連休明けの朝。園の玄関で、同じクラスの子が先生に昨日の出来事を次々と話している声が聞こえてきました。わが子はうなずくだけで、なかなか言葉が出てきません。その姿を見て、胸が少しチクリとした――そんな経験はありませんか。
11月は七五三のシーズンでもあります。親戚と会う機会が増えると、言葉のことがいっそう気になるご家庭もあるかもしれません。こんな思いが浮かぶことはありませんか。
・「同い年の子と比べると、うちの子は言葉が少ない気がする」
・「会話が続かず、一言で終わってしまうことが多い」
・「親戚や周りの人に『まだお話しできないの?』と言われて気になる」
・「七五三の写真撮影や集まりで、挨拶や受け答えができるか心配」
まずお伝えしたいのは、これは親御さんの関わり方が悪いからでも、お子さんがわがままなわけでもありません。言葉の育ち方には、一人ひとり大きな違いがあります。比べる気持ちが生まれるのは、それだけお子さんのことを大切に見守っている証拠です。
■どうして、言葉がゆっくり育つのでしょう
言葉は、ひとつの力だけで育つものではありません。いくつかの力が重なり合って、少しずつ形になっていきます。
まず、「聞いて分かる力」と「口で伝える力」は、同じ速さで育つとは限りません。よく聞いていて分かっているのに、口に出すまでに時間がかかるお子さんもいます。頭の中では伝えたいことがあっても、言葉にする順番を組み立てるのにエネルギーが必要なのです。
次に、体の土台も関係しています。姿勢が安定して、呼吸が整い、口や舌を動かしやすくなると、声を出すこと自体が楽になります。音を聞き取る感覚の受け取り方が敏感だったり、逆に音の中から声を選び取るのが難しかったりすると、言葉のやり取りに集中しにくくなることもあります。これが、5領域でいう「運動・感覚」の視点です。
そしてもうひとつ、「伝えたい」という気持ちと、安心できるやり取りの経験です。急かされたり、間違いを直されたりする経験が重なると、話すこと自体が少し怖くなってしまうことがあります。逆に、待ってもらえた、伝わった、という経験が増えると、「もう一度伝えたい」という気持ちが育ちます。これが「認知・行動」や「人間関係・社会性」の視点です。
つまり、言葉がゆっくりなのは、怠けているからではありません。聞く力、体の土台、伝える気持ち――その組み合わせが、その子なりのペースで整っている途中なのです。
■おうちでできる3つの工夫
1.先回りせず、少し待って「実況」する
お子さんが何かを見たり、指さしたりしたとき、すぐに答えを渡すのではなく、2〜3秒だけ待ってみましょう。そして、子どもの視線の先を言葉にします。「あ、赤い車だね」「お水が飲みたいんだね」。正解を教えるのではなく、「あなたの気持ち、分かったよ」と伝えることが、言葉への近道になります。
2.短く、選べる形で返す
長い説明や質問を重ねると、子どもはどこから答えたらいいか分からなくなります。「りんご?みかん?」のように、実物や絵を見せながら2つの選択肢で聞いてみましょう。答えられたら、その言葉にもう1語だけ足して返します。「りんご」→「りんご、食べる」。直すのではなく、少しふくらませて返すのがポイントです。
3.絵本・歌・ごっこ遊びで、やり取りを楽しむ
絵本を読むときは、全部読むことより、好きなページで止まって一緒に声を出すことを楽しみましょう。「ワンワン、いたね」と繰り返したり、歌の決まったフレーズを一緒に歌ったり、ままごとで「どうぞ」「ありがとう」のやり取りをしたり。楽しいやり取りの中で、「伝わるとうれしい」という経験が、言葉の土台になります。
■こんなときは、ひとりで抱え込まずにご相談ください
・呼びかけへの反応がほとんどなく、音への反応が気になる
・言葉だけでなく、指さしや表情での伝え合いも少ないと感じる
・気になることが長く続き、園や健診で相談を勧められた
・言葉のことが気がかりで、親子ともに疲れがたまっている
言葉の育ちは、生活の工夫だけで決まるものではありません。気になることがあれば、保健センターやかかりつけの医療機関、園の先生などに相談することも大切です。私たちも、お子さんの日中の様子や体の使い方、やり取りの様子とあわせて、一緒に考えるお手伝いができます。
比べなくて大丈夫です。今日の小さな「伝わった」が、明日の言葉につながります。ゆっくりでも、お子さんのペースで育っていく力を、私たちも応援しています。
お困りのことがあれば、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
