方を教えてください
年少の娘は自閉症です。
上手くいかない事があれば、すぐ大声をだしたりグズグズします。
原因不明の癇癪や、人形の靴が履かせれないなどなど…ささいな事でキーキー、グズグズ叫んで怒ります。
(中略)
私も主人もノイローゼになりそうです。
助けてください。
こちらの質問には以下のような回答が寄せられました。
A. 保育園や療育先で相談してもわからないのは辛いですね…
わかりやすい癇癪は、例えば自分の要求が通らない時がありますが、他にも大人には理解に苦しむ癇癪が多々ありますよね。
まだ生まれて3年です。
上手く表現出来ないのです。
親としても3年。成長と共に少しずつ理解出来るようになりますよ。
例えば息子ですが、保育園時代の昼寝が地獄だったと小学生になってから教えてくれました。
A. 癇癪は言葉で対応しようとしても、興奮していたり、怒っていたりしている場合がほとんどであり、気が立ってる時に働きかけても悪い方向に物事がすすんでいきます。
癇癪を起こしてるときは、ものを側におかない、ものをこわしたり投げさせないよう気をつける、頭を叩いたり、ぶつけたりしないように気をつける、などし、興奮がなるべく短い時間に済むようにすることが大事です。癇癪している場合は、さらっとかわす。
わたしは、スルー、やり過ごす、これでのりきりました。
怒っても、もっとひどくなるだけです。こえかけは火に油になることも多いです。
癇癪の対応に関するギモンと体験談をもとにした回答をご紹介いたしました。
聞いてみたい質問があればぜひQ&Aコーナーに投稿してみてください!
聞いてみたい質問があればぜひQ&Aコーナーに投稿してみてください!
癇癪(かんしゃく)と発達障害の関連とは。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などがある子どもの癇癪の特徴は? 激しい癇癪に服薬は必要?
癇癪にまつわるギモンとして発達障害との関連や薬の服用について気になっている方も多いと思います。
発達ナビのQ&Aコーナーにも以下のような投稿が寄せられています。
発達ナビのQ&Aコーナーにも以下のような投稿が寄せられています。
【Q&A】Q. 癇癪(かんしゃく)がひどいのは発達障害があるから?
子どもについて初めて投稿します
切り替えが極端に苦手、落ち着きのなさ、人を叩く引っ張る噛む等々、上の子よりも激しいことが多々…。
特に切り替えの苦手さで言うと、床に寝そべって泣き喚くことは日常茶飯事、何かで釣るのも普段はしないウチですが仮にしたとしても無意味、他の提案も聞いてすらもらえず、機嫌を損ねて癇癪を起こしたら最後で、何をしても無駄です。私は落ち着くのをひたすら待ちます。
(中略)
診断してほしい!とかうちの子は発達障害!と言い切りたいわけではないのですが、もう少しこの子や周りが上手に楽しく過ごせる方法はないのかな…と日々考えています。
こちらの質問には以下のような回答が寄せられました。
A. 保育園児さんということで、年齢が分からないので何とも言えませんが、年長さんなら就学相談を含め早めに次の対応を考えられても良いのかな、と思います。
年中さんなら、年長に上がる前に、担任や主任の先生とゆっくり、家庭と園の現状について話し合われれ、次のステップにいくかどうか相談されても良いのではないでしょうか。
A. 親が大変かどうかで踏み込んで良いと考えています。
「仮に何もなくても、相談して情報が得られるなら」と自治体の保健センターに相談しました。主治医からまさに「親御さんにしか困り感がわからないタイプだね」と言われて支援が始まりました。3歳すぎでASDの診断がおりています。
初期の相談から2年経ち、息子も4歳過ぎましたが色々と形を変えた困りごとと向き合い続けているので当時の感覚は合ってたなという結論です。
比較的早い年齢での着手でしたが、それでも児童精神科の受診や検査、療育先の契約までにそれなりの待ち時間がかかりました。逆算すればやはり早いに越したことはありません。
【Q&A】Q. 暴言や暴力を伴う癇癪(かんしゃく)で薬を服用してみたけれど?
癇癪がひどくわずかな事にイラつき暴言を吐いたり壁を殴ったりします。ストラテラを服用し始めて約2ヶ月たつのですが すごく改善されていた癇癪がまた元通りになってしまいました。こんな事ってありますか?
