二度目、三度目と回数を重ねて…

それから3ヶ月ほど経ち、二度目のトライです。店主さんも覚えていてくれて、時間はまた平日の夕方に。

お店に入ると、記憶がよみがえったのかまゆみが泣き出してしまいました。
嫌な場所としてインプットされるといけないので、二度目はあまり頼りたくなかったスマホ動画に頼ることにしました。また私の膝に乗ってのカットで、動画のおかげで前回ほど暴れず、ときどきまゆみが店主さんをギロッとにらむ以外は和やかな雰囲気でカットできました。

さらに数ヶ月後、三度目のカットではぐずりながらも自分からカット用チェアに座ってくれて、親子ともども髪の毛にまみれる必要がなくなりました。感覚過敏のためかカット用ケープは着けられませんが、それでも動画を見ながら一人で座ってくれています。思い出したように立ち歩くことはあるものの、まゆみが座っている短い間に店主さんが素早い手さばきでいつものボブヘアに仕上げてくれました。

そうして回数を重ねるうち、まゆみも慣れてくれてヘアカットも平気でこなせるようになりました。
多動があるので長い時間は座っていられませんが、5歳になった今では袖つきのケープなら着られるようになり、新しくわが家で導入した幼児向けの知育パッド(使用は病院の待合か床屋さんなどここぞというときに限っています)をつつきながら髪の毛を切らせてくれます。
経験と工夫を重ね、自閉症娘一人で座ってヘアカットしてもらえるように
経験と工夫を重ね、自閉症娘一人で座ってヘアカットしてもらえるように
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正解がないヘアカット問題

わが家の場合、まゆみがある程度は順応してくれるタイプだったことと、近所に理解のある理髪店があったため初回のような荒療治でも結果的に上手くいきましたが、あとから思い返しても押さえつけての散髪はあまりおすすめできません。二回目にお店を見て泣いてしまったので、失敗といっていいかもしれません。

自宅で親がカットするケース、寝ている隙にカットするケースなど、お子さんの性格や特性によって合った方法はさまざまなので「こうしたらいい」というのは安易にいえませんが、「親子がなるべく楽なようにお店でヘアカットする」という目的でわが家の反省点を挙げるなら、以下の点です。

・できれば押さえつけずに済む方法をもっと模索すればよかった
・嫌な印象を持たせてしまうくらいなら、初回から動画頼りでもよかった
・動画頼りになるなら、幼児向け知育パッドの導入はもっと早くてもよかった
・ケープに慣れないなら、子ども用のレインコートを着せればよかった


また、美容室や理髪店の利用をお考えの方で、プライベートサロンが見つからない場合は、早めの夕食をとって少人数制のお店の最後の時間の予約を取ると親も子もかなり気楽にカットしてもらえるのでおすすめです。

きっと正解はないこのヘアカット問題、お子さんも保護者の方も、それぞれに負担のない道が見つかるといいなと思っています。

執筆/にれ
(監修:室伏先生)
ヘアカットの問題、同じように苦労されている読者の方もたくさんいらっしゃるかと思います。にれさん、まゆみちゃんの試行錯誤のプロセスを具体的に共有してくださり、ありがとうございました。自閉スペクトラム症のあるお子さんにとっては、感覚過敏、新しい場所・人への不安、新しい経験への抵抗感など、たくさんのハードルがありますよね。にれさんがまゆみちゃんの感じ方やお気持ちに寄り添い、理解されようとするご様子が伝わってきました。初回はにれさんもまゆみちゃんも大変だったことと思いますが、にれさんの工夫とまゆみちゃんの頑張りにより克服できたこと、素晴らしいですね!動画をみせることに罪悪感を抱いてしまうご家族の方もたくさんいらっしゃるかもしれませんが、場所や時間を決めて利用されると、育児の救世主になりますね。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。


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