障害のある子の「親なきあと」|家族信託・生命保険・遺言など、7つのQ&Aを専門家が回答
ライター:発達ナビ編集部
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「親なきあと」の不安、一人で抱えていませんか?お金の遺し方、住まいのこと、頼れる制度は?2人の専門家が、今からできる具体的な備え方を分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 「家族信託」「生命保険」「遺言」など、お金の遺し方それぞれのメリット・デメリット
- お子さんの将来の住まい(自宅、グループホームなど)の準備方法と、生活設計のコツ
- 見落としがちな費用や、活用したい公的制度(障害者扶養共済など)、頼れる相談先
「親なきあと」の不安、一人で抱えていませんか?お金の遺し方、住まいのこと、頼れる制度は?保護者の方からよく聞かれるお悩みを「7つの質問」に整理。2人の専門家が、今からできる具体的な備え方を分かりやすく解説します。
質問1.「親なきあと」に備えたお金の遺し方の特徴は?
「親なきあと」に備えたお金の遺し方として家族信託、生命保険、遺言などがありますが、それぞれの特徴について教えてください。
【家族信託】
渡部先生:家族信託とは、親御さんの大切な財産を信頼できる家族に託し、生活費の管理をしてもらうなど、将来安心できる仕組みをつくることです。自分の手元でお金が扱える障害のある方の場合、まとまったお金を手にして詐欺などにあったり浪費して使い切ってしまったりなどというリスクが高まりますが、受託者にお金を管理してもらえればそのリスクは軽減できるでしょう。ただし、障害が重度でお金を扱うことができない場合は、成年後見人に管理してもらうのがよいと思います。
山田さん:家族信託では、親御さんが認知症になったときに口座凍結されるのを防ぐこともできますし、不動産の管理も委託することができるなど、比較的目的や効果が柔軟なことが特徴です。お金の受取先や受託者を先々まで指定できるので、もし託していたきょうだいが亡くなってしまった場合でも、その先誰がそのお金を受け取るのか、あるいは管理するのか、などを決めておくことができるのもメリットかもしれません。かなり長期的な見通しを立てることができます。
渡部先生:安心して管理を任せられる仕組みをつくるには、まず大前提として受託者となるごきょうだいや親戚など、信頼できる人がいるかどうかと、その受託者となる人と合意が取れているかどうか、ということが大切です。引き受けてくれる人がいるのであれば、家族信託は比較的柔軟で良い制度だと思います。
【生命保険】
山田さん:生命保険は、万が一のときに障害のあるお子さまにお金を多く残したい際に有効だと思います。たとえば、お子さまが施設に入る費用、成年後見費用、交際費などを親が用意してあげたいと強く願う場合です。生命保険のメリットは、一括受け取り・年金受取などの柔軟性があること、まとまったお金をすぐに申請できること、運用されているものであれば資産を大幅に増やすことができたりすることです。ですが、生命保険には、万が一の際に決まった額を遺す『定期保険』や『終身保険』のほかに、『変額保険』のような投資性の高い商品もあります。ご家庭のリスク許容度に合った慎重な商品選択が求められます。
渡部先生:そのほか注意点としては、保険金を受け取るときに、受け取る人に障害があると成年後見人をつけなければ保険金が受け取れないというケースがあることです。成年後見人は一度つくと途中でやめることが現時点ではできないので、相続や保険金受け取りのために「成年後見人をつけなければいけない」という状況に突然なってしまう、ということはできるだけ回避したほうがよいでしょう。
【遺言】
山田さん:遺言は、親御さんが亡くなったあとの問題がないようにだけはしておきたいという人に有効です。きょうだいや親族がいるときなど、争いを避けたい場合や障害のあるお子さまにも自分の意思通りにしっかりとお金が行き届くようにしておきたいという場合、遺言があるとないとでは状況が大きく変わるでしょう。
渡部先生:2020年から法務局で「自筆証書遺言書保管制度」という自分で書いた遺言を預かってもらえるサービスが始まりました。日付や署名、押印があるなど要件を満たした自筆証書を預けると、相続人が亡くなった際にも検認のために裁判所に出向く必要がなくなりますので、相続人にとっても被相続人にとっても負担が軽減できる制度だと思います。私も実際に自筆証書を預けてみましたが、手軽にできて非常に便利だと感じました。
山田さん:注意点としては、日付・署名・押印漏れなど形式の不備があると遺言の効力がなくなることや、財産の指定が曖昧だったり遺留分を無視した遺産配分になっていたりなどの問題が発生し得ることです。難しいと感じたら公証役場などに行ってしっかり専門家に見てもらうのがよいと思います。
【まとめ】
