親子通所?分離型?引っ越し5回のわが家が見つけた「失敗しない」発達支援事業所探しのコツ

ライター:かほ
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こんにちは。軽度の知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)で、知的障害特別支援学級に通う10歳小学校4年生の一人息子おとの母、かほです。
私たち家族は転勤族で、息子が産まれてから現在まで計5回引っ越しをしており、そのたびに発達支援事業所を選び続けてきました。そこで今回はその時の経験から、事業所選びにおいて大切だと思うこと、また発達支援によって息子がどのように成長したかをご紹介できたらと思います。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

親子通所と親子分離型

発達支援事業所には大きく分けて「親子通所型」と「親子分離型」があります。

「親子通所型」…親子で一緒に通所する事業所
「親子分離型」…子どもを事業所に預け、保護者はその間自由に過ごす事業所

それぞれに通ってみて、メリット・デメリットを感じました。
親子で通う?預ける?発達支援事業所にもそれぞれ特徴が
親子で通う?預ける?発達支援事業所にもそれぞれ特徴が
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親子通所型事業所

子どもだけでなく保護者も成長できるという大きなメリットがあると思います。私も、衝動的な行動を起こす息子への先生の対応を間近で見て、家での育児に活かすことができました。
またほかのメリットとして、発達特性が絡んだ育児の悩みを先生やほかの保護者に気軽に相談できること、理解者に囲まれた集団活動は親子でリフレッシュできることなどが挙げられると思います。さらにほかのお子さんの様子を定期的に見ることで、さまざまな特性への理解も深まります。

一方、活動中は保護者が必ず付き添うため、家に帰ると息つく間もなく育児と家事が待っており、心身ともに疲れを感じることは、大きなデメリットだと感じました。特に仕事がある、きょうだいを育てているなどの状況だと、そもそも親子通所する時間の確保が難しく、やむなく通所を諦めたという方も身近にいました。また頭ではあまりよくないことだと分かっていても、ほかのお子さんとわが子を比べてしまい、帰宅して一人で落ち込んでしまうことや、ほかのお子さんの保護者との関係に悩んだこともありました。


親子分離型事業所

親子分離型事業所は、子どもが保護者と分離することで自立や社会性を学びやすいことが大きなメリットだと思います。例外はありますが、園生活や小学校生活といった社会生活において保護者が子どものそばにずっといることは基本的にはできません。発達に特性があるお子さんは、自立した社会生活を送ることがスムーズにいかない場合が多いですが、親子分離型事業所ではその練習を早い段階から手厚くしてもらえます。
また、保護者にとっても子どもと分離している間は休息・仕事・家事・きょうだいとの時間などをまとまってとることができます。私はカフェで一人ホッと休憩したり、ママ友とランチにでかけて、とてもリフレッシュできました。資格勉強もでき、この分離時間のおかげで二つの資格を取得して自信につながりました。

一方で分離している間、事業所での出来事が保護者には分からないことが大きなデメリットだと思います。あってはならないことですが、事業所側が子どもの尊厳を傷つける行為をしていたというニュースを見聞きすることもあります。障害があって、発語が難しい子どもは保護者に被害を訴えることが難しい場合が多いです。そこまで重大ではなくても、適切に支援が行われていないケースも懸念されます。
また、保護者との分離不安が強い子は慣れるまでに時間がかかること、先生方の子どもへの関わりを保護者が直接見て学ぶ機会が少なくなるといったこともデメリットとして挙げられると思います。
わが家にはどちらが合っていたか

わが家は分離型が合っていました。なぜかというと、息子は保護者と離れることで気持ちが切り替わり、集中できることが多かったからです。また私も休息や資格勉強など、自分の時間を確保できて気持ちが格段に安定したこと、それがまわりまわって息子のためになったと思うからです。
わが家は親子通所型に通った経験もあり、上に挙げたような良い点もたくさんあったのですが、息子が私といると気持ちが切り替えられず遊びモードになってしまうことと、親の負担が大きかったことがネックでした。
ただ、わが家に親子分離型が合っていたと思うのは、信用できる事業所に通えたからでした。そこで、私が感じた事業所見学の際、こんなことをチェックすると良いのではと感じたポイントをまとめました。

