わが子の障害、実母や義実家、ママ友にどう伝える?それぞれの反応と私の考え【専門家アドバイスも】

ライター:にれ
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子どもに自閉スペクトラム症があることを、人にどう伝えようか…?というのは一度は考えるところではないでしょうか。私は知的障害を伴う自閉スペクトラム症の長女についてありのままをオープンに伝えるようにしています。今回はその理由についてお話します。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「TOIRO」の制作スタッフ。

大切なわが子に障害がある可能性。祖父母や親族にはどう伝えよう…?

長女のまゆみに神経発達症(発達障害)の可能性があると気づいたのは1歳ごろ。定型発達なら9~10ヶ月ごろにできるようになるはずの指差しが一向に見られないことがきっかけでした。
まだ可能性の段階で祖父母世代(私から見た父母世代)の面々にこのことを伝えるべきか少し考えましたが、私はまゆみのありのままを伝えることにしました。

「まゆみ、指差しがまだ出ないから何か障害がある子かもしれない」

当時はどちらの親とも居住地が離れていたので、隠そうと思えばしばらくは隠せたと思います。そんな中で、たまに会いにくる孫についてそんな風に告げられて、どちらの祖父母もショックだったことでしょう。

けれど、これが一番まゆみのためになりそうな選択だと思いました。もし実際に障害があった場合でもあらかじめ伝えておくことで心構えができますし、障害がなかった場合でも「あのときは心配のあまり考えすぎていたね」で済むと考えたのです。

時間がかかっても、両祖父母ならまゆみのありのままを受け入れてくれるだろうという信頼もあり、祖父母世代には心配なことや1歳半健診で引っかかったことなどは全て共有しました。

実母の反応は…

祖父母世代の中で、孫娘に障害がある可能性について強い拒否感を示したのが私の母でした。
まゆみの発達の遅れを伝えたとき、私の母は涙を流していました。そして「でもまだ1歳だから、これから成長するから」と愛情はありながらも受け止め切れない様子の言動が多くありました。

しかし、まゆみと接していく中で、きっと納得する部分があったのだと思います。時間はかかりましたが、「この子は何か障害があるかもしれないけれど、大事な孫娘ということに変わりない」という考えに至ってくれたようです。親子の関係性にもよるので何でも話すのが万人にベストとは言えませんが、わが家の場合は確証のない段階から全て話してきて良かったと思っています。

2歳10ヶ月になり、まゆみに正式に自閉スペクトラム症と知的障害の診断がついたとき、母は「診断がついただけで、まゆみちゃんは昨日と何も変わらない可愛くて自由なまゆみちゃんよ」と言ってくれました。今ではまゆみの最大の理解者のひとりになっています。

昔からの友達、子どもを通じて知り合ったママ友、ご近所の人には何て言おう…?

祖父母への告知と同時に、日常的につき合いのある人にどう言おうかも悩んでいましたが、こちらも『ありのままの状態をオープンにする』ことにしました。

困りごとや心配を話すことで何か良い情報を教えてくれるかもしれませんし、何よりまゆみのコミュニケーション不全は誰が見ても明らかだったので、そのことについて何も触れない方が不自然で憶測を招くのではと思ったためです。

そんなわけで、私は診断がつく前から「この子ちょっとゆっくりなんだ」「何か障害がある子なのかも」と周囲に伝えていました。
気を遣わせてしまわないように、なるべく普通のトーンでサラッと言うと、周りも「そうなんだ、何か困っていたら話してね」とそのままを受け容れてくれたように思います。
診断がついた後も、昔からの友人たちとは定型発達のお子さんたちと一緒に遊ばせながらのつき合いがずっと続いています。
「まゆみはお話したり一緒に遊ぶのが苦手な子なんだ。もしかすると何か障害があるのかも…」と、長女に自閉スペクトラム症の診断がつく前から、ありのままの姿を友人たちには伝えている母。友人からは「何か困ったときは話してね」と声をかけてもらっている。
友人たちとは、変わらないつき合いが続いている
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また、日ごろから挨拶する間柄のご近所さんたちにも診断がついていることを話しています。可能な限り自助努力するというのは大前提ですが、「もしまゆみちゃんが1人で出歩いていたら保護して家族に知らせてあげないと」という空気が醸成されたことは心強いまゆみのセーフティネットになっています。

田舎住まいで町内のつながりが強いわが家ではこうした形になりましたが、この辺りは周囲との人間関係やお子さんの年齢・性格、お住まいの地域などによっても多少判断が変わってくるのかもしれません。

疎遠になってしまった人も

ただ、子どもを通じてできたつながりのママ友は一部の人を除いて疎遠になってしまいました。これは私に原因があります。
月齢の近い子どもばかりのママ友会では、「うちの子はこんなことができるようになった」という話がどうしてもメインになるので、最初のうちは「みんなすごいね、まゆみはゆっくりだからな~」と笑えていたのが、どんどん開いていく発達の差を目の当たりにして参加するのがつらくなってしまいました。仲の良かったママ友とは個人的に連絡を取り合っていますが、不参加を続けるうちにコロナ禍で集まり自体がなくなってしまい、今に至ります。

きっとその場へ行けば受け入れてくれた人たちだったと思いますが、当時の私は行けばつらくなると分かっている場所へ行くことがどうしてもできませんでした。
近い月齢の子どもをもつママ友の集まりでは、どんどん開いていく発達の差を目の当たりに。次第に参加するのがつらくなっている母。
どんどん開いていく発達の差。目の当たりにすることが次第につらくなり、ママ友とは疎遠に…。
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一期一会の人にも

公園で話しかけられた人や初めて会った人なども、友好的な素振りを感じた場合はそのままの状況を伝えています。
話をしていると数分と待たずまゆみが相手のことを無視するタイミングが来るので、それに合わせて「自閉スペクトラム症のある子でして、ご挨拶ができなくてすみません」と伝えると大抵の人は理解してくれます。

一番避けたいのは事実ではない憶測をされたり、まゆみのことを「変な子だな」という判断をされたままお別れになることなので、こちらから必要な情報のボールを投げた後は、どう受け取ってどう対応するかは相手側にゆだねています。
びっくりされる人もいますが、ほとんどの人はそのまま受け入れてくれたり、身近な神経発達症(発達障害)の子どものエピソードなどを教えてくれる人もいたりします。
一期一会の人にも長女に自閉スペクトラム症があることを伝える母。「うちも甥っ子が診断がついていて○○小学校の特別支援学級に通っている」と、身近な神経発達症(発達障害)の子どものエピソードを教えてもらっている。
身近な神経発達症(発達障害)の子どものエピソードなどを教えてくれる人に出会うことも。
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もしまゆみの特性のことを知って離れていく人がいたら、それはそれで仕方のないことだと思います。理解してくれたらもちろんうれしいのですが、受け取り方は自由ですし、障害の話題にトラウマのある人かもしれません。どちらにしてもご縁のない人だったのでしょう。

こちらに無関心な人にまでわざわざまゆみのことを宣伝しませんが、少しでも関わりを持とうとしてくれる人には「自閉スペクトラム症の子どもが地域にいる」「笑顔で、普通に暮らしている」と知ってもらうことが、こうした障害への理解を少しずつ広めることにつながっていくのではないかと思い、このようにしています。
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