シャフリングベビーとは?特徴やハイハイをしない原因、その後の発達や障害の可能性、相談先について

シャフリングベビーとは、乳児期後半でもよつんばいのハイハイをせず、お座り姿勢のまま移動する赤ちゃんのことです。歩き始めが遅いという特徴もあるため心配する保護者もいるようですが、近年ではハイハイの一種として認知されつつあります。当コラムではシャフリングベビーの特徴、発達障害や自閉症との関連性をまとめました。シャフリングを卒業するための工夫も併せてご紹介します。

シャフリングベビーとは?
K’s Clinic 川村和久さん(小児科医)Upload
*「いざる」は現在では差別用語とされていますが、乳幼児の動作を表す言葉として慣習的に使われてきた背景を説明するため、本記事内では部分的に使用しました。
出典:http://www.blog.crn.or.jp/lab/07/18.html(イギリスの小児科医)ロブソンは、シャッフラーは多くの子どもと異なった筋道で運動発達を示す「正常な子ども」であると結論しています。
なぜ、ハイハイをせずに、シャッフルするのかまだその理由は分かっていません。赤ちゃんはだれでもハイハイする、という常識が実はそうではなかったのですね。
シャフリングベビーの特徴は?
1. 首すわりから腰すわりまでの神経発達は定型的
2. 寝返りを始める時期が遅い、もしくは寝返りをしない
3. うつぶせの姿勢を嫌う
4. 足を床につけるのを嫌がる
5. 脇を支えて持ちあげても脚は伸ばさず、お座り姿勢のまま
6. 一般的なハイハイはしない
シャフリングは腰がすわってからつたい歩きを習得するまでの期間に発生します。シャフリングをしている期間は1~5ヶ月強と赤ちゃんごとに幅があり、短期間のシャフリングの後ハイハイに移行する赤ちゃんと、数ヶ月間のシャフリング後につかまり立ち、つたい歩きに移行する赤ちゃんがいるそうです。
シャフリングベビーは歩き始めが生後1歳6~10ヶ月と遅めな傾向があるそうです。1980年代に福岡県で行われた地域調査では、シャフリングベビーの95%以上は2歳頃までには一人歩きを始め、その後の発達は定型発達児と変わらず、成長の遅れも認められないという結果が出たそうです。
また、座敷文化の日本より土足文化の欧米に若干シャフリングベビーが多いというデータもあることから、家屋環境の違いもシャフリングベビーの発生に関係があるのではないか、との推測はできるかもしれません。
シャフリングベビーになる原因は?
・シャフリングベビーの親や兄弟姉妹のうち、40%にシャフリングをする/した人がいる
・脚の動かし方、手の使い方のバリエーションが少ない
・下半身の筋肉の張りが弱く、筋肉量も少なめ
定型発達のバリエーションとしてシャフリングする赤ちゃんと、障害や疾患を由来としてシャフリングをしている赤ちゃんを見分けるには、まず以下の4点にあてはまるかを観察する必要があります。
(1)ミルクの飲みが悪い
(2)泣き方が弱い
(3)首のすわりが悪く抱っこするとぐらぐらする
(4)手指の発達が遅い
これら4つの特徴は「低緊張」と呼ばれる状態の赤ちゃんに見られるものですが、低緊張のためシャフリングをしていると推測される赤ちゃんでも、ただちに疾患や障害があるという診断はできません。なぜなら低緊張の状態は、時間の経過や日々の運動遊びでも改善できることがあり、一過性の場合もあるからです。

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・言葉の理解が遅い
・手指の発達が遅い
・表情の発達が乏しい
この中の1つ以上思い当たることがあれば、ダウン症候群、脳性麻痺(まひ)、自閉症スペクトラム障害などの発達障害や疾患に由来するシャフリングである可能性があります。この場合はまず冷静に専門家に相談し、診断や支援を求めることをおすすめします。受診のきっかけがつかめない場合は、予防接種や乳幼児健診の機会を利用して、まずは小児科医に相談してみてはいかがでしょうか?

