レット症候群とは?女の子のみに発症する具体的な症状、予後、診断基準、医療費の助成などご紹介します

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レット症候群とは、女の子のみに発症する遺伝子が原因となる疾患です。生後6ヶ月から1歳6ヶ月頃に発症し、それまでできていたことができなくなってしまう退行の症状などがあります。病気の治療方法は見つかっておらず、国の難病として指定されています。ここではレット症候群の症状や原因、病気の予後(経過の見通し)や医療費の補助についてご紹介します。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 所長 (アドバイザー)
目次 レット症候群とは? レット症候群の症状 レット症候群の症状の経過は? レット症候群の原因 レット症候群の合併症 レット症候群の診断基準 子どもがレット症候群かも、と不安を感じたら レット症候群の治療法 レット症候群のあるお子さんの保護者の方へ レット症候群に対する医療費の補助制度 まとめ

レット症候群とは?

レット症候群とは、いったん習得した発語や運動機能が次第に退行していく症状がある、遺伝子変異が原因の疾患です。具体的な症状には、意味のある手の動きの喪失、言葉によるコミュニケーションの喪失、歩行障害、手の常同行動(一見無目的にみえる同じ動きを繰り返す行動)などがあります。

レット症候群は、一旦獲得した発達が退行していくという特徴を持った疾患であり、生まれた時には運動発達・身体的成長ともに問題が見られることはありません。症状はおおむね生後6ヶ月~1歳6ヶ月ぐらいに現れはじめます。

またこの疾患は、女児にのみ発症する疾患です。レット症候群は1966年にオーストリアの小児精神科医Andress Rettにより発見されました。日本の厚生労働省の調査によると、全体の推定患者は約5,000人、20歳以下の患者の数は約1,020人であり、1万人のうち0.9人の割合の女児がレット症候群にかかると報告されています。

レット症候群は治せるの?

残念ながらレット症候群には、治療法や詳しい発症理由は見つかっていません。現在研究が進められていますが、まだまだ病態の解明には至っていないのが現状です。その患者数の少なさや治療法が確立されていないことから、国によって難病に指定されています。

国際疾病分類『ICD-10』とアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、レット症候群のとらえ方や名称が異なっています。

WHOによる国際疾病分類『ICD-10』ではレット症候群は「広汎性発達障害」のカテゴリーとして分類されています。これは書籍の内容が採択されたのが1990年であり、原因が特定される前であるためです。しかしアメリカ精神医学会が2013年に発行した『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)にはレット症候群の記載はなく、精神障害とは一線を画するものだという見解であることが読み取れます。厳密には、第4版である『DSM-IV』にはレット症候群はレット障害の名称で広汎性発達障害の一つとして記載されていましたが、染色体の遺伝子の異常が疾病の原因でであることが発見されたことによって、『DSM-5』から除外されることとなりました。

このように研究が進んでいくとともにレット症候群にまつわる情報は日々更新されています。この記事では、現在の時点でレット症候群の明らかとなっていることについてご紹介いたします。

レット症候群の症状

レット症候群は、特徴的な症状のパターンが見られる疾患です。以下では具体的な症状についていくつかご紹介します。「発達の退行」「特徴的な手の動き」「歩行の障害」という主に3つの症状があります。

生後6ヶ月以降の発達の退行

レット症候群のある子どもは生まれたときにはその身体的な成長や運動・発語の発達に滞りは見られません。6ヶ月を過ぎたころから筋緊張低下、自閉傾向など初期症状が見られるようになります。徐々に運動・発語面でも、できていたことができなくなってくる「退行」という現象が起こってきます。

6ヶ月以前から発達に明らかな遅れのある場合には、レット症候群ではなく、その他の疾患や障害となる可能性が高いといえるでしょう。

特徴的な手の動き

ものをつかんだり、手を伸ばすなどの目的をもった手の動きが少なくなり、消失します。その後、手を口にもっていったり、揉んだり、こすったりするしぐさが出てきます。これは「常同行動」と呼ばれる行動であり、自閉症の子どもにも同じような行動として手をひらひらさせたりくるくるまわったりというような行動が見られることがあります。
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歩行の障害

