子どもに寛容なタイ

ある日、夫が海外転勤に。妻と障害のある子は一緒に行ける?ダウン症のわが子を連れての駐在経験の画像
マンションの守衛さんたちと。毎日声をかけてくれました。
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タイは仏教が国教で、子どもたちを大事にするお国柄なので、子どもがどこで何をしても、タイの人たちは笑顔でそれを見守っています。

日本人からしたら、「お行儀が悪いなぁ」と思えるようなことをしていても、誰も怒る大人はいません。それどころか「元気ねぇ」とでもいうようなまなざしで見てくれています。だから、ちょっと動きの多いタイプのお子さんをお持ちのママさんたちは、「タイは本当に育てやすい!」と話していました。

また、困っていたらすぐに手も差し伸べてくれます。娘も身長がとても小さく子どもに見られるので、電車に乗るとすぐに席を譲ってくれます。

障害者に対する差別がないわけではありませんが、「タンブン」という、来世のために現世で徳を積むという仏教上よいとされている行いが生活の中に根付いており、障害のある人に対しても大変親切です。車いすを利用している友人は、タクシーから降りるとすぐに人がワーッと集まってきて階段をあげてくれると言っていました。

設備的には全くバリアフリーではありませんが、人の心にはバリアが少ないように感じます。

世界各地からいろいろな人種、民族、宗教の人が集まる観光都市なので「多様性」には大変寛容なのだと思います。
私もバンコクにいる間は、「日本人」つまり「マイノリティー」で娘と立場は同じでした。
ですから、娘が「ダウン症」であることを意識する機会がすごく減ったのが大変印象的でした。

海外赴任前に確認したほうがいいこと

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胃腸炎で入院。病室はホテルのよう。
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海外で暮らすときに、母親として気になるのは「教育」と「医療」です。

現地の病院にかかる時は、会社が加入している「海外駐在保険」を利用してかかることが多いです。保険の種類によって、療育は保障の範囲外だったり、会社からも療育の費用は自費扱いとなったりする場合があるので、お子さんがたくさん療育が必要な年齢の場合は、費用負担がどうなるのかを確認しておくとよいでしょう。

駐在で赴任する場合はたいてい日本の会社の健康保険はそのまま日本で使えるので、基礎疾患による経過観察が必要な受診や、詳しい発達検査などは一時帰国の時にまとめて受診する人が多いです。

ただし、現地採用になってしまうとそのあたりがなくなってしまうので、注意が必要です。赴任する土地にもよりますが、たくさんの予防接種が必要な場所もあります。

また、現地の医療のレベルには国によってかなり差があるので、よく情報を集めたほうがよいでしょう。

小学校、中学校での日本への帰国は、住民票を入れた時点で問題なく転校できますが、養護学校高等部の編・入学については、自治体によっては自治体内の中学を卒業していることが要件となる場合もあるようです。お子さんの年齢によっては、そのあたりも各自治体の教育委員会に確認してから渡航することをお勧めします。

また、海外へ引っ越しする際は、住民票は抜いていくので、「愛の手帳」などの障害者手帳は返還する自治体が多いと思います。よって一時帰国の際は手帳が使えません。ご注意ください。

タイが教えてくれたこと

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父親の会社の社員旅行で、社員さんと。
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バブル世代なので、海外旅行は何度かいったことがありますが、住んだことはなかったので、今回改めて、「日本のあたりまえが当たり前じゃない」ということを強く感じました。

これは、きょうだい児である弟も強く感じたようです。日本以外の多様な価値観を体で感じる機会に恵まれたことは、大変貴重な体験でした。

また、タイ人の社員と仕事をしているお父さんたちの話を聞くと、その様子は、とても「障害者雇用」に似ているなぁと感じました。

言葉がうまく通じない人たちといかにコミュニケーションミスを減らすか。相手の文化を尊重していかに心を通わせて、いいチームを作って企業としての成果を出していくか。

障害のある人達もある意味「違う文化を持った人」と言えるのではないでしょうか。

そういう意味では、障害のある子とない子が一緒に学ぶことも「インクルーシブ教育」と言わずに「グローバル教育」だと謳った方が受け入れてもらいやすいのではないかとも思うようになりました。

タイは貧富の差が激しく、また、社会福祉の整備は先進国に比べて遅れています。
しかし、だからこそ、人々の助け合いで成り立っている部分も多く、日本が失ってしまったものがたくさん残っているなぁと感じました。

また制度がないからこそ柔軟に対応できることも多いのだと思いました。

日本はこの10年、いや私たちが日本を離れている2年半の間にも、かなりいろいろな制度ができたり、児童デイなどの新しい施設が急激に増えたりと制度的には整ってきました。

しかし、新たな問題も生まれており、制度や施設ができればそれでいいというものでもないのだなと、半世紀くらい遅れたタイの福祉の状況を見て思いました。
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