知的障害・てんかんのある娘の通常学級挑戦記。「1学期だけの付き添い」で母が感じた葛藤と温かい配慮の日々

ライター:かめ子
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定型発達の長男(22歳)と知的障害(知的発達症)の長女(19歳)、次男(12歳)の3児を育てている「かめ子」です。右手足の麻痺と知的障害(知的発達症)、そしててんかん。幼い頃から多くの困難と闘ってきた長女も、現在は作業所(就労継続支援B型)に就労して2年目、元気に通う毎日です。
小学校入学式直後のてんかん手術を経て、いよいよ5月半ばから小学校生活がスタート。今回は1学期間だけ過ごした通常学級での生活あれこれを書きたいと思います。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

初日はルンルンで登校するも……

知的障害(知的発達症)のある長女は、小学校入学式直後のてんかん手術を経て、いよいよ5月半ばから小学校生活がスタートしました。2週間ほどの入院生活後は体力や筋力がかなり落ちていたため、毎日少しずつ距離を伸ばしながらの散歩や階段の昇降などのリハビリを続けました。退院1週間後には入院前くらいの体力に戻り、転倒するような大きなてんかん発作も消失しました。右片麻痺で歩行や走行は安定に欠くものの、日中生活を送るにもだいぶ不安がなくなりました。この頃右手は現在より麻痺が軽かったため、左手を補助する程度には動いていました。
入院によるガタ落ちの体力をなんとか回復!
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5月半ば、いよいよ登校から下校まですべて保護者が付き添う小学校生活がスタートしました。娘は「(保育園が一緒の)○ちゃんと○くんが(同じクラスに)いる」と、初日からお気に入りのピンクのランドセルとピンクの補装具を身につけルンルンで、親の方が緊張していました。

しかし下駄箱で大勢の子どもたちの勢いに圧倒され固まり、教室に入る際も皆に注目されさらに固まっていました。泣き出すかな……と懸念しましたが、「あ、○ちゃん(娘)が来た~!」と何人かの子がうれしそうに駆け寄って席まで案内してくれたりしたので、笑顔も見られホッとしました。

クラスの温かい雰囲気、先生の配慮に救われた

娘の隣に私がガッツリ座って授業を受けるというスタイルで、最初は正直「お客さま」状態。みんなと一緒の空間にいつつ様子を見るという感じでしたが、娘が登校できない間、担任の先生が生徒たちに娘の特性や発作のことも分かりやすく丁寧に説明してくれていたおかげで、受け入れてくれる雰囲気がとてもありがたかったです(全員が全員、ではないですが……)。

1週間ほど過ぎた頃から、担任の先生が娘の分かりそうな問題(2語文程度の音読、簡単なクイズなど)を答えさせてくれたり、「この時間は○さん(娘)はこれをやっていいよ」など別の選択肢を与えてくれるなど、いろいろな配慮をしてくださいました。フォローは私がしていたので、授業の進行を妨げるようなことはほぼなかったと思っていますが、娘本人はチンプンカンプンなことが多かったのではないかと思います……。
先生の配慮やお友だちの優しさに救われた日々
先生の配慮やお友だちの優しさに救われた日々
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体育の授業は右麻痺があったものの、それなりに走れたりジャンプなどはできたので、おおむね楽しく参加できていました。私も娘やほかのお子さんをフォローしながら一緒に楽しめる時間でしたね。妊婦だったので、程よい運動にもなりました。
給食(保護者は弁当持参)は班の子たちと一緒に食べ、いろいろな話を聞いたり、ときには「○ちゃん(娘)はなんでお話苦手なの?」「歩くのゆっくりだね。脚に何つけてるの?(補装具のこと)」など鋭い質問に答えるのもなかなか楽しい時間でした。

娘は立ち歩いたり騒ぐこともなく、授業中はしっかり座って聞いていられたことに大きな成長を感じました。しかしそれでも周りの子たちとのあまりの差に悲しくなり、思わず涙がこぼれそうになったこともありました。娘に無理をさせてしまっている、と罪悪感にさいなまれたことも……。

学校生活スタート2週間でいきなり運動会!

