通信制の大学「放送大学」ならではの支援とは?合理的配慮を受けたいときの相談の仕方、集中力が続かない・タスク管理が苦手・友達関係を広げたい場合はどうしたら?ーー障がいに関する学生支援相談室に聞く
ライター:発達ナビ編集部
通信制の大学に興味があるけれど、学び方のイメージが持ちにくい。合理的配慮はどのように受けられるのか気になる。今回は、そんな保護者の方や学生のみなさんに、放送大学の学びの特徴や障害学生支援について、インタビューと共にお届けします。
通信制の大学「放送大学」、学びの特徴や障害学生支援は?
発達障害があるお子さんの大学選びについて、
・通信制のほうがわが子に合うかもしれない
・通信制の場合、どのような合理的配慮や支援を受けられるの?
・通信制でも、スクーリングやサークル活動はあるの?
など、通信制の大学が気になっている保護者の方もいるのではないでしょうか。
放送大学は、8万人を超える学生が在籍する通信制の大学です。入学の機会は4月と10月の年2回、学力試験はなく書類による選考のみとなります。学生は主にBS放送やインターネットなどで学習を行いますが、全国に57ある最寄りの学習センターやサテライトスペースに所属し、職員に相談などをすることができます。
今回は、放送大学の学びの特徴と障害学生支援についてお聞きしました。
・通信制のほうがわが子に合うかもしれない
・通信制の場合、どのような合理的配慮や支援を受けられるの?
・通信制でも、スクーリングやサークル活動はあるの?
など、通信制の大学が気になっている保護者の方もいるのではないでしょうか。
放送大学は、8万人を超える学生が在籍する通信制の大学です。入学の機会は4月と10月の年2回、学力試験はなく書類による選考のみとなります。学生は主にBS放送やインターネットなどで学習を行いますが、全国に57ある最寄りの学習センターやサテライトスペースに所属し、職員に相談などをすることができます。
今回は、放送大学の学びの特徴と障害学生支援についてお聞きしました。
発達ナビ編集部(以下、――)放送大学では、どれくらいの障害学生が学んでいるのでしょうか。
障がいに関する学生支援相談室(以下、学生支援相談室):2023年1学期の学生の在籍数は85,057人(学部、大学院合計)で、そのうち合理的配慮(本学では特別措置と言っています。以下、特別措置)を申請している学生は862人います。
障害別の割合は、肢体不自由、精神障害、発達障害がそれぞれ22~23%、視覚障害17%、聴覚障害、病弱がそれぞれ6%程度となっています。発達障害の診断名として出ているものは、自閉スペクトラム症16%、注意欠如多動症4%、学習障害・書字障害0.7%程度となっています。
ただし、これはあくまで特別措置を申請した学生の数字です。ここ数年の傾向としては、精神障害、発達障害が増えており、5年で2倍、10年では約4倍にもなっています。
――特別措置を申請した学生が増えているということですが、どのように学生支援を行っているのでしょうか。
学生支援相談室:実際に支援を行うのは学習センター、サテライトスペースの職員ですが、少人数で通常の業務をこなしながらの対応なので課題は多く、本部の「障がい学生支援係」「障がい学生支援相談室」と連携して行っています。
障がいに関する学生支援相談室(以下、学生支援相談室):2023年1学期の学生の在籍数は85,057人(学部、大学院合計)で、そのうち合理的配慮(本学では特別措置と言っています。以下、特別措置)を申請している学生は862人います。
障害別の割合は、肢体不自由、精神障害、発達障害がそれぞれ22~23%、視覚障害17%、聴覚障害、病弱がそれぞれ6%程度となっています。発達障害の診断名として出ているものは、自閉スペクトラム症16%、注意欠如多動症4%、学習障害・書字障害0.7%程度となっています。
ただし、これはあくまで特別措置を申請した学生の数字です。ここ数年の傾向としては、精神障害、発達障害が増えており、5年で2倍、10年では約4倍にもなっています。
――特別措置を申請した学生が増えているということですが、どのように学生支援を行っているのでしょうか。
学生支援相談室:実際に支援を行うのは学習センター、サテライトスペースの職員ですが、少人数で通常の業務をこなしながらの対応なので課題は多く、本部の「障がい学生支援係」「障がい学生支援相談室」と連携して行っています。