症状の軽い場合には、歩いたり小走りできますが、重篤な場合は運動機能の低下により、歩行障害、歩行失行が見られます。歩行できるようになる以前から、運動発達の遅れがみられることが多く、早い場合には寝返り、四つ這いの獲得が遅れます。

また「筋緊張」という身体の筋肉を支える部分の問題も絡んでくるため、場合によっては歩行異常のほかにも、身体が硬くなったり、座位が保てなくなったりすることもあります。歩くことが困難となるため、疾患が進行してくると移動の際に車いすを使用したり、座るときには補装具を必要とすることになります。

発語によるコミュニケーションの障害

「あうあう」などの喃語(なんご)、あるいは意味のある言葉を習得したあとに、言語機能が部分的、あるいは完全に消失します。発語ができなくることによって外界とのコミュニケーションが難しくなります。

これは構音機能の低下が原因のひとつには考えられるものの、さらに詳しい原因についてはまだわかっていません。

これらの主な3つの症状のほかには、呼吸異常や歯ぎしり、睡眠障害、身長・体重が伸びない成長障害、手足が小さく冷たい、不適切な場面で笑ったり叫んだりする、痛覚が鈍い、一点を比較的長く見つめている、などの症状が見られることがあります。

レット症候群の症状の経過は?

レット症候群は、発達が退行したあとに、症状が一旦安定し、その後再び進行するという決まった流れがあります。レット症候群は、時期によって症状がさまざまであるために、以下の4つのステージに分けて理解するのがよいでしょう。

第1期:発達がゆっくりになる時期

症状が発症してくるのはおおむね生後6ヶ月~1年6ヶ月ごろです。

この時期には主に、運動・言語発達の遅れと自閉的な症状が特徴として見られます。それまで順調だった運動発達や発語などに遅れが生じます。そして、一度は喃語や四つ這い、歩行などを行っていた場合にもそれ以上の発達が見られにくくなります。

また、日中の睡眠時間が以前よりも長くなり、外部の刺激に対する反応が少なくなり、急に手のかからなくなることがあります。他には、おもちゃへの興味がなくなったり、視線が合いにくいなどの様子が見られたりするなどの特徴が出てくる場合には注意が必要です。

第2期:発達が急に退行する時期

だいたい1~4歳ごろの間で、数ヶ月続きます。この時期の特徴は運動・言語発達の急激な退行と、本人の意思とは関わりない手の常同行動です。

運動機能、言語発達に急な退行が見られ、おもちゃやスプーンを持つことができなくなり、おしゃぶりをするなどの目的のある動きをとれなくなることもあります。また、起きている間のみ、両手を揉んだり、ぎゅっと絞るようにしたり、口に持っていったり、片手で胸を叩く、などの常同行動が出ます。

乳児期にこのステージとなった場合には、筋緊張の低下が起こるために、寝返りから遅れることが多く、特に四つ這いの移動はできない、または遅れることが多いです。歩行ができていた場合には、この時期に歩行が不安定となり、体を横へ揺らすような歩き方となります。

また周囲とのコミュニケーションをとることが難しくなり、睡眠障害や呼吸障害やけいれんが起こることもあります。

第3期:症状が安定する時期

退行ののち、発達面での症状が安定したように見える時期があります。イライラやかんしゃくなどは少なくなり、視線もよく合うようになります。

一方この時期には、身体的問題がより顕著に見られるようになります。例えば、手の常同運動や呼吸障害、歯ぎしりなどです。また患者の約40~80%に、てんかんが発生します。筋緊張の症状が進んでくるので背骨の側弯への対応が必要となってくる時期です。

第4期:機能の低下する時期

この4つ目のステージにはだいたい発症から10年以上たって入ります。運動機能がさらに低下します。手や足を動かすことができないために、身体が細くなってきます。場合によっては、歩行が難しくなるために車いすが必要となることもあります。

