アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人が向いている仕事は?向いていない仕事とは?

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人は、その特性が仕事の向き不向きに大きく反映されやすいですが、個々にあった職業を選ぶことで離職を抑えられたり、働きやすい環境を手に入れることが可能です。アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の特性から、一般的に向いている・向いていないと考えられる仕事について、以下に述べていきます。

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人が得意と言われている仕事

・集中してできるもの
・目に見えるものを取り扱う
・イレギュラー対応が少ない
・規則性、法則性が高い
・人間関係が複雑でない環境

上記5つはアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人が働きやすいスキル・環境です。同症候群の人は、自分の関心に応じた知識を掘り下げ、専門性を高めていくことが得意です。興味のあるものはとことん突き詰める特性があるので、そういった分野ではかなりの集中力を発揮します。向いている仕事の例として下記に5つ紹介します。あくまで一例なので、アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人すべてに当てはまるわけではありません。個々にあった仕事、興味を持てる仕事を選ぶことが大切です。

■研究職(統計学者、物理学者など)
■コンピュータープログラマー、SE(システムエンジニア)
■ゲーム、ウェブ、自動車、工業関連の興味関心の高い領域での職業
■デザイナーなどの独創性を生かして働ける職業
■法律などを扱う専門事務職

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人が苦手と言われている仕事

・人間関係が複雑に絡む(マネジメント、クレーム処理など)
・複数のタスクを抱える
・イレギュラー対応が必要になる
・先を予測して行動する
・相手の表情や心情を読む

上記はアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人が苦手なことです。このようなスキルが強く必要とされる職場では働きにくかったり、辛い思いをしたりして離職してしまう可能性もあるでしょう。複雑な人間関係や高い対人スキルが比較的多く求められるような職場環境は、適さない傾向があると言えます。下記はその職業の一例です。

■ショップ店員(レジ係やサービスカウンター業務など)
■ウェイトレス、飲食などの接客業
■相手のニーズをくみ取り、それに合わせて提案を行うサービス業
■クレーム対応が要求される職種

ここで紹介した職業は、あくまでもアスペルガー症候群の特性に基づいた向き不向き程度の参考事例です。本人が興味を持っていたり、打ち込める職業であれば問題ない場合もあります。大切なのは本人が楽しんで打ち込める仕事がどうか、というところです。

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人の仕事の探し方

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人が仕事を探す場合、アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)でない人と同じ方法で探す方法もありますが、特に診断を受けている人は、公的な支援などを受けることも検討してみましょう。

■ハローワーク
まず、最寄のハローワークでの相談をおすすめします。ハローワークには障害者のための専門職員や相談員が配置されています。窓口は障害者雇用の窓口になります。そこでご自身のアスペルガー症候群の特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をします。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。

自分で探したいという方は、ハローワークに障害者専用のインターネット検索も設けられています。まずはそちらで探してみて、やってみたい仕事があれば相談するという手順もよいでしょう。

「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べられるところも紹介してもらえます。

就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は障害者手帳を取得していなくても支援を受けることができます。
まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。また、就労移行支援事業所を探す際には、複数の事業所を掲載した検索サイトなども参考にすることができます。
参考:LITALICO仕事ナビ 全国の就労移行支援事業所
https://snabi.jp/ikou
就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。
若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000146552.pdf
障害者就業・生活支援センター
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000146182.pdf
発達障害者支援センター・一覧 出典:国立障害者リハビリテーションセンターホームページ
http://www.rehab.go.jp/ddis/action/
■障害者雇用制度を利用する
精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得している場合、いわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。

・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる
・障害者職場適応訓練を受けられる 
など、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。

ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。
令和2年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000747732.pdf

大人のアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)、会社への報告は?

会社へアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)であることを報告するかどうかはとてもデリケートな問題です。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の人に限定した離職率は発表されていません。しかしアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)が含まれている発達障害の人の離職率の数値は発表されており、就労して1年以内に離職する割合は約4割弱だという調査もあります。本人や職場が障害の認識を共有していない場合は離職率はどうしても高くなってしまう場合が目立ちます。

ですが、本人が自覚していたり、学校紹介の職場へ就労した場合や、就労支援センターなどを介して就労した場合には、離職率が下がるという調査もあります。これは自分と職場の思いや環境がマッチしているからと言えるでしょう。また、職場に伝えることで、障害に対する理解をしてもらい、必要なサポートが受けられて仕事がしやすくなることも、離職率を下げていると考えられます。

メリットとデメリットをふまえ、ご自身の状況をよく考えた上で報告するかどうかを慎重に決めることが大切です。
「発達障害のある人の就労の現状と課題」 2008年|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0924-11c.pdf

報告のメリット・デメリットは?

アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)を会社や同僚へ報告する場合のメリットとデメリット、注意すべき点などを下記にまとめました。

【メリット】
・職場と本人に共有認識ができ、離職しにくくなる
・同僚のサポートや理解を得やすくなることで、人間関係がスムーズになる
・本人の仕事への意欲を伸ばしやすい

【デメリット】
・障害に対する偏見を持たれてしまうことによって、チャレンジさせてもらえなかったり、周りに距離を置かれてしまったりする場合がある
・本人が居心地悪く感じたり、肩身の狭い思いをすることがある

どのように報告すべき?

会社や同僚へ障害の報告をする場合は、下記のポイントに注意して行うようにしましょう。

■手順
・まずは信頼できる直接の上司や同僚に相談し、どの範囲の人たちに公表するのかを決める
・自分がどのような障害でどんなサポートが必要かを簡潔に報告する

■伝える点
何が苦手で何が得意か、どんなフォローが必要かなど、具体的に伝え相談します。
(例)
・人間関係が上手に構築できない場合があることを報告する
・会話を表面通りに受け取りやすいが、明確な指示があると行動しやすいことを伝える
・一つに集中すると、周りが見えなくなりやすいこと
・スケジュール管理やタスク管理が苦手なこと
・自分では気がついていない点があるため、注意や支持を促してほしいこと
・(感覚過敏がある場合)軽減するためにイヤーマフなどの使用許可や環境を調整をお願いする

人によって特性が異なるため、あくまで自分の特性に応じた内容を伝えるようにしましょう。

■注意するべき点
・障害だからサポートしてもらって当たり前といった、一方的な報告にならないこと
・障害の理解、把握を報告したら、会社でどのような配慮があれば力が発揮できるかなど、自分なりの解決策を提示すること
・その解決策が正しいかどうか、上司や同僚に確認してもらうこと
・仕事が好きなこと、挑戦してみたいこと、そのためにはどうしたらよいのか具体的な目標を一緒に考えてもらう
次ページ「アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法」

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