ことばが遅い?家庭でできる支援/年齢別発達の目安【言語聴覚士が回答】

ライター:発達障害のキホン
ことばが遅い?家庭でできる支援/年齢別発達の目安【言語聴覚士が回答】のタイトル画像

ことばがなかなか出ない、発音が気になる、滑舌が心配など、発達障害やグレーゾーンのお子さんの子育てでは「ことば」についてのお悩みがよく聞かれます。こちらでは発達障害と「ことば」の関わり、年齢別によく寄せられる相談、1歳半、2歳代、3歳代、5歳前後など年齢別のことばの発達の目安、また発達ナビのQ&Aコーナーや「みんなのアンケート」に寄せられているお悩みについて、言語聴覚士の日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長大岡 治恵先生にご回答いただきました。

監修者大岡治恵のアイコン
監修: 大岡治恵
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長
病院などで言語聴覚士として勤務ののち、言語聴覚士養成所にて言語聴覚士養成に携わる。現在は教員の傍ら、大学の付属クリニックで発達障害、構音障害、吃音などの臨床、および臨床研究を行っている。 オンデマンド講座『親子で楽しく遊びたい ~発達が気になる子どもと遊び~』を開講中。

わが子はことばが遅い? どこに相談すればいい? 発達障害と「ことば」の関わり

発達ナビのQ&Aコーナーには「ことば」に関わるお悩みが多く寄せられています。
Q.2歳2カ月の娘のことなんですが、言葉がまだあまり出ていません。
あお、パパ、パン、グーチョキパー、あと数字を何個か言えるぐらいです…
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/177998
Q.1歳8ヶ月で単語2.3語~言葉も遅く2歳8ヶ月から単語がたくさん出だしました。
2歳8ヶ月の時に2歳半検診に行き、「言葉が出てないは関係なく、集団生活が厳しいかも」と保健師さんに言われました。
~中略~
現在は2語文話しますが、一方的で会話はあまりできません。
(簡単な質問に単語で答えれるくらい)
まだエコラリアか無視が多く、あとは独り言が多いです。
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/177284
本記事では、ことばの支援の専門家、言語聴覚士(ST)の日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科学科長 大岡治恵先生に発達障害と「ことば」の関わり、また発達ナビのQ&Aコーナーや「みんなのアンケート」に寄せられているお悩みについてご回答いただきました。

まずは、発達障害と「ことば」の関わりについてのQ&Aをご紹介します。

Q ことばについて悩む親御さんから、どんな相談を受けることが多いですか? また、子どもの年代別の相談内容や、月齢・年齢によっての発達の目安なども教えてください。

「ことばが遅い」という場合、どうしても今何語話せるか、どのくらいの長さで話せるか、つまりしゃべっていることばが気になってしまいます。でも、ことばというのは遅れのないお子さんでも、まず理解できるようになって、それから少し後になって分かるようになった単語が話せるようになります。ですからことばが遅いかどうかの判断には、実は「どのくらい理解できているか」が重要になってきます。まずはことばの理解面の発達の目安をみていきましょう。

1歳半くらいまで

多くのお子さんが1歳のお誕生日を過ぎると、カタコトで「マンマ」「ワンワン」など意味のある単語が言えるようになります。実は話せるようになる少し前には、大人が話しかけた単語が理解できるようになっているのです。まずはパパやママが「ワンワン」といったらそちらを見るか、「ブーブー」といったら車を指さすかどうかを観察してみてください。1歳から1歳半くらいの間にいくつかの単語が理解できるようになるのが目安です。

2歳代

2歳前後には語彙がかなり増えてきます。具体的なものの名前だけでなく、動詞や「大きい」「小さい」などの概念を表す形容詞などが分かるかが目安です。
またこのころには2語文が分かるようになります。「手を洗うよ」「ゴミ、ポイしてね」などの2語文の指示が分かって行動できるかどうかを観察してみてください。

3歳代

3歳くらいになると色の名前やさまざまな形容詞、「動物」「食べ物」などのカテゴリーを表す語も分かるようになります。うまくお話できなくても、「黄色い帽子持ってきて」など3語文くらいの指示どおりに行動できるかどうか観察してみてください。

5歳前後

5、6歳くらいまでに、おおよその文法的な機能が発達してくると考えられています。長くつなげてお話しできるだけでなく、接続詞や助詞の使い間違いもなくなります。語彙的には、「左右」や「昨日、明日」など、時間や空間に関する概念、「約束」や「親切」などの抽象的な概念も理解できるようになります。