山田さん:それぞれにデメリットもあります。遺言だけでは親御さんの生前の口座凍結には対応できませんし、生命保険だけでは長期的な財産管理の仕組みはつくれません。家族信託だけでは、契約直後の万が一の際にすぐに動かせる現金が不足する可能性もあります。それぞれの制度のメリット・デメリットを整理するために、専門家に相談してみるのもよいと思います。また、あまりにも家族にとって一方的なものになっていないかなど、何か起こる前にしっかりと検討していただくことも大切です。お金の遺し方を形式的にとらえるだけでなく、ご家族の中での“想い”を中心に据えて考えていただくと、家族みんなにとっての幸せなお金の遺し方のかたちが見つかるのではないでしょうか。
渡部先生:目的や、どこまでお金を準備しておきたいのか、そのご家族の資産の種類などによって、メリット・デメリットの見え方も変わってきますよね。デメリットを埋めてメリットを最大限に活かすためには、複数の制度を組み合わせて活用することで最大限に効果を発揮してくれるということもあるでしょう。
【家族信託】
渡部先生:家族信託とは、親御さんの大切な財産を信頼できる家族に託し、生活費の管理をしてもらうなど、将来安心できる仕組みをつくることです。自分の手元でお金が扱える障害のある方の場合、まとまったお金を手にして詐欺などにあったり浪費して使い切ってしまったりなどというリスクが高まりますが、受託者にお金を管理してもらえればそのリスクは軽減できるでしょう。ただし、障害が重度でお金を扱うことができない場合は、成年後見人に管理してもらうのがよいと思います。
山田さん:家族信託では、親御さんが認知症になったときに口座凍結されるのを防ぐこともできますし、不動産の管理も委託することができるなど、比較的目的や効果が柔軟なことが特徴です。お金の受取先や受託者を先々まで指定できるので、もし託していたきょうだいが亡くなってしまった場合でも、その先誰がそのお金を受け取るのか、あるいは管理するのか、などを決めておくことができるのもメリットかもしれません。かなり長期的な見通しを立てることができます。
渡部先生:安心して管理を任せられる仕組みをつくるには、まず大前提として受託者となるごきょうだいや親戚など、信頼できる人がいるかどうかと、その受託者となる人と合意が取れているかどうか、ということが大切です。引き受けてくれる人がいるのであれば、家族信託は比較的柔軟で良い制度だと思います。
【生命保険】
山田さん:生命保険は、万が一のときに障害のあるお子さまにお金を多く残したい際に有効だと思います。たとえば、お子さまが施設に入る費用、成年後見費用、交際費などを親が用意してあげたいと強く願う場合です。生命保険のメリットは、一括受け取り・年金受取などの柔軟性があること、まとまったお金をすぐに申請できること、運用されているものであれば資産を大幅に増やすことができたりすることです。ですが、生命保険には、万が一の際に決まった額を遺す『定期保険』や『終身保険』のほかに、『変額保険』のような投資性の高い商品もあります。ご家庭のリスク許容度に合った慎重な商品選択が求められます。
渡部先生:そのほか注意点としては、保険金を受け取るときに、受け取る人に障害があると成年後見人をつけなければ保険金が受け取れないというケースがあることです。成年後見人は一度つくと途中でやめることが現時点ではできないので、相続や保険金受け取りのために「成年後見人をつけなければいけない」という状況に突然なってしまう、ということはできるだけ回避したほうがよいでしょう。
【遺言】
山田さん:遺言は、親御さんが亡くなったあとの問題がないようにだけはしておきたいという人に有効です。きょうだいや親族がいるときなど、争いを避けたい場合や障害のあるお子さまにも自分の意思通りにしっかりとお金が行き届くようにしておきたいという場合、遺言があるとないとでは状況が大きく変わるでしょう。
渡部先生:2020年から法務局で「自筆証書遺言書保管制度」という自分で書いた遺言を預かってもらえるサービスが始まりました。日付や署名、押印があるなど要件を満たした自筆証書を預けると、相続人が亡くなった際にも検認のために裁判所に出向く必要がなくなりますので、相続人にとっても被相続人にとっても負担が軽減できる制度だと思います。私も実際に自筆証書を預けてみましたが、手軽にできて非常に便利だと感じました。
山田さん:注意点としては、日付・署名・押印漏れなど形式の不備があると遺言の効力がなくなることや、財産の指定が曖昧だったり遺留分を無視した遺産配分になっていたりなどの問題が発生し得ることです。難しいと感じたら公証役場などに行ってしっかり専門家に見てもらうのがよいと思います。
【まとめ】
山田さん:それぞれにデメリットもあります。遺言だけでは親御さんの生前の口座凍結には対応できませんし、生命保険だけでは長期的な財産管理の仕組みはつくれません。家族信託だけでは、契約直後の万が一の際にすぐに動かせる現金が不足する可能性もあります。それぞれの制度のメリット・デメリットを整理するために、専門家に相談してみるのもよいと思います。また、あまりにも家族にとって一方的なものになっていないかなど、何か起こる前にしっかりと検討していただくことも大切です。お金の遺し方を形式的にとらえるだけでなく、ご家族の中での“想い”を中心に据えて考えていただくと、家族みんなにとっての幸せなお金の遺し方のかたちが見つかるのではないでしょうか。
