朝、着替えの時間。新しいセーターを着せようとしたら、お子さんが首をすくめて「チクチクする!」と泣き出してしまった――そんな朝はありませんか。
明日11月7日は「立冬」。暦の上では冬の始まりで、今週末からはグッと冷え込み、セーターやコートの出番が増える時期です。服が厚くなるほど、タグや縫い目、ウールのチクチクが気になるお子さんもいます。そんなとき、こんな思いが浮かぶことはありませんか。
・「掃除機やドライヤー、トイレのハンドドライヤーの音で耳をふさぐ」
・「新しい服のタグや縫い目を嫌がって、着替えに時間がかかる」
・「人混みやざわざわした場所に行きたがらない」
・「髪を洗う・切るときや、歯みがきを嫌がる」
・「『わがまま』『慣れさせればいい』と言われて、どうしたらいいか分からない」
まずお伝えしたいのは、これは親御さんのしつけが悪いからでも、お子さんがわがままなわけでもありません。音や触感がつらいのは、感じ方の違いです。困っているのは、お子さん自身なのです。
■どうして、音や触感がつらいのでしょう
ひとつめは、感覚の「ボリューム」が大きめに届いていることです。私たちの脳には、気にならない音や服の感触を「背景」として小さくするフィルターのような働きがあります。ところが、そのフィルターがゆるやかなお子さんでは、チャイムの音も、セーターのチクチクも、体に直接響く大きな刺激として届いてしまいます。聴力そのものに問題がないことも多く、「聞こえすぎる」「感じすぎる」ことがつらさの正体です。これが、5領域でいう「運動・感覚」の視点です。
ふたつめは、体が「危険だ」と感じて、守りのスイッチが入ることです。突然の大きな音や、チクチクする服の刺激が続くと、体は緊張して、心拍が速くなったり、逃げたくなったりします。耳をふさいだり、その場から離れたり、泣き出したりするのは、体を守ろうとする自然な反応です。「聞き分けが悪い」のではなく、体ががんばって自分を守っているのです。
みっつめは、疲れや寒さが重なると、つらさが増すことです。朝の冷え込みで体がこわばっていたり、寝不足や疲れが残っていたりすると、ふだんなら我慢できる刺激でも、つらく感じやすくなります。立冬を前に服が厚くなり、行事や人混みが増えるこの時期は、感覚の負担が重なりやすい時期でもあります。これが「健康・生活」や「認知・行動」の視点です。
つまり、音や触感のつらさは「慣れていないから」ではありません。感覚の受け取り方、体の守りの反応、そしてその日の体調――その3つが重なって起きているのです。
■おうちでできる3つの工夫
1.「何が・いつ・どのくらい」を一緒に書き出す
まず、お子さんと一緒に「つらいものリスト」を作ってみましょう。「掃除機の音」「セーターのタグ」「ハンドドライヤー」など、具体的に書き出すだけで、家族みんなで対策を考えやすくなります。言葉で伝えにくいときは、絵や選択肢、「0〜10のつらさメーター」を使うのもおすすめです。リストができたら、園や学校の先生にも伝えやすくなります。
2.音が鳴る前に「予告」して、逃げ場を決めておく
掃除機やドライヤーを使う前に「今から音が鳴るよ」と一言伝えるだけで、驚きやつらさが小さくなることがあります。つらい場面では、イヤーマフや耳せんを試してみる家庭もあります。外出先では「つらくなったら、ここで休んでいいよ」と静かな場所を前もって決めておくと、お子さんも安心して出かけられます。音をなくすのではなく、「予測できて、逃げられる」ことが大切です。
3.服は「選べる」工夫を
タグを切ったり、縫い目が当たらないよう裏返して着たり、綿の肌着を一枚はさむだけでも、チクチクはぐっと楽になります。お店では、お子さん自身に素材を触って選んでもらうのもおすすめです。「今日はこの服」と自分で選べると、着ることへの抵抗がやわらぐこともあります。新しい服は、短い時間から少しずつ慣らしていきましょう。
■こんなときは、ご相談ください
・耳の痛みを訴える、急に音の受け取り方が変わった
・つらさが強く、日常生活に大きな支障が出ている
・どう対応すればいいか、家族だけでは分からなくなった
感覚の感じ方は、お子さん一人ひとり違います。「慣れさせなきゃ」と無理に我慢させる必要はありません。つらいものを知って、少しずつ工夫を重ねることが、お子さんの安心につながります。
お子さんの「つらい」を、どうぞ一人で抱え込まないでください。私たちも一緒に考えます。見学やご相談は、いつでもお気軽にどうぞ。