発達支援事業所を見学する際のチェックポイント

発達支援事業所を見学する際のチェックポイント
発達支援事業所を見学する際のチェックポイント
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  • 1.先生が子どもを尊重した関わり方をしているか
  • 2.子どもに合った活動プログラムかどうか
  • 3.保護者への説明やフィードバックが丁寧か
  • 4.見学や連絡の約束をきちんと守ってくれているか
  • 5.希望すればいつでも保護者が活動を見ることができるか(分離型の場合)
  • 6.施錠などセキュリティ管理がしっかりしているか
  • 7.活動スペースに余計な物が置かれていないか
先生方の子どもに対する関わり方はさまざま。適切な支援が行われないケースも
先生方の子どもに対する関わり方はさまざま。適切な支援が行われないケースも
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完璧な事業所は存在しませんが、子どもと保護者が「ここなら安心して通える」と思えることが大事なのではないかと思います。

息子は発達支援に通ってどう変化したか

息子が発達支援に通い始めた2歳頃は多動・衝動性が強く、私はどこに行っても息子を追いかけて、不適切な行動を止めていました。しかし親子分離型の事業所Aに通い出し小集団で過ごすことで、息子は何をすべきか、何をしてはいけないか、周りの子はどうしているのかを学ぶことができ、不適切行動は激減しました。私も休息の時間が確保でき、先生方に息子との関わり方についてアドバイスをしていただき、気持ちに余裕が生まれました。
見学の際に感じた違和感や不信感…事業所選びで焦りは禁物だと学びに
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その後の引っ越しで、親子通所型事業所Bに通い、さらにその後引っ越した先で親子分離型事業所Cに通うのですが、事業所Cは私たちには合いませんでした。見学の際いくつか違和感を覚えたものの、引っ越したばかりで周りの事業所に空きがなく、また近所の幼稚園も入園を断られたため、焦って契約してしまったのです。しかし通所後も不信感を覚える出来事が重なり、途中で退所しました。
はじめの違和感をもっと大切にすれば良かったという想いを胸に探し続けた結果、ようやく出合えたのが事業所Dです。家から遠く、バスと電車を乗り継ぎ片道1時間、3年間通いました。息子は事業所Dで大きく成長し、できることがたくさん増えました。事業所Dは親子分離型ですが当番制で保護者が付き添うことになっており、「いつでも様子を見てください」というオープンな姿勢に安心しましたし、私も夫も、付き添う際は勉強になることばかりでした。先生方は愛情溢れる明るい方々で、一生懸命子どもたちを支援してくださり、子どもたちもそれに応えて頑張っているような、とても素敵な事業所でした。

おわりに

コツコツ続けた発達支援が、確かな成長につながったと実感した日
コツコツ続けた発達支援が、確かな成長につながったと実感した日
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発達支援は地道にコツコツ成功体験を積み上げることが大切なので、子どもの変化がすぐには出にくいと思います。
息子が小学校に入学して、初めて学習参観で授業を頑張る息子の姿を見た時、私は「ああ、息子はこんなに成長していたんだ……」と、発達支援に通った日々がその時の息子に繋がったということを実感しました。また「発達支援に通っていなかったら、ここまで学校に適応できていなかったのではないか……」と、発達支援の先生方のお力をありがたいと思ったのと同時に、「親子でコツコツ頑張り続けて良かった。息子も親も、よく頑張ったな」と感じたのでした。

執筆/かほ


(監修:新美先生より)
児童発達支援事業所の形式による違いについて、ご自身のご経験からまとめて下さりありがとうございます。かほさんのご経験に基づいた記事は、親子通所型・分離型それぞれのメリット・デメリットが具体的に描かれており、「わが家にはどちらが合っていたか」という視点もとても分かりやすく、発達支援事業所選びに迷う読者の皆様が、自分たちに合ったスタイルを考えるヒントになると思いました。

発達支援事業所の通い方は、お子さんのタイプや保護者の状況、そして時期によっても変わります。一般的には、通い始めは親子通所型で、お子さんの特性に適した接し方、関わり方を学んだり日々の相談を密にしていき、ある程度落ち着いてきたら分離型へ移行するケースも多いです。親子通所型、分離型、どちらのスタイルでも通える柔軟な事業所もあると思います。
また、療育・育児相談のニーズがそれほどでもない方や、リフレッシュ・就労目的の方は、最初から分離型を選ぶのも一つの方法ですし、例えば週1回親子通所型の事業所、残りは分離型の事業所になどと、併用するスタイルもありかもしれません。

いずれにしても、いくつか体験してみて「ここなら安心して通える」と感じられる場所を選べると良いですね。お子さんと保護者の両方が心地良く過ごせる場所に出合えますように。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030712
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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