渡部先生:目的や、どこまでお金を準備しておきたいのか、そのご家族の資産の種類などによって、メリット・デメリットの見え方も変わってきますよね。デメリットを埋めてメリットを最大限に活かすためには、複数の制度を組み合わせて活用することで最大限に効果を発揮してくれるということもあるでしょう。
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質問2. 公的制度「障害者扶養共済」のメリットや注意点は?
「障害者扶養共済」は、生命保険や家族信託とはどのように使い分けるとよいでしょうか。
渡部先生:障害者扶養共済は、親御さんが掛け金を払うことで、亡くなった後や重度の障害を負った場合などに遺された障害のあるお子さまに生涯にわたって一定額の年金が支給される公的制度です。都道府県が運営しているという安心感もあると思いますので、生命保険などと並列で活用いただくとよいと思います。掛け金は、親御さんが障害者扶養共済を始めた際の年齢によって上がるので、始めるのであれば早めがおすすめです。
山田さん:障害者扶養共済の掛け金は所得控除の対象にもなりますね。一方で、一度加入すると途中で解約した場合の返戻金が極めて少ないので、将来にわたって掛け金を払い続けられるかなど慎重に検討してから加入を決めることが重要です。また一括支給にも対応していませんので、ほかの制度とうまくかけ合わせながら希望に対して過不足ない状態にしていただくのが理想的だと思います。
渡部先生:障害者扶養共済は、親御さんが掛け金を払うことで、亡くなった後や重度の障害を負った場合などに遺された障害のあるお子さまに生涯にわたって一定額の年金が支給される公的制度です。都道府県が運営しているという安心感もあると思いますので、生命保険などと並列で活用いただくとよいと思います。掛け金は、親御さんが障害者扶養共済を始めた際の年齢によって上がるので、始めるのであれば早めがおすすめです。
山田さん:障害者扶養共済の掛け金は所得控除の対象にもなりますね。一方で、一度加入すると途中で解約した場合の返戻金が極めて少ないので、将来にわたって掛け金を払い続けられるかなど慎重に検討してから加入を決めることが重要です。また一括支給にも対応していませんので、ほかの制度とうまくかけ合わせながら希望に対して過不足ない状態にしていただくのが理想的だと思います。
質問3.「親なきあと」の住まいはどうする?
障害のあるお子さまの住まいを考えるうえで、どのようなポイントがありますか。
渡部先生:自宅に住み続けるのか、グループホームなどに入るのか、アパートで一人暮らしをするのかなどによって必要な準備は異なってくるでしょう。いずれにせよ、住まいについてご本人や親御さんに希望があるのであれば、管理の仕方や今後についてご家族でしっかりと話し合っておくことが必要ですね。
山田さん:親御さんも老後は介護施設、ご本人もグループホームに入所、というプランがあるのであれば、今の住まいは生前に売却してごきょうだいで分けやすいようにしておく、というようにプラン、将来の理想の住まい方によって準備すべきことが大きく変わります。親御さんもご本人も自宅をのこしたい、住み続けたいなどという希望があるのであれば、家族信託の仕組みを活用するのも有効な選択肢です。
障害特性によっては「引っ越しができない、とても苦手」ということもあると思いますので、ご本人の意思もしっかりと確認しておきたいですね。ただし、家族信託はあくまで財産管理の仕組みであり、ご本人の施設入居契約や医療の同意といった法律行為(身上監護)は行えないので、身上監護は成年後見制度で、というように複数の制度を組み合わせて備える視点が大切です。
渡部先生:自宅に住み続けるのか、グループホームなどに入るのか、アパートで一人暮らしをするのかなどによって必要な準備は異なってくるでしょう。いずれにせよ、住まいについてご本人や親御さんに希望があるのであれば、管理の仕方や今後についてご家族でしっかりと話し合っておくことが必要ですね。
山田さん:親御さんも老後は介護施設、ご本人もグループホームに入所、というプランがあるのであれば、今の住まいは生前に売却してごきょうだいで分けやすいようにしておく、というようにプラン、将来の理想の住まい方によって準備すべきことが大きく変わります。親御さんもご本人も自宅をのこしたい、住み続けたいなどという希望があるのであれば、家族信託の仕組みを活用するのも有効な選択肢です。
障害特性によっては「引っ越しができない、とても苦手」ということもあると思いますので、ご本人の意思もしっかりと確認しておきたいですね。ただし、家族信託はあくまで財産管理の仕組みであり、ご本人の施設入居契約や医療の同意といった法律行為(身上監護)は行えないので、身上監護は成年後見制度で、というように複数の制度を組み合わせて備える視点が大切です。
質問4. 「親なきあと」で、想定外な費用、支出になりやすいものは?
