発達障害中1息子、集団授業は苦手、個別指導は塾代が…タブレット学習を始めて分かった「勉強アプリ」のメリットデメリット

ライター:丸山さとこ
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息子のコウは中学1年生の今、学習塾に通っていません。まだ周囲も受験を意識する声は少ない中で「塾は早くても2年生の夏からかな?」と考えていましたが、コウのひとことがきっかけでタブレット用の勉強アプリを家庭学習に取り入れることになりました。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

塾はまだ早い?迷うわが家が始めたタブレット用の「勉強アプリ」

息子のコウは中学1年生の今、学習塾に通っていません。そんな状況のわが家でしたが、あるときコウが「資格を取りたい!」と言い出したことから、タブレット学習用の勉強アプリを取り入れることになりました。(夫婦で相談した後、塾について考える私。学校で配られたプリントを手に、資格を取りたいと言うコウのイラスト)
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塾の資料を取り寄せてはみたものの…

息子のコウは中学1年生の今、学習塾に通っていません。塾について家族で相談した結果、「大勢に向けた話を聞くのが難しい今の段階では、集団塾に通っても効果は薄いだろう」という結論になったためです。

とはいえ、『そう遠くないうちに家庭で学習を見るのは難しい年齢になっていくだろうな』という気がかりはあります。

それなら個別指導塾はどうかと思い資料を取り寄せたこともありましたが、料金表に並んだ金額を見た私と夫が「今から通ったら中3までに資金が尽きてしまうね…」と青ざめたため、塾の話は再び見送りになりました。

コウのひとことで状況一変!?タブレット学習が選択肢に!

そんな状況の中で「塾は早くても2年生の夏からかな?」と考えていた私でしたが、あるときコウが「資格を取りたい」と言い出したことから、タブレット学習用の勉強アプリを家庭学習に取り入れることになりました。

タブレット学習については、以前『もしコウが不登校を選んだら』と考えて調べたことがありました。そのため、現在の学年以外の単元も自由に選べるアプリがあることを知っていました。

コウが取りたがった資格のためには先取り学習が必要だったため、「前に話した勉強アプリやってみる?」と提案すると「やりたい!」と二つ返事のコウ。
「勉強アプリやりたい!楽しみだなー」とウキウキしている様子のコウに「じゃあ設定するね」と返事をする私。タブレットを操作しながら『ワーッと盛り上がってサーッと冷めそう』と思っている。
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ワーッと盛り上がってサーッと冷めそうな予感がしましたが、『少しでも家庭学習のきっかけになれば』と思い、初めての勉強アプリをスタートすることになりました。

タブレット学習用アプリを使ってみました

学習の様子を見ていると、何となく分かる傾向があるようで…?

そうして始まった勉強アプリでの自宅学習ですが、タブレットを使用した学習は思った以上にコウに合っていたようで、半年近くたった今でも(多少のムラはありつつ)続いています。

コウが勉強アプリを使っているときは大体私も同じ部屋にいます。家事や仕事をしながら見ていることが多いため画面そのものはほとんど見ていませんが、授業動画の内容や学習の進み具合は音声やコウの様子から何となく分かります。

そうして学習風景を見ているうちに、何となく『コウの好む学習スタイル』や『コウが苦手とする学習スタイル』が見えてきました。

「それ、何言ってるか聞こえてる?」動画視聴はいつも倍速!

その勉強アプリの基本的な流れは『動画視聴をしてから演習問題』となっています。コウはアプリを開くとまずは動画を見ていくことが多いのですが、1.25~1.5倍速で動画を再生していることがほとんどです。

元々早口気味でムダなく授業を展開していく講師が多い授業動画です。近くで聞いていると、耳から漏斗で情報を流し込まれているような気持ちになってきます。
早口で進んでいく授業動画を倍速視聴しているコウと、それをキッチンから見ながら『これでしっかり理解してるのかな…?』と不安になっている私。
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そんな学習風景を見ていると「本当に理解しているの?」と心配になりますが、コウは「ちゃんと分かってるから大丈夫だよ~」とニコニコしています。その後の演習問題の正答率を見ていくと、確かに彼の言う通り概ね理解しているようです。

そんな様子を見ていくうちに、私は『仮に1回で理解できないときがあったとしても、心地よい速さで繰り返し聞く方が彼にとっては楽なのだろうな』と思うようになりました。

タブレット学習アプリだから可能な「1問ずつ答え合わせ」

そうして動画視聴が終わったあとは演習問題が始まるのですが、画面上で選択肢を選ぶ形のため、紙に書くのが苦手なコウも次々と問題を解いていくことができます。

また1問ごとに正誤が分かるので、「これで合っていたのかな?」とモヤモヤすることなくスッキリした状態で次の問題に進めるのも快適なポイントのようです。
タブレット用の勉強アプリで問題を解きながら「あと2問だよー」と言うコウ。それを見て『答えを紙に書かなくていいし、1問ごとに正誤が分かるからスッキリして次に進みやすいんだろうな。』と推測する私。
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出題の際は1問ずつ画面に表示されるため「今どこ読んでたんだっけ?」となりにくいところも良いそうで、タブレットでのアプリを用いた学習はコウにとても合っているのだなと思いました。

勉強アプリは、親にとっても便利で快適でした!

