プレ教室では怒られてばかり、別の園では入園拒否?発達グレー息子の「得意」を伸ばせる幼稚園を探して

ライター:ネコ山
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わが家の5歳の息子はADHD+ASDの傾向があり、児童精神科医からはグレーゾーンと言われています。1歳半健診で「様子見」と言われていた息子ですが、発達検査を初めて受けたのは5歳になってからでした。今回は、そんな息子が2歳の頃の幼稚園選びでの出来事をお話しさせていただきます。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

発達支援教室に行けず……

現在5歳の息子は1歳半健診で発語が遅れていることや意思疎通ができにくいことを指摘され、保健師さんから自治体が運営する親子通園の発達支援教室を紹介されました。
しかし、そこはきょうだいの同伴が不可とのこと……。生後2ヶ月の娘は当時持病があり一時保育などの預け先がなく、また実家義実家などの親戚も遠方に住み、頼ることができません。結果、週1回の発達支援教室に行くことができませんでした。

どうにもならない状況なので、発達支援教室に行くことは諦めてそのまま様子を見ることになりました。しかし、家の中にいても出かけてもすぐに怒られるようなことをする息子。合わせて持病がある娘に手がかかり、息子に十分に手をかけられる状態ではありませんでした。
私自身もどうしたらいいのか分からない気持ちと、息子の発達に対する焦燥感で精神的に追い詰められていたのだと思います。いつの間にか私は息子に対してだけでなく、時にはまだ生後2ヶ月の娘にさえも、イライラと腹を立てることが多くなっていきました。
精神的に追い詰められ、子どもたちにイライラしてしまうことも。そして、自己嫌悪に……。
精神的に追い詰められ、子どもたちにイライラしてしまうことも。そして、自己嫌悪に……。
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しかし子どもに当たり散らしたところで何かが変わるわけではありません。それどころか、罪悪感が重くのしかかってくるのです。誰かに助けてほしい……そう思い産後サービスなどを利用したりもしましたが、週に数時間程度の利用では焼け石に水状態……。

そんな苦しい時期でしたが、さらに他の子の様子を聞きショックを受けました。
息子と同じ歳の親交のあった子が療育に通い始めたそうなのです。その子も息子と同じように1歳半健診で発達支援教室をすすめられ、教室に通ったところ、そこで療育をすすめられたとのこと。「うちも発達支援教室に通うことができていたら……」と、まるで私と息子だけが取り残されてるような気持ちになり途方に暮れました。

焦った私は、息子の発達を促すことができる場所を探すことにしました。そこで見つけたのが、2歳児対象の私立幼稚園のプレ教室です。

幼稚園のプレ教室を経験して見えたこと

幼稚園のプレ教室に参加して、さらに落ち込み……。
幼稚園のプレ教室に参加して、さらに落ち込み……。
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幼稚園のプレ教室は、年少や満3歳クラスに入園する前に通う週1回の親子通園教室で、療育や発達支援を目的としている会ではありません。しかし、抱っこ紐を利用すれば下のきょうだいが同伴しても良く、評判も良かったので「少しでも息子が伸びれば……」との思いで入会することにしました。

結果から言うと、息子には合わなかったかなと思います。大きな癇癪を起こすような事態には至りませんでしたが、最終的にはずっと先生に注意されている状態になってしまいました。息子の多動傾向が強く出ていたことが理由だとは思いますが、園のカラーと合わなかったのが一番の原因だと思います。

しかし、このプレ教室に参加して良かったことがたくさんあります。1つは息子の得意なことが分かったことです。教室では絵カードを使ったレッスンがよく行われていました。その時、息子は果物や動物の絵や国旗、漢字が書かれたカードに強い興味を持ったのです。特に息子は国旗のカードを気に入っていたので、自宅でも国旗カードを購入してみました。するとたちまち国旗を見ただけで国名を答えられるように!
プレ教室に通って、息子の得意なことを発見!
プレ教室に通って、息子の得意なことを発見!
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息子の意外な特技が発見できて私も驚きました。
また、息子の苦手なこともプレ教室を通して見えてきました。息子の苦手なことは場面の切り替えやルーティン化したものが崩れることです。そのこと自体にはプレ教室入園前から私は気付いていました。しかし、それらの苦手なことの根源が、その時やりたいことを止められることだと分かったのです。このことから「息子が年少から入園する幼稚園は、比較的自由な時間が多い園にしよう」と決めました。

入園説明会にて……

プレ教室を利用した幼稚園は教育的にとても魅力的な幼稚園と思いましたが息子には合わないと感じたので、改めて息子と相性が良さそうな幼稚園を探すことに。

まずは、知り合いのお子さんも通っている幼稚園の入園説明会に参加しました。この頃には既にインターネットで、「発達障害がある子が入園を断られたり、退園を言い渡されたりしたこともある」などの情報を聞きかじっていました。私は「もしかしたら息子もそんな事態に陥るのでは……」と、不安に思っていました。

そんな背景もあり、入園説明会で園内を案内していただいた後に「誰でも入園できますか? 入園面接などありますか」と幼稚園の先生に聞いてみると「職員が限られているので、自閉症(※自閉スペクトラム症)の子はご遠慮頂いています」とのこと……。
息子について、発達障害の傾向があるかなどの話をまだ園にしていない状態での発言だったので、息子の入園を断られたわけではありませんが、嫌な予感がしたので入園候補からは外しました。
息子が入園できる幼稚園はあるのかな……。
息子が入園できる幼稚園はあるのかな……。
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最後に入園説明会に参加したのが公立幼稚園です。
正直なところ親としては、下にきょうだいもいるので通園バスや給食がある幼稚園だと助かるのですが、私が住む地域の公立幼稚園にはそれがありません。入園候補としては優先順位が低かったのですが、実際に入園説明会に訪れてみて印象が変わりました。

園児数が少ないということもあるのでしょうが、園児ひとりあたりの職員数が多く、一人ひとりに目が届いているように見えました。そして、外遊びの時間が終わりなのに遊び続けている園児に対して、先生が丁寧に接していたことが印象的でした。また、園でのタイムスケジュールでは自由時間が多く、毎日好きな遊びや工作にそれぞれ自由に取り組んでいいとのことで、まさに息子にピッタリだと思いました。

念のため「誰でも入園できますか」と聞いたところ「誰でも入れます!」と即答があり、この幼稚園に息子をお願いしようと決めたのでした。
執筆/ネコ山

(監修:室伏先生より)
ネコ山さん、療育に通うことができなかった経緯、幼稚園選びの奮闘のご様子、その時のお気持ちなど共有くださり、ありがとうございます。
療育や保育園幼稚園を選ぶにあたっては、実際に親御さんが足を運んで探さなくてはならず、療育に関しては空きがなかったり、保育園幼稚園については職員さんの人数や体制などによって断られてしまったりすることも多く、不安感や孤立感、焦燥感などのお気持ちを吐露してくださる親御さんは少なくありません。
また、実際に通ってみると園のカラーや方針に合わなかったり、お子さんが馴染めなかったり、ということもあって、親御さんの苦労は絶えませんよね。
なかなか現状としては難しいのかもしれませんが、自治体と園が連携して、支援を必要とするお子さんと親御さんがスムーズに、安心して、園を選べるような社会になっていくことを願います。
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https://h-navi.jp/column/article/35029756
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。



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