筋緊張の状態が進んで背骨がゆがむ脊柱側弯が進行し姿勢を保つことが難しくなります。また「ジストニア運動」という筋肉の異常によって無意識に体が動いてしまう症状も生じることがあります。

食事の際に飲み込むのに時間がかかったり、胃や食道の逆流症が発生してきたりするために、外科的な治療が必要となることもあります。

レット症候群の原因

発達の退行が見られるレット症候群は、遺伝子性の疾患であることが近年わかってきました。

私たちの身体の2本の性染色体のうち、X染色体の中に存在する「MECP2」という遺伝子があります。この遺伝子が何らかの要因で病的な変異を起こすことによってレット症候群が起こります。

しかし遺伝子に変異が起こったからといって必ずしもレット症候群を発症するわけではなく、「MECP2」という遺伝子に病的な変異が起こっている人のうち、レット症候群と診断がつくのはそのうち90%ほどです。

また近年の研究では、病因としてCDKL5やFOXG1という遺伝子も新たに発見されています。

レット症候群は、家系や両親からの遺伝では起こるのではなく、何らかの原因による遺伝子の突然変異であると考えられています。家庭内で親から子どもへ遺伝することはほぼないということが調査によって明らかになっています。

レット症候群の合併症

レット症候群の合併症として最も気を付けたいのがてんかんです。てんかんは、レット症候群のある子どもの70~80%と高い確率で起こります。そのうちの約30パーセントは、けいれんの薬が効きにくい難治てんかんだと報告されています。てんかん発作は、歩行ができない重度の子どもに多いとされています。

重症の場合には、日常から合併症の注意が必要です。合併症として挙げられているのは、感染症、誤涎(ごえん)性肺炎、胆石、吐気症などです。食べ物の摂取がうまくできないために、栄養摂取のために胃瘻(いろう)という「お腹に口をつくる」手術が必要となることもあります。骨の発達にも滞りが出るので、ちょっとした衝撃でも骨が折れてしまうこともあります。

レット症候群が進行していると、本人は言葉を発したり、思うとおりに身体を動かしたりできないので、周囲にいる人の理解と支援が大切です。
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レット症候群の診断基準

1985年から2002年にかけて、レット症候群についていくつかの診断基準が発表されてきました。この章では、現在日本の病院で実際に使用されている診断基準をご紹介します。

『ICD-10』における診断基準

『ICD-10』は、世界保健機関(WHO)の定める国際疾患分類です。ただし、1990年の改訂を最後に情報がまだ更新されていないために、それ以後の研究結果により明らかになったことが反映されていない古いバージョンだと捉えておくとよいでしょう。

現在、多くの医師が採択しているのはこちらの診断基準となります。特に、「小児慢性特定疾病指定医」の登録を行っている医師は必ずこの診断基準を使用しているようです。

A.胎生期・周産期は明らかに正常、および生後5カ月までの精神運動発達も明らかに正常、および生下時の頭囲も正常であった。
B.生後5カ月から4歳までの間に頭囲の成長は減速し、また5~30カ月の間に目的をもった手先の運動をいったんは獲得していたのに喪失すると同時に、コミュニケーション不全、社会的相互関係の障害を伴い、また体幹の協調運動障害/不安定さがあらわれる。
C.表出性および受容性言語の重度の障害があり、重度の精神運動遅滞を伴うこと。
D.目的をもった手先の運動の喪失時またはそれ以降に現れる、正中線上での常同的な手の運動(てもみや手洗いのようなもの)がある。

中根允文ほか/訳『ICD-10 精神および行動の障害ーDCR研究用診断基準新訂版ー』1994年/医学書院/刊

出典:http://amzn.asia/hPn91fq

「レット症候群診断基準・改訂版(2010年)」

819人のレット症候群患者の診察・遺伝子解析などの研究によって作成されたのがこの診断基準で、レット症候群の本質的な症状が明瞭・簡潔に載っています。現在、この改訂版の診断基準を医師に広めようという動きや活動もあり、これからより本質的な診断に期待ができそうです。

