こんにちは。
療育センターエコルドはぐみのおうち かすがいで、児童指導員・理学療法士をしています、内山隆範です。
9月29日。朝晩はすっかり肌寒くなり、半袖から長袖へ、そして上着を羽織る季節へと移り変わってきましたね。衣替えとともに服の構造が少し複雑になるこの時期、毎朝の着替えでこんな「終わりの見えないバトル」に直面していませんか?
「もう〇歳なのに、いつまでたってもボタンが自分で留められず『やって!』と怒る」
「『自分で着る!』と頑張るけれど、必ず前後ろ反対だったり、裏返しのまま着てしまう」
「袖の穴から手が出せず、服の中で腕が迷子になってパニックになって泣き叫ぶ」
朝の1分1秒を争う時間に、「なんで出来ないの!」「また裏返し!」とついイライラしてしまい、「うちの子、極端に不器用なのかな」「私が手伝いすぎたから自立が遅れている?」と、ご自身を責めてしまうお母さん。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、日々子どもたちの身体と脳に向き合う理学療法士として、まず一番にお伝えさせてください。
お子さまが着替えにつまずくのは、決して「親の甘やかし」でも「なまけている」からでもありません。
ここには、国が定める療育の5領域における「運動・感覚」と「認知・行動」のメカニズムによる、非常に高度な「脳の情報処理の壁」が隠されているのです。
大人の目には見えない、小さな身体で起きている「2つの大パニック」
私たち大人からすると「ただ穴にボタンを通すだけ」「服をかぶるだけ」に思えますが、発達の途中にあるお子さまの脳と身体の中では、私たちが想像する以上に過酷なエラーが起きています。
ボタンができないのは「指先」ではなく「体幹」が弱いから(運動・感覚の未熟さ)
理学療法士として一番お伝えしたいのがここです。実は、指先を器用に動かす(巧緻性)ためには、その土台となる「体幹(姿勢を保つ胴体の筋肉)」がどっしりと安定している必要があります。
生まれつき体幹の筋肉がやわらかい(低緊張の)お子さまは、座って姿勢を保つだけで精一杯になり、指先にまで上手く神経と力が伝わりません。大人に例えるなら、「グラグラ揺れるバランスボールの上に立ちながら、針に糸を通す」のと同じくらい、過酷で難易度の高い作業なのです。
服は「超難解な立体パズル」である(ボディイメージと空間認知のつまずき)
服の前後ろや裏表が分からないのは、「服という立体的な物体」を、「自分の身体(ボディイメージ)」にどう当てはめればいいのかという『空間認知(認知・行動の領域)』の力がまだ育ちきっていないためです。
特に、服を頭からかぶって視界が真っ暗になった瞬間、自分の手足がどこにあるのか分からなくなり、「閉じ込められた!」とパニックを起こして服の中で暴れてしまうお子さまもたくさんいます。
今日からできる!「着替えの壁」を優しく手助けする3つのヒント
「もっと指先に力を入れて!」「よく見て着なさい!」と叱ることは、パズルが解けずに混乱している脳をさらに追い詰めてしまいます。今日からご家庭でも試せる、身体の根っこから「できた!」をサポートするアプローチをご紹介しますね。
1. 着替えの前に、まずは「姿勢の土台」を安定させる
グラグラの状態でボタン留めはできません。椅子に座るなら「足の裏がペタッと着く踏み台」を置くか、床に座るなら「壁に背中をピタッとくっつけて」座らせてみてください。背中や足元が安定し、体幹が物理的にサポートされるだけで、驚くほど指先に力が入りやすくなります。
2. ボタン練習の前に「つまむ・ひっぱる」遊びを取り入れる
指先の感覚(固有受容覚)を育てるために、いきなりボタンを練習するのではなく、遊びの中で感覚を満たしてあげます。洗濯ばさみをたくさん挟む遊びや、シール剥がし、粘土を小さくちぎる遊びなど、「指先にギュッと力を入れる」経験を積むことで、ボタンをつまむ力が自然と育っていきます。
3. 「見えないパズル」を目で見える形にする(認知のサポート)
前後ろが分からない子には、「服の前(お腹側)」の裾に大好きなキャラクターのワッペンや目印をつけてあげてください。「〇〇ちゃんのオヘソと、アンパンマンがこんにちわするよ」と『目で見て分かるルール(視覚情報)』にするだけで、脳の混乱を防ぐことができます。
ご家庭だけで抱え込まず、私たちを頼ってください
成長とともに体幹がしっかりし、空間を把握する力が育ってくれば、少しずつ一人で着替えられるようになっていきます。
しかし、「手先を使うこと自体を激しく嫌がり、少しでも上手くいかないと服を破り捨てるほどのパニックになる」「服の肌触りやタグへのこだわり(触覚過敏)が異常に強く、特定の服しか絶対に着られない」「年齢に対して極端に不器用で、園で『自分だけができない』と劣等感を抱き、登園を渋るようになっている」といった場合は、集団生活での自信喪失に直結してしまうため、どうかご家庭だけで抱え込まず専門家にご相談ください。