療育センターエコルド はぐみのおうち かすがい
児童指導員・理学療法士 内山隆範
明日11月7日は「立冬」。暦の上では冬の始まりで、今週末からはグッと冷え込み、セーターやコートの出番が増える時期です。服が厚くなるほど、タグや縫い目、ウールのチクチクが気になるお子さんもいます。そんなとき、こんな思いが浮かぶことはありませんか。
・「掃除機やドライヤー、トイレのハンドドライヤーの音で耳をふさぐ」
・「新しい服のタグや縫い目を嫌がって、着替えに時間がかかる」
・「人混みやざわざわした場所に行きたがらない」
・「髪を洗う・切るときや、歯みがきを嫌がる」
・「『わがまま』『慣れさせればいい』と言われて、どうしたらいいか分からない」
まずお伝えしたいのは、これは親御さんのしつけが悪いからでも、お子さんがわがままなわけでもありません。音や触感がつらいのは、感じ方の違いです。困っているのは、お子さん自身なのです。
■どうして、音や触感がつらいのでしょう
ひとつめは、感覚の「ボリューム」が大きめに届いていることです。私たちの脳には、気にならない音や服の感触を「背景」として小さくするフィルターのような働きがあります。ところが、そのフィルターがゆるやかなお子さんでは、チャイムの音も、セーターのチクチクも、体に直接響く大きな刺激として届いてしまいます。聴力そのものに問題がないことも多く、「聞こえすぎる」「感じすぎる」ことがつらさの正体です。これが、5領域でいう「運動・感覚」の視点です。
ふたつめは、体が「危険だ」と感じて、守りのスイッチが入ることです。突然の大きな音や、チクチクする服の刺激が続くと、体は緊張して、心拍が速くなったり、逃げたくなったりします。耳をふさいだり、その場から離れたり、泣き出したりするのは、体を守ろうとする自然な反応です。「聞き分けが悪い」のではなく、体ががんばって自分を守っているのです。
みっつめは、疲れや寒さが重なると、つらさが増すことです。朝の冷え込みで体がこわばっていたり、寝不足や疲れが残っていたりすると、ふだんなら我慢できる刺激でも、つらく感じやすくなります。立冬を前に服が厚くなり、行事や人混みが増えるこの時期は、感覚の負担が重なりやすい時期でもあります。これが「健康・生活」や「認知・行動」の視点です。
つまり、音や触感のつらさは「慣れていないから」ではありません。感覚の受け取り方、体の守りの反応、そしてその日の体調――その3つが重なって起きているのです。
■おうちでできる3つの工夫
1.「何が・いつ・どのくらい」を一緒に書き出す
まず、お子さんと一緒に「つらいものリスト」を作ってみましょう。「掃除機の音」「セーターのタグ」「ハンドドライヤー」など、具体的に書き出すだけで、家族みんなで対策を考えやすくなります。言葉で伝えにくいときは、絵や選択肢、「0〜10のつらさメーター」を使うのもおすすめです。リストができたら、園や学校の先生にも伝えやすくなります。
2.音が鳴る前に「予告」して、逃げ場を決めておく
掃除機やドライヤーを使う前に「今から音が鳴るよ」と一言伝えるだけで、驚きやつらさが小さくなることがあります。つらい場面では、イヤーマフや耳せんを試してみる家庭もあります。外出先では「つらくなったら、ここで休んでいいよ」と静かな場所を前もって決めておくと、お子さんも安心して出かけられます。音をなくすのではなく、「予測できて、逃げられる」ことが大切です。
3.服は「選べる」工夫を
タグを切ったり、縫い目が当たらないよう裏返して着たり、綿の肌着を一枚はさむだけでも、チクチクはぐっと楽になります。お店では、お子さん自身に素材を触って選んでもらうのもおすすめです。「今日はこの服」と自分で選べると、着ることへの抵抗がやわらぐこともあります。新しい服は、短い時間から少しずつ慣らしていきましょう。
■こんなときは、ご相談ください
・耳の痛みを訴える、急に音の受け取り方が変わった
・つらさが強く、日常生活に大きな支障が出ている
・どう対応すればいいか、家族だけでは分からなくなった
感覚の感じ方は、お子さん一人ひとり違います。「慣れさせなきゃ」と無理に我慢させる必要はありません。つらいものを知って、少しずつ工夫を重ねることが、お子さんの安心につながります。
お子さんの「つらい」を、どうぞ一人で抱え込まないでください。私たちも一緒に考えます。見学やご相談は、いつでもお気軽にどうぞ。
療育センターエコルド はぐみのおうち かすがい
児童指導員・理学療法士 内山隆範