ダウン症のある子どもへの接し方は?子育てや困りごとの対処法【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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ダウン症がある子どもの子育ての中で注意することや、工夫が必要なところはあるのでしょうか。 今回はダウン症のある子の子育てについて、困りごとの対処法の例も紹介していきます。

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監修: 小島道生
筑波大学 人間系 准教授
発達心理学をベースに、知的障害、ダウン症、発達障害のある人の心理と支援について研究をしている。特に、自尊感情、自己理解や主観的幸福感など内面世界を大切にした支援の在り方について追究している。
目次

ダウン症のある子どもの生活での困りごと

通常、ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と2本の性染色体の合計46本の染色体によって構成されています。ダウン症は21番目の染色体が3本あるために起こる先天性の疾患です。

ここではダウン症のある子どもの子育てについて「乳児期」「幼児期」「児童期以降」の3つの期間に分けてご紹介します。
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ダウン症とは?タイプの違いや発達の特徴、年齢別にみる生活の様子など【専門家監修】

乳児期

障害のあるなしに関わらず、乳児は免疫がまだついておらず抵抗力が未発達のため、病気にかかりやすい時期です。ダウン症のある子どもは、合併症を持って生まれてくることが多いので、より注意しなくてはいけません。
ダウン症のある子どもは、筋緊張低下を示す傾向があります。こうしたことが原因で、母乳やミルクを上手に吸って飲むことが難しい場合があります。また、同様の理由であまり泣けず、(周囲の大人が)空腹に気づくことが難しくなるため、赤ちゃんの様子を気にかけることが必要です。


母乳より哺乳瓶の方が力を使わず飲めるため、哺乳瓶を使った授乳を行う、もしくは母乳と哺乳瓶での授乳の混合にするという方法があります。また、哺乳瓶の穴の大きさがより大きいと飲みやすい場合があります。まめに体調や状態をチェックし、時間をかけてゆっくり飲ませてあげるといいでしょう

幼児期

自我が芽生えてくると、意志の強さやこだわりがみられるかもしれません。決まった服しか着なかったり、同じ道順を歩きたがったりすることもあります。時には大変なこともあると思いますが、なるべくあたたかく見守り、子どもの気持ちを尊重し、付き合うことが大切です

この時期には知的発達の遅れも見られ始めます。言葉が出るのがゆっくり、周りの子どもたちよりものんびりしているなど、ダウン症のある子どもは幼児期には知的発達に個人差はありますが、数ヶ月~半年程度遅れがみられます。
しかし、成長するにつれ知的発達の遅れが大きくなります。人により異なりますが、重度から軽度までの知的障害(知的発達症)がみられます。IQの平均は約50であるといわれています。

また、幼少期のころから肥満の傾向になる場合もあるため、食生活や適度に体を動かすようにするなど肥満を予防する対応が必要なこともあります。

※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。

児童期以降

小学校に入学すると、通常学級の授業 についていくことが難しいという壁にぶつかることが多いです。ダウン症のある子どもは、耳から理解することが困難なことがあるため、話を集中して聴くことが苦手な傾向があります。集団の中での一斉の指示を理解することが難しかったり、動作が緩慢なため、通常学級在籍の場合、授業についていくことが困難になることがあるかもしれません。

小学校までは、障害の程度が軽度であれば通常学級でも楽しく学べるケースもあります。しかし、中学、高校と進むにつれ、特別支援学級や特別支援学校を選択するケースが多く見られるようになります。

二次障害に注意

また、どの期間においても成長段階で二次障害に注意しましょう。適切な治療やサポートを受けられない場合、思春期以降にダウン症による主症状とは異なる症状や状態を引きおこしてしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的には「二次障害」ということがあります。

二次障害には以下のようなものがあります。
・うつ病
・不安障害
・不登校やひきこもり
・依存症
など

このような症状や状態が現れた場合には医療機関を受診したり、相談機関を利用するなどして、適切な処置や対応しましょう。普段から本人が生きづらさを感じない、適切な環境に整えることが大切です。周囲の人々は本人の気持ちを考えながら日々接することを意識づけるようにしましょう

