履修登録で失敗!ASDの私、大学生になったとたんに引きこもり、暗転の4年間への後悔

ライター:宇樹義子
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=33000002221

ASD(自閉スペクトラム症)の私。大学に入ると、高校までと一転して自由なぶん、すべてのことを自分で考えて積極的に決めていかなければならず、とても戸惑いました。情報収集も、コミュニケーション障害や社交不安のあった私にはハードルの高いものでした。今回は、私が経験した、大学生活の自由さゆえの困難についてお話しします。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

大学入学で早速つまずいた「履修登録」

入学してすぐにバタバタと始まるのが履修登録。これが最初のつまずきでした。

まず、「自分の生活について自分で決める」ことに慣れていませんでした。高校までは、ルールでガチガチに縛られた生活は息苦しくはあったものの、慣れてしまえば受動的にルーティーンをこなせばいいだけなので、私のようなASDの私にとっては楽な面もあったのです。

百科事典並みに分厚いシラバスは、めくっても圧倒されるだけで、自分が何年次に何をどのぐらい履修したらいいものか、まったくイメージがわきませんでした。

今のようなSNSのなかった当時、やりくりのうまい学生ならだいたい何単位ぐらいとって卒業するのか、やる気のある学生ならどれぐらいか、という情報もありません。就職や資格取得のためにこれをとっておいたらいい、逆にこれはとるとコスパが悪い、みたいなことも分かりません。

いま思えば、周囲の学生は、早くも仲良くなったほかの学生や、先生や学生課の人たちとうまくコミュニケーションをとって情報収集をしていたようですが、ASD(自閉スペクトラム症)の自覚のなかった当時の私には見えていませんでした。

コミュニケーション障害や社交不安のあった私には、「人に聞く」がうまくできませんでした。そもそも、「分からないことは人に聞くものだ」という選択肢があまり頭にのぼりませんでした。それまで友人も頼れる大人もほとんどいなかったし、「すべてのことは自分で努力して解決しなければならない」と思い込んでいる部分がありました。

結局、分からないことは分からないまま、唸りながら長時間考え込んだり、疲れてやけになって半ばあてずっぽうに決めたりして、最初の履修登録は終わりました。

学年を重ねても毎度つまずいた

履修登録には、2年になっても、3年になっても慣れませんでした。

4月、一生懸命履修登録をし、そのまま新しい学年の授業が始まる環境変化で、緊張や疲れがたまってしまい、5月の大型連休が始まると糸が切れてしまったようになって、休み明けにはもううまく通学できない状態になっていました。

私は徐々に昼夜逆転を起こして引きこもりがちになり、ほとんど大学に行けなくなりました。

履修登録では頭が真っ白になりながら、なんとか時間割のパズルを埋める計算をしていたような気がしますが、この頃は心身ともにつらすぎて、記憶がおぼろげです。

親には役立つ単位や資格を取れと言われたが…

両親は私に、学生なのだからもっといろいろな勉強をしなさいと言い、教員、図書館司書、学芸員、速記などの資格取得を勧めました。

しかし、学校にほとんど行けないような調子では、プラスアルファの資格取得など無理でした。心身の調子が悪すぎて、毎日を過ごすだけで必死だったため、そんなモチベーションもわきませんでした。

結局私は、履修登録を象徴とする「自由な大学生活」に慣れることなく大学4年間を無為に過ごしてしまいました。
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今の時代は別の方法や選択肢がありそう

今の時代なら、別の方法や選択肢があったかもしれないと思います。

合理的配慮が義務化される中、学生課や就職課では、コミュニケーション障害や社交不安がある人でも相談しやすい配慮があるかもしれません。

履修登録時の情報収集にSNSの力を借りることもできるでしょうし、AIに計算を手助けしてもらったり、プランを提案してもらったりすることもできる可能性があります。

そもそも私のようなタイプには、自由度の高いマンモス大学ではなく、アットホームでこぢんまりした専門学校という手もあったのかも、とも思います。

今の大学生や、高等教育過程の学生には、私よりももう少し楽に学生生活を過ごしてほしいと願っています。

文/宇樹義子
(監修・鈴木先生より)
ASD(自閉スペクトラム症)の特性として「自由が苦手」があります。小学校の休み時間は自由で外で遊んでもいいし、教室で友人としゃべってもいいのです。しかし、ASD(自閉スペクトラム症)の子は「休み時間難民」と言われるように、何をしていいかが分からず、一人でできることをしていることが多いのです。読書、お絵かき、折り紙工作などです。でも、ASD(自閉スペクトラム症)の場合、授業中みんなと同じ教科書を開いていれば皆と同じように過ごせるから不安がないのです。まさに今回の「私」は高校までは受動的にルーティーンをこなしながら同化できていたのでむしろ楽だったのです。大学でも文系は履修登録で大変かもしれません。理系、特に医学部の場合、一般教養は選択しますがそれ以外は6年間びっしりと授業が決められています。理系はASD(自閉スペクトラム症)の人には過ごしやすいのかもしれません。文系でも理系でも自分に合わなかったらほかの大学または学部へ移ることも一つの方法です。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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