ことばについての困りごとの相談

1歳半健診後~2歳くらいまでにことばが全く出ていない、2、3歳になるのにカタコトの単語のみでつなげて長くお話できない、といったご相談が多くあります。そのほかには、ことばは出てきたけれど、出だしが詰まってスムーズにお話しできない、発音がはっきりしない、オウム返しになってしまって会話がかみ合わないなどのご相談も多くあります。出だしが詰まってスムーズにお話しできない、発音がはっきりしない、オウム返しになってしまうなどのご相談については、また別で詳しく回答させていただきます。

相談に行ったほうがよい目安ですが、乳幼児期の子どものことばの発達は個人差がとても大きく、周りに同年代のお子さんがいるかどうか、大人がどのくらい話しかけているかといった環境でも変わってきます。また引っ込み思案かどうかといったそのお子さんの性格も関わってくるため、上記の目安に当てはまらないからと言って、すぐ「ことばが遅れている」とは断言できません。
理解面が大きく遅れておらず、話しかけると身振りや指さしで答えようとする、指示に応じようとする様子が見られれば、様子を見ていてよいと思います。でも、理解面も実際の年齢より1年以上遅く感じられる、3歳近くなっても全くことばが話せない、などの場合は、早めに専門機関へ相談に行ったほうがよいかもしれません。
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長大岡 治恵先生
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長大岡 治恵先生
Upload By 発達障害のキホン

Q 「ことば」に困難さを抱えている子どもに対して、心がけたい接し方や声掛け、逆に保護者が避けたほうがよい行動や態度にはどのようなものがあるのでしょうか?

子どもが理解できる語彙や長さを意識して話しかける

まだ単語の理解ができていないようだったら、実物を見せてから行動しましょう。例えば園に行くときは通園の鞄や帽子を見せる、車に乗るときは車の鍵を見せてから行動するなどです。単語がいくつか分かるくらいの理解力でしたら、なるべく幼児語で話しかけましょう。「犬」よりも「ワンワン」、「洗う」よりも「ジャージャー」「ゴシゴシ」などです。幼児語は発音も簡単で、より具体的に様子を表すことばですので、ことばが芽生え始めのお子さんたちにとっては、理解しやすく、やさしいことばです。単語が分かるようになってきたお子さんには、身振りもつけながら具体的な単語で話しかけましょう。

子どもが身振りで表す、ことばの一部を発するなどしたら、正しいことばで返してあげましょう。

ことばが芽生え始めのお子さんは、犬を見て指さす、帽子を取ってほしくて頭に手をやるなど、身振りで表現しようとすることがあります。そんな時はお子さんの意図をくみ取って「ワンワンだね」「帽子?」などと正しいことばで返してあげましょう。
また、身振りではなく声を出すけれど、正しく言えず「りんご」のことを「・・ゴ」、「救急車」のことを「……シャ」などと、語の一部の音だけを発することもあります。そんなときも、「りんごだね」「あ、救急車来たね」などと正しいことばで表現してあげます。
この時、決して「りんごだよ、リンゴ、言ってごらん」などと復唱を強要しないでください。ことばは、真似て言わせたからと言って、たくさん話せるようになるわけではありません。子どもが「シャ!」と言った時は、「ママ、見て、救急車が通ったよ!」と、珍しいものを見てうれしい気持ちを共感してほしくて表現しています。その気持ちを大切に「ほんとだね! 救急車だ!」と共感してあげることで、コミュニケーションする喜びを感じることができ、「また表現しよう」「ことばで伝えよう」という原動力になるのです。

今話している長さより、一つ語を付け加えて話しかける

ある程度分かる単語の数が増えてきたら、今話しているより一つ語を付け加えて話しかけるようにしてみましょう。単語なら2語文、2語文なら3語文です。例えばお子さんが「ワンワン」と言ったら「大きいワンワンだね」「ワンワン行っちゃったね」、お子さんが「大きいワンワン」といったら「大きいワンワンかわいいね」といった具合です。なるべく今目の前で起きていること、子どもが興味を持ったことについて、意識してことばに出してみましょう。

ことばを引き出す工夫

ことばが遅いお子さんに対しては、どうしても「ちょうだい」と言えたらあげる、という対応をすれば、やがて出てくるようになるのではないかと思われがちです。でも、これで表現できるようになるのは、「ちょうだい」や、取ってほしいおもちゃやおやつの名前くらいです。
もちろん「ちょうだい」の身振りが少しできるようになったお子さんには、表現できるまで少し待ってあげて、表現できたら渡してあげる、という対応はとても良いと思います。でも、まだその段階でないお子さんにとってはストレスになってしまいます。コミュニケーションする喜び、「また表現しよう」「ことばで伝えよう」という原動力を育てることが大切です。
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長大岡 治恵先生
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長大岡 治恵先生
Upload By 発達障害のキホン
次ページ「Q 言語聴覚士(ST)へ相談したいときはどこに行けばいいのでしょうか? また相談に行く際、用意をしたほうがいいものはありますか? 」

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。