感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?発達障害との関係、子どもの症状、対処方法まとめ【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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シャワーを嫌がる、集団で行動するのが苦手である、好き嫌いがあるなど、気になる子どもの行動。それは音や光、味などの刺激に強い不安やストレスを感じる「感覚の過敏さ」や、刺激に対する反応が低い「感覚の鈍感さ」が原因かもしれません。それらの症状の具体例と、効果的な対処方法、発達障害との関係についてご紹介します。

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監修: 太田篤志
プレイジム代表
姫路獨協大学・客員教授
日本感覚統合学会・常任理事
作業療法士
発達障害児の支援に携わる作業療法士です。日本感覚統合学会常任理事。日本スヌーズレン協会理事。これまで学童保育・保育所、重症心身障害児施設、療育センター、小中学校・特別支援学校などの現場にて発達障害児に対する作業療法・感覚統合療法などを実践。広島大学医学部助手、姫路獨協大学教授などを歴任し、感覚統合機能検査(JPAN感覚処理・行為機能検査、日本感覚統合インベントリーJSI-R等)研究開発に携わる。2012年に姫路獨協大学教授を退任し、客員教授に就任。2014年、(株)アニマシオンを設立、取締役に就任。児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援事業所の運営に携わりながら、子どもたちが手軽に楽しめる感覚統合遊びの研究・実践を行っています。
目次

感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?

「感覚過敏(過剰反応性)」とは、光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「感覚の鈍感さ(鈍麻・低反応性)」といいます。どちらも感覚に偏りがあることが原因です。

感覚過敏があると、多くの刺激を受け取りすぎることによってストレスが増したり、多くの人にとって平気な刺激を過剰に怖がることがあります。また、感覚の鈍感さがあると、遊びの呼びかけの声を聞き逃してしまい、仲間に入れないなど、集団の中でうまく過ごせないことがあります。身体の痛みに気がつかず、病院で手当てを受けるのが遅れてしまうこともあります。

このように感覚に過度な偏りがあると、日常生活に支障をきたす場合があります。
参考:SP感覚プロファイル|日本文化科学社
https://www.nichibun.co.jp/kensa/detail/sp.html

感覚の偏りによる困難さは理解されにくい

感覚は、個人の主観的なものであり、個々によって刺激の受け取り方はそれぞれです。そのために、感覚の偏りがある人の困難さは、他の人からは理解されにくいものです。
シャワーをひどく嫌がる、極端に眩しがる、集団で行動するのが苦手であるなど、日常の中で子どもの行動が気になることはあるでしょうか。
それは、もしかすると環境の中にあふれる情報や刺激を細かく大量に拾ってしまっていることが原因かもしれません。多くの人が何も感じない場面でも、感覚に偏りがあると、その場所にいるだけで耐えがたい苦痛を感じることがあるのです。

感覚の偏りは4つのパターンに分けられる

感覚の偏りに関する問題は、その傾向によってパターンに分けて整理することができます。以下に感覚刺激への反応傾向のプロファイリングで使用される4つの分類をご紹介します。なかなか理解のされにくい感覚の偏りについて、客観的な把握をすることで役立てることができるでしょう。

■感覚過敏
刺激に対して過剰に反応することで、環境の変化やちょっとした刺激も極度に気になるという状態を指します。

■感覚回避
刺激に対する過剰な反応があるため、刺激のある環境を回避する行動をとることです。

■低登録
刺激に対する反応が弱く、感覚が鈍い傾向があるとされます。低反応・感覚鈍麻(どんま)のことです。

■感覚探求
刺激に対して反応が弱いがゆえに、強い刺激を求める行動をすることです。

それぞれの感覚ごとの症状

刺激の感じ方は個々によりさまざまで、症状も多岐にわたります。感覚の偏りが引き起こす具体的な症状とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、体の動きをつかさどる固有感覚、体のバランスをつかさどる平衡感覚について、それぞれに分けてお伝えします。

視覚

■情報の刺激がいっぺんに目に飛び込んできてしまう
人は多くの刺激がある環境でも、注意を向けたい刺激を無意識的に選ぶことができます。しかし、視覚過敏がある場合には、全ての刺激情報を均等な濃さで受け取ってしまいます。ビビッドでカラフルな色のものや、たくさんのもののある場所は苦手なことが多くあります。

■白いものや光をまぶしく感じる
視覚過敏でない人にとっては気にならないような光や白いものが、視覚過敏のある人にとっては目に突き刺さるほどまぶしいことがあります。蛍光灯の光や、テレビやパソコンの液晶画面、白い紙を苦手なことが多いです。

授業中に席を離れてしまうなどの子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性があります。
「ノートがまぶしい、集中できない」視覚過敏が勉強に影響?学習の困りと解決策をイラストつきで解説--感覚過敏による学習困難【専門家監修】のタイトル画像

「ノートがまぶしい、集中できない」視覚過敏が勉強に影響?学習の困りと解決策をイラストつきで解説--感覚過敏による学習困難【専門家監修】

聴覚

■音がやけに大きく聞こえる、響く
賑やかな場所にいると疲れやすいなどが聴覚過敏の症状です。聴覚過敏の症状が強い場合、耳をふさぎたくなるほど耳の奥が痛くなったり、頭痛が起きたりするような身体的な痛みを伴うことがあります。人によって気になる音は異なりますが、例として、女性の甲高い声や、休み時間のチャイム、合奏の音、掃除機などの機械音などが挙げられます。

