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筋力よりも筋肉をコントロールする力が大切


「子どもがダラダラしていると、つい
『やる気がないの?』『筋力が弱いのかな?』と思ってしまいがちですが、実はそうではない」——これは、子どもの発達を考える上で非常に重要な視点です。
この現象の根本にある「体幹をコントロールする脳のシステム」について、理学療法や発達支援の視点お話しします。



1. 「筋力(筋肉の量)」と「脳のシステム」の違い

多くの人が「姿勢を保つ=筋力(腹筋や背筋)が必要」と考えがちですが、実は姿勢の保持に最も重要なのは、筋肉の量そのものではなく、脳が筋肉の「張り(緊張度)」を自動でコントロールするシステムです。 

• 筋力(パワー): 重いものを持ったり、走ったりするときに使う筋肉の力。
• 脳のシステム(筋緊張のコントロール): 意識しなくても、体がクニャクニャ崩れないように筋肉を「ちょうどいい硬さ」に保つ無意識の働き。

ダラダラしてしまう(姿勢を保てない)子どもは、この「ちょうどいい硬さに保つ脳の指令」がうまく働いておらず、筋肉が常に「スイッチOFF」に近い緩んだ状態(低緊張に近い状態)になっていることが多いのです。



2. 関わっている「3つの脳のシステム」

具体的には、脳のいくつかの場所や感覚のシステムが関係しています。
① 姿勢を自動調整する「脳幹と小脳」
私たちが「背筋を伸ばそう」と意識しなくても姿勢を保てるのは、脳の奥深くにある脳幹(のうかん)や小脳(しょうのう)が、24時間体制で姿勢をコントロールしているからです。
この自動ブレーキ・自動調整システムへの脳の指令がスムーズでないと、重力に負けて体がすぐに潰れて(ダラダラして)しまいます。

② 体の傾きをキャッチする「前庭感覚(ぜんていかんかく)」
耳の奥にあるセンサーで、「頭の傾き」「スピード」「重力」を感じ取る感覚です。
この前庭感覚が脳に正しく伝わることで、脳は「おっと、体が傾いたから背筋をピッと起こそう」と指令を出します。このセンサーの働きが未熟だと、体が傾いていることに脳が気づきにくく、姿勢が崩れていきます。

③ 自分の体のパーツを知る「固有受容感覚(こゆうじゅようかんかく)」
筋肉や関節にあるセンサーで、「自分の手足が今どこにあって、どれくらい力が入っているか」を脳に伝える感覚です。
この感覚の働きが弱いと、脳は自分の体がどうなっているか(地図を持っていないような状態)把握しづらいため、筋肉に適度な力を入れ続けることができず、机に寝そべったり、椅子の背もたれに寄りかかったりして、外部の力を使って体を支えようとします。


3. なぜ「やる気」の問題に見えてしまうのか?

脳のシステムがうまく働いていない子どもは、「ただ座っているだけ」で、一般的な人の何倍ものエネルギーを消耗しています。
普通なら無意識にできる「姿勢保持」を、脳のシステムが助けてくれないため、本人の「強い意識(がんばり)」だけで無理やり支えている状態です。そのため、すぐに脳も体も疲れてしまい、結果として「やる気がなさそうに見える」「集中力が続かずダラダラする」という状態になって現れます。
つまり、ダラダラはサボっているのではなく、「疲れたからこれ以上がんばれない」という体からのサインなのです。


4. 改善のためにできるアプローチ(脳への刺激)

この脳のシステムは、筋トレのように「腹筋運動」をしてもなかなか育ちません。「脳に正しい感覚の刺激を送る遊びや運動」が効果的です。
• 前庭感覚を刺激する: ブランコ、ジャングルジム、お馬さんごっこ、寝転がってゴロゴロ転がるなど、頭の位置が大きく動く遊び。
• 固有感覚を刺激する: 雑巾がけ、手押し車、おしくらまんじゅう、重いもの(おもちゃの箱など)を運ぶなど、筋肉や関節に「グッと抵抗(圧)」がかかる活動。


子どものダラダラは、根性論や筋力不足ではなく、「重力に抵抗して体を起こす脳のネットワークが、まだ上手に連携できていない状態」です。
「姿勢を正しなさい!」と厳しくするよりも、遊びの中で脳のシステム(感覚統合)を育ててあげるアプローチが、根本的な解決につながります。


療育センターエコルド はぐみのおうち
理学療法士 内山明奈
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