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低緊張状態は理学療法で改善する場合もあるので、そのための施設や専門家を紹介してもらえる機会も得られるはずです。専門家の手を借りることは、保護者として赤ちゃんのためにできることの一つなので、上手に利用できるとよいですね。
シャフリングベビーの不安を相談するには?
小児科
小児科というと子どもの病気を診断、治療をするイメージを持つかもしれませんが、赤ちゃんの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。子どもではなく赤ちゃんを専門とした機関の情報も持っているので、より詳しく赤ちゃんの状態を見てくれる専門機関につなげてもらえることもあります。
地域子育て支援センター
行政や自治体が主体となって運営している施設です。子育ての不安・悩みに対し専門的なアドバイスをしてくれる保健師が在籍または巡回しています。日時によっては乳幼児の発達相談を無料で行っています。定期的に地域の母子向けに子育てサロンを開催していたり、発達に合わせた無料セミナーを主催していたりすることもあるので、気軽に利用してみてください。
児童相談所(こども相談所)
育児の相談、健康の相談、発達の相談など、0~17歳の児童を対象としたさまざまな相談を受け付けています。必要に応じて発達検査を行う場合もあり、ほとんどの場合は無料で医師や保健師、臨床心理士などからの支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て、スケジュールを確認するようにしましょう。
上で紹介した機関は、赤ちゃんの発達相談だけでなく育児全般に関わる情報に出会える場所でもあるので、上手に利用することで育児ストレスの発散にも役立つかもしれません。
保健福祉センター
こちらも、行政や自治体が主体となって運営している施設です。子育て支援センターは主に母子の悩みに対応してくれる施設ですが、保健福祉センターは地域に住むすべての人を対象としています。乳幼児だけでなく保護者の心身の健康相談にも対応してくれます。保健福祉センターを経由して、相談者ごとの悩みに合わせた診察機関や支援機関を教えてもらえる窓口です。
もし住居の近くに上記のような機関があるかわからない、相談するタイミングがつかめないという時は、自治体主催の乳幼児健康診査(乳幼児健診)を利用しても、同様の相談ができます。
乳幼児健診は厚生労働省で定める母子保健法に基づき各自治体が実施するものです。3ヶ月、6ヶ月、1歳半といった乳幼児の発達の節目に、出生届を出した自治体から受診票が送付され、指定された日時・場所で集団で受けるケースがほとんですが、事情があれば日付や受診場所の変更も相談にのってもらえます。
乳幼児健診は赤ちゃんの発達状況を確認し、病気の早期発見や予防をするために行われます。小児科医師や保健士、栄養士など、様々な乳幼児保育のエキスパートが直接赤ちゃんを診察してくれるので、シャフリングだけでなく子育てのコツやなかなか話す機会がない保護者の心配ごとも相談できます。また、同じ月齢の赤ちゃんを育てるほかの保護者も来ているため、地域の子育て情報を交換する場としても便利なので、上手に活用してください。
赤ちゃんにハイハイしてほしい・立ってほしい時の工夫は?
ハイハイをしてほしい場合
赤ちゃんがハイハイしやすい環境を整え、ハイハイをする喜びを教えてあげることが初めの一歩です。床の上に細かい物が散らばっていたり不衛生な環境では、誤飲やケガの危険があります。布団の上は足をとられて動きにくいので、畳やクッションフロアのような適度な硬さがある床の上がおすすめです。
・うつぶせ姿勢で遊ばせる
うつぶせ姿勢を嫌うのはシャフリングベビーの特徴ですが、ハイハイを促すためにうつぶせの姿勢に慣れることは必須です。仰向けで寝転がった大人のお腹の上で赤ちゃんをうつぶせにすると、体が密着していて目が合うので赤ちゃんは安心し、少し長めにうつぶせをしてくれることが多いそうです。落ちないように配慮しながらバランスボールの上でうつぶせにさせてもよいでしょう。
この姿勢は頭を支える肩や背中の筋力を鍛えるとともに、うつぶせで重心をとる感覚を強化していくことができます。大人がうつぶせの赤ちゃんを抱えあげて前後に揺らす、飛行機遊びのような動きも赤ちゃんは喜ぶでしょう。
・赤ちゃんの背後や左右から呼びかける
シャフリングベビーは、お座り姿勢から別の姿勢になることを避ける傾向があります。正面からの呼び掛けには方向転換の必要がないため赤ちゃんはシャフリングで移動をしますが、背後や左右から呼び掛けた場合はすばやく方向転換をするために手を使う頻度が上がます。この過程で赤ちゃんは自然に重心を左右に傾ける感覚をつかんでいき、いつしかお座りからよつんばい、よつんばいからお座りになることに慣れていきます。
・ハイハイを見せる、追いかけっこをする
赤ちゃんは真似をすることが大好きなので、保護者や他の赤ちゃんのハイハイ姿をたくさん見せてあげることも刺激になります。シャフリングをする赤ちゃんをハイハイで追いかけたり、ハイハイしながら逃げるそぶりを見せる遊びにより、赤ちゃんが手と脚を連動して動かすことを視覚的に覚え、ハイハイする意欲を引き出せるかもしれません。熊や犬、猫など、四足歩行の動物の出てくる絵本や動画をいっしょに見て、真似をしてみるのもよいでしょう。