想定外の費用、支出としてはどのようなものが挙げられますか。
山田さん:障害のあるお子さまご本人にかかるお金のことは考えていても、ご自身の介護施設の入所費用などのことはあまり考えていなかった……という方は多くいらっしゃいます。また、成年後見人も想定外の費用としてあげられます。家庭裁判所が公表している目安では、専門家が後見人になった場合、成年被後見人の財産額に応じて報酬は月額2万円~6万円程度です。仮に月2万の報酬が40年間続いたとすると支払う報酬の総額は960万円にも達します。状況によっては、成年後見監督人という、成年後見人がしっかりと機能しているかを監督する人もつけなければならず資産額に準じた報酬が必要になってくるため、お金を遺しすぎるのも検討が必要です。
※成年後見制度の法改正については目下議論されています
渡部先生:あとは障害の有無にかかわらず、不動産の名義書き換えや相続税、専門家への相談料など、相続にはさまざまな費用が発生します。また、現金で遺した場合と不動産で遺した場合では評価額が異なり、相続税が大きく異なるためシミュレーションが必要です。そのほか、ご本人の仕事で得た所得は障害基礎年金の金額や各種助成金などと関わっていて、所得によっては障害基礎年金などがストップしてしまうということもあります
山田さん:障害のあるお子さまご本人にかかるお金のことは考えていても、ご自身の介護施設の入所費用などのことはあまり考えていなかった……という方は多くいらっしゃいます。また、成年後見人も想定外の費用としてあげられます。家庭裁判所が公表している目安では、専門家が後見人になった場合、成年被後見人の財産額に応じて報酬は月額2万円~6万円程度です。仮に月2万の報酬が40年間続いたとすると支払う報酬の総額は960万円にも達します。状況によっては、成年後見監督人という、成年後見人がしっかりと機能しているかを監督する人もつけなければならず資産額に準じた報酬が必要になってくるため、お金を遺しすぎるのも検討が必要です。
※成年後見制度の法改正については目下議論されています
渡部先生:あとは障害の有無にかかわらず、不動産の名義書き換えや相続税、専門家への相談料など、相続にはさまざまな費用が発生します。また、現金で遺した場合と不動産で遺した場合では評価額が異なり、相続税が大きく異なるためシミュレーションが必要です。そのほか、ご本人の仕事で得た所得は障害基礎年金の金額や各種助成金などと関わっていて、所得によっては障害基礎年金などがストップしてしまうということもあります
質問5. 生活設計のコツは?