①診断基準 (表1)に最新の診断基準を示す。

表1. レット症候群診断基準最新版(2010年版)
現在まで、世界で統一した診断基準は確立されていない。近年、Nuel JF,等は819例の検討で、下記の基準を提唱しています。
A-1. 退行のエピソードがあること (但し、その後、回復期や安定期が存在する)
A-2. すべての主要診断基準と、すべての除外診断基準を満たすこと
注) 最後に述べる11の支持的診断基準は必須ではないが、典型例レットでは認めることが多い。

主要診断基準
・合目的的な手の機能の喪失:意味のある手の運動機能を習得した後に、その機能を部分的、あるいは完全に喪失すること
・言語コミュニケーションの喪失:言語(有意語、喃語)などを習得後に、その機能を部分的、あるいは完全に喪失すること
・歩行異常:歩行障害、歩行失行
・手の常同運動:手を捻じる・絞る・手を叩く・鳴らす、口に入れる、手を洗ったり、こすったりするような自発運動

典型的レット症候群診断のための除外基準
明らかな原因のある脳障害(周産期・周生期・後天的な脳障害、代謝性疾患、重症感染症などによる脳損傷)
生後6か月までに出現した精神運動発達の明らかな異常

A.典型的レット症候群の診断要件は上のすべてを満たすこと。
そして退行のエピソードがあること。(但し、その後、回復期や安定期が存在する)

B.非典型的レット症候群の診断要件
退行のエピソードがあること(但し、その後、回復期や安定期が存在する)
4つの主要診断基準のうち2つ以上を満たすこと
B-3. 11の支持的診断基準のうち5つ以上を満たすこと

典型的レット症候群診断のための支持的(補助的)診断基準
1.覚醒時の呼吸異常、
2.覚醒時の歯ぎしり、
3.睡眠リズム障害、
4.筋緊張異常、
5.末梢血管運動反射異常、
6.側弯・前弯、
7.成長障害、
8.小さく冷たい手足、
9.不適切な笑い・叫び、
10.痛覚への反応の鈍麻、
11.目によるコミュニケーション、じっと見つめるしぐさ

出典:http://npo-rett.jp/rett_medi01.html
※アメリカ精神医学会『DSM-5』(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)での除外について
アメリカ精神医学会の出版する『精神疾患の診断・統計マニュアル』の第4版においてはレット症候群はレット障害の名前で「広汎性発達障害」のカテゴリとしてその診断基準が記載されていました。しかし、その後レット症候群はX染色体の遺伝子の問題であるという事実が判明し、2013年の第5版改訂の際に広汎性発達障害のカテゴリーからレット症候群の名前は除外されました。

子どもがレット症候群かも、と不安を感じたら

相談する

◇乳幼児健康診査
乳幼児健康診査は乳児健診とも呼ばれ、母子保健法の定めにより各自治体が実施するものです。各市区町村の保健センターなどで行い、赤ちゃんが順調に発達しているかどうかを確認し、病気の予防や早期発見をするための検査です。3ヶ月、6ヶ月、1歳半といった乳幼児の発達の節目に受けることができます。レット症候群の場合には、初期症状が生後6ヶ月~1歳半ごろから出始めるので、3、6ヶ月の時点ではもちろん、1歳半健診の際にも、見過ごされてしまうことがありますので注意が必要です。

乳幼児健診では普段の子育てで疑問に思っていることや、なかなか話す機会がない不安などを専門家に相談できる場でもあります。乳児健診は同じ月齢の赤ちゃんを育てるほかの保護者も来ており、育児の工夫や悩みを共有したり情報交換したりできる場としても利用できます。

検査を受けるには、出生届を出した自治体から送られてくる受診票の案内に従います。指定された日時に集団で受けるケースがほとんですが、事情があれば日付の変更や受診場所の変更をしてもらえることもあります。

また、以下のサイトでは、全国の発達相談にのってくれる施設を検索することができますので参考にするとよいでしょう。
◇地域子育て支援センター
行政や自治体が主体となって運営している施設です。子育ての不安・悩みに対し専門的なアドバイスをしてくれる保健師が在籍または巡回しています。日時によっては乳幼児の発達相談を無料で行っています。

