発達指数(DQ)とは? 発達指数の定義、知能指数(IQ)との違い、検査結果と支援方法まとめ

発達指数とは、子どもの発達の規準を数値化したものです。乳幼児の時に発達の段階が数値として表れることで、お子さんの今後の成長に不安を覚えるご両親もいらっしゃるようです。しかし発達指数や発達検査に対する正しい理解によって、お子さんに合った学び方や適切な支援につなげることができます。発達指数の定義や知能指数との違い、発達検査、関連する支援などについてご紹介します。


発達指数とは
子どもの成長には個人差があり、一人ひとり異なる特性を持っています。しかし個人差がある一方で、発達の道筋や順序には共通して見られる特徴があります。子どもは成長するにつれて、視野を広げ、認識力を高め、まわりの人との関わりを深めていきますが、その経験が次の成長のステップにつながります。
子どもが成長していくには、それぞれの発達段階に合った関わりや対応が大切です。そのため、発達を客観的に知るものさしの一つとして発達指数が使われています。
発達指数は発達検査と呼ばれる検査によって知ることができます。発達検査で分かる「発達年齢(発達の状態がどのくらいの年齢に相当するか)」を「生活年齢(実年齢)」で割り、100を掛けて算出します。
発達年齢と実際の年齢が同じ場合、発達指数の値は100と計算できます。そのため平均は100前後とされていますが、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。

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発達指数を知ることができる年齢は?
それぞれの検査には、検査できる年齢が定められています。
新版K式発達検査であれば生後100日後から成人まで、遠城寺式乳幼児発達検査であれば0歳0ヶ月から4歳8ヶ月まで、発達指数を計ることができます。
主に発達検査は知能検査の実施ができない乳幼児を対象とすることが多いです。また知的障害がある場合など、知能検査だけでは発達の状態や障害の度合いを把握することが難しいケースでは、児童期以上の対象でも発達検査を受けることがあります。
発達指数を調べる目的
1. 子ども一人ひとりの発達状況を理解すること
2. 発達段階に合った適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知ること
の2つです。
発達検査によっては粗大運動やコミュニケーション、生活面など領域ごとの指数が出るものもあり、その子の得意や苦手、経験不足などが細かく把握できます。
注意点として、乳幼児においては、実施式の検査を受ける際の子どもの状態や環境に左右されるため、発達指数の値は変動しやすいといったことが挙げられます。例えば1歳6ヶ月健診などにおいて、発達指数の値が低く出てしまうこともあるかもしれません。そのため知的障害や発達障害があるかどうかの判断は、発達検査や知能検査の結果を長期的に把握しながら行う必要があります。
発達指数はあくまで発達状態を知るものさしの一つです。発達指数だけでなく、発達検査から分かる発達の特徴、検査を受けている時の様子、日常生活の様子を総合して発達状態を判断することが大切です。
発達指数の全体的な値だけにこだわるのではなく、各領域別の指数を見ることで子どもの苦手を把握したり、お子さんの発達のペースや発達の特徴に注目し、家庭でのサポートに活かするようにしましょう。
発達指数と知能指数の違い
ここではそれぞれがどのように使われているのか、適用年齢に差はあるのか、検査内容の違いについてご紹介します。
・目的
発達指数は一人ひとりの子どもの発達状態を知る、知能指数は知的能力の発達に遅れがあるかどうかを知るために使われるものです。適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知るという目的はどちら検査にも共通していると言えます。
検査によっても異なりますが、発達検査には知的機能以外のものが項目に含まれているため、より広い領域について調べたいときや知的障害の場合も適応能力を調べるために発達指数が使われることがあります。
知能指数と発達指数のどちらを用いるか、またどの検査を用いるかは、年齢や障害の程度、疾患の種類などによって変わってくるため、専門家の判断によります。また知能検査と発達検査の両方を受ける場合もあります。
・適用年齢
検査によって異なりますが、発達指数は0歳から成人まで計ることができます。就学前の乳幼児が発達検査を受けることが多いですが、成人でも発達や障害の程度を知るために発達検査を受けることがあります。
一方、知能指数も検査ごとに適用年齢は決まっていますが、2歳から成人まで計ることができます。
子どもに発達障害がある場合、乳幼児期からその兆候が表出することも少なくありません。しかし発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査のみでとらえることは困難だとされています。乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。
・検査内容
発達指数は発達検査によって知ることができ、知能指数は知能検査によって知ることができます。発達検査は玩具など乳幼児にとってなじみのある材料を用いた検査です。それに対して知能検査は種類によっても異なりますが、言葉での応答や筆記用具を用いて回答する問題が多くあります。
※具体的な検査の内容や図版・教具などは事前に知っていると正しい結果が得られないため一般的に公開することは禁じられています。
障害や疾患の診断における知能指数と発達指数
障害や疾患によっては、年齢が上がらないと見分けられない場合もあるため、長期的にお子さんの成長を把握していくことが大切です。

