レット症候群の原因
発達の退行が見られるレット症候群は、遺伝子性の疾患であることが近年わかってきました。
私たちの身体の2本の性染色体のうち、X染色体の中に存在する「MECP2」という遺伝子があります。この遺伝子が何らかの要因で病的な変異を起こすことによってレット症候群が起こります。
しかし遺伝子に変異が起こったからといって必ずしもレット症候群を発症するわけではなく、「MECP2」という遺伝子に病的な変異が起こっている人のうち、レット症候群と診断がつくのはそのうち90%ほどです。
また近年の研究では、病因としてCDKL5やFOXG1という遺伝子も新たに発見されています。
レット症候群は、家系や両親からの遺伝では起こるのではなく、何らかの原因による遺伝子の突然変異であると考えられています。家庭内で親から子どもへ遺伝することはほぼないということが調査によって明らかになっています。
私たちの身体の2本の性染色体のうち、X染色体の中に存在する「MECP2」という遺伝子があります。この遺伝子が何らかの要因で病的な変異を起こすことによってレット症候群が起こります。
しかし遺伝子に変異が起こったからといって必ずしもレット症候群を発症するわけではなく、「MECP2」という遺伝子に病的な変異が起こっている人のうち、レット症候群と診断がつくのはそのうち90%ほどです。
また近年の研究では、病因としてCDKL5やFOXG1という遺伝子も新たに発見されています。
レット症候群は、家系や両親からの遺伝では起こるのではなく、何らかの原因による遺伝子の突然変異であると考えられています。家庭内で親から子どもへ遺伝することはほぼないということが調査によって明らかになっています。
レット症候群の合併症
レット症候群の合併症として最も気を付けたいのがてんかんです。てんかんは、レット症候群のある子どもの70~80%と高い確率で起こります。そのうちの約30パーセントは、けいれんの薬が効きにくい難治てんかんだと報告されています。てんかん発作は、歩行ができない重度の子どもに多いとされています。
重症の場合には、日常から合併症の注意が必要です。合併症として挙げられているのは、感染症、誤涎(ごえん)性肺炎、胆石、吐気症などです。食べ物の摂取がうまくできないために、栄養摂取のために胃瘻(いろう)という「お腹に口をつくる」手術が必要となることもあります。骨の発達にも滞りが出るので、ちょっとした衝撃でも骨が折れてしまうこともあります。
レット症候群が進行していると、本人は言葉を発したり、思うとおりに身体を動かしたりできないので、周囲にいる人の理解と支援が大切です。
重症の場合には、日常から合併症の注意が必要です。合併症として挙げられているのは、感染症、誤涎(ごえん)性肺炎、胆石、吐気症などです。食べ物の摂取がうまくできないために、栄養摂取のために胃瘻(いろう)という「お腹に口をつくる」手術が必要となることもあります。骨の発達にも滞りが出るので、ちょっとした衝撃でも骨が折れてしまうこともあります。
レット症候群が進行していると、本人は言葉を発したり、思うとおりに身体を動かしたりできないので、周囲にいる人の理解と支援が大切です。
てんかんとは?原因や発作の種類、発達障害との関係や支援制度について紹介します!【医師監修】
レット症候群の診断基準
1985年から2002年にかけて、レット症候群についていくつかの診断基準が発表されてきました。この章では、現在日本の病院で実際に使用されている診断基準をご紹介します。
『ICD-10』における診断基準
『ICD-10』(※)は、世界保健機関(WHO)の定める国際疾患分類です。ただし、1990年の改訂を最後に情報がまだ更新されていないために、それ以後の研究結果により明らかになったことが反映されていない古いバージョンだと捉えておくとよいでしょう。
現在、多くの医師が採択しているのはこちらの診断基準となります。特に、「小児慢性特定疾病指定医」の登録を行っている医師は必ずこの診断基準を使用しているようです。
現在、多くの医師が採択しているのはこちらの診断基準となります。特に、「小児慢性特定疾病指定医」の登録を行っている医師は必ずこの診断基準を使用しているようです。
A.胎生期・周産期は明らかに正常、および生後5カ月までの精神運動発達も明らかに正常、および生下時の頭囲も正常であった。