地域の母子向けに子育てサロンを開催や発達に合わせたセミナーを主催していることもあり、気軽に利用できます。

◇児童相談所
児童相談所では、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、0~17歳の児童を対象としたさまざまな相談を受け付けています。必要に応じて発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、理学療法士などからの支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市区町村のHPなどを見て、スケジュールを確認するようにしましょう。

病院を受診する

上記で紹介したレット症候群の症状が明らかである時には、すみやかに医療機関で診察を受けることをおすすめします。医療機関の受診を考える場合には、まずはお近くの小児科で相談してみてもよいでしょう。

レット症候群は、認知度の低い疾病であり、一般の病院を受診しても残念ながら確定診断に至らない場合があります。ですので、受診の際にはお近くの「指定難病特定医師」を訪ねることをおすすめします。

以下のサイトから指定難病特定医師のいる病院を検索できます。参考にしてみてください。

レット症候群の治療法

レット症候群は、残念ながら根本的な治療が確立されていません。ですので、レット症候群のある患者さんに対しては、それぞれの症状をケアする対症療法により症状の緩和を目指します。

例えば、運動機能の低下に対しては理学療法が行われ、発話に関しては言語療法が行われます。また症状として多く見られるけいれんには、抗けいれん薬の調整などです。ほかに、背骨がゆがんでくる側弯に対してはコルセットを使用して姿勢の維持を行うなど、一つひとつの症状に対してアプローチを行っていきます。

レット症候群のあるお子さんの保護者の方へ

レット症候群のある子どものケアや子育てで気を付けたいことをご紹介します。

視線でのやりとりを大切に

レット症候群のある子どもは、うまく身体を動かすことはできませんが、耳で捉えた音はしっかりと聞こえていますし、においや触られた感覚はあります。しかしレット症候群のある子どもは、自らの意思により体を動かすことが難しいので、自分の意思を伝える方法が限られてきます。

ここで重要になるのが、視線を動かすことです。疾病の度合いが重度の場合には、外界からの刺激に対して反応をできるのは視線を動かすこの方法のみとなります。声をかけてあげるときには、目を見ながらやりとりを行うのがよいでしょう。

近年では視線入力装置などの代替コミュニケーションの手段も開発されています。安価で視線入力装置の貸し出しを行うプロジェクトが行われています。詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。

栄養状態に配慮を

レット症候群のある子どもは嚥下が困難なために、食事にかかる時間が長く必要です。食事の際には、誤嚥(ごえん)を防ぐためにトロミをつけて、便秘を抑えるためにも、食物繊維の多い食事が推奨されます。身体の中に管を入れて栄養をとっている場合には亜鉛、必須アミノ酸、カルニチンなどの不足にならないように注意が必要です。

また骨密度の低下により骨折することが多いので、定期的に骨密度などを測定し、活性型ビタミンDやカルシウム摂取などを心がけたいものです。

早いうちから整形外科に相談を

症状が進行してくると、筋緊張の異常や側弯によって歩行が困難となります。お子さんのレット症候群に気が付いた場合には、歩行機能を失わないうちに、整形外科に相談してコルセットや補装具を作成する相談をすることが望ましいです。

レット症候群に対する医療費の補助制度

レット症候群は、原因がわからず、治療法も確立されていないという点から難病に指定されています。国は充実した難病対策を行うため、医療費の助成制度を準備しています。ここではレット症候群の患者が受けることができる3つの医療費の補助制度をご紹介します。

難病法による医療費の助成

医療費助成の対象になると、自己負担割合が下がり、自己負担上限月額があるので、それを超える負担はなくなります。高額な治療を長期にわたって行う必要があれば、負担はさらに軽くなります。