学生課障がい学生支援係
係長と係員の2名で、実質的な障害学生支援、合理的配慮に関する実務を行っています。障害のある学生一人ひとりのニーズに基づいた支援が行えるよう、合理的配慮に関する情報を集約し、実際に支援を行う学習センター、サテライトスペースと連携しながら具体的な修学に関わる仕事をしています。
印刷教材のテキストデータやラジオ講義原稿の提供、字幕制作の関係部署との調整、支援機器の整備、試験や授業の際の学習センター、サテライトスペースや関係部署との調整、日常の支援の内容や方法に関する相談や情報提供などを行っています。
印刷教材のテキストデータやラジオ講義原稿の提供、字幕制作の関係部署との調整、支援機器の整備、試験や授業の際の学習センター、サテライトスペースや関係部署との調整、日常の支援の内容や方法に関する相談や情報提供などを行っています。
障がいに関する学生支援相談室
室長と専任教員1名、兼任教員3名で構成されています。主に専任教員が日常的に「障がい学生支援係」と連携しながら一緒に問題を考え、対処しているほか、教職員からの障害や修学に関する相談に対して、メールやZoom、対面での相談を行っています。特に必要がある場合は学生本人の相談を受けることもあります。また教職員への理解啓発を目的とした研修会の実施や研修動画配信、ガイドブックの作成などにも力を入れています。
なお、相談室教員には精神科の医師、臨床心理学や情報アクセシビリティの専門家、特別支援教育の経験者などがおり、必要に応じて適切な支援への助言を行っています。
なお、相談室教員には精神科の医師、臨床心理学や情報アクセシビリティの専門家、特別支援教育の経験者などがおり、必要に応じて適切な支援への助言を行っています。
――全国57ヶ所にいる職員のみなさんを本部からサポートされているのですね。具体的な支援内容について、入学前・入学後に分けて教えていただけますか。
学生支援相談室:入学を検討する方には、入学相談の機会を設けています。そのうえで合理的配慮を希望する場合は全員、学習センター、サテライトスペースの所長との面談(特別措置面談)を実施し、特別措置に関して相談を行っています。
入学後は、学習センター、サテライトスペースで学習相談を実施しており、履修の仕方や単位修得に関する相談に対応しています。障害特性などに関する専門的な相談は本部の専任教員が受けています。
事例を挙げると、発達障害の学生の書くことや文章構成に関すること、面接授業でのコミュニケーション、学習障害の学生へのICT活用など多岐にわたりますが、いずれも学習センター、サテライトスペースの職員を通じての学生への支援(助言)という形で行われます。試験については、試験時間の延長、(学習センター、サテライトスペースでの受験の場合は)別室での受験、文字や用紙の拡大など、障害の状態に応じてさまざまな配慮を行っています。
――就職支援もあるのでしょうか。
学生支援相談室:一般学生も同様ですが、特に行っていません。
――学習センター、サテライトスペースの所長と合理的配慮に関する面談をする前に、どのようなことを準備しておくとスムーズでしょうか。
学生支援相談室:あらかじめ自分にどのような特性があり、修学をするうえでどのような配慮が必要かを整理しておくことをおすすめします。特別措置を申請するには根拠資料が必要になるので、障害者手帳や診断書を始め、中学・高校時代に支援を受けていたことが分かる資料などを用意しておくことが必要です。
――入学直前に焦らなくて良いように、早めに準備しておきたいですね。
学生支援相談室:放送大学は放送授業やインターネットの利用を中心とした通信制の大学であり、他大学のような対面の支援は受けづらいことや、特別支援教育で受けたような個別の手厚い支援を受けられるわけではないことを十分理解していただくこと、そのうえで修学に当たって家族や周囲の人からどのような、どの程度の支援が受けられるかについても、あらかじめ検討しておくことが必要になると思います。
障害の有無にかかわらず、放送大学のような学習形態や試験のシステムなどが適している人もいれば適していない人もいると思われるので、自分の性格や障害特性と照らし合わせて考えたり、自分をよく知る人と相談してみたりしてはいかがでしょうか。
入学後は、学習センター、サテライトスペースで学習相談を実施しており、履修の仕方や単位修得に関する相談に対応しています。障害特性などに関する専門的な相談は本部の専任教員が受けています。
