過去の私のように、今困っている人たちに「一人じゃないよ」と伝えたい

他害行為だけでなく、たーちゃんの困りごとが目立って、「発達障害かも?」と気になり出したあの頃。

「一年後、この子はどうなっているのだろう?」
「将来どうなるのだろう?」
「困りごとはずっとなくならないのかな?」
と、先が見えないことに不安を感じ、インターネットで検索ばかりしていました。そして、期待していたような記事は見つからず、希望を見出せないままどん底にいるような気持ちでした。

しかし、療育やさまざまなサポート、発達障害に理解のある方々と出会い、今では家族3人で毎日前向きに暮らしています。もちろん大変なことや心配事もありますが、それは「子育てをしていれば当たり前のことだ」と思えるようにまで私の心は回復しました。
息子を中心にして、笑ってる私と夫。息子の発達について悩むこともあったけど、今は前向きに暮らしています!
息子の発達について悩むこともあったけど、今では家族3人笑って暮らしてます!
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さらに、たーちゃんが幼稚園や療育で頑張っている間、精神的に余裕が出てきた私は、こんな記事があの頃あったら良かったのに、と思えるくらいになりました。

「大丈夫だよ、なんとかなっているよ」と、過去の私と同じように悩みを抱えている保護者の方の気持ちを少しでも楽にしたい。そう考え、「一人じゃないんだ」と思えるような、保護者の方に寄り添う記事を書きたいと思い立ちました。

今回で発達ナビでのコラムの掲載は最後になりますが、約一年半、楽しく書くことができたのは皆さんの暖かい応援のおかげです。書き残しておきたかったことや皆さんに伝えたかったことをたくさん記事にできて、うれしく思います。これからも私たちの生活は続きます。またどこかでお会いできれば幸いです!
執筆/みかみかん

(監修:森先生より)
みかみかんさん、他害行為への向き合い方と落ち着いてきた今までの道のりを教えてくださってありがとうございます。みかみかんさんが今回の体験談を教えてくださったことで、同じようなお悩みを抱えた方は希望を持てるのではないでしょうか。さて、発達の偏りがあるお子さんの場合、感情の読み取りや行動のコントロールに課題を抱えることがあります。叩く、蹴る、物を投げるなどの他害行為が見られることも少なくありません。これという原因が特定しにくいため、対応に悩まれる親御さんは多いのではないでしょうか。

他害行為は、以下のような要因が複雑にからみながら関与している可能性があります。

コミュニケーションの困難:言葉や非言語的な手段で自分の気持ちや欲求を伝えるのが難しい場合、他害行為が「表現手段」となることがあります。心理士さんが指摘したように「構ってほしい」「注目してほしい」という意図が背景にある可能性があります。

感情の理解や共感の難しさ:表情や口調から感情(怒り、痛み、悲しみなど)を読み取ることが難しい場合があります。「やめて」と言われても笑顔で繰り返す様子や、叱られている雰囲気を理解しにくい様子は、こうした特性によるものと考えられます。

感覚処理の問題:感覚過敏や感覚鈍麻が見られ、ストレスや不快感を身体的な行動で発散することがあります。他害行為が急に始まる場合、環境や感覚的な刺激がトリガーになっている可能性も考えられます。

衝動性の高さ:衝動を抑えるのが難しい場合があり、感情や欲求を即座に行動に移してしまうことがあります。

これらの要因が、その時その時で複雑に絡み合って他害行為となっている可能性があります。みかみかんさんが書いてくださったように、他害行為が落ち着く要因としては、以下のようなことが考えられます。

言語発達の進展:言葉の理解や表現力が高まることで、欲求や感情を他害以外の方法で伝えられるようになる。

社会的・情緒的成長:成長とともに他者の反応を理解したり、行動を調整する力が育つ。

環境調整や療育の効果:ご家庭や療育や幼稚園でのサポートによって、コミュニケーションや自己調整のスキルが育つ。

家族の関わり:「もっと構ってあげよう」と意識的に関わることで、安心感や信頼感が育ち、他害行動の必要性が減る。

いずれにしても、すぐに解決することはなかなか難しく、根気強く向き合っていく必要があります。対策としては次のようなものが考えられます。

伝え方を変えてみる:視覚情報に強いお子さんの場合、「やめて」「痛いよ」と言葉だけで伝えるよりも、絵カードやジェスチャーを組み合わせると理解しやすくなります。たとえば、「やめる」サインとして手を振る動作を教えるなど。

代替行動を教える:他害行為の代わりに、クッションを叩く、ボールを転がすなどの行動を具体的に教える。褒めて強化することで、徐々に代替行動が増えます。「構ってほしい」ために他害をしている場合、言葉やサインで「遊んで」と伝える方法を練習します。

感覚ニーズに応える:感覚過敏や感覚を求める行動が背景にある場合、感覚遊び(スライム、砂遊び、跳躍器具など)を取り入れる。感覚を満たすことで他害行動が減ることがあります。

環境を整える:感覚過敏がある場合、騒音や光を抑えた環境を整える。イヤーマフの使用、落ち着くスペースの設置など。

ポジティブな関わりを増やす:普段から遊びや会話を通じて子どもとの信頼関係を築く。安心感があると行動が落ち着くこともあります。

良い行動(叩かない、優しく触れるなど)を具体的に褒める:「叩かずに手をつないでくれてうれしいよ!」と伝えると、子どもは望ましい行動を繰り返しやすくなります。

トリガーの特定:他害行為が起きる状況(時間、場所、出来事)を記録して、どんな刺激や状況が引き起こしているかを特定します。例えば、ルーチンが崩されることや、騒音や疲れなどがトリガーになることがあります。

安全な環境づくり:物を投げる場合は柔らかい素材のおもちゃを提供する、危険な物を手の届かない場所にしまうなど、環境を整えることでケガやストレスを軽減できます。

保護者のメンタルヘルスケア:他害行為は保護者の心身に大きな負担をかけるため、保護者自身のメンタルヘルスケアも重要です。地域の保護者支援グループやカウンセリングを利用して、ストレスを溜め込まないようにしましょう。休息やリフレッシュの時間を意識的に確保することも大切です。地域の親の会やオンラインのコミュニティで悩みを共有すると、「一人じゃない」と感じられます。

他害行為は成長や適切なサポートで改善する可能性があります。医療機関や支援機関を頼りながら、保護者自身の心のケアも忘れないようにしてくださいね。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030564
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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