■周囲の全ての音が等しく同じように聞こえてくる
選択的に音を拾い集めるのが困難になってしまいます。音の刺激に対して適切に注意を向ける処理ができないために起こります。一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので本人は混乱しています。
 
■音が聞き取りにくい
逆に聴覚への反応性が低い場合には、音を聞き取ることができないために、結果的に、授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったり、またテレビの音を大きくしたりといった様子が見られることがあります。
「教室は騒がしくて疲れる、聞き取れない」聴覚過敏が学習に影響?学校で起きやすい困りと解決策をイラストつきで解説--感覚過敏による学習困難【専門家監修】のタイトル画像

「教室は騒がしくて疲れる、聞き取れない」聴覚過敏が学習に影響?学校で起きやすい困りと解決策をイラストつきで解説--感覚過敏による学習困難【専門家監修】

聴覚過敏の原因と、具体的な改善方法は?【専門家監修】のタイトル画像

聴覚過敏の原因と、具体的な改善方法は?【専門家監修】

嗅覚

■においに過剰に反応する
少しのにおいを過敏に受け取ってしまうことが嗅覚過敏です。少しのにおいでも過剰に受け取ってしまうあまり、ストレスが増加します。においに耐えられなくなって、吐いてしまうこともあり、ひどい場合には身体的、精神的ともに支障をきたすことがあります。

■においがわからない
逆に、嗅覚の鈍感さがみられる場合には、適切ににおいを感じることができません。においがわからないと、同時に味も分かりにくくなるので、嗅覚と同時に味覚の感覚にも支障をきたすことがあります。

味覚

■偏食がはげしい
味覚に感覚の偏りがみられる場合、多くの人にとって美味しいと感じられる味がそうではないように感じたり、変わった味を好むようなことがみられることがあります。例えば、特定の味に対して、非常に強い不快感をおぼえたり、味が混じることを嫌がり、分けて食べたがったり、食べ物、飲み物の苦みや酸味を過剰に感じたりします。

結果的に食べ物の好き嫌いの差が顕著で偏食の傾向が見られるようになったり、刺激的な味を好むゆえに調味料や香辛料で過剰に味付けすることがあります。

触覚

■触るのを嫌がる
触覚が過敏な場合には、皮膚に触れる刺激を過剰に感じて不快感が生じます。触ることができないものとしては、のりやねんど、スライムなどのぬるぬる、べたべたするものや、たわし、毛糸、洋服のタグが代表として挙げられます。

触覚に対する過敏さからくる反応として、以下のような例が挙げられます。
・他人から離れて座る、近づこうとする人を押しのける
・特定の服ばかり着たがる
・爪切り、耳かきを嫌がる
・自分からは人懐っこいかかわりをするのに、触れられることを嫌がる
・触ることのできないものがある(よって、遊び・活動の幅が制限される)

■痛みや熱さに気づきにくい
触覚の鈍さがみられる場合には注意が必要です。というのも、触覚が鈍いときには、痛覚(痛みを感じる感覚)、温覚(温度を感じる感覚)も同時に鈍いことがあるからです。温度、身体的な痛みを感じることができないと、身体の異変に気がつかず、その結果適切な対処をできないこともあります。

例えば、転んで怪我をしたときにも、本来ならば病院に行って手当をしなければならないはずなのに、その痛みや怪我をしていることに気が付かず、即座に適切な治療を受けることができない場合もあります。

■刺激を求めて自傷行為をしてしまう
自分が感じることのできる刺激を求めるあまり、血が出るまで腕を掻いたりかんだり、頭をぶつけるなどの自傷行為を行うことがあるので注意が必要です。 
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固有感覚

■筋肉に対する刺激を過剰に求める
固有感覚とは、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じとる感覚です。自分の体の位置や動きを把握する役割があります。固有感覚につまづきがあると、筋肉に対する刺激を過剰に求める「感覚探求」が生じます。

その結果として、見られる子どもの行動特性には以下のようなものがあります。
・強く足踏みをする
・体の一部を動かし続ける(常同行動)
・他人に思いっきりぶつかる、激しく関わる

平衡感覚

■動きの刺激を過剰に好んだり、過剰に怖がったりする
平衡感覚とは体のバランスをとるときに働く感覚で、主に姿勢のコントロールや体のバランスを保つことに関わっています。

平衡感覚が鈍い場合には、体の揺れや傾きを自身で調節することが難しく、その結果、刺激を求める探求行動があります。例えば、刺激を求めて頭を振りながら走ったり、ぐるぐる回ったり、席を立ったりすることや、まわる遊具やブランコなどが大好きで離れようとしなかったりします。

逆に、平衡感覚が敏感な場合には、動きの刺激に対して恐怖心や不安を持ちます。例えば、ブランコや高い場所に行くことを嫌がったり、頭を傾けたり体が傾いたりするのを嫌がったりします。

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