朝、積み木のタワーがあと少しで完成しそうなとき。
「そろそろ出かけるよ」と声をかけた途端、お子さんが泣き出したり、床に座り込んで動けなくなったり――そんな場面はありませんか。
11月に入り、朝晩の冷え込みがぐっと増してきました。文化の日の連休が明けて生活リズムが戻る時期でもあり、七五三や園・学校の行事で「いつもと違う予定」が増える時期でもあります。そんなとき、こんな思いが浮かぶことはありませんか。
・「遊びをやめるとき、いつも大泣きになってしまう」
・「お出かけ先や予定が変わると、パニックになってしまう」
・「『あと少し』と言っても、なかなか伝わらない」
・「外でも同じようになるのではと、出かけるのが不安になる」
まずお伝えしたいのは、これは親御さんの声かけが悪いからでも、お子さんがわがままなわけでもありません。切り替えが苦手なのには、ちゃんと理由があります。困っているのは、お子さん自身なのです。
■どうして、切り替えがつらいのでしょう
ひとつめは、「頭の中の一日の地図」が急に消えてしまうことです。お子さんは、今日これから何をするかを頭の中で描いて安心しています。そこに突然「予定変更」が入ると、地図が消えて「次に何をすればいいか分からない」状態になります。分からないことが不安になり、泣いたり動けなくなったりするのです。これが、5領域でいう「認知・行動」の視点です。
ふたつめは、注意の切り替えに時間がかかることです。夢中になっている遊びほど、脳のギアは高速で回っています。そこに急ブレーキをかけるように「はい、おしまい」と言われると、気持ちがついていきません。集中する力が強いお子さんほど、切り替えにエネルギーが必要なのです。
みっつめは、体の状態が重なることです。朝の冷え込みで体がこわばっていたり、連休明けで疲れが残っていたり、おなかがすいていたりすると、ふだんなら受け入れられる変更でも、つらくなってしまいます。感覚の受け取り方が敏感なお子さんは、周りの音や人の多さにも影響を受けやすく、気持ちの切り替えがさらに難しくなります。これが「運動・感覚」や「健康・生活」の視点です。
つまり、切り替えのつらさは「聞き分けの悪さ」ではありません。見通し、注意の切り替え、体の状態――その3つが重なって起きているのです。
■おうちでできる3つの工夫
1.終わりを「見える形」で予告し、次もセットで伝える
「あと少し」は、子どもには長さが分かりにくい言葉です。「積み木をあと3個置いたら、靴を履くよ」のように、回数と次の行動をセットで伝えましょう。砂時計やタイマーで残り時間を見せるのもおすすめです。終わることだけでなく「次に何をするか」が分かると、安心して切り替えやすくなります。
2.「おしまいの儀式」と「自分で決める」を取り入れる
毎回同じ合図で終わる習慣をつくりましょう。「積み木にバイバイ、また明日ね」と声をかけて片付ける、終わったら「次のお手伝い係」をお願いする――そんな小さな儀式が、気持ちの区切りになります。さらに「あと何回にする?」とお子さん自身に決めてもらうと、「自分で決めた約束」になり、守ろうという気持ちが育ちます。
3.予定が変わるときは「変わったこと」と「変わらないこと」を短く伝える
お出かけ先が急に変わる日は、紙やカレンダーに予定を書き、変わった予定に線を引いて、代わりの予定を横に置いて見せましょう。口で何度も説明するより、目で見える形の方が安心できます。そして、泣いている最中は説明を増やさず、まず気持ちを代弁します。「楽しみにしてたのに、残念だったね」。気持ちを受け止めてもらえたら、短い言葉で次の見通しを伝えてみましょう。元気な日に「もしも予定が変わったらどうする?」とひとつだけ練習しておくのも、次への備えになります。
■こんなときは、ひとりで抱え込まずにご相談ください
・切り替えのつらさが毎日のように続き、生活に大きな影響が出ている
・泣くだけでなく、物を壊したり、自分を傷つけたりする様子がある
・園や学校からも、切り替えについて相談を勧められた
・対応に悩み、親子ともに疲れがたまっている
切り替えの困りごとは、生活の工夫だけで決まるものではありません。気になることがあれば、園や学校、保健センター、かかりつけの医療機関などに相談することも大切です。私たちも、お子さんの日中の様子や体の使い方とあわせて、一緒に考えるお手伝いができます。
「やめなさい」ではなく「次はこうだよ」。見通しがひとつ見えるだけで、切り替えは少しずつ楽になっていきます。今日の小さな「できた」が、明日の安心につながりますように。
お困りのことがあれば、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
療育センターエコルドはぐみのおうちかすがい
