子どもがわざと困らせるようなことをするとき、大人はつい「やめなさい」と言いたくなります。けれど、その一言が、子どもにとっては「見てもらえた」というご褒美になってしまうことがあります。大切なのは、反応しないことではなく、どの瞬間に反応するかです。
試し行動に反応しない、でも見捨てない
最近、試し行動についての相談が増えています。
「急に増えてきたんです」
「前はこんなにしなかったのに」
「わざと困らせているように見えるんです」
特に1月頃のような時期には、こうした“暴走”に近い行動について聞くことが多くなります。生活リズムの変化、疲れ、環境の切り替わり、気持ちの揺れ。子どもの中で何かが少しずつ溜まり、それが行動として表に出てくることがあります。
ただ、「試し行動」と一言で言っても、背景は一つではありません。
大きく分けると、二つのパターンがあります。
一つは、本当に大人の気を引きたい場合。
もう一つは、自分の中にある不安やストレスの吐き出し方がわからず、その折り合いをつけるために行動で表現している場合です。
後者の場合は、まず安心感やストレスの理解、環境調整が必要になります。行動だけを見て対応すると、本当に困っているサインを見落としてしまうことがあります。
今回扱いたいのは、前者です。
つまり、「気を引きたい」という目的で出ている試し行動への対応です。
ここで大切になるのが、ABAの考え方です。良い行動を強化し、望ましくない行動は強化しない。言葉にするとシンプルですが、現場で実践するにはかなり繊細な観察が必要になります。
そして、ここでよく誤解されるポイントがあります。
「消去する」とは、ただ無視することではありません。
望ましくない行動をしているときに、過剰に反応しない。けれど、良い行動になった瞬間には、すぐに反応する。ここが一番大切です。
悪い行動をしているときに反応しないのは、「あなたを見ていない」という意味ではありません。
むしろ、ずっと見ています。
見ているからこそ、良い行動に切り替わった一瞬を逃さない。その瞬間に、「今の行動は正しいよ」と伝える。これが本当の意味での介入です。
たとえば、子どもが「うんち、うんち」と言い続けている場面があるとします。
大人としては、つい言いたくなります。
「そんな汚い言葉言わないの」
「やめなさい」
「うんちなんて言いません」
でも、この反応そのものが、子どもにとっては強化になってしまうことがあります。
「言ったら見てもらえた」
「言ったら大人が反応した」
「言ったら場が動いた」
そうなると、その行動は減るどころか、むしろ増えていきます。
だから、「うんち、うんち」と言っている間は、あえて大きく反応しません。
もちろん、放置しているわけではありません。観察しています。次の瞬間を待っています。
子どもも息が続くわけではありません。
「うんち、うんち……」
その言葉が止まった一瞬。
その瞬間に、パッと見てあげる。
「静かにお話聞けてるね」
「今、ちゃんと聞けてたね」
「いい姿勢でいられたね」
このタイミングが大事です。
望ましくない行動に反応するのではなく、望ましい行動が出た瞬間に反応する。
ここで子どもは学びます。
「この行動をしたら見てもらえるんだ」
「こういう姿を大人は認めてくれるんだ」
「こっちの方法で関われるんだ」
子どもの行動は、反応によって形づくられていきます。
だからこそ、大人の反応はとても大きな意味を持ちます。
子どもは、叱られた内容よりも、「どの行動で大人が動いたか」を覚えていることがあります。
試し行動が強く出ているとき、私たちはつい“やめさせること”に意識が向きます。
でも、本当に大事なのは、減らしたい行動に注目することではなく、増やしたい行動を見つけることです。
悪い行動を削るだけでは、子どもの中に空白ができます。
その空白に、良い行動を入れていく必要があります。
静かに聞けた。
順番を待てた。
変な言葉を言わずに過ごせた。
先生の目を見られた。
座っていられた。
友だちの話を邪魔しなかった。
こうした小さな良い行動を見逃さずに拾うこと。
それを瞬時に褒めること。
この積み重ねによって、子どもの中で「どうすれば見てもらえるのか」が変わっていきます。
ラフダイの療育トレーニングでは、これを小集団の中で行っています。
小集団だからこそ、子ども一人ひとりの行動を細かく観察できます。先生たちがしっかり見て、必要なタイミングで介入し、良い行動が出た瞬間にアプローチすることができます。
これは、小集団ならではの大きなメリットの一つです。
大人数の中では、どうしても見逃してしまう瞬間があります。けれど、試し行動への対応では、その一瞬がとても重要です。
言葉が止まった瞬間。
姿勢が戻った瞬間。
目線が合った瞬間。
少しだけ我慢できた瞬間。
そこを見逃さずに拾えるかどうかで、行動の変化は大きく変わってきます。