エコルドはぐみのおうちでは、理学療法士の知見を活かし、5領域の「健康・生活」である着替えの自立に向けて、その土台となる「運動・感覚」からアプローチします。机の上でのボタン練習だけでなく、トランポリンやアスレチックなどの全身運動を通して体幹を鍛え、「自分の身体の地図(ボディイメージ)」を正確に描くことで、結果的に手先の器用さも引き出していくサポートを行っています。
毎朝、「早くしなさい」と時計を見ながら着替えを手伝い、ドッと疲れて1日をスタートさせているお母さん、本当にお疲れ様です。お子さまは決してなまけているわけではなく、自分の不器用な身体と未熟な脳をフル回転させて、難解なパズルに挑んでいる真っ最中なのです。いつでも町の身近な専門家として、私たちにご相談くださいね。
【求人のお知らせ】地域の子どもたちを一緒に支える仲間を募集しています!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
エコルドでは現在、地域の子どもたち一人ひとりとより深く向き合っていくために、新たな「児童指導員」の仲間を募集しています。
私たちは単に子どもを「預かる」のではなく、今日お話ししたような「5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)」のエビデンスに基づいた療育を何よりも大切にしています。だからこそ、様々な専門性を持つ方の力が必要です。
保育士・幼稚園教諭の方
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の方
公認心理師・臨床心理士の方
心理学を学ばれた方(大学・大学院)
「資格はあるけれど経験が浅くて不安…」という方もご安心ください。エコルドでは、異なる専門性を持つスタッフがチームとなり、日々の支援について温かく話し合い、共に学び合う文化があります。
地域と手を取り合いながら、子どもたちの「できた!」の笑顔を増やすお手伝いがしたい。そんな想いを持ったあなたと働ける日を楽しみにしています。
学生さんのアルバイトやインターンシップからのスタート、見学だけでも大歓迎ですので、ページ内の【電話でのお問い合わせ】または【問い合わせフォーム】より、お気軽にご連絡ください!
療育センターエコルドはぐみのおうち かすがい
児童指導員・理学療法士 内山 隆範
療育センターエコルドはぐみのおうち かすがいで、児童指導員・理学療法士をしています、内山隆範です。
9月29日。朝晩はすっかり肌寒くなり、半袖から長袖へ、そして上着を羽織る季節へと移り変わってきましたね。衣替えとともに服の構造が少し複雑になるこの時期、毎朝の着替えでこんな「終わりの見えないバトル」に直面していませんか?
「もう〇歳なのに、いつまでたってもボタンが自分で留められず『やって!』と怒る」
「『自分で着る!』と頑張るけれど、必ず前後ろ反対だったり、裏返しのまま着てしまう」
「袖の穴から手が出せず、服の中で腕が迷子になってパニックになって泣き叫ぶ」
朝の1分1秒を争う時間に、「なんで出来ないの!」「また裏返し!」とついイライラしてしまい、「うちの子、極端に不器用なのかな」「私が手伝いすぎたから自立が遅れている?」と、ご自身を責めてしまうお母さん。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、日々子どもたちの身体と脳に向き合う理学療法士として、まず一番にお伝えさせてください。
お子さまが着替えにつまずくのは、決して「親の甘やかし」でも「なまけている」からでもありません。
ここには、国が定める療育の5領域における「運動・感覚」と「認知・行動」のメカニズムによる、非常に高度な「脳の情報処理の壁」が隠されているのです。
大人の目には見えない、小さな身体で起きている「2つの大パニック」
私たち大人からすると「ただ穴にボタンを通すだけ」「服をかぶるだけ」に思えますが、発達の途中にあるお子さまの脳と身体の中では、私たちが想像する以上に過酷なエラーが起きています。
ボタンができないのは「指先」ではなく「体幹」が弱いから(運動・感覚の未熟さ)
理学療法士として一番お伝えしたいのがここです。実は、指先を器用に動かす(巧緻性)ためには、その土台となる「体幹(姿勢を保つ胴体の筋肉)」がどっしりと安定している必要があります。
生まれつき体幹の筋肉がやわらかい(低緊張の)お子さまは、座って姿勢を保つだけで精一杯になり、指先にまで上手く神経と力が伝わりません。大人に例えるなら、「グラグラ揺れるバランスボールの上に立ちながら、針に糸を通す」のと同じくらい、過酷で難易度の高い作業なのです。
服は「超難解な立体パズル」である(ボディイメージと空間認知のつまずき)
