自閉症娘に集団保育は難しい?入園先が決まらず追い詰められた母の出したSOS。娘と家族にとってのベストとは?

ライター:にれ
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自閉スペクトラム症と知的障害の診断がついている娘のまゆみは、この春から保育園の年中クラスへ入園することになりました。
元々の希望では幼稚園の2歳クラスから集団生活を始める予定でしたが、まゆみの障害の程度が分かってくるにつれて選択肢が少なくなり、当初の希望からは園も入園時期も変わることに。それでも、入園できるまでに成長してくれたまゆみを頼もしく思っています。
今回は、まゆみが集団生活へ入るまでの道のりをご紹介します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

2歳入園を目指してプレ幼稚園に通った日々

まゆみがまだ乳児だったころ、私は幼稚園の2歳クラスからまゆみを入園させるつもりでいました。
やがて自閉傾向があることが分かり、1歳後半から療育を始めていましたが、療育を受けながら園に通うお子さんの話をほかのお母さんから聞いていたため、「2歳クラスから入園」という希望はそのまま持ち続けていました。

いくつかの幼稚園のプレに顔を出し、最終的に近所のA園に入園させようと決めて毎週のプレに通いましたが、入園希望の子どもたちの中でまゆみだけが名前を呼ばれても返事ができず、先生の呼びかけにも応えられないことが続きました。
現在は自閉スペクトラム症と知的障害があることが分かった娘。プレ幼稚園に通っていたころ、名前を呼ばれても返事ができなかった。(イラスト、にれ)
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そんな姿に不安を抱きつつも、当時の私は発達障害とまゆみ自身の障害程度への理解が浅く、「療育にも通っているし、こうしていろいろな子どもたちがいる場所で刺激を受けていればいつかは周りに追いつくかもしれない」と考えていました。
A園への願書も提出し、まゆみが2歳11ヶ月になる4月から2歳クラスに通えるつもりでいたのです。

5ヶ月限定の保育園

実はまゆみは保育園の1歳クラスに通ったことがあります。
まゆみが2歳半のときに下の子が生まれ、産前産後の5ヶ月間(まゆみ2歳3ヶ月~2歳8ヶ月ころ)公立保育園のB園に通いました。

B園は自宅から車で片道25分かかるため少し遠かったのですが、年度途中の入所のためほかに空きがありませんでした。けれど、大きなお腹でまゆみの多動ぶりに対応することが難しくなって外遊びも十分させてあげられない状態だったので、思い切り遊ばせてもらえることがありがたかったです。

当時すでに療育に通っており、コミュニケーションに難があることは面接時からB園に伝えていました。先生方は「大丈夫ですよ~まだ1歳クラスですし、ほかのお子さんもまだ一人遊びの時期なので」と温かく迎え入れてくれましたが、実際の園生活はけっこう大変だったようです。

お迎えのとき、心配性の私が「お友達と仲良くできていますか?」と聞くと、先生方はいつも決まって「ほかのお子さんたちもまだ周りのお友達と仲良くできる段階ではないですよ。お母さん、大丈夫です」という返事でした。
実際、5ヶ月間の園生活の中でまゆみが問題を起こしたと聞くことはなく、意外なほど平穏に過ぎているように思えていましたが、最終日に先生が目に涙を浮かべてこんな報告をしてくれました。
現在では自閉スペクトラム症と知的障害があることが分かっている娘。1歳児のころ通っていた保育園の最終日に涙をうかべながらはじめておゆうぎ室に入れたことを報告してくれた保育園の先生の様子。(イラスト、にれ)
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聞けば、毎日毎日お遊戯室へ入るのを嫌がって逃走していたそうです。B園では先生の加配がない状態だったので、まゆみを追いかけるために1人割くことになって先生方は本当に大変だったことでしょう…。
しかも、やっと慣れて入室できるようになったのかというとそうではなく、クリスマスツリーを出したらまゆみも物珍しさにつられて入室できたというのが真相でした。

そんな手のかかるまゆみに園生活の経験をさせてもらえたありがたさと、5ヶ月間の先生方のご苦労に胸が詰まり、何度も何度も頭を下げてB園をあとにしました。

2歳クラスでの入園をあきらめて

B園を退園してから少しあと、A園への入園を控える2歳10ヶ月のまゆみに自閉スペクトラム症と知的障害の診断がついたとき、ようやく「この状態でA園に受け入れてもらえるのかな?」と焦り始めました。B園に通ったことで生活習慣にはある程度自信がついていましたが、コミュニケーション面ではまだまだ意思の疎通が難しく、入園できたとしても『みんなが先生とお遊戯をしている後ろで黙々と一人遊びをしているイメージ』しか湧かなかったのです。

診断後、すぐA園に相談に行きました。先生は「診断がついても、同じ教室にいてくれるんでしたら受け入れできますよ」と答えてくれましたが、多動気味のまゆみはその「同じ教室にいてくれるか」という点に不安がありました。
A園では加配の先生をつけることが難しいと聞いたため、安全確保の面から「来月からの入園は無理だ」と悟りました。

A園での2歳クラス入園をあきらめるか、プレ保育にもう一年通って年少からの入園を目指すかで悩んでいた折、A園からの連絡で「やっぱりまゆみは歓迎されていないのかも」と受け取れる出来事があり、夫婦で相談してA園への入園そのものをあきらめることにしました。
次ページ「単独通所の療育へ」

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