教師の不適切な対応はなぜ起こったのか ―虐待事件から考えたこと

こうした教師からの不適切な対応は思い出すたび腹が立ちます。その一方で、なぜあの人たちが私を虐待するに至ったのか ―私のような扱いにくい子どもを前にしたときに加害に至ってしまうような加害者マインドに陥ったのかを考えてしまいます。

先日、保育園において保育士が園児に対して凄惨な虐待を行っていたというニュースが複数流れました。そのときにはやはり、自分の小学生時代のことを思い出しました。

私が小学生だった30年前当時、女性のフルタイムで働けるキャリアといえば看護師と小学校教師、保育士ぐらいしかなかったのではないかと思います。当時女性ながらキャリアを築きたいと考えている女性で、学業成績も優秀だった人は、職業に教師を選ぶことも多かったのかもしれません。

小学4年から6年のころの担任は、女性でした。ここで私が邪推するのは、彼女らがそのキャリアを歩む中で、男性優位の社会で能力を低く見積もられたり、ハラスメントを受けたり、悔しい思いを抱えていたのではないかということです。
※これは決して、女の敵は女だとか、女性は感情の制御において劣っているとか言う意図ではありません。必ず最後までよく読んでください。

社会の歪みは常により弱いほうに受け継がれます。不適切な対応をした担任は、まず彼女ら自身に社会の中で悔しい場面がたくさんあり、その傷が私のような扱いにくい子どもを前に反応したのではないか。ほかの児童のように従順に振る舞わない私に「バカにしている!」と腹が立ったのではないか―間違っているかもしれませんが、私はそう考えます。

今回の保育園での虐待事件でも同様の構造が見えるように思います。保育士の仕事は、子どもの命にもかかわるハードなものであるにもかかわらず低く見積もられがちです。その専門性の高さに対する給与の低さは常に指摘されていますし、1人の保育士に割り当てられる子どもの数があまりに多く、仕事が非常にきついことも、保育士たちを追い詰める大きな一因となったと報じられています。

男性教師による虐待もあるでしょうが、かつて、あるいは生活のほかの場面で被害者である人がより弱い相手に加害する構造はよくあるものだと思います。

彼らの加害は決して許すことができません。しかし私は、その加害の裏にある彼らの痛みや社会の歪みに目を向け、根治に向けて何かしらの動きをしていければなと願っています。

文/宇樹義子
(監修 鈴木先生より)

もともと神経発達症(発達障がい)のあるお子さんは「不思議ちゃん」と言われることも多く、いじめのターゲットにされやすい傾向があります。私立を含めどこの学校であってもいじめはあり、例外ではありません。それは社会に出てからも継続することがよくあります。

いじめる側は周りを見てやるので発覚することが少なく、いじめられる側は徐々にストレスが溜まっていきます。今日いじめていた子が明日はいじめられる子になることもしばしばあります。その逆も然り。いじめるグループに入ると周りが見えにくくなり、記憶に残っていないのです。一方、いじめられた側は一生記憶に残っています。

神経発達症のあるお子さんは、もともと友達が少なくて頼れる人がいないということもあり、そのことがいじめを助長する一因にもなっています。唯一頼れる人が担任でなければならないのですが、その担任に暴力を振るわれ、いじめられていては元も子もありません。社会全体で神経発達症の理解&支援が必要なのです。
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