ADDとは?特性やADHD(注意欠如多動症)との違い、治療法、相談先を紹介

ライター:発達障害のキホン
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ADDはかつて使用されていた発達障害の診断名のひとつです。現在ではADHD(注意欠如多動症)と診断名が変わっています。ADHD(注意欠如多動症)には3つのタイプがあり、ADDはその中でも「不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)」に近いとされています。この記事では、ADDの概要やADDからADHD(注意欠如多動症)への診断名の変遷、現在の診断基準、不注意・衝動性による困りごとへの対処法をご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ADDとADHD(注意欠如多動症)の違い

ADDとは?その意味を解説

ADDとは、不注意・衝動性という特性のある発達障害のことです。その特性から、「一つのことに集中が続かない」「片付けがどうしても苦手」「人の話をさえぎって話してしまう」などの困りごとが生じることがあります。


ADDという診断名は以前使用されていたもので、現在はADHD(注意欠如多動症)に変わっています。

ADDとADHDの違いとして「多動性」が挙げられます。多動性とは英語で「Hyperactivity(ハイパーアクティビティ)」といい、じっとしていることが苦手で、すぐに動きたくなる特性のことです。

ADDは注意の持続と衝動性の制御が困難という特徴があるため、現在の『DSM-5-TR(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版改訂版)』では、ADHD(注意欠如多動症)の「不注意優勢型」に相当します。

今回の記事では、ADDがADHD(注意欠如多動症)に変わった経緯と共に、ADD的な特性のある子どもの困りごとや対処法に着目して解説します。
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ADHD(注意欠如多動症)の3つのタイプとは?【専門家監修】

ADDからADHD(注意欠如多動症)への診断名の変遷

ADDという診断名は、精神疾患の国際的な診断基準である『DSMⅢ-R(『精神障害の診断・統計マニュアル』第3版改訂版)』により、1987年にADHD(注意欠如多動症)に変更されました。

しかし、その後もWHO(世界保健機関)が作成している国際的な疾病の分類である『ICD』にADDの診断名が残っていたこともあり、「ADD」という言葉はしばらくの間使われていました。そういったこともあり、ADDからADHD(注意欠如多動症)に診断名が変わったあとも、時間をかけて世間にも浸透していったのです。

不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)(旧ADD)の特徴とは

ここでは以前のADDに相当すると考えられる、不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)のある子どもによく見られる特徴を紹介します。

不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)の主な特性は不注意と衝動性です。この特性と周りの環境がうまくかみ合わないことで、日常生活や園・学校でさまざまな困りごとが生じてきます。

不注意

不注意とは注意力が弱く、一定時間集中を保つことが苦手という特徴があります。

不注意による困りごとは以下のようなものがあります。
・よく物を失くす、忘れものが多い
・片付け、整理整頓ができない
・周囲の情報に気が散って授業などに集中できない
・人の話を最後まで聞くのが難しい
・細かいところまで注意が向かない など

こういった特徴から、学習の遅れや集団生活への適応の困難さが見られる場合があります。

衝動性

衝動性がある場合には、自分の感情や欲求のコントロールが難しいという特徴があります。

衝動性による困りごとは以下のようなものがあります。
・思いついたことをすぐ実行してしまう
・相手の話をさえぎって話すことがある
・順番を待つことが苦手
・優先順位が付けることが苦手
・すぐにかっとなってしまう など

また、喜怒哀楽が激しく、出来事が自分の思い通りにいかないと癇癪(かんしゃく)を起こしてしまうこともあります。このような感情的な行動から、人間関係においてトラブルが多くなってしまう子どももいます。

二次障害

ADHD(注意欠如多動症)の特性はその人がもつ脳の機能によって起こるものであり、わざとやっているわけでも本人の努力不足でもありません。ですが、そのことが周囲に理解されず、困った子どもと誤解されてしまうこともあります。そして、叱られたり厳しい訓練を受けたりした結果、本人の自尊心が低下することもあります。

本人にとってつらい状況が続くことで、不登校や、引きこもりなどの行動に表れたり、うつ病など精神的な症状が表れることがあり、その状態は二次障害と呼ばれています。

二次障害を防ぐためにも、子どもが困っていることに気づいたら早めに専門機関での相談や受診をしましょう。
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不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)(旧ADD)による困りごとへの対処法

ここでは、不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)(旧ADD)による困りごとに対して、家庭などでできる対処法を紹介します。

不注意への対処法

不注意による困りごとへの対処法の具体例を紹介します。
・必要なものは親や先生が一緒に確認する
・席の位置など気になる刺激が少ない環境にする
・指示を細かく分類して、一つの行動が短時間で終わるようにする
・全体への指示の後に個別に指示を伝えるようにする
・紙メモやスマートフォンのTo Doアプリなどを活用する
・メモなど持ち物を入れる場所を固定化する(ランドセルの特定のポケットなど) など

こういった工夫やツールなどは子どもによって合う合わないがあります。いろいろと試してみるとよいでしょう。

衝動性への対処法

次に衝動性による困りごとがある場合の対応方法を紹介します。
・やるべきことを思い出し気付けるような言葉かけをする
・ルールを設定したうえで、ある程度自由な行動を許す
・ルールを伝えるときにはイラストなど視覚的に分かりやすくする
・水を飲む、一人になるなど自分なりのクールダウンの方法を見つける
・休み時間は充分に体を動かすように促す など

適切な対処をすることで、徐々に困りごとを減らすことができ、本人も周囲も安心した生活を送れるようになるでしょう。
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