【教員免許を持つ保護者が語る】実際通って感じた特別支援学校と特別支援学級の違いと、「真の自立」に繋がる視点

ライター:立石美津子
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10266003230

発達障害のある子どもの進路を考えるとき、「特別支援学校と特別支援学級、いったいどちらがこの子にとって最善なのだろう」と、悩んだ経験のある方も多いと思います。私もその一人でした。しかも私は、特別支援学校の教員免許を持ち、知識があったにもかかわらず、その選択は難しいものでした。今回は、私の体験から感じた特別支援学校と特別支援学級の違いについてお話しします。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

特別支援学校で学んだ「真の自立支援」

私には知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の息子(現在25歳)がいます。息子が生まれる前、私は特別支援学校の教員免許を取るための勉強をしていました。

教育実習生として、特別支援学校の中学3年生のクラスに入った時のことです。

私は支援者としての責任感から、「この子たちは障害があるから、いろいろ手伝ってあげなきゃ」と思い、着替えを手伝ったりトイレに連れて行ったりと、あれこれ世話を焼いていました。すると指導教官から「手を出しすぎてはいけない」と注意を受けました。

例えば、洋服の着脱の時。ボタンが3個ついた上着を生徒に着せる際、私は全部のボタンを留めてあげていました。もちろん、障害が重くどうしても難しい子もいましたが、できる子にまでやってあげていました。

すると教官からは「この子はやればできる。ただ全部は難しいから、上の2つは立石さんが留めてあげて、下の1つは本人にやらせてあげてほしい。上のボタンは自分の目線から見えにくくやりにくいけど、一番下のボタンは見えるので留めやすいから。それから、そのほうが『自分でできた』という達成感を得られるでしょ」と教わりました。

特別支援学校には、身辺自立がまだできていないお子さんも多くいます。将来の自立を目指す学校だからこそ、手を出しすぎてはいけないのだと知り、私は深く反省しました。

また、トイレの支援でも同じようなことがありました。実習初日に、ダウン症の女の子が生理中だったため、私は「自分では難しいだろう」と思い、生理パッドを持ってきて取り換えを全部やってあげようとしました。

すると「生理用品を自分のロッカーから持ってくる、袋を開ける、下着につけるところまでは本人にやらせてください。位置がずれていたらその時に教えてあげてください」と言われました。

実際、その子はやればできました。私は「最初から全部やってあげる」つもりでいましたが、それではいけないのだと痛感しました。

この経験を通して、特別支援学校は「できることを一つずつ増やしていく場なのだ」と実感しました。

私は現在、移動支援の仕事をしていて、成人女性の外出支援をすることもあります。その方も知的障害(知的発達症)が重度で、愛の手帳2度を持っていますが、小・中・高と特別支援学校に通い、自分で生理用品を交換できるようになっていました。

もちろんヘルパーがそばについてはいますが、それでも「人にやってもらわなくても自分でできる」ことは双方にとって望ましいことです。そして本人にできないときは誰かに助けを求める、誰かに頼る、これも立派な自立なのだと思います。
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特別支援学級で感じた「学習」と「支援」のバランスの難しさ

一方で、特別支援学級についてです。

私の息子は知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)ですが、小1・小2は特別支援学校、小3から中3までは特別支援学級、高校は再び特別支援学校に通いました。

特別支援学級では、担任の先生が必ずしも特別支援教育の専門の教員資格を持っているとは限りません。通常の教員免許で担任をすることができるからです。私の息子が特別支援学級に在籍していた当時も、担任の先生は専門の教員資格を持っていない先生のほうが多かったように記憶しています。特別支援学級の授業内容は教科学習(算数や国語)が中心ですが、中には食事、排泄、着替えに配慮が必要なお子さんも在籍していました。その場合、介助員が着替えや排泄の補助を行うのですが、体育の授業では、時間通りに全員が運動場に出ることを優先して、介助員が着替えを全部やってしまうこともありました。

そうすると「本当は自分でできるはずのこと」も、大人が先回りしてしまうので、子どもは受け身になりがちな状況が生まれていました。

特別支援学校では、子どもの障害等の状態に応じた柔軟な教育課程が組まれるともに、「自立活動」という特別な指導領域が設けられています。特別支援学級でも、小中学校の学習指導要領を基本としながらも、「自立活動」を取り入れることになっており、特別支援学校の学習指導要領を参考に、子どもの実態に合わせて柔軟な教育課程が編成できるようになっています。

私の息子が通っていた特別支援学級では、子どもの特性や障害の程度に応じて、自立活動に多く時間を割いてくれた年もありました。しかし、特別支援学校・特別支援学級の両方に通った経験から、やはり特別支援学級は、基礎的な学習(数の理解、時計の読み方など)を重視する場だと感じました。
参考:文部科学省|3.特別支援教育に関する学習指導要領等
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/005.htm

先入観にとらわれず、自分の目で見てわが子に合った学校選択を

ただし、特別支援学校にしろ、特別支援学級にしろ、学校によって環境や方針はさまざまです。どちらを選ぶかは最終的に保護者の意向によります。大切なのは先入観だけで選ばないことだと感じます。実際に見学して違いを知り、お子さんに合った学校を選んでほしいと思います。

かつての私のように、特別支援学級か特別支援学校かで迷っている方、あるいは通常学級か特別支援学級かで迷っている方にとって、私の経験がひとつの参考になれば幸いです。

執筆/立石美津子
(監修:鈴木先生より)
障がいや発達に特性のあるお子さんの進路について迷っている保護者も多いかと思います。「就学後の様子を見て転籍や転校を検討したい」という方もいらっしゃると思いますが、学びの場を変更する場合の判断基準や手続きは自治体によって違いがあるため、あらかじめ教育委員会などの就学相談窓口に確認されるとよいでしょう。

知的発達症がありIQが70未満のお子さんにとっては、学習が中心となる特別支援学級ではストレスを感じることがあるかもしれません。その点で特別支援学校は、特性のあるお子さんに対する先生方の経験値や専門性が高いため、より個別のニーズに即した支援を期待できると言えるでしょう。本人が安心できる環境で自信をつけ、自尊心を上げていければ、将来の「真の自立」に繋がっていくのではないかと思います。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030773

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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