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トイレ拒否はワガママではなく「穴に落ちる恐怖」

こんにちは。
療育センターエコルドはぐみのおうち かすがいで、児童指導員・理学療法士をしています、内山隆範です。

9月28日。秋風が心地よく、日中も過ごしやすい季節になりましたね。

さて、2〜6歳の幼児期のお子さまを持つご家庭で、毎日お母さんやお父さんの頭を悩ませる大きなテーマの一つが「トイレトレーニング(排泄)」です。おうちで、こんな終わりの見えない格闘をしていませんか?

「オシッコはできるのに、ウンチだけは絶対に便座を嫌がり、部屋のカーテンの裏に隠れてオムツでしてしまう」
「トイレの空間に入るだけで『怖い!』と泣き叫び、便座に座らせようとすると海老反りになって大暴れする」
「もう幼稚園ではパンツで過ごせているのに、家では絶対にトイレに行ってくれない」
「どうしてウンチだけオムツなの!」「もうお兄ちゃんなんだから座れるでしょ!」と、狭いトイレの中で大泣きする我が子と格闘しながら、「私のトイトレの進め方が悪かったのかな…」と焦りやため息を抱えているお母さん。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。

でも、日々子どもたちの身体と心に向き合う理学療法士として、まず一番にお伝えさせてください。
お子さまが便座に座るのを激しく拒絶するのは、決して「親の教え方が悪い」からでも、「ワガママでなまけている」からでもありません。

ここには、国が定める療育の5領域における「健康・生活」の自立を阻む、「運動・感覚」のメカニズムによる強烈な『恐怖心』という、お子さま自身もどうにもできない明確な理由が隠されているのです。
大人の目には見えない、お腹と脳で鳴り響く「3つの警戒サイレン」

私たち大人からすると「ただ便座に座って用を足すだけ」に思えますが、発達の途中にあるお子さまの脳と身体の中では、私たちが想像する以上に過酷なエラーと恐怖のサイレンが鳴り響いています。
「足が宙に浮く+下は穴」=崖から落ちる恐怖(揺れのセンサーの過敏さ)

身体の傾きや重力を感じるセンサー(前庭覚といいます)が過敏な子にとって、「足が床につかない状態で、下が開いた穴(便器)の上に座る」という姿勢は、大人で例えるなら「足のつかない断崖絶壁の細い丸太の上に座らされている」のと同じレベルの強烈な恐怖(重力不安)を引き起こします。落ちるかもしれないという恐怖で身体がガチガチに緊張してしまい、排泄どころではなくなってしまうのです。

「踏ん張る」ための姿勢を保てない(体幹の弱さ)

ウンチを出すために「お腹に力を入れる(腹圧をかける)」には、身体の土台である体幹(抗重力筋)の力が必要です。生まれつき筋肉の張りがやわらかい(低緊張の)お子さまは、足が宙に浮いたグラグラの便座の上では、自分の姿勢を保つだけで精一杯になり、お腹に力を入れることが物理的にできません。彼らにとっては、「立ってオムツで踏ん張る」方が一番安全で、しっかりと力が入る理にかなった姿勢なのです。

トイレ空間の「感覚」が痛くて怖い(触覚・聴覚の過敏)

お尻に触れる便座の「ヒヤッ」とした冷たさ(触覚の痛み)や、密室で響き渡る換気扇のブーンという音、そして「ジャーッ!」と勢いよく水が流れる大きな音(聴覚の暴力)が、脳にとっての「危険信号」となってトイレを拒絶させているケースも非常に多く見られます。

今日からできる!「トイレの恐怖」を優しく取り除く3つのヒント

「怖くないよ!頑張って!」と無理やり便座に押さえつけることは、トイレ=恐怖の密室というトラウマを植え付けてしまい、かえってトイトレを長引かせてしまいます。今日からご家庭でも試せる、身体の根っこから「安心できる環境」を作ってあげるアプローチをご紹介しますね。

