少しずつ変わっていった「その後」

妹が満3歳児クラスに入園したことが転機に
妹が満3歳児クラスに入園したことが転機に
Upload By 河野りぬ
転機になったのは、妹が満3歳児クラスに入園したことでした。それまで私が毎日付き添って登園していた息子でしたが、「妹がいるなら行ける」と思えたのか、妹の入園に合わせて少しずつ一人で登園できるように。

妹が園に通いはじめたことで、「自分がしっかりしなきゃ」という気持ちも芽生えてきたのかもしれません。息子にとって家族は「安心できる存在」。身近な誰かがそばにいるだけで、心のハードルが下がったように思います。

もちろん、その後も行きしぶりが完全になくなったわけではなく、今でも気分や体調によって波があります。特に小学校入学直後には大変だった行きしぶりの時期がありましたが、そのことについてはまた別の記事で書こうと思います。それでも、療育先や特別支援学級の先生方と関わる中で、「どうすれば自分のペースを取り戻せるか」を少しずつ掴みはじめているようです。今も、小さな集団の中で過ごす経験を積み重ねながら、できることを少しずつ増やしています。

今、あの頃を振り返って思うこと

できることを少しずつ増やしている息子を見守っています
できることを少しずつ増やしている息子を見守っています
Upload By 河野りぬ
年長の頃を振り返ると、「小学生になったらもっと大変なのに、年長でこんなにしんどくて大丈夫なの!?」という焦りでいっぱいでした。

でも今振り返ると、なにより息子自身が、環境の変化や周囲からの期待に大きな不安を抱えていたのだろうなと思います。怖いものに対して「怖くないよ」と言われるより、「怖いんだね」とそのまま受け止めてもらえること。不安に対して「考えすぎだよ」と片づけられるより、「じゃあ、どうしようか」と一緒に考えてもらえること。

進級を控えた年長という時期は、子どもと一緒に立ち止まり、ゆっくり考える時間なのかもしれません。

子どもからのサインを見逃さず、「ちゃんと受け取ってるよ」と伝えること。それには、親にも覚悟と体力が求められますが、これからもいろいろな人の協力を得ながら、抱えこまず支えていきたいと思います。
執筆/河野りぬ

(監修:室伏先生より)
お子さんの「行きしぶり」が始まった経緯、その時のお子さんのご様子とお母さまのお気持ち、そして少しずつ歩みを進めてきた日々について、丁寧に共有くださりありがとうございました。お子さんの行動や言葉の一つひとつに対して、お母さまが真剣に受け止められ、理解しようと努めてこられたことが、文章から深く伝わってきました。

年齢が上がるにつれて、集団での暗黙のルールを理解する、場の空気を読むなど、ASD(自閉スペクトラム症)の特性をお持ちのお子さんにとっては、不安要素となることが求められるようになってきます。特に、年長さんになると、園の先生方からの関わりも就学を見据えたものになってくるので、より求められるものが多くなってきます。そのため、それまで楽しく通園できていた場合でも、年長さんの時期には不安や緊張が高まりやすくなることは、決してめずらしくありません。また、社会的な状況や相手の意図を“行間から汲み取る”のが苦手であることが多く、「大人の都合」や「その場の雰囲気で変わる対応」はかえって不信感を招いてしまうこともあります。

お子さんの「行きしぶり」は、見方を変えれば、不安な状況をコントロールしようとする精一杯の自己防衛でもあります。大切なのは、「どうすればこの子が自分で安心できる方法をみつけていけるか」を、親や周囲が焦らずに見守っていくことだと思います。『怖いものに対して「怖くないよ」と言われるより、「怖いんだね」とそのまま受け止めてもらえること』、この言葉がとても印象的でした。そして実際に、それを実践されてきたお母さまの姿勢こそが、息子さんにとっての“安心の土台”になっているのではないでしょうか。その積み重ねが、将来本人が“自分の特性とうまく付き合いながら社会と関われる力”につながっていくと思います。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030507
登園拒否!3歳ASD息子、大規模保育園に転園で。理由は?どうなった?行き渋りから半年たった現在の様子のタイトル画像

登園拒否!3歳ASD息子、大規模保育園に転園で。理由は?どうなった?行き渋りから半年たった現在の様子

登園を嫌がって泣くのタイトル画像

嫌な理由を伝えられるようになろう!

約9割が行き渋り、不登校を経験!?発達ナビのアンケート結果や実体験コラム5選のタイトル画像

約9割が行き渋り、不登校を経験!?発達ナビのアンケート結果や実体験コラム5選

年長発達グレー息子、登園渋りの原因は「ゲーム」。毎朝トイレに立てこもり号泣、与えるのが早すぎた!?のタイトル画像

年長発達グレー息子、登園渋りの原因は「ゲーム」。毎朝トイレに立てこもり号泣、与えるのが早すぎた!?

頭痛、腹痛…登校渋りや突然のチックは娘からのSOSだった。小学2年生で発達検査を受けてのタイトル画像

頭痛、腹痛…登校渋りや突然のチックは娘からのSOSだった。小学2年生で発達検査を受けて

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
療育支援探しバナー

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。