内山隆範(児童指導員・理学療法士)
「そろそろ出かけるよ」と声をかけた途端、お子さんが泣き出したり、床に座り込んで動けなくなったり――そんな場面はありませんか。
11月に入り、朝晩の冷え込みがぐっと増してきました。文化の日の連休が明けて生活リズムが戻る時期でもあり、七五三や園・学校の行事で「いつもと違う予定」が増える時期でもあります。そんなとき、こんな思いが浮かぶことはありませんか。
・「遊びをやめるとき、いつも大泣きになってしまう」
・「お出かけ先や予定が変わると、パニックになってしまう」
・「『あと少し』と言っても、なかなか伝わらない」
・「外でも同じようになるのではと、出かけるのが不安になる」
まずお伝えしたいのは、これは親御さんの声かけが悪いからでも、お子さんがわがままなわけでもありません。切り替えが苦手なのには、ちゃんと理由があります。困っているのは、お子さん自身なのです。
■どうして、切り替えがつらいのでしょう
ひとつめは、「頭の中の一日の地図」が急に消えてしまうことです。お子さんは、今日これから何をするかを頭の中で描いて安心しています。そこに突然「予定変更」が入ると、地図が消えて「次に何をすればいいか分からない」状態になります。分からないことが不安になり、泣いたり動けなくなったりするのです。これが、5領域でいう「認知・行動」の視点です。
ふたつめは、注意の切り替えに時間がかかることです。夢中になっている遊びほど、脳のギアは高速で回っています。そこに急ブレーキをかけるように「はい、おしまい」と言われると、気持ちがついていきません。集中する力が強いお子さんほど、切り替えにエネルギーが必要なのです。
みっつめは、体の状態が重なることです。朝の冷え込みで体がこわばっていたり、連休明けで疲れが残っていたり、おなかがすいていたりすると、ふだんなら受け入れられる変更でも、つらくなってしまいます。感覚の受け取り方が敏感なお子さんは、周りの音や人の多さにも影響を受けやすく、気持ちの切り替えがさらに難しくなります。これが「運動・感覚」や「健康・生活」の視点です。
つまり、切り替えのつらさは「聞き分けの悪さ」ではありません。見通し、注意の切り替え、体の状態――その3つが重なって起きているのです。
■おうちでできる3つの工夫
1.終わりを「見える形」で予告し、次もセットで伝える
「あと少し」は、子どもには長さが分かりにくい言葉です。「積み木をあと3個置いたら、靴を履くよ」のように、回数と次の行動をセットで伝えましょう。砂時計やタイマーで残り時間を見せるのもおすすめです。終わることだけでなく「次に何をするか」が分かると、安心して切り替えやすくなります。
2.「おしまいの儀式」と「自分で決める」を取り入れる
毎回同じ合図で終わる習慣をつくりましょう。「積み木にバイバイ、また明日ね」と声をかけて片付ける、終わったら「次のお手伝い係」をお願いする――そんな小さな儀式が、気持ちの区切りになります。さらに「あと何回にする?」とお子さん自身に決めてもらうと、「自分で決めた約束」になり、守ろうという気持ちが育ちます。
3.予定が変わるときは「変わったこと」と「変わらないこと」を短く伝える
お出かけ先が急に変わる日は、紙やカレンダーに予定を書き、変わった予定に線を引いて、代わりの予定を横に置いて見せましょう。口で何度も説明するより、目で見える形の方が安心できます。そして、泣いている最中は説明を増やさず、まず気持ちを代弁します。「楽しみにしてたのに、残念だったね」。気持ちを受け止めてもらえたら、短い言葉で次の見通しを伝えてみましょう。元気な日に「もしも予定が変わったらどうする?」とひとつだけ練習しておくのも、次への備えになります。
■こんなときは、ひとりで抱え込まずにご相談ください
・切り替えのつらさが毎日のように続き、生活に大きな影響が出ている
・泣くだけでなく、物を壊したり、自分を傷つけたりする様子がある
・園や学校からも、切り替えについて相談を勧められた
・対応に悩み、親子ともに疲れがたまっている
切り替えの困りごとは、生活の工夫だけで決まるものではありません。気になることがあれば、園や学校、保健センター、かかりつけの医療機関などに相談することも大切です。私たちも、お子さんの日中の様子や体の使い方とあわせて、一緒に考えるお手伝いができます。
「やめなさい」ではなく「次はこうだよ」。見通しがひとつ見えるだけで、切り替えは少しずつ楽になっていきます。今日の小さな「できた」が、明日の安心につながりますように。
お困りのことがあれば、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
療育センターエコルドはぐみのおうちかすがい
内山隆範(児童指導員・理学療法士)