1. 何よりも最優先!「足裏ペタッ」の巨大な踏み台を用意する

足がブラブラする状態は絶対にNGです。お子さまが便座に座った時、「足の裏全体がピタッと着いて、膝がお尻よりも少し高くなる位置」に、しっかりとした広めの踏み台(足置き)を設置してあげてください。足元がどっしり安定するだけで「落ちる恐怖」がフワッと消え、自然とお腹に力が入りやすくなります。

2. トイレに入る前に「ギュッギュッ・ハグ」で安心をチャージ

トイレのドアを開ける前、お子さまの肩や背中をお母さんの腕で「ギュ〜ッ」と少し強めにハグしてあげましょう。関節や筋肉に強い圧(深圧覚)が入ることで、不安でフワフワしていた脳が「お母さんが守ってくれている」と落ち着き、一歩を踏み出す勇気に繋がります。

3. 「流す音」と「冷たさ」から感覚を物理的に守る

便座にはふわふわのカバーをつけて冷たさを防ぎます。また、水を流す音が怖い子には、「お耳を塞いで、トイレの外に出てから流そうね」と約束するか、イヤーマフ(防音耳当て)を貸してあげてください。恐怖の対象を「我慢させる」のではなく、物理的に取り除いてあげることが一番の近道です。

ご家庭だけで抱え込まず、私たちを頼ってください
成長とともに身体の使い方が上手になり、恐怖心が和らいでいくことは多いです。しかし、「トイレへの恐怖からウンチを極限まで我慢してしまい、重度の便秘を繰り返している」「トイレの空間に近づくだけで過呼吸のように泣き叫び、パニックで嘔吐してしまう」「トイトレのプレッシャーでお母さん自身が追い詰められ、お子さまに対して声を荒げてしまう毎日が続いている」といった場合は、心身の健康に大きなダメージを与えてしまうため、どうかご家庭だけで抱え込まず専門家にご相談ください。

エコルドはぐみのおうちでは、理学療法士の知見を活かし、5領域の「健康・生活」の自立に向けて、その土台となる「運動・感覚」からアプローチします。無理にトイレに座らせるのではなく、日々の運動遊びの中で体幹を鍛え、感覚の過敏さを和らげることで、お子さまが「自分から座ってみようかな」と思える心と身体の根っこを育てるサポートを行っています。

「また今日もカーテンの裏でしちゃった…」と、汚れた服や床を片付けながらため息をついているお母さん、本当にお疲れ様です。お子さまは決してなまけているわけではなく、自分の弱い筋肉や、得体の知れない「落ちる恐怖」と一生懸命に戦っている真っ最中なのです。いつでも町の身近な専門家として、私たちにご相談くださいね。

【求人のお知らせ】地域の子どもたちを一緒に支える仲間を募集しています!

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
エコルドでは現在、地域の子どもたち一人ひとりとより深く向き合っていくために、新たな「児童指導員」の仲間を募集しています。
私たちは単に子どもを「預かる」のではなく、今日お話ししたような「5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)」のエビデンスに基づいた療育を何よりも大切にしています。だからこそ、様々な専門性を持つ方の力が必要です。

保育士・幼稚園教諭の方
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の方
公認心理師・臨床心理士の方
心理学を学ばれた方(大学・大学院)

「資格はあるけれど経験が浅くて不安…」という方もご安心ください。エコルドでは、異なる専門性を持つスタッフがチームとなり、日々の支援について温かく話し合い、共に学び合う文化があります。
地域と手を取り合いながら、子どもたちの「できた!」の笑顔を増やすお手伝いがしたい。そんな想いを持ったあなたと働ける日を楽しみにしています。

学生さんのアルバイトやインターンシップからのスタート、見学だけでも大歓迎ですので、ページ内の【電話でのお問い合わせ】または【問い合わせフォーム】より、お気軽にご連絡ください!

療育センターエコルドはぐみのおうち かすがい
児童指導員・理学療法士 内山 隆範
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