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・相談機関などで子どもの成長に対するアドバイスをもらえる
児童相談所などの相談機関では、「検査報告書」をもとに今後のお子さんの成長に対してアドバイスをもらえます。「検査報告書」は発達検査を受けたあとにもらえるもので、検査結果や今後日常生活において注意すべきことが記載されています。発達指数の値は「数値結果」欄にあります。
発達指数によって領域別の得意・苦手がわかり、相談機関によるアドバイスによって、例えばお子さんの苦手な部分に対し、「なぜ苦手なのか」を知ることができます。また苦手なことだけでなく、お子さんの検査に取り組む姿勢やプロセスなども教えてもらえるため、「総合的にどう成長しているか」を把握することができます。

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発達検査から分かることを小学校就学の際に活かすことができます。家庭では特に気になることがない子どもでも、幼稚園などで集団生活に参加することで困りごとが現れる場合もあります。そのような場合、小学校就学を前にして不安になる保護者の方も少なくないようです。
検査の数値だけで判断するわけではありませんが、お子さんの発達に気になる点があれば発達検査を受け、早めにお子さんの得意・不得意を把握しておくことで、参考にできます。また小学校就学後にもどのような支援をしていけば良いか、検討しやすくなるでしょう。
検査や診断などを受けた場合、その結果によっては扶養手当や療育手帳、特別支援教育などの支援を受けることが可能になることもあります。
発達指数を知りたい時は?
また乳幼児健診では、発達の遅れの可能性を見極める精密検査が必要かどうかを判断するスクリーニングが行われます。スクリーニングにおいて気になる兆候が見られた場合は、保健機関での相談、発達検査の受検、医療機関での2次スクリーニングなどをすすめられることがあります。

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【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童相談所
・発達障害者支援センター など
【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など
自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。
発達検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診すると良いでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。
発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。検査を受ける際は、まず病院に問い合わせてみましょう。
さらに発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。
発達指数を知ることができる発達検査の内容
新版K式発達検査
検査項目:328項目(「姿勢・運動領域」、「認知・適応領域」「言語・社会領域」の3領域で構成)
それぞれの年齢において、一般的と考えられる行動や反応と、対象となる方の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。
なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。

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遠城寺式乳幼児発達検査
検査項目:151項目(移動運動、手の運動、基本習慣、対人関係、発語、言語領域)
「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。
上記の発達検査は発達指数や発達の全体像を知る検査です。これらの検査結果をふまえたうえで、特定機能の発達を計る検査と組み合わせることもあります。なぜなら発達指数の値が正常だった場合でも、異なる検査によって発達における課題を見つけることができるからです。
このほかにも保護者への質問式の津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法やKIDS乳幼児発達スケールなどの検査もあります。発達検査を受けてもお子さんの発達に心配な点がある場合は、他の検査を検討してみても良いでしょう。
発達指数の値によっては療育手帳をもらえることも
療育手帳は、知的障害のある人が法律に基づいて支援を受ける際などに使える障害者手帳の一つです。自治体によって異なりますが、知的機能や適応機能の評価の結果、知的障害であると判定された場合や、知能指数が70以下(自治体によっては75以下)の場合にもらうことができるとされています。
乳幼児の場合は、知能指数の代わりに発達指数を参考にする場合があります。療育手帳を貰う流れとしては、まず発達検査を受けて発達指数を知り、指定された医師による診断書を用意する必要があります。
注意点として、知的障害の程度は年齢とともに改善が見られることがあるため、療育手帳の更新ごとに障害の等級が変わるということが挙げられます。特に乳幼児においては、発達指数の値は変化しやすいので、更新期限までに必ず再判定を受け、適切な支援を受けられるようにしましょう。
療育手帳の基準
◇判定基準
知能測定値、運動、社会性、意思疎通、身体的健康、基本的生活の6項目を0歳~6歳の子どもの判定基準としています。知能測定値として、知能指数や発達指数を用います。
◇区分
知能指数や発達指数の値と日常生活における能力を総合し、最重度~軽度の4区分に判定されます。

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療育手帳をもらうとどうなるの?
・保育園入園時など保育・教育面での援助
・公共交通機関などの割引
・レジャー・スポーツ施設などの割引
・給付・税の減免や控除に役立つ
・就労に向けての支援
必ずしも療育手帳がなくても受けられる支援も多くありますが、療育手帳は支援の必要性や障害の程度を表わすものです。自治体によっては療育手帳を持っていることで特別支援教育を受けたい際に役立ったり、特別児童扶養手当などのサポートが受けやすくなったり、手続きがスムーズになることもあります。自治体によって異なるため、地域の相談機関に相談してみることをおすすめします。
まとめ
そのため発達指数の値だけを見て思い込みをせず、発達検査から分かるお子さんの得意・不得意にも注目し、サポートにつなげることが大切です。客観的、総合的に成長を捉えることで、お子さんに合った学習指導や支援を見つけることができるでしょう。
お子さんの発達が気になる場合は、児童相談所などの相談機関に相談し、長期的にお子さんの成長を把握していくようにしましょう。

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