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つかまり立ちに進みたい場合
時に、歩行器を使うご家庭でシャフリングベビーの足腰の発達を促したい場合には使い方を一度考え直してみてください。なぜなら、歩行器は上半身を支える力を補助する効果がある一方で、爪先だけの軽い蹴りでも移動ができてしまうからです。立つ/歩くということは、すなわち自分自身の力で体を支え、腰と足裏でバランスをとって移動できるようになることなので、補助器具を用いた練習はほどほどにしたほうがよいかもしれません。
つかまり立ちを始めた頃の赤ちゃんは転びやすく、頭を打つような転び方をすることもあるので注意をしてください。下記の遊びを取り入れる時には、赤ちゃんの後ろにクッションを置くなどの工夫をし、転倒対策や頭の保護を忘れないようにしましょう。
・足裏でキック
お座り赤ちゃんの足の裏に手のひらや膝(ひざ)を合わせて軽く押します。力をかけることで、足の裏で体重を支える感覚を疑似体験させるとともに、筋肉の発達を促します。保護者の太ももや膝に腰をかけさせ、足裏をしっかり床につけた状態で、赤ちゃんの脇を支えて左右に一緒に揺れる運動おすすめです。
・布団などをよじ登らせる
少し高さのあるものを乗り越える遊びは、高い位置に手をついて立ち、手と足裏で体を支える練習になります。この遊びは視野が広げる経験が増えるため、立つ・歩く意欲を自然に引き出すことが期待できます。布団がなければ大人がうつぶせになった上を乗り越えさせたり、低めのテーブルを使ったりしてもよいでしょう。転落、転倒防止のため、最初は低い段差から挑戦しましょう。
・家具越しに「いないいないばぁ」
テーブルやソファ越しに赤ちゃんと「いないいないばぁ」をします。赤ちゃんの座高より高い位置から顔を出すと、赤ちゃんは保護者の顔をのぞきこもうとして手をつき、自然とお尻を浮かせる動作をします。赤ちゃんはこの動作で、腰から膝、足裏に重心を移動しつつバランスをとる感覚を覚えていくそうです。奥行きのあるテーブルの中央にお気に入りのオモチャを置いても同じ効果が狙えます。
まとめ
もしユニークな移動方法に不安を覚えた場合でも、シャフリングを卒業するためにできる工夫はいろいろあります。赤ちゃんの体の状態や生活環境を理解し、遊びの中でハイハイやつかまり立ちを促すことも工夫の一つですし、小児科医や地域子育てセンターに相談し、支援してもらうのも、保護者だからこそできることではないでしょうか?
赤ちゃんはその子らしいペース、方法で必ず成長していくものです。保護者の前向きな言葉かけや笑顔も赤ちゃんのハイハイやつかまり立ちの意欲をひき出します。動作のバリエーションを数多く体験をさせてあげることがシャフリングの卒業につながることもあるようなので、シャフリングベビーの個性を楽しみながら、いろいろな運動遊びを試してみてくださいね。

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発達障害のキホン さんが書いた記事

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