こんにちは、発達支援Laboランプです。ここでは、定期的に療育支援に関連するテーマについて、理論的な背景と合わせて発信しています。今回のテーマは「コミュニケーションを分割する?」です。
私たちのコミュニケーションは、ただ感情を伝え合うだけでなく、無意識のうちに「刺激」と「反応」という2つの要素に分けて考えられることがあります。この視点は、ABA(応用行動分析)という理論に基づいており、子どもたちの発達支援にもよく用いられています。ABA理論では、人の行動は何かの「刺激」に対する「反応」として捉え、行動を分解し、環境を調整することで、より適応的な行動が引き出せるとされています。しかし、この「分割」の概念を誤解すると、コミュニケーションが一方的な指示や制御に偏ってしまうだけでなく、人との関係性が崩れてしまいかねません。
たとえば、子どもが自分の意思を伝えようと泣く行動をしたとします。この行動をABA理論に基づいて「反応」として捉えると、まず「泣く」という反応を引き出す「刺激」が何であるかに注目します。おもちゃが取られた、何か不快な音が鳴った、など、子どもが泣く前に生じた「刺激」が何なのかを分析することで、行動の原因を明らかにし、適切な支援方法が見つかる可能性があります。これらのプロセスがABA理論の強みであり、行動のパターンや変化を具体的に理解する一助となるのです。
一方で、「泣く」という行動を単なる「問題」として取り上げ、安易に「静かにして」「泣かないで」などと指示を重ねてしまうと、行動の本質が見えなくなります。たとえ表面的には泣き止んだとしても、子ども自身が何を感じ、どのような支援を求めているかが置き去りにされてしまうでしょう。このような「分割」の誤用は、特に発達支援の場では避けるべきであり、支援者には慎重な対応が求められます。
また、日々のコミュニケーションを「刺激」と「反応」に分解して捉えることには、効果的な側面もありますが、全ての行動をそのまま「分割」で対応するわけではありません。支援者は「この反応はどのような背景があって現れたものか」と一歩引いて全体像を把握し、ただの行動変容・修正に終わらせない姿勢が大切ではないでしょうか。行動を通して子ども自身の気持ちや困難の背景を理解することで、支援がより豊かなものになり、関係性の中で信頼も深まっていきます。
ABA理論における「分割」の考え方は、あくまで支援の手段です。コミュニケーションとは、刺激と反応の単なる交換ではなく、人と人との心を通わせるプロセスといえるのではないでしょうか。「分割」の概念に加えてこの視点を持つことで、私たちは子どもたちの成長をより豊かに支えられるとランプでは考えています。
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第61回「コミュニケーションを分割する?」
支援の背景
24/10/30 20:20