そして、もう一つ大事なのが、エンタメの力です。
療育というと、どうしても「正しく教える」「直す」「改善する」というイメージが強くなりがちです。でも、子どもにとって本当に入りやすいのは、楽しいことです。
楽しいから参加できる。
楽しいからもう一回やってみたくなる。
楽しいから先生の声が届く。
楽しいから良い行動が自然に増えていく。
エンタメの力は、子どもの心を開く力でもあります。
こちらがどれだけ正しいことを言っても、子どもがこちらを見ていなければ届きません。けれど、楽しい空間の中であれば、子どもは自然と関わりに入ってきます。
その中で、良い行動を見つける。
その中で、望ましい関わり方を強化していく。
それが、私たちが大切にしているトレーニングの一つです。
「無視する」のではなく、「良い瞬間を待てる大人」でいること。
試し行動は、大人にとって本当にしんどいものです。
何度も同じことを言われたり、場を乱されたり、わざと困ることをされたりすると、冷静でいることが難しくなります。つい反応したくなります。つい注意したくなります。
でも、その行動の裏に「見てほしい」があるなら、私たちができることは、見方を変えることです。
困った行動を見ないのではありません。
その子が本当に身につけてほしい行動を、もっとよく見るのです。
そして、その行動が出た瞬間に伝える。
「今のいいね」
「それでいいよ」
「ちゃんとできてるよ」
子どもは、その反応を頼りに次の行動を選んでいきます。
だから、試し行動への対応は、我慢比べではありません。
大人がどれだけ無視できるかの勝負でもありません。
それは、子どもの中にある「見てほしい」という気持ちを、よりよい行動へつなげていく関わりです。
悪い行動を減らすことだけを目指すのではなく、良い行動が増える環境をつくること。
そのためには、大人が落ち着いて観察し、瞬間を見逃さず、適切に反応する必要があります。
子どもは、毎日少しずつ学んでいます。
「こうすれば叱られる」ではなく、
「こうすれば認められる」へ。
「困らせれば見てもらえる」ではなく、
「良い関わり方でも見てもらえる」へ。
その道筋をつくるのが、療育の大事な役割だと思っています。
試し行動が増えているときほど、子どもは何かを探っています。どこまで許されるのか。どうすれば関われるのか。自分は見てもらえているのか。
だからこそ、こちらも感情だけで返さず、丁寧に見ていきたい。
反応しない勇気と、褒めるタイミングを逃さない集中力。
その両方があってはじめて、子どもの行動は少しずつ変わっていきます。
試し行動に反応しない、でも見捨てない
最近、試し行動についての相談が増えています。
「急に増えてきたんです」
「前はこんなにしなかったのに」
「わざと困らせているように見えるんです」
特に1月頃のような時期には、こうした“暴走”に近い行動について聞くことが多くなります。生活リズムの変化、疲れ、環境の切り替わり、気持ちの揺れ。子どもの中で何かが少しずつ溜まり、それが行動として表に出てくることがあります。
ただ、「試し行動」と一言で言っても、背景は一つではありません。
大きく分けると、二つのパターンがあります。
一つは、本当に大人の気を引きたい場合。
もう一つは、自分の中にある不安やストレスの吐き出し方がわからず、その折り合いをつけるために行動で表現している場合です。
後者の場合は、まず安心感やストレスの理解、環境調整が必要になります。行動だけを見て対応すると、本当に困っているサインを見落としてしまうことがあります。
今回扱いたいのは、前者です。
つまり、「気を引きたい」という目的で出ている試し行動への対応です。
ここで大切になるのが、ABAの考え方です。良い行動を強化し、望ましくない行動は強化しない。言葉にするとシンプルですが、現場で実践するにはかなり繊細な観察が必要になります。
そして、ここでよく誤解されるポイントがあります。
「消去する」とは、ただ無視することではありません。
望ましくない行動をしているときに、過剰に反応しない。けれど、良い行動になった瞬間には、すぐに反応する。ここが一番大切です。
悪い行動をしているときに反応しないのは、「あなたを見ていない」という意味ではありません。
むしろ、ずっと見ています。
見ているからこそ、良い行動に切り替わった一瞬を逃さない。その瞬間に、「今の行動は正しいよ」と伝える。これが本当の意味での介入です。
たとえば、子どもが「うんち、うんち」と言い続けている場面があるとします。
大人としては、つい言いたくなります。
「そんな汚い言葉言わないの」
「やめなさい」
「うんちなんて言いません」
でも、この反応そのものが、子どもにとっては強化になってしまうことがあります。
「言ったら見てもらえた」
「言ったら大人が反応した」
「言ったら場が動いた」