ダウン症のある子どもへの接し方は?子育てのコツ

では、ダウン症の子どもの子育ての場合、どのような点に気をつければいいでしょうか?注意すべき点を9つ紹介したいと思います。

家での接し方のコツ

◇子どもにとって分かりやすい言葉 で詳しく説明し、じっくり付き合う
ダウン症がある子どもも反抗期を迎えます。最初の反抗期ともいわれる、2歳前後の時期は、自分の思いを伝えるための言語能力が発達していないことから起こるといわれています。

ダウン症がある子どもは発達が定型発達の子どもにくらべて緩やかなため、3歳ごろから始まり、反抗期が長く続くケースが多いようです。子どもにとって分かりやすい言葉 で説明し、じっくり付き合うようにしましょう。

◇こだわりを否定しない
こだわりが強く、頑固な面がある場合もありますが、それを否定するようなことは控えましょう。例えば、「決まった場所で決まった服を着る」「決まった場所に決まったおもちゃをしまう」などのこだわりは大人からすると些細なことに感じるかもしれませんが、ルーティンな行動やきまりは見通しが持てたり、安心感を得られたりする面もあり、本人にとって大切なことかもしれません

◇個性を伸ばす
ダウン症のある子どもも一人ひとり、個性があり、性格も異なります。症状に応じた対応方法はあるものの、基本的には子どもによって育て方は異なるでしょう。

筋緊張低下を示す傾向があったり、心臓の持病を併発していれば、通常の運動は難しいかもしれませんが、持病がなく、知的障害(知的発達症)が軽度であれば日常生活における制限も少ないでしょう。本人の好きなことや得意なことを見つけ、伸ばせるような環境を整えることが大切です

学校・学びごとに関するコツ

◇日常生活に結びつけて学ぶ
勉強によって得た知識や技術が、断片的になりやすい傾向があります。せっかく覚えたことも、実際の生活上で応用することが難しく、また、抽象的な説明を理解することが難しい場合があるため、実生活での体験を伴う具体的な学習が必要になります。

日常生活のなかで、さまざまな経験ができる機会を設け、学べるよう工夫することも大切です。

◇子どもの発達に合わせた学習を受ける
各教科を並列的に学習するよりも、子どもの心身の発達段階や障害の程度によって学習内容を決めることも大切です。

また、子どもの実際の生活に役立つ知識や技術、それらを有用に活用する力を身に着けられるようにすることは、将来の生活の質の担保のためにも大切でしょう。金銭感覚をつけたり、自己管理ができるなど、社会的自立に必要な基礎力を身につける学習をするのもよいとされています。

◇姿勢が保てる工夫をする
ダウン症のある子どもは筋緊張が低下していることが多く、姿勢が崩れやすいため、学校や家庭での椅子の座り方にも注意が必要です。

「足底全体が床にきちんとついていて足首が90度に曲がっていること」「腰が椅子のうしろについた状態で膝が椅子の端に接した状態で90度に曲がっていること」「腕を机の上に出したときに肘が90度に曲がっていること」などが目安になります。その子の足の長さに合った椅子を選ぶことが大切です

友人関係のコツ

◇理解してくれる友達をつくる
軽度な知的発達の遅れがある子どもがつまずくのは、小学4年生から5年生ごろが多いようです。中度・重度の知的障害(知的発達症)がある場合は、小学校入学時から特別支援学級や特別支援学校に通わせるケースが多いですが、軽度であれば通常学級に在籍するケースもあります。しかし、徐々に通常学級での授業についていくことが困難になっていくことも多いようです。

そんなときに大切なのは、その子のことを理解してくれる友だちです。障害の有無にかかわらず、その子自身の気持ちや特性を理解してくれる友人をつくることが大切です。

◇療育に通う
同じ環境の友達をつくる最初のきっかけにもなるのが療育です。支援者に相談することで、どう育てたらいいか、どのような環境設定や学習への支援が必要かなどを知る機会にもなります。

◇親自身が楽しくストレスフリーに生活する
ダウン症のある子どもは周囲の人の気持ちを汲み、感受性豊かだといわれています。保護者がイライラしていたり、ストレスを感じているとそれを感じて不安になってしまう子どももいます。

保護者自身が息が詰まらないよう、自分一人だけの時間を持つようにしたり、同じ環境の友達をつくることも大切です。療育施設は同じ環境の保護者が利用しています。自分自身のコミュニケーションの時間としても活用してみてはいかがでしょう。
次ページ「まとめ」

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