事例を挙げると、発達障害の学生の書くことや文章構成に関すること、面接授業でのコミュニケーション、学習障害の学生へのICT活用など多岐にわたりますが、いずれも学習センター、サテライトスペースの職員を通じての学生への支援(助言)という形で行われます。試験については、試験時間の延長、(学習センター、サテライトスペースでの受験の場合は)別室での受験、文字や用紙の拡大など、障害の状態に応じてさまざまな配慮を行っています。
――就職支援もあるのでしょうか。
学生支援相談室:一般学生も同様ですが、特に行っていません。
――学習センター、サテライトスペースの所長と合理的配慮に関する面談をする前に、どのようなことを準備しておくとスムーズでしょうか。
学生支援相談室:あらかじめ自分にどのような特性があり、修学をするうえでどのような配慮が必要かを整理しておくことをおすすめします。特別措置を申請するには根拠資料が必要になるので、障害者手帳や診断書を始め、中学・高校時代に支援を受けていたことが分かる資料などを用意しておくことが必要です。
――入学直前に焦らなくて良いように、早めに準備しておきたいですね。
学生支援相談室:放送大学は放送授業やインターネットの利用を中心とした通信制の大学であり、他大学のような対面の支援は受けづらいことや、特別支援教育で受けたような個別の手厚い支援を受けられるわけではないことを十分理解していただくこと、そのうえで修学に当たって家族や周囲の人からどのような、どの程度の支援が受けられるかについても、あらかじめ検討しておくことが必要になると思います。
障害の有無にかかわらず、放送大学のような学習形態や試験のシステムなどが適している人もいれば適していない人もいると思われるので、自分の性格や障害特性と照らし合わせて考えたり、自分をよく知る人と相談してみたりしてはいかがでしょうか。
こんなときは?集中力が続かない・タスク管理が苦手・友達関係を広げたい…
続いて、発達が気になる学生や、その保護者の方からよく聞かれるお悩みをもとに、ご質問してみました。
学生支援相談室:放送授業及びオンライン授業は学生専用サイトでインターネット配信されており、集中力が持続しにくい場合は数回に分けて視聴したり、繰り返して学習したりすることが可能です。
多くの授業に字幕が付与されており、また再生速度を調整することも可能ですから、発達の特性やご自身の学習のしやすさに応じて学習することが可能です。
多くの授業に字幕が付与されており、また再生速度を調整することも可能ですから、発達の特性やご自身の学習のしやすさに応じて学習することが可能です。
学生支援相談室:学習センター、サテライトスペースの限られた職員ではそうした個別の配慮は難しいですが、学習相談の中で、携帯のリマインド機能を使うことやカレンダーにチェックするなどの助言を行っています。
そのほか、大学本部の学生サポートセンターから入学当初の学生(入学1学期目と2学期目)を対象に、通信指導や単位認定試験のご案内の架電をしています。また、除籍にならないように3学期連続及び4学期連続科目未登録の学生には架電をしています。
そのほか、大学本部の学生サポートセンターから入学当初の学生(入学1学期目と2学期目)を対象に、通信指導や単位認定試験のご案内の架電をしています。また、除籍にならないように3学期連続及び4学期連続科目未登録の学生には架電をしています。
学生支援相談室:全国の学習センター、サテライトスペースでは年間3,000もの面接授業(スクーリング)が開講されており、学生の交流の場ともなっています。また、各学習センター、サテライトスペースではさまざまなサークルもあります。年齢層が10代から90代までと幅広いという特徴があります。
自分に合った学び方を選ぶために
一人ひとり、学びたいことや自分に合った学び方が異なります。「日本における生涯学習の拠点」として、多彩な授業スタイル・コース・プログラムを用意している放送大学。ホームページでは、「障がいのある方への修学支援」の詳細や、10代・20代の方に向けた特設ページが用意されいるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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