5月末日に運動会がある小学校だったため、娘にとっては学校生活がスタートしてから2週間強で本番という、なかなかタイトなスケジュールでした。運動会に向けての練習や準備で学年全体が少しだけバタバタ&ピリピリしている中、「通常の学校生活についていくのもままならない娘と私が邪魔になっていたらどうしよう」という不安にかられることもありました。運動会の練習の時は私がマンツーで付き添いつつ、率先してお手伝いしてくれる数人の子たちにかなりお世話になりました。

運動会の演目は「ダンシング玉入れ(ダンスを踊ってから玉入れをする)」と「短距離走」。玉入れは所定の場所や振り付けが分からなくなる、短距離は出番まで待つのが難しい、走るスピードがかなり遅いなど、ハラハラしっぱなしでしたが、お友だちに助けてもらいながらなんとか頑張っていました。短距離走で娘がゆっくり走る中、みんなが拍手で応援してくれた時には号泣してしまいました。
うれしい出来事がたくさんあった反面、大きな罪悪感も……
うれしい出来事がたくさんあった反面、大きな罪悪感も……
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娘のお世話係のようになってしまった子たちには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、その保護者の方から「ウチの子わがままでどうしようもなかったけど、○ちゃん(娘)と接することで優しくなった」「人の気持ちを少し分かる子になった」と言っていただき、胸が温かくなったことを覚えています。
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一歩踏み出したからこそ見えた景色と、これからの思い

1学期だけ(しかも2ヶ月程度)でしたが、1年分以上の経験ができたような充実した学校生活でした。帰宅後に疲れから短時間の発作が数回出ることもありましたが、幸い日中はほとんど出ることはありませんでした。

障害のあるわが子を通常学級に通わせることについて否定的なコメントを目にすることもあります。そのような意見を持つことは理解できますし、優しく接してくれる方、温かく見守ってくれる方ばかりではありません。厚意に甘えて学校にお任せしすぎるのは、親のエゴともいえるかもしれません。

しかし、子どもの可能性を信じて親子二人三脚でチャレンジしてみる、無理だと思ったら別の選択をすることは、けっして悪いことばかりではないと思うのです。
たくさんの素晴らしい出会いや出来事、良い刺激、そしてその中で抱いた複雑な想い……。「インクルーシブ」な環境での葛藤や、先生・クラスメイトへの感謝と深い思いについても、また言葉にできたらと思っています。

執筆/かめ子

専門家コメント 初川久美子先生(臨床心理士・公認心理師)

長女さんの通常学級での小学校生活についてのコラムをありがとうございます。大変な手術を経て、5月半ばから合流した通常学級での小学校生活。周囲の子たちは入学後ひと月以上経ち、少しずつ学校生活に慣れ始めてきたところだったろうと思うので、そういう意味でも初めてづくしの生活は戸惑うことも多かったと思います。そして、かめ子さんは長女さんにずっと付き添われていたのですね。妊娠中だったとのことで、さまざまご苦労もあられたことと思います。本当にお疲れさまでした。

周囲のお子さんたちと長女さんの差や、小学校通常学級で求められる学習内容や生活上のスキルなど、さまざまなところで「無理をさせている」「罪悪感」など、苦しい気持ちにもなられたかと思います。長女さんからすると、初めての小学校生活かつ、2週間後に本番を迎える運動会など、一つひとつに精一杯臨むことの繰り返しだったでしょう。その中で、長女さんなりに楽しくできたこと、また、周囲のお子さんたちとのよき関わりなどもあったと思います。何より、長女さんが安心して学校生活を過ごせたのは、かめ子さんが常にそばにいてくださったおかげだろうと思います。チャレンジしてみないと見ることのできなかった景色や経験があり、もちろんそれはポジティブなものだけではなかったかもしれませんが、次につながる経験になっていたら何よりです。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
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https://h-navi.jp/column/article/35031140
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