そうなると、その行動は減るどころか、むしろ増えていきます。
だから、「うんち、うんち」と言っている間は、あえて大きく反応しません。
もちろん、放置しているわけではありません。観察しています。次の瞬間を待っています。
子どもも息が続くわけではありません。
「うんち、うんち……」
その言葉が止まった一瞬。
その瞬間に、パッと見てあげる。
「静かにお話聞けてるね」
「今、ちゃんと聞けてたね」
「いい姿勢でいられたね」
このタイミングが大事です。
望ましくない行動に反応するのではなく、望ましい行動が出た瞬間に反応する。
ここで子どもは学びます。
「この行動をしたら見てもらえるんだ」
「こういう姿を大人は認めてくれるんだ」
「こっちの方法で関われるんだ」
子どもの行動は、反応によって形づくられていきます。
だからこそ、大人の反応はとても大きな意味を持ちます。
子どもは、叱られた内容よりも、「どの行動で大人が動いたか」を覚えていることがあります。
試し行動が強く出ているとき、私たちはつい“やめさせること”に意識が向きます。
でも、本当に大事なのは、減らしたい行動に注目することではなく、増やしたい行動を見つけることです。
悪い行動を削るだけでは、子どもの中に空白ができます。
その空白に、良い行動を入れていく必要があります。
静かに聞けた。
順番を待てた。
変な言葉を言わずに過ごせた。
先生の目を見られた。
座っていられた。
友だちの話を邪魔しなかった。
こうした小さな良い行動を見逃さずに拾うこと。
それを瞬時に褒めること。
この積み重ねによって、子どもの中で「どうすれば見てもらえるのか」が変わっていきます。
ラフダイの療育トレーニングでは、これを小集団の中で行っています。
小集団だからこそ、子ども一人ひとりの行動を細かく観察できます。先生たちがしっかり見て、必要なタイミングで介入し、良い行動が出た瞬間にアプローチすることができます。
これは、小集団ならではの大きなメリットの一つです。
大人数の中では、どうしても見逃してしまう瞬間があります。けれど、試し行動への対応では、その一瞬がとても重要です。
言葉が止まった瞬間。
姿勢が戻った瞬間。
目線が合った瞬間。
少しだけ我慢できた瞬間。
そこを見逃さずに拾えるかどうかで、行動の変化は大きく変わってきます。
そして、もう一つ大事なのが、エンタメの力です。
療育というと、どうしても「正しく教える」「直す」「改善する」というイメージが強くなりがちです。でも、子どもにとって本当に入りやすいのは、楽しいことです。
楽しいから参加できる。
楽しいからもう一回やってみたくなる。
楽しいから先生の声が届く。
楽しいから良い行動が自然に増えていく。
エンタメの力は、子どもの心を開く力でもあります。
こちらがどれだけ正しいことを言っても、子どもがこちらを見ていなければ届きません。けれど、楽しい空間の中であれば、子どもは自然と関わりに入ってきます。
その中で、良い行動を見つける。
その中で、望ましい関わり方を強化していく。
それが、私たちが大切にしているトレーニングの一つです。
「無視する」のではなく、「良い瞬間を待てる大人」でいること。
試し行動は、大人にとって本当にしんどいものです。
何度も同じことを言われたり、場を乱されたり、わざと困ることをされたりすると、冷静でいることが難しくなります。つい反応したくなります。つい注意したくなります。
でも、その行動の裏に「見てほしい」があるなら、私たちができることは、見方を変えることです。
困った行動を見ないのではありません。
その子が本当に身につけてほしい行動を、もっとよく見るのです。
そして、その行動が出た瞬間に伝える。
「今のいいね」
「それでいいよ」
「ちゃんとできてるよ」
子どもは、その反応を頼りに次の行動を選んでいきます。
だから、試し行動への対応は、我慢比べではありません。
大人がどれだけ無視できるかの勝負でもありません。
それは、子どもの中にある「見てほしい」という気持ちを、よりよい行動へつなげていく関わりです。
悪い行動を減らすことだけを目指すのではなく、良い行動が増える環境をつくること。
そのためには、大人が落ち着いて観察し、瞬間を見逃さず、適切に反応する必要があります。
子どもは、毎日少しずつ学んでいます。
「こうすれば叱られる」ではなく、
「こうすれば認められる」へ。
「困らせれば見てもらえる」ではなく、
「良い関わり方でも見てもらえる」へ。
その道筋をつくるのが、療育の大事な役割だと思っています。
試し行動が増えているときほど、子どもは何かを探っています。どこまで許されるのか。どうすれば関われるのか。自分は見てもらえているのか。
だからこそ、こちらも感情だけで返さず、丁寧に見ていきたい。
反応しない勇気と、褒めるタイミングを逃さない集中力。
その両方があってはじめて、子どもの行動は少しずつ変わっていきます。