高校生活での新たな挑戦と課題

高校は私立の専門学科(家庭科系)に進学しました。やはり指示の理解ができなかったりして困ることも多いようです。

例えば、刺し子の宿題があった時、どの工程まで進めてくれば良いのか分からない、パソコンの表計算ソフトを使った情報処理授業でどう作業したら良いか理解できないなどです。
聴覚からの工程が多い一括指示は理解ができず、上手く質問もできずで困るようです。本人が行っている工夫は、宿題や健診のお知らせ等の指示が掲示されている場合は、学校から貸与されているタブレットで写真を撮影すること。それを見直して確認ができるようにしています。

入学式後に担任の先生に境界知能であること、言語面での苦手が目立つこと(理解も発語も)を伝え、教科担任にも情報共有を依頼しました。

しかし、境界知能への理解は低く、知的障害(知的発達症)があると思われてクラスメイトから意地悪されたりして苦労しているようです。例えば、ほかの子なら見逃すだろうミスを執拗に指摘したり、娘が困っているのに気づいても相手にするだけ無駄という感じで知らんぷりされるようで……。
「意地悪なことをしても分からない」「親や担任等に伝えることができない」と思われているのだと思います(娘は中身がピュアな分、私に教えてくれます)。
クラスメイトや先生から意地悪されたりして苦労しているようで……
クラスメイトや先生から意地悪されたりして苦労しているようで……
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これからの成長への願い

社会に出ると今以上に配慮が得られにくい場面もあるかもしれませんが、娘の持つ「おっとり・まったり」とした穏やかな性格と、これまで培ってきた自己肯定感は、きっと彼女の大きな財産になると信じています。

私がいつまでもそばで支えてあげられるわけではありませんが、娘のペースを理解し、温かく見守ってくれる人たちとの出会いがこれからもたくさんあることを祈っています。
境界知能という特性があっても、娘らしさを大切にしながら、自分なりの幸せを見つけて歩んでいってほしい。それが親としての一番の願いです。
イラスト/よしだ
エピソード参考/ヒヨコ

(監修:藤井先生より)
娘さんが置かれた状況を想像し、胸が痛みました。発達障害はなく境界知能のお子さんは、発達障害にも、知的障害(知的発達症)にも分類されないため、学校の支援が受けにくい状況にあります。しかし、実際には学習や対人関係、自己理解の面で多くの困難を抱えることがあります。必要に応じて、医療機関から学校宛に“支援を要する状態である”という医学的な意見書を提出することで、学校側に配慮の必要性を理解してもらいやすくなることもあります。境界域知能にある子どもだちにも、継続的な支援の手が伸べられる社会になることを願っています。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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