30年後の未来を見据えて。保護者の経験が支援の現場にもたらすもの

子どもが小さいうちは、移動支援を使う人は少ないかもしれません。しかし、子どもが30歳、40歳になり、親も70代、80代と高齢になると、作業所に行かない土日の余暇活動をサポートする移動支援は、本人や家族の生活の大きな支えとなります。

実際、移動支援の仕事をして感じることはさまざまありますが、最も大切なのは、「知識があるかないか」よりも、その人の特性に寄り添おうという想いの強さだと思います。特に、発達障害のある子を育てた経験を持つ保護者がヘルパーになることには、大きな価値があると感じています。ひと口に発達障害といっても、その特性は人によってさまざまですが、わが子を試行錯誤しながら育ててきた経験は、ほかの利用者さんの特性を感覚的に理解する助けになります。「なぜ今、この行動をしているのか」を想像できる力は、きっと利用者さんに大きな安心感を与えられるはずです。

週末のひととき、利用者さんが笑顔で外の世界を楽しめるように。そして、ご家族が安心して休息を取れるように。温かな支援の輪が、これからも広がっていくことを願っています。

執筆/立石美津子

専門家コメント(小児科医 鈴木直光先生)

医療や療育の現場では、神経発達症に限らず、大切なお子さんを病気で亡くされた経験を持つ保護者の方が、その後の「恩返し」として支援の道に進まれる姿を拝見することがあります。同じ「親」という立場を経験されたからこそ、今まさに不安や悩みの中にいるご家族の心に、誰よりも深く寄り添える部分があるのだと感じます。ご自身が経験したことを分かりやすく説明できる点では、これ以上の支援者はいないのではないでしょうか。

一方で、特性や障がいのあるお子さんの支援には、専門的な「センス(知識と経験)」が不可欠です。お子さんに寄り添い、その真のニーズを汲み取るためには、温かな想いだけでなく、裏づけとなる知識が支えになります。

現在、ガイドヘルパーの資格取得が比較的短期間で行える背景には、深刻な人材不足という課題があります。早急に人員を確保しようとするあまり、研修が簡略化され、結果として支援の現場で専門性を維持することが難しくなっている側面も否定できません。これは教員不足の問題とも通じるところがあります。福祉・教育に関わるさまざまな専門職の質を守り、さらに高めていくためには、適切な評価制度や試験の導入などの工夫も必要だと考えます。
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https://h-navi.jp/column/article/35030835

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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