難病法では、患者の医療費の負担金は2割が上限です。例えば、難病に関する医療費が10万円だった場合、窓口で払うのは2割の2万円です。

難病法では、「重症度」をポイントにしており、一定の症状がある人が助成の対象となります。指定難病の患者であっても、症状が軽いと助成は受けられません。しかし、症状が軽くても、高額な医療費がかかる治療が継続して必要な人は「軽症者の特例」として助成が受けられますので、都道府県の担当窓口(保健所など)に問い合わせてみましょう。

1.臨床調査個人票(診断表)の書類をもって、難病指定医を受診する
2.受診後、難病指定医に書類に記入をしてもらう
3.必要な書類とともに都道府県に提出する
4.受給の認定がおりる
5.医療受給者証が交付され、自宅に届く

医療費受給がおりることが確定しても、自宅に医療受給者証が届くまでに時間がかかります。受給者証が手元に届くまでにかかった医療費は、支給申請を行えば自己負担額上限を超えた額があとから戻ってきます。指定医療機関の療養証明書や指定医療機関の領収証などはとっておくようにしましょう。

小児慢性特定疾病の医療補助制度

レット症候群は小児慢性特定疾病に指定されており、医療費の自己負担分の一部の助成を受けることができます。この制度は児童福祉法に基づいており、児童の健全育成のために患者家族の医療費の負担軽減を図る目的があります。

医療費の助成を受けることができるのは、18歳以下の患者です。また、以下の4つ全てを満たす程度の疾病であることが条件となります。
・慢性に経過する疾病であること
・生命を長期に脅かす疾病であること
・症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること
・長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病であること

医療費助成を受ける場合には、行政機関への申請が必要となります。申請は以下の流れとなります。
1.指定医療機関(※)を受診し、医師から小児慢性特定疾病の意見書を書いてもらう。
2.お住まいの都道府県、指定都市の窓口へ意見書と申請書を提出する。
3.小児慢性特定審査会にて審査が行われる。
4.医療助成の対象の通知が自宅に届く。

※指定医療機関は、都道府県・指定都市の定める特定の医療機関であり、自治体ごとに定められています。お近くの指定医療機関を折理になりたい場合はお住まいの自治体のHPをご覧ください。

医療費が高額になった場合の補助制度

◇高額療養費補助制度
この制度は入院など、高額の医療費を支払った時に払い戻しを受けることができる健康保険制度です。月の支払いのうち、負担の上限金額を超えた支払いをした場合には、その超過分が支給されます。

高額療養費の支給は、診療の月から3ヶ月以上の時間がかかります。その間の家計の負担が考えられますので、以下の2つの制度を利用することで入院の間の負担を減らすことが可能です。

70歳未満の方で、入院費が高額となることが事前にわかっている場合には、限度額適用認定証を病院に提示することで、負担額に限度を設けることができます。所得により異なりますが、支払額の上限の目安は平均44,000~140,100円/月です。この場合には高額療育費を申請する必要がなくなります。
◇高額医療費貸付制度
家計の負担を軽減させるために、一時的に治療費を借りることもできます。この制度では、高額療育費で支給される見込みの約8割の料金を無利子で貸し付けを行っています。

すべての申請は郵送で行うことができます。申請者の方が窓口に足を運ぶ必要がなく簡単に申請することができますので、ぜひご活用ください。詳しく知りたい方は以下の全国保険協会のHPをご覧ください。

まとめ

レット症候群は現在、病態や根本治療を解明するための研究が日々行われています。レット症候群の症状に対して、根本的な治療を行う方法はなく、それぞれの症状に対してひとつずつケアを行っていくのがレット症候群の患者に対する現状です。

このように、合併症を含むさまざまな症状に対してひとつひとつケアを行っていくことが地道ととらえられるかもしれません。しかしレット症候群には「Care Today, Cure Tomorrow」というスローガンがあります。

これは国際レット症候群協会の会長のKathy Hunterさんの言葉です。現在はできる限りのベストの治療を行って、来たる根本的な治療方法の開発の日々を待とうという前向きな意味がこめられています。

レット症候群の原因遺伝子が発見されてから10年の月日がたち、基礎研究は着実に進んでいます。基礎研究の進歩によって、レット症候群に対する治療法が確立される日も来るかもしれません。
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