公園初心者のスバルと「暗黙」のルール

この公園で遊ぶ子どもたちは1年生の頃からここに集まり、「自分たちのルール」を作り上げているように感じました。「これはやっても大丈夫」「これはやったら先生や親に怒られる」「このくらいなら大人もやっている」彼らは6年かけて失敗や怒られた経験を重ねながら、その境界線を体で覚えてきたのだと思います。

一方でスバルは公園1年生。なにが許されてなにが危ないのかまだ分かっていません。そして私も公園1年生の母。ASD(自閉スペクトラム症)のあるスバルの母として注意すべきことは分かっていても、6年生の集団という「社会」の中にいるスバルを見るのは、また別の難しさがありました。

輪を乱さぬように、空気を壊さぬように、でも危険がないように、間違った判断をしないように……。スバルから聞く公園での出来事を聞きながら想像を巡らせ、正解なのか不正解なのかも分からないまま助言をする日々でした。

ハッとした「そういう人」の存在

公園デビューしてから何週間か経ち、曜日によって遊ぶメンバーが違うことに気づきました。全員ガラッと入れ替わることはありませんが、習い事の関係で遊べる曜日が限られている子が何人かいました。

ある日、たまにしか顔を出さない友だちが公園に合流しました。彼はヘルメットをきちんと被り、信号を守り、家の人が決めた時間になると「じゃあね」と言って帰っていきました。その話を聞いて「ちょっと荒々しい集団の中で浮かないの?」と心配になりました。けれど、誰も彼を笑わないし、むしろ「そういう人だから」と受け入れられていました。

荒い子と真面目な子の比率が逆転する日もありました。言葉使いも遊びも穏やかに進行する中、荒い子が荒々しく存在していても「そういう人」として受け入れられていました。

私はなるほど、と思いました。
そもそもスバルも「そういう人」なのです。DCD(発達性協調運動症)で運動が苦手で公園でのボール遊びもままならないレベルの不器用で、言動が幼く、空気も読めずはしゃいだり、から回ったりするタイプで、すでに浮いているのです。なのに毎回遊びに誘われるのです。それは特別支援学級に在籍しているスバルを特別扱いしているわけではなく「そういう人」として尊重してくれているのです。

私は「特別支援学級」と「交流学級」という線をどこかで意識していた気がします。しかし公園の中でのその線は、もう少し曖昧で柔らかいものだと感じました。

私はようやく「自分の守りたいルールを守って良いよ」と伝えることができました。みんなと一緒に横断歩道のない道路を渡るかどうか悩みに悩み、結局大回りして横断歩道を渡る決断をしたスバルに「おせーぞ」とブーイングを浴びせながらも待ってくれている彼らは、口は悪いけど仲間なんだなと思いました。こうして始まったスバルの公園デビュー。けれどその後は、まるで6年分を凝縮したかのようなトラブルが次々と舞い込んできます。笑顔で出かけて行くスバルとは対照的に母の胃は今日もキリキリと痛むのでした。
笑顔で出かけて行くスバルとは対照的に母の胃は今日もキリキリ
笑顔で出かけて行くスバルとは対照的に母の胃は今日もキリキリ
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執筆/星あかり

(監修:初川先生より)
スバルくん、6年生にして「放課後の公園デビュー」をしたのですね。子どもたちの仲間関係におけるルール(彼らなりのルール、そして社会のルールの2種類ありますね)の運用は、大人からするとハラハラするものだと思います。言葉使いも「うざい」など、子どもたちの中ではそこまで深い意味を持たずとも、字義通り受け取るとつらくなるような言葉も飛び交っているかもしれませんね。

発達段階として考えると、小学生の中学年・高学年時期のこうしたちょっとやんちゃな遊び方をする仲間関係をギャンググループと呼びますが、そうして徒党を組んで、ちょっとやんちゃに力いっぱい身体を動かし、同じ遊びを楽しむ仲間関係を経験する時期です。すでに公園でよく遊んでいた子たちはまさにそれを謳歌していたのでしょう。スバルくんもそこに誘われて、入ってみたら毎日誘われるほどのなじみ方をしたのは、お互いそれなりに楽しく過ごせていたからでしょう。

子どもたちの仲間関係に関して言えば、大人が想像するよりカラッとしている場合も多いように感じます(印象として、男の子グループはその傾向が強そうに感じます)。特に、言葉での仲良し度の確認などではなく、遊びでつながっているメンバーだとより一層そんな印象があります。真面目なお友だちのエピソードがありましたが、「そういう人」として尊重し、ツッコミは入れてもそれ以上の強要はしない。おそらくそうした子たちにとっては、楽しく遊ぶことが大事で、そして、誰しもちょっと独特な・個性的なところがあっても、「一緒にいると・遊ぶと楽しいから」と受け入れていく風土があることが多いです。学校の休み時間や放課後などで、大なり小なりさまざまな葛藤やトラブルを子どもたちは経験していることが多く、案外そのあたりが寛容(そこにこだわっていると楽しくなくなってしまうと知っている)なのかもしれないと感じます。

だからこそ、我を通しすぎて遊びが成立しないとか、いつも大喧嘩になって遊びが止まってしまうなど、遊び自体に大きな影響があると寛容さがトーンダウンするかもしれません。ただ、それを最初から予期して「気を付けるんだよ!」と先回りして注意したところで、なかなか難しいだろうと思います。そういう意味で、お子さん本人が試行錯誤しながら、どこまでだったら大丈夫か、どこまでいくとちょっとみんな嫌がってしまうか。そこを体験的に探れると良いだろうと感じます。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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