支援は自分から声をあげてこそ届く

これまで家族の理解や障害受容について触れてきましたが、子どもの年齢やご家庭の事情によっては、本人の受容や発達特性以外の要因が関わることもあり、その際には専門家の視点がますます重要になると思います。いずれにしても大切なのは、家族も本人も「外との繋がり」を持ち続けることだと思っています。

家族という狭い枠のなかで行き詰まったときこそ、第三者に助けを求め、力になってくれる人を増やしながら、
少しでも前向きな手がかりを探していくことが必要です。

ただし、そうした情報や支援は、自ら動かなければ得られません。特に困りごとが表面に出にくいグレーゾーンの子どもは、相談先によって「支援が必要」と言われることもあれば「気のせいでは」と受け流されることもあります。

それでも違和感を抱えたまま立ち止まるよりも、少しずつでも動き出すことで、子どもの可能性が広がっていくことがあります。だからこそ、子どもが小さいうちは日々の子育てで難しいこともあるかもしれませんが、「支援は待つものではなく、自ら求めていくもの」と意識することが大切だなと感じています。

その一歩が、子どもにとって未来を広げる大切なカードになり、描きたい未来へと繋がっていくと信じています。
執筆/河野りぬ

監修/初川先生
お子さんの特性や診断、支援をめぐって、夫さんや親族(祖父母)からの理解を得ることの難しさ、その難しさをどう捉えるか。そして、家族以外のママ友など少し距離のある方々へ理解をどう求めるかについての思いのシェアをありがとうございます。

お子さんに発達的な特性(ばらつき、得意不得意の差の大きさ等)や発達障害と思われる行動が見られる際に、家庭内でも家族がとても困り、悩んでいる場合もありますが、家庭内ではさほど困っていないけれど、集団場面や家庭外で困りごとを呈するタイプのお子さんはいます。お子さんのそうした特性が、環境によって様子が変わることがあるからです。個別で話をしたり何かをしたりする分には困らないけれど、集団の中で話を聞くのが難しい、落ち着いて活動ができない、そもそも集団の中だととても居心地が悪そうといった、環境によってお子さんの苦手な状況が引き出される場合がそれにあたります。河野さんのお子さんの場合にも、うまくいかない状況が幼稚園の中で出ていました。家庭の中は、本人にとって居心地がよかったり、刺激もそう多くはなかったりするので、そうした差がお子さんの行動の差に繋がっているのでしょう。そうした場合、園での様子をつぶさに見ているわけではないので、そもそも保護者が先生と共有しづらいこと、あるいは園の先生と直接やりとりしている保護者(母など)はピンと来ても、ときどきしか見聞きしない保護者や親族からすると、なかなか共有しづらい面はどうしても出てきます。

お子さんが医療受診し、その後の支援を考えるうえで、夫さんやご親族に説明されたとのこと。なかなか伝わらずご苦労されたかと思います(お疲れ様でした)。特に、祖父母など世代が違うと難しさが大きいかもしれませんね。ただ、思うところはあっても、お子さんの親である河野さん夫婦の意見を尊重してくださったのは何よりです。そして、こうしたことは一朝一夕には伝わらなかったり、共有できなかったりするのが自然なことなので(関わりの濃度や知識の差などにもよります)、すべての人に一律に理解してもらおうとしない決断をされたのもよかったです。

家族や親族の理解を得るにあたって、大事にされたことが「本人が困っているか」であったことがとても素晴らしいと感じます。登園渋りなど不適応を表していることから、環境調整やお子さん本人への支援が必要だということを中心に理解を得ていく。とても良かったと思います。本人の困りは場合によっては見えづらいですが、何か活動に参加できないことで、楽しくない思いをしていたり、先生方から怒られてしまったり、お子さんのうまくいっていないことを汲み取っていくこと、それを中心に据えることは大事なことです。また、お子さんに関わる大人(先生など)がどの程度支援が必要だと考えているかにも着目されたのもとても良かったと思います。似たようなつまずきを持つお子さんをこれまでも支援されてきたであろう方々が、河野さんのお子さんに支援をしたらどんなふうに成長していきそうか、あるいは、お子さんの困りが軽減しそうかというところの予測はなかなかに大事な指摘になるだろうと思います。

また、医療機関や療育機関から勧められる「あったら良い手立てや介入(療育など)」も基本的にはせっかくだから活用してみようと検討していただくとよいのではと思います。手立てや療育はすべてのお子さんに対して行われるものではなく、必要なお子さんや条件を満たしたお子さんに提供されるものです。そしてそれは、おおむね「利用したらきっと良い展開が待っているであろう」から提案されるものでもあります。一般的に、療育等は低年齢の方が利用しやすく、年齢が上がると支援機関が減ったり、混んでいたりもします。そのあたりも加味してご検討いただきたいところです。

さて、最後に河野さんが書かれていた「支援は自分から声を上げてこそ」に関してですが、外の人、特に園や学校の先生方や専門機関の方などと繋がっていくことの大切さは私も感じるところです。どうしても家族だけで考えていると煮詰まることもあり、さまざまな立場から見えることや専門家の助言などを受けながらやっていくことは大事です。子育てをしている中で、「あれ?」という違和感を持ったらまずその違和感を大事にしていただき、それを誰かに話すところから始めてほしいと感じます。担任の先生でも家族でも、話してみて、違和感を共有できる人を見つけてほしいと感じます。自分から相談を申し込んだり、受診できたりする人はぜひそうしてほしいと思います。そこにハードルを感じる方は、園や学校の先生からどこか紹介してもらったり、自治体の子育てひろばや電話相談など敷居の低そうなところで話してみたりするところからぜひと思います。保護者の方の違和感は、お子さんを細やかに見ているからこそ出てくるものです。その違和感を大切にして、そしてそれを分かってくれる人や機関と繋がれるときっと心強いだろうと感じます。
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https://h-navi.jp/column/article/35030681
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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