発達障害、医師の「診断書」はどんなとき必要?―児童精神科医・吉川徹(5)

ライター:吉川徹
発達障害、医師の「診断書」はどんなとき必要?―児童精神科医・吉川徹(5)のタイトル画像

児童精神科医の吉川徹です。発達障害と医療の関係について、これまで様々な視点からお話させていただきました。今回は、障害があることを示す医師の診断書が必要になる場面について解説します。

監修者吉川徹のアイコン
執筆: 吉川徹
愛知県医療療育総合センター中央病院子どものこころ科(児童精神科)部長
あいち発達障害者支援センター副センター長
子どものこころ専門医
日本精神神経学会指導医・専門医
日本児童精神医学会認定医
児童精神科医。発達障害を中心とした子どもの精神医療に長く従事するとともに、行政機関や親の会などと連携した活動にも取り組んでいる。

医療機関による受診が必要になる、「診断書」の取得

前回はいつ医療機関による受診をするのか・勧めるのか、というテーマでしたが、一方でどうしても受診、診断が必要なタイミングというのがあります。その代表的なものが、診断書が必要になる時期です。

発達障害を持つ子どもや大人が健康に成長し暮らしていくためには、様々な支援が必要になることがあります。その入場券になることが多いのが診断書です。

今回の記事では診断書が必要になる代表的な場面と、その時期を解説します。ただし、診断書を巡る状況は、地域によって少し異なることがあります。地元の支援者や先輩の親御さんにも確かめてみるとよいでしょう。

18歳未満で診断書が必要となる場面

子ども時代には診断書が必要な場面は、実はあまり多くありません。知的障害を伴う方の場合、愛の手帳や療育手帳などと呼ばれる知的障害の福祉手帳の取得には、原則として医師からの書類は必要ありません。地域の役所の窓口から申請でき、その手帳があることで多くのサービスが利用可能です。

以下では、医師の診断書が必要となる場面をご紹介します。

福祉手帳の取得

知的障害の手帳の対象ではない場合、精神保健福祉手帳という精神障害の福祉手帳を取得することがあります。子ども時代の取得はまだ多くはありませんが、だんだんと取得する方が増えているようです。精神保健福祉手帳の取得には必ず医師の診断書が必要となります。

子ども時代の取得にはそれほど多くの利点はありませんが、必要であれば診断書の発行を受けることが可能です。

児童福祉法に基づくサービスの利用

福祉手帳の取得をしていない場合、児童福祉法に基づくサービスを利用するための「受給者証」を発行してもらうために、医師の診断書が必要となる地域があります。制度本来の主旨からするといかがなものかと思うのですが、残念ながらそのような運用が広がってきているようです。

通級・特別支援学級への入級

また地域によっては、通級指導教室や特別支援学級などへの入級にあたって診断書を求められることがあります。幼稚園などの場合でも、園への助成金などの支給のために、診断書の提出を求められることがあります。これも文部科学省などが通達している特別支援教育の方向性からすると、本来あってはならないことだと思うのですが、残念ながらそのようなルールが設定されている地域もあるようです。

特別児童扶養手当の受給

また障害の状態によっては、特別児童扶養手当の支給対象となることがあります。やや厳しい世帯の所得制限などもありますが、支給にあたっては医師の診断書が必要です。

18歳以上で診断書が必要となる場面

18歳以上になったときに、障害者総合支援法による様々な福祉サービスを受けるためには、診断書ではないのですが、「医師意見書」が必要になります。

また20歳になると、障害基礎年金の対象となる方も出てきます。障害年金の受給には必ず医師の診断書が必要です。

この中で特に注意しなければならないのが、子ども時代に医療機関を受診し診断を受けた後、経過が順調な場合、特に身近で適切な支援が受けられている場合です。このとき、どこかの段階で医療機関の受診が不要になり、通院を止めていることが少なくありません。

しかしその場合であっても、18歳以降に福祉サービスの利用の可能性がある場合、障害基礎年金が受給できる可能性がある場合には、それに備えて少なくとも1,2年前からは通院医療機関を確保しておいた方がスムーズです。初診でいきなり診断書の発行を受けることは困難です。

16歳、17歳という年齢であれば、成人の精神科医療機関に受診できるので、通院先の選択肢は格段に広がります。初診には予約が必要であることもありますので、将来の診断書の発行に備えたいという受診の意図を伝えて、事前に確認しておくとよいでしょう。

この他、就労支援を受ける際に医師の意見書を求められたり、障害が重度である場合には特別障害者手当の受給のためにも診断書が必要となったりします。必要な時期に診断書の発行が受けられるように情報収集しておけるとよいですね。
現役医師が語る、発達障害と医療の望ましい関係とは?―児童精神科医・吉川徹(1)のタイトル画像

現役医師が語る、発達障害と医療の望ましい関係とは?―児童精神科医・吉川徹(1)

現役医師が語る、発達障害の診断を受ける前に大切にしたいこと―児童精神科医・吉川徹(4)のタイトル画像

現役医師が語る、発達障害の診断を受ける前に大切にしたいこと―児童精神科医・吉川徹(4)

大人の発達障害、医療機関との上手な付き合い方は?―児童精神科医・吉川徹(6)のタイトル画像

大人の発達障害、医療機関との上手な付き合い方は?―児童精神科医・吉川徹(6)

発達障害の症状に、「お薬」は効果があるの? ―児童精神科医・吉川徹(7)のタイトル画像

発達障害の症状に、「お薬」は効果があるの? ―児童精神科医・吉川徹(7)

発達障害の「二次障害」に、医療ができる支援とは―児童精神科医・吉川徹(8)のタイトル画像

発達障害の「二次障害」に、医療ができる支援とは―児童精神科医・吉川徹(8)

療育支援探しバナー

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。