「何かに取りつかれたよう」不登校中に現れた長男の異変。強迫性障害?児童精神科に相談すると

ライター:ねこじま いもみ
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わが家の長男は小学3年生の頃、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。長男は小学3年生の9月から不登校になったのですが、その時に起きた「過剰な物洗い」について書いていきます。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

物洗いのはじまり

元々学校を休みがちだった長男はいつもは1日休んだら次の日行くという流れでしたが、小学3年生の9月、まったく学校に行けなくなりました。体育のキックベースのルールが毎回変わりそれについていけなかったこと、そんな中でうまくできずにクラスメイトに怒られてしまったことが原因だとその時は話してくれましたが、元々学校が好きではなかった長男なのでそのことがきっかけでこれまで溜まっていたものが溢れてしまった様子でした。しばらく自宅で様子を見ていたのですが、日に日になんだか顔色が悪く、食欲もないので痩せていき、私は大変心配していました。

するとある日、やたらと手洗い場にいる長男を見かけるようになりました。長男は同じ直線を何度も行ったり来たりする常同行動を1日に何度もするのですが、その時にお気に入りのブロックを持っています。どうやらそのブロックを洗っているようでした。いつもはあまりしないその行動を私は少し気にしていました。しかし無理やりやめさせようとしてはいけないような気がして様子を見ていました。あまりにも何度も何度も洗うのでどうしたのかと尋ねると、「ぬるぬるしているのが気になる」と話してくれました。
手洗い場にいる長男を見かけるようになりました
手洗い場にいる長男を見かけるようになりました
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長男に何が起きているのだろう

やがて洗って拭いても全然ぬるぬるが取れないとブロックを投げ、怒っている様子をよく見るようになりました。私が代わりに洗ってみても何か違うと言い、私に洗ってもらうことも嫌がり、自分の手もちゃんと洗ってみたら?とやらせてみても、やっぱりブロックがぬるぬるすると言ってイライラ。ハンドソープをつけて洗っていたので「中性洗剤なら油っぽいの取れるかも」と話したのですが、余計ぬるぬるする気がして嫌だとハンドソープで一生懸命洗っていました。

そんなある日、長男の手がひどく荒れていることに気づきました。手首まで荒れており、手はカサカサで私はとてもびっくりしました。ハンドクリームを塗るように話しましたがそれだとぬるぬるするので寝る前に塗ることに。それでも手のひらにクリームがつくのを嫌がるので、長男が寝ている間にこっそりハンドクリームを塗っていました。これは強迫性障害なのだろうか。長男の心に何が起きているのだろうか。ひどく荒れた長男の手にハンドクリームを塗りながら、私は涙が止まりませんでした。
長男の様子を見守りながら心配になりました
長男の様子を見守りながら心配になりました
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長男の手はひどく荒れていました
長男の手はひどく荒れていました
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何かに取りつかれたように

長男は普段困り事があった時に児童精神科へ通っていたので今回も予約し、診察の日を待っていました。

その間に何かできることをと思い、比較的手に優しそうなハンドソープを買ってきたり、洗い終わったあとに手にハンドソープが残っていないか確認したりしていました。洗う頻度が高いためハンドソープのなくなるスピードはとても早かったです。

洗っても洗ってもぬるぬるが取れていない気がしてイライラしながら何度も何度もブロックを洗う様子は何かに取りつかれたようで、長男が長男じゃないように見えて、何もできない、どうしたらいいか分からない状況に私はとても苦しかったです。気づくとビタビタになっている手洗い場の床を見て涙が止まらず、私の心もかなり限界だと感じました。
どうしたらいいか分からない状況がつらかったです
どうしたらいいか分からない状況がつらかったです
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これはこだわりだった

ついに児童精神科の診察の日がやってきました。先生に「これは強迫性障害でしょうか?」と尋ねると、「これはこだわりだね。手触りが気になって仕方ないんだね」と話してくれました。たしかに長男はとてもこだわりが強い方でしたが、このような形のこだわりもあるのだと私はとてもびっくりしました。その行為自体を無理やりやめさせようとすることよりも、そこから出てくる問題点(今回なら手荒れ)をケアしてあげることが大切だとアドバイスをもらいました。

今回は長男の行動が過剰になってしまっていることもあったのですが、何よりも私が長男を見ていてとてもしんどい旨を伝えると先生はとても親身になってくださり、長男に少量の飲み薬を落ち着くまで処方するのはどうかと提案してくれました。今まで薬は貰ったことがなかったので少し悩みましたが、何度も何度も洗う長男の姿が本当につらかったので処方してもらうことにしました。
児童精神科で相談すると……
児童精神科で相談すると……
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現在の様子

薬を飲んでからしばらくして、気づいたら物洗いの行動が少し落ち着いてきたように感じました。精神科の先生とも相談して4ヶ月ほどで薬を飲むのをやめました。4年生の春から再登校し始めたのですが、学校に行き始めてからほとんど物洗いは見なくなりました。不登校と物洗いの関係性については分かりませんが、当時は本人なりにいろいろと葛藤していた時期だったのかもしれません。また、家にいる時間が長いので普段気にならないことが過剰に気になってしまったのかもしれません。

今はブロックを洗うという行為はほぼしなくなったのですが、手触りが気になるとタオルでよく拭いています。拭いたタオルをよくほったらかしにしているので洗濯かごへ入れるように毎日口うるさく言っています(笑)。よくよく考えると長男の行動には流行りのようなものもあり、一時期過剰であってもしばらくすると全くやらなくなったりすることがよくあります。食べ物にもあります。長い目で様子を見ながら今後も長男の気持ちを受け止めつつ、必要な時は医療機関を頼り、少しでも気持ちが楽になるようにサポートしていけたらと思います。
薬を飲み始めて物洗いの行動が落ち着いた息子
薬を飲み始めて物洗いの行動が落ち着いた息子
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執筆/ねこじま いもみ
(監修:鈴木先生より)
洗いすぎはASD(自閉スペクトラム症)のこだわりだったり、強迫性障害だったりがあります。強迫性の場合は確認行為が多いのでブロックだけではなくスイッチの消し忘れや鍵の閉め忘れなど何度も確認するなどほかの症状も見られることがあります。また、友人から怒られることが増えたことで不登校になるお子さんが多く、今回のようなキックベースのルール変更がきっかけになっている場合以外では運動が苦手なお子さんの運動会後が多くみられています。
こだわりに関しては、こだわり保存の法則があり、一つのこだわりが減るとほかのこだわりが出てくることがあります。また、自分と同じ色の服を着せるなど他人を巻き込む「巻き込みこだわり」というのもあります。
長い目で様子を見守ってあげることも必要ですね。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030606
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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