服の前後ろや裏表が分からないのは、「服という立体的な物体」を、「自分の身体(ボディイメージ)」にどう当てはめればいいのかという『空間認知(認知・行動の領域)』の力がまだ育ちきっていないためです。
特に、服を頭からかぶって視界が真っ暗になった瞬間、自分の手足がどこにあるのか分からなくなり、「閉じ込められた!」とパニックを起こして服の中で暴れてしまうお子さまもたくさんいます。
今日からできる!「着替えの壁」を優しく手助けする3つのヒント
「もっと指先に力を入れて!」「よく見て着なさい!」と叱ることは、パズルが解けずに混乱している脳をさらに追い詰めてしまいます。今日からご家庭でも試せる、身体の根っこから「できた!」をサポートするアプローチをご紹介しますね。
1. 着替えの前に、まずは「姿勢の土台」を安定させる
グラグラの状態でボタン留めはできません。椅子に座るなら「足の裏がペタッと着く踏み台」を置くか、床に座るなら「壁に背中をピタッとくっつけて」座らせてみてください。背中や足元が安定し、体幹が物理的にサポートされるだけで、驚くほど指先に力が入りやすくなります。
2. ボタン練習の前に「つまむ・ひっぱる」遊びを取り入れる
指先の感覚(固有受容覚)を育てるために、いきなりボタンを練習するのではなく、遊びの中で感覚を満たしてあげます。洗濯ばさみをたくさん挟む遊びや、シール剥がし、粘土を小さくちぎる遊びなど、「指先にギュッと力を入れる」経験を積むことで、ボタンをつまむ力が自然と育っていきます。
3. 「見えないパズル」を目で見える形にする(認知のサポート)
前後ろが分からない子には、「服の前(お腹側)」の裾に大好きなキャラクターのワッペンや目印をつけてあげてください。「〇〇ちゃんのオヘソと、アンパンマンがこんにちわするよ」と『目で見て分かるルール(視覚情報)』にするだけで、脳の混乱を防ぐことができます。
ご家庭だけで抱え込まず、私たちを頼ってください
成長とともに体幹がしっかりし、空間を把握する力が育ってくれば、少しずつ一人で着替えられるようになっていきます。
しかし、「手先を使うこと自体を激しく嫌がり、少しでも上手くいかないと服を破り捨てるほどのパニックになる」「服の肌触りやタグへのこだわり(触覚過敏)が異常に強く、特定の服しか絶対に着られない」「年齢に対して極端に不器用で、園で『自分だけができない』と劣等感を抱き、登園を渋るようになっている」といった場合は、集団生活での自信喪失に直結してしまうため、どうかご家庭だけで抱え込まず専門家にご相談ください。
エコルドはぐみのおうちでは、理学療法士の知見を活かし、5領域の「健康・生活」である着替えの自立に向けて、その土台となる「運動・感覚」からアプローチします。机の上でのボタン練習だけでなく、トランポリンやアスレチックなどの全身運動を通して体幹を鍛え、「自分の身体の地図(ボディイメージ)」を正確に描くことで、結果的に手先の器用さも引き出していくサポートを行っています。
毎朝、「早くしなさい」と時計を見ながら着替えを手伝い、ドッと疲れて1日をスタートさせているお母さん、本当にお疲れ様です。お子さまは決してなまけているわけではなく、自分の不器用な身体と未熟な脳をフル回転させて、難解なパズルに挑んでいる真っ最中なのです。いつでも町の身近な専門家として、私たちにご相談くださいね。
【求人のお知らせ】地域の子どもたちを一緒に支える仲間を募集しています!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
エコルドでは現在、地域の子どもたち一人ひとりとより深く向き合っていくために、新たな「児童指導員」の仲間を募集しています。
私たちは単に子どもを「預かる」のではなく、今日お話ししたような「5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)」のエビデンスに基づいた療育を何よりも大切にしています。だからこそ、様々な専門性を持つ方の力が必要です。
保育士・幼稚園教諭の方
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の方
公認心理師・臨床心理士の方
心理学を学ばれた方(大学・大学院)
「資格はあるけれど経験が浅くて不安…」という方もご安心ください。エコルドでは、異なる専門性を持つスタッフがチームとなり、日々の支援について温かく話し合い、共に学び合う文化があります。
地域と手を取り合いながら、子どもたちの「できた!」の笑顔を増やすお手伝いがしたい。そんな想いを持ったあなたと働ける日を楽しみにしています。
学生さんのアルバイトやインターンシップからのスタート、見学だけでも大歓迎ですので、ページ内の【電話でのお問い合わせ】または【問い合わせフォーム】より、お気軽にご連絡ください!
療育センターエコルドはぐみのおうち かすがい
児童指導員・理学療法士 内山 隆範