障害のあるお子さまの生活設計を進めるうえで、考え方のコツはありますか。
山田さん:将来の収支を「見える化」すること、「遺す財産に明確な役割を与えること」が必要だと思います。たとえば、障害年金が月に6.5万円、就労継続支援での工賃が1.5万円だとすると、一か月の収入は8万円。グループホームの居住費用がそれ以上である場合や、趣味などのお金や医療費がかかる場合はプラスで月数万円の出費が必要になるかもしれません。そして、それが何年分必要かを考えていくと、どれくらいのお金がかかってくるかが見えてきます。
また、お金の遺し方も大きなポイントです。たとえば、生命保険を利用して、死亡保険金として必要と思われる金額を一括で渡す方法がありますが、金銭管理が苦手なお子さんの場合、年金受取にする方法もありえます。つまり遺す金額と遺し方、その両面から整理して考えることが必要です。
渡部先生:障害のあるお子さまの将来の自立を考えて、できることをなるべく増やしてあげることも必要だと思います。以前、障害がある方のごきょうだいから、親御さんが生前「障害があるから」と全部やってあげていた結果、自立した生活が難しく、周りの人への適切な頼り方も分からなくなってしまった、どうサポートしてたらいいのか悩んでいると相談を受けたことがあります。親御さんが亡くなったあとどう生活していくのか、ご本人も交えて具体的に前向きに話し合えていると安心ですね。
山田さん:将来の収支を「見える化」すること、「遺す財産に明確な役割を与えること」が必要だと思います。たとえば、障害年金が月に6.5万円、就労継続支援での工賃が1.5万円だとすると、一か月の収入は8万円。グループホームの居住費用がそれ以上である場合や、趣味などのお金や医療費がかかる場合はプラスで月数万円の出費が必要になるかもしれません。そして、それが何年分必要かを考えていくと、どれくらいのお金がかかってくるかが見えてきます。
また、お金の遺し方も大きなポイントです。たとえば、生命保険を利用して、死亡保険金として必要と思われる金額を一括で渡す方法がありますが、金銭管理が苦手なお子さんの場合、年金受取にする方法もありえます。つまり遺す金額と遺し方、その両面から整理して考えることが必要です。
渡部先生:障害のあるお子さまの将来の自立を考えて、できることをなるべく増やしてあげることも必要だと思います。以前、障害がある方のごきょうだいから、親御さんが生前「障害があるから」と全部やってあげていた結果、自立した生活が難しく、周りの人への適切な頼り方も分からなくなってしまった、どうサポートしてたらいいのか悩んでいると相談を受けたことがあります。親御さんが亡くなったあとどう生活していくのか、ご本人も交えて具体的に前向きに話し合えていると安心ですね。
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質問6. 「親なきあと」の準備をしていなかった場合のリスクは?
もしも、何も準備せずに親御さんが亡くなった場合、どのようなリスクはありますか。
渡部先生:正直なところ“どうにかなる”と私は思います。障害福祉サービスを利用している場合は計画相談やグループホームなど、ご本人を支えてくれる人とのつながりもある場合が多く、困りごとやトラブルについての助言や適切な機関へつなぐなどのサポートをしてくれることが考えられます。生活保護などのセーフティネットもありますので、最終的には“どうにかなる”と表現をさせてもらいました。
ひきこもりやグレーゾーンなどで障害福祉サービスにつながっていない方や、障害者手帳を持っておらず福祉制度で守られない程度の障害のある方も、家族会やご近所の人でもいいので、親御さんがお子さんのことについて話ができる場所をつくっておくことで周りの人に困りごとに気づいてもらうきっかけになります。一方、障害のあるご本人が困らないように、趣味や余暇の過ごし方などを想定してより充実して安定した生活を送れるようにと考えた場合には、やはり適切なお金の遺し方は検討したほうがよいと思います。
山田さん:信頼のできる第三者とのつながりを持ち相談できる体制をつくることは大切ですね。親御さんが生前につながりを持っておいて「あそこのお子さんはどうしてるだろう?」と気にかけてもらうきっかけをつくること、最低限「困ったらどこに連絡したらいいのか」の連絡先リストをのこしておくなど、つながりへのハードルを下げる準備をしておくとよいでしょう。金銭管理が苦手なお子さんの場合は、親がお金を遺すだけでなく、それをどう管理し、守るかという具体的な仕組みを生前につくっておいたほうが安心です。身近な公的サービスを挙げると、社会福祉協議会が日常の金銭管理や手続きをサポートしてくれる「日常生活自立支援事業」といった制度もあります。
渡部先生:正直なところ“どうにかなる”と私は思います。障害福祉サービスを利用している場合は計画相談やグループホームなど、ご本人を支えてくれる人とのつながりもある場合が多く、困りごとやトラブルについての助言や適切な機関へつなぐなどのサポートをしてくれることが考えられます。生活保護などのセーフティネットもありますので、最終的には“どうにかなる”と表現をさせてもらいました。
ひきこもりやグレーゾーンなどで障害福祉サービスにつながっていない方や、障害者手帳を持っておらず福祉制度で守られない程度の障害のある方も、家族会やご近所の人でもいいので、親御さんがお子さんのことについて話ができる場所をつくっておくことで周りの人に困りごとに気づいてもらうきっかけになります。一方、障害のあるご本人が困らないように、趣味や余暇の過ごし方などを想定してより充実して安定した生活を送れるようにと考えた場合には、やはり適切なお金の遺し方は検討したほうがよいと思います。
山田さん:信頼のできる第三者とのつながりを持ち相談できる体制をつくることは大切ですね。親御さんが生前につながりを持っておいて「あそこのお子さんはどうしてるだろう?」と気にかけてもらうきっかけをつくること、最低限「困ったらどこに連絡したらいいのか」の連絡先リストをのこしておくなど、つながりへのハードルを下げる準備をしておくとよいでしょう。金銭管理が苦手なお子さんの場合は、親がお金を遺すだけでなく、それをどう管理し、守るかという具体的な仕組みを生前につくっておいたほうが安心です。身近な公的サービスを挙げると、社会福祉協議会が日常の金銭管理や手続きをサポートしてくれる「日常生活自立支援事業」といった制度もあります。
質問7. 「親なきあと」の不安、誰に相談すればいい?