療育センターエコルドはぐみのおうちかすがい
内山隆範(児童指導員・理学療法士)
11月は七五三のシーズンでもあります。親戚と会う機会が増えると、言葉のことがいっそう気になるご家庭もあるかもしれません。こんな思いが浮かぶことはありませんか。
・「同い年の子と比べると、うちの子は言葉が少ない気がする」
・「会話が続かず、一言で終わってしまうことが多い」
・「親戚や周りの人に『まだお話しできないの?』と言われて気になる」
・「七五三の写真撮影や集まりで、挨拶や受け答えができるか心配」
まずお伝えしたいのは、これは親御さんの関わり方が悪いからでも、お子さんがわがままなわけでもありません。言葉の育ち方には、一人ひとり大きな違いがあります。比べる気持ちが生まれるのは、それだけお子さんのことを大切に見守っている証拠です。
■どうして、言葉がゆっくり育つのでしょう
言葉は、ひとつの力だけで育つものではありません。いくつかの力が重なり合って、少しずつ形になっていきます。
まず、「聞いて分かる力」と「口で伝える力」は、同じ速さで育つとは限りません。よく聞いていて分かっているのに、口に出すまでに時間がかかるお子さんもいます。頭の中では伝えたいことがあっても、言葉にする順番を組み立てるのにエネルギーが必要なのです。
次に、体の土台も関係しています。姿勢が安定して、呼吸が整い、口や舌を動かしやすくなると、声を出すこと自体が楽になります。音を聞き取る感覚の受け取り方が敏感だったり、逆に音の中から声を選び取るのが難しかったりすると、言葉のやり取りに集中しにくくなることもあります。これが、5領域でいう「運動・感覚」の視点です。
そしてもうひとつ、「伝えたい」という気持ちと、安心できるやり取りの経験です。急かされたり、間違いを直されたりする経験が重なると、話すこと自体が少し怖くなってしまうことがあります。逆に、待ってもらえた、伝わった、という経験が増えると、「もう一度伝えたい」という気持ちが育ちます。これが「認知・行動」や「人間関係・社会性」の視点です。
つまり、言葉がゆっくりなのは、怠けているからではありません。聞く力、体の土台、伝える気持ち――その組み合わせが、その子なりのペースで整っている途中なのです。
■おうちでできる3つの工夫
1.先回りせず、少し待って「実況」する
お子さんが何かを見たり、指さしたりしたとき、すぐに答えを渡すのではなく、2〜3秒だけ待ってみましょう。そして、子どもの視線の先を言葉にします。「あ、赤い車だね」「お水が飲みたいんだね」。正解を教えるのではなく、「あなたの気持ち、分かったよ」と伝えることが、言葉への近道になります。
2.短く、選べる形で返す
長い説明や質問を重ねると、子どもはどこから答えたらいいか分からなくなります。「りんご?みかん?」のように、実物や絵を見せながら2つの選択肢で聞いてみましょう。答えられたら、その言葉にもう1語だけ足して返します。「りんご」→「りんご、食べる」。直すのではなく、少しふくらませて返すのがポイントです。
3.絵本・歌・ごっこ遊びで、やり取りを楽しむ
絵本を読むときは、全部読むことより、好きなページで止まって一緒に声を出すことを楽しみましょう。「ワンワン、いたね」と繰り返したり、歌の決まったフレーズを一緒に歌ったり、ままごとで「どうぞ」「ありがとう」のやり取りをしたり。楽しいやり取りの中で、「伝わるとうれしい」という経験が、言葉の土台になります。
■こんなときは、ひとりで抱え込まずにご相談ください
・呼びかけへの反応がほとんどなく、音への反応が気になる
・言葉だけでなく、指さしや表情での伝え合いも少ないと感じる
・気になることが長く続き、園や健診で相談を勧められた
・言葉のことが気がかりで、親子ともに疲れがたまっている
言葉の育ちは、生活の工夫だけで決まるものではありません。気になることがあれば、保健センターやかかりつけの医療機関、園の先生などに相談することも大切です。私たちも、お子さんの日中の様子や体の使い方、やり取りの様子とあわせて、一緒に考えるお手伝いができます。
比べなくて大丈夫です。今日の小さな「伝わった」が、明日の言葉につながります。ゆっくりでも、お子さんのペースで育っていく力を、私たちも応援しています。
お困りのことがあれば、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
療育センターエコルドはぐみのおうちかすがい
内山隆範(児童指導員・理学療法士)