働くことはゴールではない。むしろ、その先の人生のほうがもっと長い

特別支援学校高等部では、生徒達がきちんと就労できるよう、訓練することに必死です。

でも、就労はゴールではありません。それから先も人生は続きます。むしろその先の方が学校生活よりもずっと長いのです。

企業は法定雇用率に基づいて、障害者を雇うようになりました。2013年からは、従業員数が50人以上の会社は、雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者の割合が2%以上になるよう義務付けられています。このパーセンテージは、将来もっと上がると言われています。
厚生労働省『平成25年4月1日から 障害者の法定雇用率が引き上げになります』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/dl/120620_1.pdf
企業は義務として障害者を雇いますが、企業の側に障害に対する理解が十分あるとは限りません。例えば“アスペルガー症候群”の人にはどのような特性があり、物事をどう捉える傾向があるのか、正しく把握している人が企業にどれだけいるでしょうか。

このような状況だと、孤立し虐められ退職してしまう障害者も多くなるでしょう。

一方で親御さんの中には、「どうか子どもが今日もクビになりませんように」と神棚に祈っている人もいます。そこには、わが子が将来一人で生きていくためには、職場になんとか雇用されていてほしいという切実な願いがあるのだと思います。

そんな親の気持ちを知った子どもが、合わない職場でも嫌と言えず、働き続け、もがき苦しむという場合もあるかもしれません。

就労できたからといって、その先の人生が保障されているわけではないのです。だからこそ、特別支援学校も「訓練して、就労させて、はいさようなら」とならないでほしいんです。卒業後のフォローはあると学校側からは聞いていますが、ずっと見ていてくれるわけではありません。

障害のある子に対して、長期にわたり見守る制度が充実することを願っています。

おわりに

ネクタイを結ぶ息子
Upload By 立石美津子
毎朝、慣れないネクタイの制服で悪戦苦闘している息子です。これも就労訓練の一貫なのかもしれません。

そして、「ああ、どんどん年齢を重ねないで就労なんて考えないでずっと可愛い子どもでいてほしいなあ。」「毎日楽しい学校生活のようなことを一生経験できる場があったらいいなあ」なんて思ってしまうのでありました。

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