「親なきあと」の準備について、相談したいときはどうすればいいでしょうか。
渡部先生:相続のことであれば税理士や司法書士など専門の士業の方に相談する方法があります。家族の将来や想いなどをより丁寧に汲みながら生活面も含めて設計をしたいということであればファイナンシャルプランナーやコンサルタントの方に相談するのもよいでしょう。私の相談室を訪れてたり講演会に参加してくださったりする方とお話していると、ある程度知識が身につくことで悩みが明確化されることが多いように思います。
山田さん:LITALICOライフではコンサルタントがご家庭のお悩みをトータル的にお伺いし、悩みや困りごとの整理をお手伝いすることができますので、ぜひご活用いただきたいと思います。「お金についてなんとなく不安」「きょうだい同士仲良く暮らしてほしい」「自分の老後」など、少しでも不安がある方は、ぜひご相談ください。
この整理するところから専門家を頼るということは、親御さんのご負担を減らすためにも、ご本人により多様で適切な選択肢を見つけていただくためにも必要なことだと思います。また、LITALICOライフではさまざまな無料セミナーも開催しています。ライフステージやその時々の悩みごとに合ったセミナーを上手に活用いただいて、そのとき必要な知識・情報を収集されている方も多くいらっしゃいます。不安は、知らないこと、分からないことから生まれることが多いですよね。セミナーで知識をつけることで、その不安が解消されるきっかけにつながると思います。
渡部先生:相続のことであれば税理士や司法書士など専門の士業の方に相談する方法があります。家族の将来や想いなどをより丁寧に汲みながら生活面も含めて設計をしたいということであればファイナンシャルプランナーやコンサルタントの方に相談するのもよいでしょう。私の相談室を訪れてたり講演会に参加してくださったりする方とお話していると、ある程度知識が身につくことで悩みが明確化されることが多いように思います。
山田さん:LITALICOライフではコンサルタントがご家庭のお悩みをトータル的にお伺いし、悩みや困りごとの整理をお手伝いすることができますので、ぜひご活用いただきたいと思います。「お金についてなんとなく不安」「きょうだい同士仲良く暮らしてほしい」「自分の老後」など、少しでも不安がある方は、ぜひご相談ください。
この整理するところから専門家を頼るということは、親御さんのご負担を減らすためにも、ご本人により多様で適切な選択肢を見つけていただくためにも必要なことだと思います。また、LITALICOライフではさまざまな無料セミナーも開催しています。ライフステージやその時々の悩みごとに合ったセミナーを上手に活用いただいて、そのとき必要な知識・情報を収集されている方も多くいらっしゃいます。不安は、知らないこと、分からないことから生まれることが多いですよね。セミナーで知識をつけることで、その不安が解消されるきっかけにつながると思います。
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※このコラムは、仕事ナビに掲載のコラムの一部を変更し、構成しています
【親なきあと準備ガイド】障害のある子どもの将来設計。進路・就労・お金…専門家と考える、自立への道すじ
子どもの将来の選択肢を広げる!学齢期のうちに確認したい3つのこと【親なきあと相談室 渡部伸先生に聞く】
障害のあるわが子の「働き方」基礎知識。親が今から知っておきたい多様な選択肢【親なきあと相談室 渡部伸先生に聞く】
就労移行支援、就労継続支援A型・B型の違い、障害者雇用…知っておきたい18歳以降の支援・働き方【専門家監修】
手帳、年金、口座、共済制度…障害のある子の将来に今から備える6つのチェックリスト【専門家監修】
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。