こちらの質問には以下のような回答が寄せられました。
A. 我が家の主治医からは、薬を服用した際、そのような事例があると聞いていますよ。なお、これはストラテラに限らず、他薬でも似たような結果となる話は聞きます。その薬がどのような働きをするのかなど専門的見解から考えると、現状の癇癪がまた元通りになったというのは、特別おかしな状況ではありません。あくまでも基盤となる生活が毎日同じような繰り返しであっても、些細な気候の変化など様々な動きが生じます。そのなかで、さらに本人自身の体調の変化なども合わさりますと、薬の効果が感じないという事はよくある話でもあり、この場合においてはもう一度病院を受診されるなど、医師にご相談が無難ではと思われますよ。
【解説】癇癪(かんしゃく)と発達障害
癇癪を頻繁に起こすからといって発達障害があるというわけではありませんが、発達障害のある子どもに見られることが多い傾向が癇癪を起こしやすくしている場合があります。
◆癇癪の原因となり得る発達障害のある子どもに見られる傾向
・感覚の問題とこだわりの強さ
・自分の意思や気持ちを他者に伝えるのが苦手
・他者と自分の意図をすり合わせるのが苦手
・気持ちのコントロールが難しい
これらの傾向が癇癪のきっかけになり得る場合があります。
◆癇癪の原因となり得る発達障害のある子どもに見られる傾向
・感覚の問題とこだわりの強さ
・自分の意思や気持ちを他者に伝えるのが苦手
・他者と自分の意図をすり合わせるのが苦手
・気持ちのコントロールが難しい
これらの傾向が癇癪のきっかけになり得る場合があります。
◆癇癪とASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもには、感覚過敏がある場合が多くあります。周りの子どもにとっては気にならない刺激であっても過敏に反応して癇癪を起こしてしまうことがあります。また、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どものこだわりや不安の強さによって、普段と違うことが起きたり、突然の予定変更に気持ちがついていかず、癇癪につながってしまうこともあります。
また、相手の気持ちや意図を理解するのが難しかったり、こだわりが強い、他人のペースに合わせるのが苦手、ということもあります。
◆癇癪とADHD(注意欠如多動症)
ADHD(注意欠如・多動症)がある場合は、衝動性から「やりたい」という気持ちを抑えるのが難しいために、相手の気持ちが分かったとしても、その気持ちを譲ることができないことと、感情がすぐに表面化することで、爆発的に怒ってしまうことがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもには、感覚過敏がある場合が多くあります。周りの子どもにとっては気にならない刺激であっても過敏に反応して癇癪を起こしてしまうことがあります。また、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どものこだわりや不安の強さによって、普段と違うことが起きたり、突然の予定変更に気持ちがついていかず、癇癪につながってしまうこともあります。
また、相手の気持ちや意図を理解するのが難しかったり、こだわりが強い、他人のペースに合わせるのが苦手、ということもあります。
◆癇癪とADHD(注意欠如多動症)
ADHD(注意欠如・多動症)がある場合は、衝動性から「やりたい」という気持ちを抑えるのが難しいために、相手の気持ちが分かったとしても、その気持ちを譲ることができないことと、感情がすぐに表面化することで、爆発的に怒ってしまうことがあります。
【小児科医に聞く】発達障害がある子どもの癇癪(かんしゃく)の対応のコツ、服薬のギモン
ここまで発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられたギモンを中心にご紹介しました。次に、小児科医の藤井明子先生に発達障害がある子どもへの対応のコツ、服薬のギモンについてお答えいただきます。
Q. 発達障害のある子どもの癇癪(かんしゃく)にはどう対応したらよいでしょうか? 事前にできる対策はありますか?
A. 癇癪を起こす背景として、感覚の問題、こだわりの強さ、気持ちを伝える苦手さなどがあります。癇癪を起こした際に、なぜ癇癪を起こしているのか、お子さんの視線に立って少し考えてみましょう。物事が思い通りに進まなかった、暑かった、いつもと違った順序で嫌だった、など理由が思い当たるかもしれません。癇癪を起こしている最中には、まずはお子さんが落ち着く・クールダウンできるように見守り、少し落ち着いたら、「〇〇できなくて悲しかったね」「思い通りできなくて悔しかったね」と気持ちの言語化を代わりにして、声をかけてみましょう。つい、癇癪を抑えようとして、お子さんの言いなりになりそうになるかもしれませんが、まずはお子さんの言いたい気持ちを受け止めて、言語化してみましょう。
事前の対策は、これから起こりうる物事に対して、見通しを持った声かけをしておくと良いでしょう。「今日はいつもと違う道を通って帰るよ」「スーパーに行くけど、おやつは一個だけ買います」など、事前に見通しを立てておくと、気持ちのコントロールの手助けになることがあります。
事前の対策は、これから起こりうる物事に対して、見通しを持った声かけをしておくと良いでしょう。「今日はいつもと違う道を通って帰るよ」「スーパーに行くけど、おやつは一個だけ買います」など、事前に見通しを立てておくと、気持ちのコントロールの手助けになることがあります。
Q. 子どもが毎日ちょっとしたことで癇癪(かんしゃく)を起こし、親もヘトヘトです。どの程度から病院を受診してよいのでしょうか?
A. 親もヘトヘト、という時点で病院に受診することをおすすめします。特に、お子さんが小さい場合には、親御さんがヘトヘトでも目は離せません。親御さんの疲れがたまると、その皺寄せがお子さんへのイライラにつながってしまうことも多々あります。どうか、一人で悩まずに、医療機関、療育機関などに相談してください。病院に相談したから、すぐに薬の内服が始まるわけではありません。私の外来では、選択肢の一つとしてお薬の話をし、それ以外ご家庭でできる工夫などもお話ししています。また、すぐに癇癪が減るわけではないですが、第3者に相談して、一人でないのだと親御さんが思われるだけでも、少し気持ちに余裕が出てきて、お子さんの癇癪に対して、適切な対応を取れるようになってくる親御さんもいらっしゃいます。
Q. 癇癪(かんしゃく)がひどく、薬が処方されました。服用にあたって気をつけることはありますか?
A. 服用に際しては、メリット、デメリットについてバランスをみて、服用のメリットがあると判断される場合に処方されます。もし、副作用など疑問があれば、主治医の先生に相談することをおすすめします。小児科で処方する癇癪に対する内服薬は、眠気や怠さなどの副作用が少ない薬を選択することが多いです。副作用があったり、内服中に気になることがあった場合には、主治医の先生と相談のうえ、中止ないし、ほかの薬への変更など考えていきましょう。
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