B.生後5カ月から4歳までの間に頭囲の成長は減速し、また5~30カ月の間に目的をもった手先の運動をいったんは獲得していたのに喪失すると同時に、コミュニケーション不全、社会的相互関係の障害を伴い、また体幹の協調運動障害/不安定さがあらわれる。
C.表出性および受容性言語の重度の障害があり、重度の精神運動遅滞を伴うこと。
D.目的をもった手先の運動の喪失時またはそれ以降に現れる、正中線上での常同的な手の運動(てもみや手洗いのようなもの)がある。
中根允文ほか/訳『ICD-10 精神および行動の障害ーDCR研究用診断基準新訂版ー』1994年/医学書院/刊
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。WHOでの公表・承認を受けて、各国では翻訳やICD-10/11 変換表の作成、疾病分類表、死因分類表の作成などの作業が進められ、審議、周知などを経て施行されていきます。ICD-11への改訂によって分類コードが変化すると、書類上で要求されるICDコードが変わったり、疾病概念やカテゴリー、名称や診断基準も変更になる可能性もあります。
「レット症候群診断基準・改訂版(2010年)」
819人のレット症候群患者の診察・遺伝子解析などの研究によって作成されたのがこの診断基準で、レット症候群の本質的な症状が明瞭・簡潔に載っています。現在、この改訂版の診断基準を医師に広めようという動きや活動もあり、これからより本質的な診断に期待ができそうです。
①診断基準 (表1)に最新の診断基準を示す。
表1. レット症候群診断基準最新版(2010年版)
現在まで、世界で統一した診断基準は確立されていない。近年、Nuel JF,等は819例の検討で、下記の基準を提唱しています。
A-1. 退行のエピソードがあること (但し、その後、回復期や安定期が存在する)
A-2. すべての主要診断基準と、すべての除外診断基準を満たすこと
注) 最後に述べる11の支持的診断基準は必須ではないが、典型例レットでは認めることが多い。
主要診断基準
・合目的的な手の機能の喪失:意味のある手の運動機能を習得した後に、その機能を部分的、あるいは完全に喪失すること
・言語コミュニケーションの喪失:言語(有意語、喃語)などを習得後に、その機能を部分的、あるいは完全に喪失すること
・歩行異常:歩行障害、歩行失行
・手の常同運動:手を捻じる・絞る・手を叩く・鳴らす、口に入れる、手を洗ったり、こすったりするような自発運動
典型的レット症候群診断のための除外基準
明らかな原因のある脳障害(周産期・周生期・後天的な脳障害、代謝性疾患、重症感染症などによる脳損傷)
生後6か月までに出現した精神運動発達の明らかな異常
A.典型的レット症候群の診断要件は上のすべてを満たすこと。
そして退行のエピソードがあること。(但し、その後、回復期や安定期が存在する)
B.非典型的レット症候群の診断要件
退行のエピソードがあること(但し、その後、回復期や安定期が存在する)
4つの主要診断基準のうち2つ以上を満たすこと
B-3. 11の支持的診断基準のうち5つ以上を満たすこと
典型的レット症候群診断のための支持的(補助的)診断基準
1.覚醒時の呼吸異常、
2.覚醒時の歯ぎしり、
3.睡眠リズム障害、
4.筋緊張異常、
5.末梢血管運動反射異常、
6.側弯・前弯、
7.成長障害、
8.小さく冷たい手足、
9.不適切な笑い・叫び、
10.痛覚への反応の鈍麻、
11.目によるコミュニケーション、じっと見つめるしぐさ
※アメリカ精神医学会『DSM-5』(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)での除外について
アメリカ精神医学会の出版する『精神疾患の診断・統計マニュアル』の第4版においてはレット症候群はレット障害の名前で「広汎性発達障害」のカテゴリとしてその診断基準が記載されていました。しかし、その後レット症候群はX染色体の遺伝子の問題であるという事実が判明し、2013年の第5版改訂の際に広汎性発達障害のカテゴリーからレット症候群の名前は除外されました。
アメリカ精神医学会の出版する『精神疾患の診断・統計マニュアル』の第4版においてはレット症候群はレット障害の名前で「広汎性発達障害」のカテゴリとしてその診断基準が記載されていました。しかし、その後レット症候群はX染色体の遺伝子の問題であるという事実が判明し、2013年の第5版改訂の際に広汎性発達障害のカテゴリーからレット症候群の名前は除外されました。