私にとっても勉強アプリは救いの一手になりました。まず、答え合わせのチェックをしなくてよいところが助かります。

コウの答え合わせはアテにならないところがあるため、紙の問題集の場合はときどき親がチェックする必要があります。小学生の間は主に私が答え合わせをしていたため、問題を解くコウ本人だけでなく、親の私も負担を感じることがありました。

それを全てタブレットが行なってくれるのは非常にありがたく、心強いものです。回答が間違っていた問題は時間をおいてアプリ内で再度出題してくれるため、定期的な見直しを促さなくてもよくなりました。
タブレット学習用の勉強アプリを使っているコウを見ながら『アプリが答え合わせしてくれるから楽~!しかも早くて正確!』と感動している、答え合わせが苦手な私。
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また、授業動画はボンヤリと見るだけであれば受け身でも行なえるため、コウにあまり意欲がないときも取り組めるのがありがたいです。講師との相性はあると思いますが、幸い今のところコウはどの教科の授業も面白いと言っています。

私も同じ部屋でほかの作業をしながら授業動画を聞いているため、コウが学習しているところにしっかり付き合わなくても「コウの今の学習状況はこんな感じだな」と知っておけるのも良いところです。

勉強アプリを続けて約半年!今はこんな感じです

「良いことばかり」とはいかない?勉強アプリで困ったところ

そんな風に良いところがたくさんあった勉強アプリですが、良いことづくしではありません。勉強アプリを続けて約半年たった今、困っているところもいくつかあります。

まず、コウが紙での回答を面倒くさがるところは変わっていません。

勉強アプリに沿った内容の紙の問題集もありますが、コウはたまに使うこともある程度で積極的には使っていません。タブレット上の問題だけではアウトプットの機会が少なくなってしまいますが、気軽に解けるタブレットだからこそ続いているのだろうと考えると難しいところだなと感じます。

また、コウは「親が同じ部屋にいた方が集中しやすい」と言うのですが、そのためにコウのペースで私まで半強制的に授業を受けている状態になりがちなのがつらいときもあります。
倍速で授業動画を見ているコウの背後で、『「今日は少し疲れたな」って日でも倍速授業が容赦なく脳に流し込まれる…!』とダメージを受けている私。
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授業動画を聞くのは概ね楽しく、それ自体が苦痛なわけではありません。とはいえ、生徒の注意を惹きつけるための『聞かせる』話し方が延々と聞こえる状況には気力体力をジワジワと削られるのも確かです。

コウのやりたいことにはできるだけ協力したいと考えていますが、倍速動画の猛攻に地味に耐えていることもしばしばです(あまりに疲れているときは、コウにヘッドホンを使ってもらっています)。

それでも、総合的には恩恵の方が大きかったです!

このように「アプリを使えば、学習に関するお悩みは全て解決!」とはいかない現状ではありますが、コウが勉強アプリを使ってくれることは本当に助かっています。

もしコウに紙の問題集を使うよう強いたとすれば、早々に学習意欲を失ったであろうと想像できます。また、コウの場合は紙の上で問題を解く負担も『問題を簡単だと感じること』である程度は軽くなるので、その点でも先取り学習ができるアプリの効果を感じています。

多少音にストレスを感じようが、コウが少ない声かけでスムーズに学習を進めてくれることを考えれば、ストレスの総量は圧倒的に少なくなったと言えます!
「今週は勉強アプリあまり進んでないみたいだよ。どうする?」と私に聞かれているコウ。学習履歴をタブレットで確認しながら「確かに今週は
少なかったな…。再来週テストだし、今から少しやろうかなー。」と言いながらハッとしている。
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また、相性はあると思いますが、タブレット学習は「ゆっくりペースで学習を進めたい子ども」にも向いているだろうなと感じました。

授業動画は速度を落として再生することも可能ですし、一時停止や巻き戻しもできるため、自分の理解のスピードに合わせて授業を受けられます。
動画視聴と演習問題を繰り返すことで、分からないところを洗い出しやすいのも良い点だと思います。

「塾には通っているけれど授業内容を活かしきれていない」という場合も、タブレット学習にて予習復習を行なうことで、より集中して塾の授業を聞いたり質問したりできるかもしれません(実際にそれを目的として学習アプリとタブレットを提供している塾もあります)。
床で背中を丸めて体育座りをしながらタブレット学習をしているコウ。「長時間の体育座りは腰にくるよー」と椅子に座ることを促す私に、「充電あと15%だから~。30%になったらテーブルでやるね!」と返事をしている。
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私は「タブレットでの学習は塾と家庭学習の間のような雰囲気だな」と思っています。塾の授業のような緊張感がないので集中力に欠けてしまうところもあるかもしれませんが、リラックスして受けられることのメリットは大きいなと感じています。

ソファーや床で姿勢を崩しながら動画を見ているコウを見ると「中学生の学習風景…これでいいのか?」と思わなくもないですが、「学習を続けられることは大事だな」という気持ちでこれからも薄目で見守っていきたいです。

執筆/丸山さとこ
(監修:鈴木先生より)
タブレット学習には一長一短があります。IQで処理能力の低いお子さんは板書をノートに写すのに時間がかかるため、タブレットで写真を撮って必要なところだけを記入する方法をおすすめしています。アプリやタブレットによる学習は教室の音も気にせず他人に邪魔されることなく集中して学ぶことができます。授業後もほかの生徒からいじられることもなく、いじめられることもありません。タブレットは会話が苦手な自閉スペクトラム症のお子さんには良いツールかもしれませんが、コミュニケーションが乏しくなるため、複数の人との会話能力が伸びにくいという面もあります。最近ではさまざまなネットサービスも普及し、昔に比べて他者との対話機会が減ってきています。しかし、社会という集団の中で生きていくには、コミュニケーションが重視されることもまた事実です。単にタブレットだけに頼るのではなく、ときには学校や習い事の小集団に入れてコミュニケーションを増やすことも、社会で生きていくためには必要なのです。
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